怪盗団の日常   作:藤川莉桜

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今日は4月1日。その意味が、わかるな?(フリーザ様風)


魔法少女サクラ☆フタバ

「今日こそ決着をつけるぞ!変態紳士O・イナリー!」

 

 フリル付きのピンクドレスを纏った少女、佐倉双葉は魔法のステッキを狐仮面の男に向かって振り下ろす。

 

「さあ来い魔法少女フタバよ!火炎属性以外の耐性を手に入れた今の俺には貴様などもはや敵ではないっ!!!!」

 

 変態には物理攻撃など通用しない。むしろ吸収してHPに変換してしまう。だが、それは彼にとって最大の誤算となった。

 

「くらえ!必殺!邪王炎殺黒龍剣ッ!!!!!」

 

 炎を纏った双葉の渾身の一撃が叩き込まれた。

 

「ば、馬鹿な!何故俺の弱点が火炎属性と気づいて……ぐわあああああああああああああああ!!!!!!!!!」

 

 変態という名の紳士であるO・イナリーはあえなく爆散した。

 

「やったなフタバ!とうとうO・イナリーの野郎を倒しちまったぜ!」

 

 二足歩行の猫型マスコットキャラクター、モルガナが双葉の元へ駆け寄ってくる。勝利の余韻に浸る双葉はサムズアップをモルガナに返した。

 

「まっ、私が本気出せばざっとこんなもんさ。けどまあ、あいつが底抜けの馬鹿で助かったよ。おかげで昔見たアニメの技が上手く効いたみてえだ」

 

「やはりワガハイが見込んだだけの事はあったな。正直言って引きこもりを育てるのには少々躊躇いもしたが、それが今や最強の魔法少女だ!もう何も恐くねえぜ!」

 

 モルガナは愉快そうに口元を吊り上げた。

 

「私もいきなり喋る猫みたいなよくわらない生物から『ワガハイと契約して魔法少女になってよ!』って言われた時は自分の目と耳を疑ったもんだぜ?おかげで無事にニート脱却出来たから感謝してもしきれないって感じだ」

 

 長きにわたって双葉を苦しめていたO・イナリーを下した双葉は、魔王の元に向かうため魔王城の廊下を駆け出す。その途中、三つの影が立ちはだかる。

 

「O・イナリー君がやられたみたいですわね……」

 

「しょせん奴は私達の中では最弱……」

 

「面汚しめ……」

 

 双葉の前に立ち塞がったの先程倒された宿敵O・イナリーを除く四天王達である。冷酷令嬢ブラックハル、世紀末覇者クイーンマコ、煩悩丸出しパツキンモンキースカルドラゴン。いずれもO・イナリーなど手も足も出ない実力者ばかりだ。しかし、

 

「八艘跳びッ!!!!」

 

 シリーズ最強の反則技を放つ双葉。残っていた四天王三人をラスボスすらも瞬殺してしまう無慈悲な連続ダメージが襲いかかる。

 

「「「ぐわーーーーーーー!!!!」」」

 

 一瞬で蹴散らされていく四天王。もはや魔族軍最強の彼らすらも、最強の魔法少女となった双葉の相手にはならなかったのだった。

 本丸への障害を全て取り除いた双葉は道中息を弾ませる。いくら戦闘能力では最強と言っても、体力までも無尽蔵とはいかない。連戦に次ぐ連戦は彼女の体力をかなり消耗させていた。

 

「はあはあ……なんとか一気に四天王を全滅させたけど、私もそろそろ限界だぞ。なあ、モルガナ。本当に後は魔王アルセーヌを倒せば全て終わるんだよな?」

 

「……ああ、そうだ。魔王との戦いが本当の最後。後にも先にもな」

 

「……?」

 

 神妙な面持ちで一瞬不自然な間を作ったモルガナに違和感を覚えつつも、双葉はすぐに頭の中に浮かんだ疑問を振り払った。魔王が待ち構える広間に続く扉に到着したからだ。

 

「ここに魔王が……」

 

「双葉、もう後戻りはできねえぜ。覚悟はいいな?」

 

「ああ、勿論!望むところだ!」

 

