うちのカルデアに星5の鯖がようやく来たんだけど、全クラス揃えるとか夢物語だよね?   作:四季燦々

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あけましておめでとうございます!

前回のあとがきでも言っていましたが、今回は最終決戦のお話です。凄まじいネタバレの嵐です。その点にご理解の上で読んでいただけると幸いです。もうなんか色々とぶっちゃけちゃってます。

今回は一切ガチャの要素はないです。完全に僕が書きたかった内容になっておりますので、全てシリアスです。その点もどうかご理解ください。

しつこいようですが、最終決戦のネタバレを含みます。その点をふまえてどうぞ!


冠位時間神殿ソロモン 前編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その世界のことを例えるとすれば何が一番最適だろう。

――宇宙か、地獄か、あるいは……世界の残骸か。

 

あらゆる例えが正しいようで、あらゆる例えが間違っている。そもそも空間と定義して良いのか、ここは本当に世界という括りに収めて良いのか、それすら曖昧であった。

 

ソロモン第二宝具、固有結界『時間神殿ソロモン』

 

もっとも、今この場に立つ人類最後のマスターには気にすることではない。否、気にする思考などこの瞬間持ち合わせていないのだ。ここがどういう場所なのか、そんな小さなことを考える余裕など、目の前に迫る消却の波に打ち消されていた。

 

魔術王ソロモンの名を語り、ここまで人理を翻弄し続けた者の正体。ソロモン七十二柱の魔神の集合体にして人類史全てを利用し原初に至ろうとした魔術。『人理焼却式ゲーティア』。魔神王と自ら名乗り、『憐憫』の名を持つ『原罪のⅠ(ビーストⅠ)』となり、術者であるソロモンすら超えて全能者になった彼――いや『彼ら』の放つ宝具は、今までのどの英霊が放つ宝具よりも圧倒的だった。

 

有を無に。焼かれるのか刻まれるのか溶かされるのか。あの消却の一撃に触れたらどうなるのか考えたくもなかった。幾多の人理を糧とし焼きつくす宝具『誕生の時きたれり、其は全てを修めるもの(アルス・アルマデル・サロモニス)』。何億もの破壊の閃光。それら一条一条が聖剣の光に匹敵するという。

 

尋常ではない熱量を持ち、惑星すら容易く貫くその宝具を防ぐ術などないはずなのに、しかしそれはマスターである少年の目の前で確かに防がれていた。少年と同じ歳頃の少女の構える盾によって。

 

「あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

自身奮い立たせている鼓舞とも、必死に光帯の一撃に耐える悲鳴とも取れる叫び。盾の少女、人の身でありながらサーヴァントと融合しデミ・サーヴァントとなったマシュ・キリエライトの宝具によってかろうじて、今にも切れそうなか細い糸によって少年とマシュの命は繋がれていた

 

マシュの宝具は全英霊の中でも一際特別なものと言えよう。長い旅路を経て彼女が体現させた究極の護り。『いまは遥か理想の城(ロード・キャメロット)』。その強度は使用者の精神力に比例して強固なものとなっていく。何物にも染められていない、一切の穢れもなく迷いもない純粋な白亜の盾。それはマシュの心が折れなければ決して崩れはしない無敵の城塞だった。

 

その彼女の宝具だからこそ確かにゲーティアの宝具を受け止めていた。しかし、少年は叫び声を上げ、そのか細い身体を揺らしながら絶対なる力を受け止めるマシュはとても見ていられなかった。

 

それでも、駄目だとも、やめろとも少年は言うことができない。自身の命が惜しいからなどではない。自分の目の前で決死の覚悟で盾を構えるマシュがどれだけの思いでそこに立っているか知っているからだ。長いようで短かった時空を巡る旅で少年はマシュのことを誰よりも理解していた。誰よりも、大切に想っていた。

 

――やめろ……

 

――負けるな!

 

――もうやめてくれ……

 

――頑張れ!

 

――これ以上は……!

