小町ポイント クリスマスキャンペーン 作:さすらいガードマン
ポワポワポワンと、どう考えても非現実的な効果音を立ててピンクの煙が広がり俺の視界を埋め尽くす。自分の指先も見えないほどの濃い煙だが、不思議と息苦しさは感じない。
立ち尽くすこと数秒。ゆっくりと霧が晴れていくと、そこには……
デブのサンタクロースが怪しげなポーズを決めていた。
そいつは俺に気が付くと、何らかのアクションを始める。
「剣・豪・将・軍……。
そう言って見得を切る。 ……どこかで見た動きだと思ったら、これ、アレだ。今やってる仮面ライダーの登場シーンのパクリだ。
なぜ分かるのかといえば、俺は日曜朝八時半のプリキュアが楽しみすぎて、その前の仮面ライダーから見てしまっているからだ。見始めたら、意外と奥の深い話にハマってしまって、さらにその前のヒーロー戦隊シリーズから見てるまである。ビバ、「スーパーヒーロータイム」冬休みは東京ドームシティで僕たちと握手!!
「ほむんほむん。前世においては、共に幾多の死線をくぐり抜けし我と八幡なれど、よもや現世にてこのような関係になろうとは……」
目の前の物体が何か俺に理解の出来ない言語を話し始めた。
それにしても、こいつサンタ似合うなー。もちろん悪い意味で。デブだし、おっさん顔だし、どう見ても高校生には見えねえ。もう、まるっきりサンタ。北欧とかにいる感じじゃなくて、商店街でプラカードもって立ってそうなほうね。
「……しか~し、ここでお主に恋人と望まれて応えぬようでは浮世の義理が立たぬ!!……」
いや、誰も望んでないから。
「ならば我も覚悟を決めなばなるまい……。
「……おい」
一人で突っ走ってんじゃねーよ。
「では、来るが良い、八幡!」 「でも……我、初めてだからぁ、優しくしてほしいの」
なぜそこで腰をくねらせる? なぜ俺に向かって両腕を開いて目を閉じる?
……こんなのは間違ってる。誰かの不幸を前提に世界が成り立っているというのなら、それはそんな世界のほうが間違っているのだ。だから、そんな運命を押し付けようとする者がいるのなら、比企谷八幡の目の前に、不幸を押し付けられようとしている誰かがいるのなら……俺は……、
「まずはその幻想をぶち殺す!!」
強く握った右手を、目の前の「不幸」に叩きつけた。
「そげぶっっ」
目の前の物体は、一回転して吹っ飛び、そのまま動きを止める。
「おお、さすがは夢の世界だ、この俺が、まさか
まあ、アレだ。……目の前に転がっているのが、ぶん殴られて気絶しているだけのただの材木座に見えないこともあるような無いような……。
細かいことを気にしてもしょうがないな。世界はいくつもの不幸に満ちているのだ。