朝ご飯を食べ、家事を行い、ダンジョンに向かうことになったが、ヘスティア様に相談があると言ってベル君には先に出発してもらうことにした。
「ヘスティア様、オレのステイタスの伸びの悪さの原因ってわかります?」
「そうだね、ボクも考えたんだけど、2つほど仮説があるぜ」
さすが神様。見た目はマスコットキャラだけど、頼りになる。
「1つ目は、異世界側の理に
「いえ、まったく」
異世界側のステータスは、レベル310だからか経験値バーが増えたかどうかもわからない。検証のしようがないが、たしかに可能性はある。
「2つ目。これが可能性が高いと思うんだけど、昨日の戦闘では君にとってロクな
「でも、ベル君と同じような敵を倒しましたよ。一人で複数体の相手もしましたし」
「昨日ダンジョン内での話がでたけど、ベル君が言うには、サトゥー君はまるで戦い慣れてるようだったそうじゃないか。異世界側で高レベルだったりしないのかい?」
「確かにそこそこレベルは高いと思います」
あの世界には一時間もいなかったからどの程度高いレベルなのか、わからないんだけどね。
「ステイタスは伸ばしたい能力を使うことで伸びていく。余裕でできることをしても大して
さすがに、命がけの戦いなんてしたくないので素直にうなずいておく。
「普通の人なら、個人の力10に
少々鍛えていたところで、個人の力15くらいで合計25の能力で大きな違いにはならない。
ただ、君の場合、個人の力10に
だから、2階層での戦闘では、大した
数値は適当だけど、理論としてはそう間違っちゃいないはずだぜ」
なるほど。モンスターとの戦闘は全力は出していなくて、ゆっくり動くことを心掛けている状態だ。それで伸びるわけがない。
器用が伸びてたのは色々試してたから。魔法だけ普通に伸びてたのも、特に手加減などせず、普通に「全マップ探査」の魔法を使っているせいか。
「しかし、困りましたね。エイナさん、ギルドのアドバイサーさんなんですけど、その方にどこかのステータスHになるまで次の階層に行かないほうがいいと言われちゃってるんですけど」
「ああ、今の階層じゃロクに成長できないわけだね」
「ベル君も更新を見てる以上、ステータスが上がったと嘘つくわけにもいきませんし……。別々に更新しちゃいけないんですか?更新中は上に行ってもらうとか?」
「あー、どうなんだろ?ボクも初めての
「よろしくお願いします」
ヘスティア様なら少し情報を明かしても構わないだろう。相談役なんだしもう少し情報を持ってもらったほうがスムーズに話が進みそうだ。
「話は変わりますが、魔法欄が空白なのに魔力が育つって珍しいんですか?」
「普通はあり得ないと聞いてるよ。なんで君の魔力が伸びてるのか不思議でならない……ん?」
ヘスティア様が首を傾げた。
「あれ、ボク、君の魔力の成長は隠してたはずなんだけど?」
「異世界の力に自分の状態を把握できるものがあるんですよ。なぜか
「なるほど……。もしかして君、異世界の魔法が使えるのかい?」
「ええ、お察しのとおり、魔力はそれが原因で伸びたんでしょうね」
「なるほどね」
ヘスティア様はコクコクと大きく頷いた。合わせて胸も揺れる。目線が集中しないように気をつけた。
「というわけで、今後は
「わかったよ。話したいことはもうないかい?」
「はい。相談にのっていただきありがとうございました」
「構わないさ。可愛い
さ、気を付けていっておいで」
「いってきます。ヘスティア様」
その後、バベル前でベル君と合流し、ダンジョンへと潜った。
オレは出していい力の範囲を覚えるように、ベル君は格闘とナイフの合わせ技を体に覚えこませるようにして2階層で魔石を集めた。
昨日は戦闘や解体に抵抗を覚えたものの、今日は特に問題なく行えている。我ながら慣れるのが随分と早いものだ。いや、グロいな、とは思うんだけどね。
ダンジョン探索を終え、換金所に移動する。少し混んでたので順番待ちしていると、換金の順番待ち中での前の集団が、褐色の肌に水着のような薄着の女性の冒険者たちだった。アマゾネスという種族らしい。
防具もなしによくこんな薄着で潜るなと思いつつも、胸に目線が集中したのは、男のサガである。仕方がない。つややかな黒髪に背中のラインも、とても素晴らしい、などと目の保養になる美人さんを見ているとふと気が付いた。
……なんで背中になにも書かれてないんだ?そう、彼女たちの背中にステイタスが書かれてないのである。
ベル君に小声で確認してみる。
「ベル君、ステイタスって見えなくすることができるの?」
「え……?ごめんなさい、よくわからないです」
「いや、前の女性の背中に何もないからちょっと気になってね」
「……たしかに、不思議ですね」
前に視線を移した後少し赤くなったベル君が答える。随分と純情のようだ。
「帰ったら、ヘスティア様に聞いてみようか」
「そうですね。そうしましょうか」
その後、換金を終え、ホームへの帰路へついた。
ヘスティア様のバイト先でもらったジャガ丸くんを食べ終え、ダンジョンでの話なんかをした。
「そういえば、ヘスティア様、アマゾネスの冒険者の背中を見て、何も書かれてなかったので思ったんですけど、背中の
「ふぇ……?あー、たしかにバイト先でみるアマゾネスの冒険者の子にも、ステイタスがないね。ボクはペイントかなにかと思ったけど……。また、今度神友に聞いておくとするよ。
ああ、神友で思いだしたけど、神友がいうには、ステイタス更新は一人づつ個室で行うのが普通なんだってさ。今日からステイタス更新の際は一人づつ行うよ。もう一人は上の教会で待っててくれ」
「そうなんですね。わかりました」
ベル君は素直に頷いてくれる。
「今日はベル君から更新するかい?」
「お願いします」
オレは教会に上がり穴の開いた天井を見上げる。
ギルドの借金返し終わったら、木材とか買って、ホームの補修とかしたいものだ。まだこっちにきて雨の日はないけど、雨が降ると地下のホームとか大変そうだしね。
ボケーっと過ごしていると、ベル君から声がかかったので、地下室に戻る。
更新をしてもらうと、相変わらずロクに成長していなかった。
サトゥー
Lv.1
力:I0 耐久:I0 器用:I2→I4 敏捷:I0 魔力:I15→I29
《魔法》【】【】【】
《スキル》
【
・異世界での理と
「伸びないね」
「伸びないということは、安全な戦いをしているということですから、別に構わないんですけど……。とりあえず、少しは伸びたということにして、ベル君がどこかがHになった2,3日後にオレもHになったことにするのが無難でしょうか?」
「それでいいと思うよ」
その後、しばらくベル君と一緒にダンジョンに潜った。途中、格闘のコツを聞かれた際、スキル頼りのため大した指示はできなかったのだが、「教育」なるスキルを手に入れた。
また、チームとしての戦闘を意識したためか、「撤退」「連携」「指揮」「編成」といったスキルが手に入った。
服のほつれを直したら「裁縫」スキルが手に入ったりした。ミシンのように高速で縫って、自慢してたら、玉結びを忘れて糸がほどけてしまったのはご愛敬だ。
なお、ヘスティア様の神友は、背中のステイタスはロックをかけることが可能で、ロックをかけると他人から見えなくなるということを教えてくれた。オレの背中のステイタスを他人に読まれても面倒なので、ロックをかけるようにヘスティア様にお願いしておいた。
ダンジョン攻略も新しい階層への足を延ばしても問題なく、少し油断する程度には、順調であった。
次回からダンまち1巻に入りそうです。