 

相反するグチャグチャの思考が少年の脳内を駆け巡る。噛み締めた歯がギリッと不快な音を立てる。正面から襲いかかってくる圧倒的な魔力の衝撃に吹き飛ばされそうになるのを必死に堪える。

 

マシュの命はすでに限界だ。たとえどんな結末が訪れようともこの果ては揺るがない。この世界にレイシフトする時、少年はマシュの参戦を思い留まらせようとした。一秒でも長く生きていてほしかったから。

 

だが、マシュはその提案を断った。残り少ない活動時間を狭めることになっても共に戦いたい。自分は命の歓びを知っている、だからこそ一緒に連れて行ってほしい。人理焼却を防ぎ、人間の価値を示し、そして自分たちの未来を取り戻すために、と。

 

ゲーティアに人類史を否定し、共に行こうではないかと問われた時もマシュは迷うことなく頭を振った。自分は死の世界、終わりのない永遠なんて欲しくはない。見ている世界は今ここにあるのだ。例えこの命がほんの僅かだとしても、一秒でも長く未来を見ていたいから。

 

力強く、マシュがこの旅で積み上げて得た心からの気持ちだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……良かった。これなら何とかなりそうです、マスター」

 

無限に続くのではないかと錯覚する破滅の時間の中で、少年は目の前の少女の声を聞く。彼女の顔を確認することはできなかったが、こんな状況の中で彼女の声色はいつものように穏やかだった。

 

「今まで、ありがとうございました。先輩がくれたものを、せめて少しでも返したくて、弱気を押し殺して、旅を続けてきましたが……ここまでこられて、わたしは、私の人生を意義あるものだったと実感しました」

 

――違う。自分はまだマシュに何もあげられていない。彼女がいつか見てみたいと言っていたカルデアの青空も、高層ビルが並び立ちつつもどこか温かい街並みも、たくさんの命が輝く未来を見せることも、何一つ叶えられていない。

 

「……でも、ちょっと悔しいです。わたしは、守られてばかりだったから。最期に一度ぐらいは、先輩のお役に、立ちたかった」

 

違う違う違うッ!守られていたのは自分の方だ。必死になって、戦うことなんて嫌いなはずなのにそれでも恐怖を押し殺して戦って、自分を守ってくれていたのはマシュだ!

 

少年の水晶のような青い瞳から涙が零れ落ちる。そのせいで振り返るマシュの顔すら歪んでよく見えなかった。それでも、少年はマシュがニッコリと笑っているように見えた。その笑顔を、誰よりも守りたいその笑顔を見た瞬間――少年は全てを分かってしまった。

この旅を通してマシュが心の底から望んだものを、それを最後の最後で見つけられたことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――ああ、そうかマシュ。君は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

破滅の奔流が消え去る。周囲は宝具の余波を受け、美しかった玉座の情景を跡形もなく葬り去っていた。

そして――

 

「見るがいい、肉体は光帯の熱量に耐えきれず蒸発した」

 

ゲーティアが静かに言葉を並べる。彼の言葉の通り、少年の目の前には誰もいなかった。ただ、墓標のように突き立てられた大きな盾が、主無き今でも少年を護るかのようにそこにはあった。その雪花の盾には傷1つついてはいない。星を滅ぼす一撃を受けたというのに。その純粋なる盾は彼女の精神(こころ)の在り方を示すように、彼女の(こころ)を護り抜いた。

 

ゲーティアは自身が予想していた結末を見届け、説く様に少年に言葉を投げかける。

 

「……だから言ったんだ。彼女は勇敢な戦士でもなく、物語の主題でもない。ただの、ごく普通の女の子だったんだよ」

 

その瞬間、少年の中で何かが消えてしまった気がした。

 

「――――ぁ、ぅああ……うあぁあああぁああぁぁぁぁぁ!!」

 

慟哭だった。敵の前だというのにも関わらず、少年は叫び、嘆き、涙を零す。頭を抱え、荒れ果てた地面に蹲るように崩れ落ちる。

守りたい人だった。救いたい人だった。心の底から想っていた人だった。でも、もうその彼女はいない。最期の最後まで自身の命を輝かせるように戦い、そして儚いその命を散らせていった。

 

「分かっていた……!分かっていたさっ!マシュが何を考えているのかもっ!彼女がどんな選択をするのかもっ!何もかも分かっていたっ!だけど……ッ!」

 

止められるわけがないじゃないか……!止めてしまえば彼女の生を、この旅の全てを否定することになる。どんなに悲しくても、どんなに辛く胸が痛くなっても、少年は否定だけはしたくなかった。彼女の存在を否定するようなこと、そんなことは決して。

 

「無駄なことだ。まったく無駄なことだ」

 