 壊すような勢いで扉を開ける。どんな強敵が待っていようと決して怯みはしいない。そんな覚悟を抱いていたつもりだった。

 

「そ、そんな!?」

 

 だが、双葉は目を見開き、唇を震わせた。玉座に座る、癖っ毛の少年を前にして驚愕していた。

 

「なんで……なんでお兄ちゃんが!?」

 

 魔王が待ち構えているはずの玉座にいたのは、なんと双葉の幼馴染の少年であった。義父の友人の息子である少年は幼少期は仲良く遊んだりはしたものの、転校で一時期疎遠になっていたのだ。

 そんな彼との再会は上京を期に双葉の家に居候が決まった際に果たされた。最初はギクシャクしていた二人だが、共に時間を過ごす中で止まっていた時間が少しづつ動き出していく。引きこもりだった双葉がようやく変わることができる。そう思っていた矢先だった。

 

「お兄ちゃんは私を庇ってO・イナリーに殺されたはず……」

 

 それも双葉が戦い続ける理由の一つだ。モルガナ曰く、魔王を倒したら特典で一つだけ願いを叶えることが可能だという。だから、その願いを少年の蘇生に使おうと誓った。どんな困難でも乗り越えてみせる。そのはずだったのに、何故……

 

「くっくっく……」

 

 困惑を拭いきれない双葉の隣で、モルガナが異常なまでのテンションで高笑いを始めた。

 

「はっはっはー!おめでたい奴だぜ!まんまと誘き寄せられたと知らずによーーーーー!!!!」

 

「モルガナ!?」

 

 突然モルガナは少年と融合し、少年の背後で邪悪なオーラを放つ霊体へと変貌した。

 

「全てワガハイの計画通り!最強の魔法少女となったお前のエネルギーを使って完全復活を遂げてやるのさ!この魔王モルガナ様がな!」

 

 双葉は途端に身体から力が抜けていくのを感じていた。エネルギーの流れを確認すると、モルガナ、いや本性を現した魔王へと流れ込んで行っているのがわかる。

 

「ほう……流石だなフタバ。ワガハイが復活するだけのエネルギーを吸収しても、まだ戦うだけの力を残しているとはな。そこだけは計算違いだったぜ」

 

 まあ、その程度ならこの魔王様が直々にトドメを刺せばいいだけの話だがな。そう言ってモルガナは辺り一帯に猛風を発生させた。

 

「そんな!今まで私を騙してたのか!?だって平和のために魔王と戦えって!」

 

「人聞きの悪い奴だな。ワガハイは魔王との戦いが最後としか言ってねえぜ?それに平和な世界がやってくるってのも嘘じゃねえ。支配者となったワガハイに誰も逆らえない、平和な世界がなあ!」

 

 少年が無表情のまま右手のひらを双葉に向ける。次の瞬間、双葉のすぐ隣の壁に大きな穴が空いた。

 

「お、お兄ちゃん!」

 

「無駄だ!そいつはもはやワガハイの依り代!この魔王モルガナ様の操り人形に過ぎないんだよ!お前の願い通りに生き返らせてやったぜ!」

 

「くっ……」

 

 ようやく再会できた。だが、その再会はあまりにも悲しいものであった。

 魔王を倒して世界を救った後に、モルガナに叶えてもらう願いで必ず生き返らせる。そう誓って双葉は今日まで戦いの日々に身を投じていたのだ。そんな少女の思いをまるで塵のように踏みにじった。

 

「許さない……!」

 

 少女の中で込み上げる怒りは、凄まじい力を与える。

 

「お前だけは絶対に許さないぞ!!!モルガナアアアアアアア!!!!!!!!」

 

 激しい程の敵意を魔王にぶつける双葉。双葉の怒りに呼応して、広間内の空気が激しく揺れる。本性を現した元相棒は愉快そうに嘲笑う。

 

「くくく……さあ来いフタバ!最終決戦だッ!」

 

 魔法のスティックを強く握りしめ、双葉は一気に駆け出した。

 

「世界もッ!お兄ちゃんも必ず取り戻すッ!うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




エンディングは杏が紅白出演者レベルの歌唱力で歌います。

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