うちのカルデアに星5の鯖がようやく来たんだけど、全クラス揃えるとか夢物語だよね? 作:四季燦々
遅れた理由はあとがきにてまたお話します。それではとりあえず一言。
第七章、最高に熱かった……!
『クリスマス』
それはイエス・キリストの降誕(誕生)を祝う祭である。日付的には12月25日に祝われるが、正教会のうちユリウス暦を使用するものは、グレゴリオ暦の1月7日に該当する日にクリスマスを祝うらしい。しかし、そのような信仰イベントが近年に近づくにすれ紆余曲折しまくった挙句、子供がサンタクロースなる人物にクリスマスプレゼントを要求し、リア充どもが街中を闊歩するようなイベントへと変化していった。
今思えば、あれは普通の『クリスマス』だったのだ。魔術師の家系などという普通ではない家に生まれたオレからしても、当たり前のように参加できた普通のイベントだったのだ。
「というわけでクリスマスピックアップです」
「何がというわけなのか分かりませんが先輩が気合十分なのは把握しました」
「分かってくれたのならそれでOK。早速召喚してみるぞぉ!!」
「あっ、もう結果が見えた気がします」
何を言うかっ!今年はいろんな特異点に出向いて、滅茶苦茶危険な修羅場を潜り抜けて特異点を修正して来たんだぞ!つまりはオレ超良い子!サンタさんだって良いもんくれるに違いない!つまりは星5のサーヴァントが出てきてくれるに違いないじゃないかっ!(断言)
「とんでもない暴論ですが、そもそも先輩はサンタクロースを信じているんですか?」
「魔術師とか英霊がいるんだ。サンタクロースだっているさ」
「現にサンタオルタさんがいらっしゃるのですごく否定し辛いですね」
「あれはオルタさんが自分のイメージの改善を図った結果だからノーカン」
というか、隙あればエクスカリバーぶっぱなすサンタがいてたまるかっ!この前『あれ?オルタさん体重重くないですか?』って素直に疑問に思ったから聞いただけなのに、訓練所に連れていかれた挙句『これはプレゼントの重さだトナカイ!聖夜に沈め――
「あれはどう考えても先輩が悪いです。女性には体重のことは禁句ですよ」
「本当にただ疑問に思っただけだったんだけどなー。あっ、ちなみにマシュは「先輩?」――あっ、はい黙りますごめんなさい調子に乗りました」
ふえぇぇ、うちに後輩が怖いよぉぉ。まあ霊基確認すれば分かることなんだが……何だろう。それをやったら命が無い気がする。女性の体重は禁句(戒め)
「と、とにかく早速召喚してみるぞー!石ドーン!」
ただならぬ
さーて、今回は聞くところによるとジャック・ザ・リッパーことジャックちゃんが出てくるっぽいな。ロンドンで会った時は速攻で命狙われたけど、サンタオルタさんのプレゼント配りで多少仲は良くなったからもう大丈夫なはず。うちにはナーサリーちゃんもいるし、できれば2人を会わせてあげたい。そしてその微笑ましい光景を見て和みたい。ロ、ロリコンちゃうわっ!?
どこの誰にしているのかも分からない否定を脳内でしていると、やがて光が収束していき3体の人影が現れ、同時にいつものごとくガシャガシャと騒々しい物音を立てながら礼装が落ちてきた。
ふーむ、音的に実体化している奴が多そうだな。ということはレアリティは低め。どういう理屈かは分からないが、レアリティの高い礼装は『人』が映し出されていることが多く、逆に実体化するのはレアリティが低い『物』であることが多い。
個人的な考えとしては、概念礼装はその名の通り『概念』が付与された礼装だ。『人』や『物』の歴史や物語が積み重なって起こる事象や魔法、魂といった神秘を宿している。『物』では概念としては用途と用いた結果が主に反映されるが、『人』の場合はやや異なる。『人』は物ほど単純ではなく可能性の塊だ。ありとあらゆる可能性を秘めているからこそ、その可能性を1つの歴史や物語として凝縮し抽出しているため概念としてはより幅広く、より濃く反映されている。だからこそ、『物』の概念礼装より『人』の概念礼装の効果が高いのではないかと思う。ましてや対象となるのは『人』の中でもとびっきりの
……つらつらと長い解説だが、あくまでこれはオレの自論。合ってるかどうかなんてロマンやダヴィンチちゃんに確認を取ってないから分からんし、役に立つのであれば何でも構わん。使えるものは使う主義なんだ。そこに善だ悪だなんて関係ないね。
そうこうどうでもいいことを考えているうちに召喚された3人の姿が見えてきた。さてさて、今回はどいつかね?