狂ったように叫び続ける少年へ冷ややかな視線を落とし、ゲーティアは吐き捨てる。我々は不滅、貴様の一時の生存も、英霊どもの抗戦も、すべては無意味だと。そのことを言い終わるや否や、ゲーティアは新たに宝具を展開する。何という出鱈目な力だろうか。星を貫く一撃を容易く再発動させるなど。

 

ゲーティアの言葉に続く様に、遠くの方から地響きが聞こえる。マスターである少年との縁を辿り、この世界に駆け付けた英霊達。彼らの力は圧倒的ではあったが、その力は魔力と言う有限である。無限に復活し続ける魔神柱を抑え続けることは不可能だろう。だからこそ、彼らは少年に託したのだ。人間の未来を、勝ち取って来いと。

 

「ああ、最後に殴りかかるぐらいは許そう。貴様の気持ちは理解できる」

 

「理解、だと……?ふざけんな……!ふざけんなッ!てめえにだけは理解される筋合いはねえ!オレにとって、彼女は、マシュは……!大切な人だったんだッ!誰よりも、大切な……!」

 

「理解できるとも。不服ではあったが、これでも人間社会で活動した身もこの中にはある。貴様らの怒りがどういった風に向けられるかなど、予測は容易いものだ」

 

「――ッ!そうやって、何でもかんでも計算なんかで人の心を測ってんじゃねえ!心ってのは、そんな単純なもんじゃねえんだよ!」

 

「ほざくな、人類最後のマスターよ。我らがマシュ・キリエライトの弔いとして、一撃だけは受けてやろうと言っているのだ。その貧弱な人の拳で、我が体に触れて死ね」

 

「――上等じゃねえか」

 

少年はユラユラと立ち上がり、グッと令呪が刻まれた右拳を握る。相手は魔神柱を束ね、人類を抹殺しようとしている王だ。たかが魔術師。いや、たかが人間の拳など通用するはずがない。怒り狂いそうな頭で、どこか冷静に少年は理解していた。それでも、ここで引くわけにはいかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――いやいやいや。そこはちょっと落ち着こうよ、――君」

 

そんな時だった。この戦場に似つかわしくない、のんびりとしてどこか温かみのある声が聞こえてきたのは。

どうしてと少年は混乱する。どうしてあの人がこの場所に。貴方はモニターの向こうで指揮を取っているはずじゃ……そもそも戦場を闊歩するなどできるはずが……!

 

「玉砕はキミらしくない。ここはもう少し、力を溜めておいてくれ」

 

「D'rロマン。なんで貴方が……!」

 

いつも着ている白衣を揺らし、軽やかに歩みを進める。結んだ長髪も、いつも管制室で見かけた穏やかな笑みもそのままで、ロマニ・アーキマンは戦場に訪れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如として現れたロマニ――いや、本物の『()()()()()()()』。彼はその正体を明かにしても、幾度その細身の身体をゲーティアの攻撃により激しく揺らしても、ロマニの時のような声色でゲーティアへと語りかける。

 

「ゲーティア。お前に最後の魔術を教えよう。お前が知る事のできなかった、ソロモン王の『人間の英雄らしい』伝承から発動する本当の第一宝具。お前の持つ九つの指輪、そして私の持つ最後の指輪。今ここに逸話の再現を」

 

「――ッ!?馬鹿なッ!臆病者であるお前にそんなことができるはずがない!待て、止めろ……止めろ止めろ止めろッ!この指輪は、全能の座は、お前だけのものでは……!」

 

ソロモンはしかし、ゲーティアの焦りには耳を貸さず、ゆっくりと詠唱を始める。次々に紡がれる言霊に応じて彼の周囲に光の奔流が現れ始めた。それらは主の決意に従うように、徐々にその輝きを増していく。

 

――第三宝具

誕生の時きたれり、其は全てを修めるもの(アルス・アルマデル・サロモニス)

 

――第二宝具

戴冠の時きたれり、其は全てを始めるもの(アルス・パウリナ)

 

嫌な予感がした。先程マシュを失った時と同等の感覚。しかし、止めようにも湧き上がる凄まじい魔力の風に、その場に縫い合わされたかのように動けない。

 

「そして――神よ、貴方からの天恵をお返しします。……全能は人には遠すぎる。私の仕事は人の範囲で十分だ」

 

その言葉を紡いだ時、ソロモンがどんな思いを抱いていたのか、少年には分からなかった。彼のことを紙面で調べてはいても、その心情までは読むことができない。諦めていたのか、疲れていたのか……あるいはホッと、安堵の気持ちだったのか。

