小町ポイント クリスマスキャンペーン   作:さすらいガードマン

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 ポワポワポワンと、どう考えても非現実的な効果音を立ててピンクの煙が広がり俺の視界を埋め尽くす。自分の指先も見えないほどの濃い煙だが、不思議と息苦しさは感じない。

 立ち尽くすこと数秒。ゆっくりと霧が晴れていくと、……あれ、晴れない? いつの間にか煙じゃなくて白い湯気に変わっている。

 

 つーか、俺、なんか裸で風呂に入ってるんだが。少しずつ周りが見えてくると、ここは豪華な大理石風の風呂で、こういう所によく似合うライオンさんが、口から乳白色のお湯をはき出している……どういう設定だよ……たく、あのエセ天使め。

 周りはかなりの広さで……って、いや、これは露天風呂か。 一面だけ壁が無く、はるか遠くにぼんやりと月まで見えている。

 

「ヒッキー……。そっち行っても、いい?」

 

急に誰かに声をかけられドキリとする。「誰か」いや、聞き間違えるような相手では無い。いつも五月蝿いぐらいに聞いてる声だし、何より俺を「ヒッキー」などとふざけた呼び方をするやつなど()()()しかいない。

 

 問題なのは今の状況だ。俺は現在裸で風呂に入ってる。で、由比ヶ浜がこっちに来ると言ってる。

 

「いや、待て。いま……」

 

「えへへ……、来ちゃった」

 

そう言って湯気の向こうからやって来た由比ヶ浜は、胸から腰までを覆うように真っ白いバスタオルを巻いている。温泉番組のレポーターみたいな格好だな。

 だが、彼女もおそらく湯に浸かっていたのだろう、タオルが彼女の躰に張り付いて、なんとも艶めかしい。何よりその、身体のラインが見えてしまうため胸の大きさが強調されている。お湯の雫が、彼女の首筋からつつっと胸の谷間に流れて吸い込まれて行くのを見ちゃったりすると、どんどん鼓動が早くなって来るのが自分でも分かる。

 

 由比ヶ浜は、俺から二三歩離れたところまで湯の中を進んでくると、そのままゆっくりとしゃがんでお湯に浸かった。彼女の少し火照ったような顔にドキッとしてふと目をそらす。

 

「はぁぁ~。広くって気持ちいいねー」

 

「いや、この状況でそんな余裕ねーわ。……お前、平気なのかよ?」

 

「いーじゃん。誰かが見てるわけじゃ無いし……」

 

 いや、俺が見てますよ? というか顔はそらしたふりしてるけど、むしろガン見しちゃってるまである。 ……特にお湯に脇のあたりまで浸かることで余計に強調されたように見える二つのメロンちゃんから目が離せない……これが万乳引力の法則か……。

 

「ヒッキー?」

 

という声にハッとして顔を上げると、由比ヶ浜がジト目で俺を見ている。どうやら胸をチラチラ見ていた情けない所をしっかり目撃されてしまったらしい。

 

「お、おう。その……悪い。 ……つい、な」

 

「……いいよ。えと、恥ずかしいことは恥ずかしいけど、こ、恋人なんだし」

 

顔を真赤にしてそんな事を言われてしまうと、俺は、

 

「そ、そうか」

 

それしか言えず、二人して暫し無言。

 

「ね、ヒッキー。 ……背中、洗ってあげる」

 

「お、おい、それは流石に、」

 

「いいじゃん、ちゃんとタオル巻けば、さ」

 

「いや、まあ……」

 

そのタオルが肌に張り付いて超エロいんですが。

 

 結局断りきれず、二人して洗い場に上がる。お湯で隠れてない分、由比ヶ浜のスタイルの良すぎる、その躰のラインが余計に眩しい。湯船から上がる時、タオルの間から彼女の内ももをちらっと見てしまい、俺の鼓動が早くなっていく。

 これってほんとに夢? このままだと心臓が持たない……。

 

「これでいいのか?」

 

由比ヶ浜に背中を向けて椅子に座り、そう聞く

 

「うん……。じゃあ、洗う、ね……」

 

 「(あか)すり」というのか、温泉なんかによくある、タオルとスポンジの間みたいなやつを石鹸の泡で真っ白にすると、彼女は俺の背中をゴシゴシと洗い始めた。

 これが実に心地良い。魅力的な女の子に洗ってもらっている、という精神的な物もあるんだろうか?