 

「第一宝具、再演――

訣別の時きたれり、其は、世界を手放すもの(アルス・ノヴァ)』」

 

その瞬間、一際魔力の光が輝いたかと思うと、今まで一番大きな衝撃が世界を揺らす。今までのように断続的な揺れではなく継続の揺れだ。まるで世界が端の方から崩れ落ちていくような感覚だった。

 

グオオォォ!とゲーティアが苦悶の声を上げる。先程まで纏っていた圧倒的な魔力が明らかに弱まっていた。そして、それに呼応するかのようにソロモンの姿が次第に薄れ始める。いや、その姿はソロモンではない。いつの間にかD’rロマンの姿へと戻っていた。

 

「ロマンッ!貴方は一体何をッ!?」

 

「うん。ボクの持つ全てをいま、放り投げた」

 

「全てを、放り投げた……?」

 

「そう。かつてソロモン王は天から授かった指輪を後に天に返した。ボクがしたのはその再現だ」

 

「な、なら、その身体は……!」

 

「放り投げたのは文字通りボクの全てだ。身体も、命も。要は自爆攻撃だよ」

 

淡々と事態を説明するロマニ。意外にもそれを遮ったのはゲーティアだった。

 

「そんな単純なものかッ!貴様は英霊である事すら放棄したッ!それはすなわち己が全ての放棄だッ!功績、創造物、存在、その全てが無価値になるッ!我ら魔神柱も個別の魔神となり解けていくのだッ!」

 

何もかも放棄した結果、ソロモンの全ては消え去った。ソロモンの宝具によって成り立っていたこの世界も。だからこそ、魔術的な効力を失ったこの世界は崩壊へのカウントダウンを刻み始めたのだ。

 

そして、存在を捨て去ったことでソロモン王は英霊の座からも消え去る。死など生温い、完全なる無への消滅だった。

 

「完全なる無……!?」

 

「これでいいんだ。この選択をキミとマシュがボクに教えてくれた」

 

「ふざ……けんなッ!勝手に出しゃばってきて!勝手なことばかり言って!勝手に消えようとしてんじゃねえよッ!なんだよそれ……!何なんだよッ!」

 

「これでゲーティアの不死身性も無くなった。今ならきっとゲーティアを倒せるはずだよ」

 

「そういうことが言いたいんじゃねえ!消えんな……消えないでくれッ!オレは、これ以上……誰かを失いたくない……!大切な人を、大切な友達を失いたくねえんだよッ!」

 

少年は消えかかっているロマニの肩を掴もうと手を伸ばす。だが、その手が友の肩を掴むことはなかった。まるで空気を掴むかのように、スルリとすり抜けてしまったのだ。

 

予想だにしていなかったことに少年は唖然となる。対照にロマニは理解していたのか、少しも動じることなく小さく笑みを零した。

 

「――ははっ。良かった、キミに友達って思われていて。ボクは人間になって、この焼却の未来を見た時から必要最低限の関わりしか持たなかった。だから、友と呼べる人なんていなかったんだ。ダヴィンチちゃんは友達と言うより理解者だったからね」

 

「ロマン……!」

 

「ありがとう、――君。本当に嬉しいよ。でも、これこそがボクの旅の終着点なんだ。分かってくれとは言わない。きっと難しいだろうからね。でも、知っていてほしいんだ。ボクは犠牲になるわけじゃない。キミの、キミとマシュが紡いできた旅路の道標になれるんだ。キミたちの成長を間近で見ていたボクからしたら、こんなに嬉しいことはないんだ」

 

ボロボロと再び涙を零す少年に、ロマニは優しく微笑みかける。この人間になってからの10年間、決して他者に心を開かなった人間の、心からの笑みだった。

 

ロマニはそのまま、ゲーティアへと向き直る。ゲーティアは今にも消えてしまいそうな男を痛烈に批判した。人間の一生など『憎悪と絶望の物語』だと。あらゆるものは永遠ではなく、その先にあるのは苦痛と死への恐怖のみ。

 

捲し立てるように言葉の圧をぶつけるゲーティアに、ロマニは静かに首を振った。確かにあらゆるものは永遠ではなく、最後には苦しみが待っている。だが、それは断じて絶望ではない。限られた生の中で、死と断絶に立ち向かう。終わりがあると知りながら、それでも別れと出会いを繰り返すもの。

 

「――輝かしい、星の瞬きのような刹那の旅路。これを、『愛と希望の物語』と云う」

 

「『愛と希望の物語』……」

 

ロマニの言葉を噛みしめるように少年は反芻する。人間は憎悪ばかりを抱いているのではない。誰かを愛し、誰かを尊い、誰かを想う。時に愛は憎悪すらも優しく包み込む。すなわちそれこそ希望。際限ある時間の中で、人間が築き上げてきた確かな希望だった。

 

「――笑わせる。貴様の戯れ言など、何一つ我々には届かない。貴様を殺し、カルデアのマスターを殺し、英霊共も葬ってくれる。命に限りなど必要ない!死を前提にした物語など私には無用だ!失せるがいい、人間達よッ!」

 

再びゲーティアを中心に魔力の台風が巻き起こる。確かに先程よりも魔力の質も量も弱体化している。しかし、それでも原罪の持つ魔力は圧巻の一言だった。

 

「――いよいよだな。ボク……いや、ボク達が最後に見るのはキミの勝利だ。カルデアの司令官として指示を出すよ。私の事は気にせず、完膚なきまで完全な勝利を」

 

その存在を薄れさせつつも、ロマニは力強い視線をマスターへと注ぐ。それは、共に戦ってきた戦友から送られる視線。キミなら大丈夫という信頼の証だった

 

「さあ――行ってきなさい、――君。これがキミとマシュが辿り着いた、ただ一つの旅の終わりだ」

 

「……………………分かった」

 

崩れゆく世界で、静かにその言葉が響いていく。マスターである少年にもその響きは確かに届いていた。赤くなった目元を礼装の袖で拭い、腕をどかした時にはその真っ直ぐな青い瞳を輝かせていた。

 

「…………ロマニ・アーキマン」

 

「ん?なんだい?」

 

「――貴方に、心から最大の敬意を」

 

少年の言葉にロマニは満足そうに微笑み――ついに、その姿を消失させていった。少年やマシュが歩き出すよりも先にこの旅路を歩いていた存在。その笑顔は少年やマシュを気づかないうちに守り続けていた。

 

残されたのは理不尽な程の魔力を振るう一匹の獣。そして、幾多の世界を歩き渡り、大きく成長した人類最後のマスター。

 

少年はカルデアから供給されている魔力を練り上げる。その周囲にいくつもの召喚陣が現れ、そこから共に戦い続けてきたサーヴァント達が現れた。彼ら彼女らの温かな魔力に背中を押され、少年はキッとゲーティアを見据える。そこにはもう悲しみも迷いもなかった。

 

少年はマシュが残していった盾を持ち上げる。もう彼女はいないのに、それだけで温かな気持ちが流れ込んでくる気がした。それだけで――負ける気がしなかった。

 

「――いくぞマシュ。これが最後の戦いだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

――はい、先輩!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつも隣で聞いていた、あの声が聞こえた気がした。




というわけで最終決戦、前編でした。はい、お察しの通り、次回は後編になります。色々書きたくて仕方がなかった結果、削り切れませんでした。

そういえば、大晦日の特番見ました。いやー、アニメとして見るとこれまた最高ですね。動いてる立香君、マシュ、所長、そしてロマン。所長が歿のシーンは……うん、彼女にも救いがあっていいんじゃないですかね。あと、逃げてる時の所長の顔最高(愉悦)

ちなみに大晦日はFate尽くしの1日でした。朝起きてFGOをし、APを使い切ったら何気にプレイしていなかったEXTRAを購入し、夜までプレイ。その後FGOの特番を見て、FGOしながら年越しました。こんなにゲームやアニメに没頭した大晦日は人生初でしたね。

感想欄でも散々言いましたが、最終決戦は本当に熱かったです。そして、プレイしながらボロ泣き。もうこのゲーム本当に好き。第1戦目では僕の1番最初の金鯖、最初の10連で来てくれたデオン君ちゃんがトドメを差し、第3戦目では初期からずっと戦ってくれた槍ニキがトドメを差してくれました。なんかこう、色々と感動でした。ちなみに第2戦目はバサクレスさん。やはり大英雄の力はすごかった。

次回は上記の通り、この後編になります。お正月ガチャの結果はその後で!

P.S
活動報告のところで現在のうちのカルデアの状況を上げているので、気になる方はどうぞ!
あと、コメント返信遅れてすみません!でも、必ず返しますので更新共々気長にお待ちください。

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