 

「どう、気持ちいい、かな?」

 

「おう。すげえ気持ちいい……。もう少し強くても良いぞ」

 

「うん、わかった」

 

彼女は少しだけ力を込める。

 

「はあぁあー」

 

変な声がでてしまった。

 

「あはは」

 

由比ヶ浜が笑う。

 

「……あの、さ、ヒッキー……」

 

「ん? どした」

 

「これって、コマチエル? ちゃんが見せてくれてる、夢、みたいなもんなんだよね……」

 

「ああ、そういえばそんなような事言ってたな」

 

「じゃあ、じゃあさ、……」

 

何か思い詰めたような声をだすと、由比ヶ浜は俺の背中に抱きついてきた。

 

 一瞬、息が止まる。

 「ムニュ」っと 擬音が聞こえたかと思った。二つの柔らかくて大きいモノが俺の背中に押し付けられている。

 

「お前……」

 

柔らかい近いいい匂い柔らかい大きいあと大きい。 ……石鹸と、オンナノコの匂い。そんな事されちゃったら、八幡が八幡しちゃってもう八幡!!

 

「ヒッキー、大好き」

 

彼女は震える声でそう言う。

 

「……由比ヶ浜……」

 

「ずっと言いたかった。……ずっと言えなかった。 ……だから……」

 

 背中から、彼女の真剣な想いが伝わってくる。

 

「……ありがとな。こんな俺のこと、好きになってくれて」

 

「ヒッキー……」

 

「今まで何度も、その、お前に好かれてるんじゃないかって思うことはあったんだ。でも、いつもそれは勘違いだって思い込もうとして……」

 

由比ヶ浜は何も言わず、ただ俺を抱きしめる手に力を込める。

 

「……悪かったな、俺から言えなくて。……俺も、お前のことが好きだ、由比ヶ浜」

 

さらに俺を強く抱きしめた彼女は、ひと呼吸置くと、俺の耳にはむっと優しく噛み付いた。

 

「ひゃっ」

 

また変な声が出てしまう。

 

「いきなり何を……」

 

そう言って振り向くと、

 

「あはは……ぇぐっ……れしい……うれしい、よう……ヒッキー……」

 

……由比ヶ浜は、半分笑って半分べそをかいたような顔でぽろぽろ涙を流していた。

 

「由比ヶ……むぐ。」

 

最後まで言う前に、彼女に唇を奪われる。数秒。ゆっくりと離れると、熱っぽく潤んだ二つの瞳。どこかとろんとした表情で俺を見つめている。

 ……もう一度……と、どちらからともなく顔を寄せて……、

 

「あっ」

 

由比ヶ浜のタオルが外れて、下にバサッと落ちる。

 

「きゃ……」

 

彼女は慌てて両手で前を隠してしゃがみ込んで後ろを向く。一瞬あ然とした俺も、急いで後ろを向いた。

 いいいろいろなところが、っみ、み見えちゃったんですですけどっ、どっどど どどうど どどうど どどう。by宮沢賢治。 少し落ち着け俺。

 

「す、スマン」

 

「……いいよ。ヒッキーなら」

 

そう小さい声で言うと、

 

「ね、せっかくだから、さ……。このまま、私の背中も洗ってくれない、かな」

 

「お、おう」

 

ゆっくりと振り向く。彼女は後ろを向いて耳まで赤くして真っ赤になっている。タオルで前を隠してはいるようだが、俺の方からはきれいな背中も柔らかそうなお尻も見えてしまっている。

 

……背中以外も洗っちゃおうかな……俺は湯船に浸かっているわけでもないのに、随分とのぼせてしまったようだ……。

 

 

 

のぼせ上がってもうひと暴れ。

 

フラフラするので、ゆっくりと眠ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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