「――召喚に応じ参上いたしました。どうか、このパラケルススと友達になりましょう」
「――牛若丸、負かり越しました。武士として誠心誠意、尽くさせていただきます」
「――サーヴァント、アサシン。名を荊軻と言う。失敗した身で召喚されるというのも複雑な気分だが、今度はうまく立案しよう」
白い研究衣とはまた違った趣向の外套をはためかせ、長い黒髪を揺らすマッドサイエンティスト(薬学)。それどう見ても鎧じゃないよね?むしろ痴女だよねを素で行く首置いてけ侍。白い着物を動きやすいように着崩し、チラリと短刀を光らせる刺客さん。
「――はい、解散。ありがとうございました」
「ちょっ、先輩っ!?せっかくのクリスマスピックアップだと張り切ってたじゃないですか!いきなり冷めないでください!」
「マシュ、クリスマスピックアップなんてなかったんだ。いいね?」
「アッハイ。……ってそうじゃなくて!」
いいんだよ!牛若ちゃんや荊軻さんはまだクリスマスイベにいたからまだしも、パラケル先生とか微塵も関係ねえじゃん!クリスマスとか嘘じゃん!サンタさんは幸運Eのマスターなんかのところには来ないの!はい、証明終了!(QED感)
大体さ、ピックアップ召喚って関係ない鯖ばっかり出過ぎなんだよ。ちょっとくらい星5さんが引っかかってくれても罰は当たらんでしょ。
「主殿主殿!先日ぶりですね!早速ご命令を申し付けください!あっ、首ですか?あのサンタトナカイの首を取ってくればいいんですね!」
「うん、牛若ちゃん。とりあえず落ち着こうね。トナカイの首とかいらないからね。あとその言い方だとトナカイやってたオレの首を差し出すみたいだから止めてね」
「ところで我が主よ。どこかに良い酒はないか?できることなら美味い肴も用意してもらえるとありがたい。一緒に月見酒と洒落込まないか?」
「この期に及んでまだ飲むと申すかこの暗殺者は。あんだけの醜態晒しておいて微塵も顧みないとか逆にすげえわ。あとオレは未成年です」
「マスター。そろそろホムンクルスの材料が足りなくなってきているので補給に連れて行ってくれませんか?」
「うるさいよ、大体の黒幕。あんたいっつもそればっかりだなおい。ホムンクルスの前に聖晶石ぐらい作ってくださいよ。賢者の石作れるなら余裕でしょ」
「ふふっ。お断りします」
「なんでや」
つか、作れることは否定しねえのかよ(驚愕)
ある者は尻尾が生えていればブンブン振ってそうなぐらいキラキラした笑顔で物騒なことを言い、ある者はおのれの欲に忠実な要求をし、ある者は研究材料を採集しに行こうと宣う。ねえ、こいつら歴戦の英霊なんだよね?人間なんかより高次元の存在なんだよね?ちょっと自由すぎない?
「どうしてオレのカルデアに来るやつらはこうアクが強いんだ……」
「似た者通しは引き寄せられるからではないでしょうか、先輩」
「今、遠回しにオレがおかしいって言ったよねマシュ」
そんなスタンド使いみたいな宿命いらんわ。これから何世代もかけて戦わなければならないとか嫌すぎるんだけど。
「とりあえず、お前ら全員宝具レベルMAXだし、ダヴィンチちゃんのところに行ってこい」
「「「えー」」」
「えー、じゃねえ!こちとら星4以上でもないサーヴァントを育成している暇なんてないの!すでにレベルカンストしている奴がいるのに新たに2体目なんて育てられる程余裕はないの!アンダースタンッ!?」
「「「……はーい」」」
ぞろぞろと3人は召喚部屋から出ていく。少々悪い気もするが本当に余裕が無いのだ。第七特異点もすでに特定されあとはそこにレイシフトするだけというこの状況。少しでも素材の配分方法を考えておかないといざという時に足りませんでしたでは洒落にならないのだ。
こうして、オレのクリスマスピックアップは何の成果も上げられませんでしたぁ!と宣告するように終わりを告げた。まあ、クリスマスとは言っても所詮こんなもんだ。とりあえず第七章攻略に備えよう。そう思ってオレは自室へと戻るのだった。
――――その日の夜、まさかあんな事件が起ころうとは誰が予想できただろうか。
カルデア内が漆黒の帳に包まれ、歴戦の英雄たちが静かに寝静まる夜。オレは『小さな小さなサンタ』と出会うのだった。
「いやー。何はともあれ一件落着だな」
「おかえりなさい先輩。今回もお疲れ様でした。ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィさんもすでに帰還しています」
「ああ。わざわざ出迎えてくれてありがとなマシュ。まあ、自分で仕向けたことだしこの疲れはある意味自業自得だよ」
「ふふっ。それでもお疲れ様です」
ふわりと花のように笑うマシュに、オレも疲れた体など忘れたように笑う。ああ、ホントこの後輩の殺気無しの笑顔は最高やでぇ。疲れなんかあっという間に吹っ飛んじまった。なんならもう1回レイシフトしてきてもいいくらい。ごめん、嘘。流石にそれは嫌だわ。
さて、ひとまず現状を説明しよう。あの統一性のない3人を召喚したその夜。なんとうちにジャンヌ・オルタがいたのだ。何を言っているのか分からんと思うが、正直オレも何故ジャンヌ・オルタがうちのカルデアにいたのか分からん。知っての通りオレは幸運Eのマスターである。もちろん星5のジャンヌ・オルタなど召喚しているわけがない。それなのに居たのだ。何を(以下略)
まあ、そっから
で、サンタオルタやこれまたうちにいるはずもないジャンヌ・ダルクにこのコナ――ゲフンゲフン。『ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ』を立派なサンタにするという使命を頼まれ、色々お膳立てをして今ようやく帰還したというところだ。途中にいないはずのエミヤやジャックちゃんや
「それで
急に雰囲気の変わったマシュに寒気を感じたオレは全力で後輩に背を向け猛然とダッシュした。何をお話されるのかなど全部聞かずとも容易に察せる。十中八九マシュに今回の作戦を黙って、そして騙していたことだろう。だからこそ、逃げるのだ。だってお説教は勘弁だしね!
「マスターっ!廊下は走ってはだめですよっ!もうっ!後できちんとお話を聞かせてもらいますからねーー!!」
基本真面目なマシュはカルデアの廊下を走らない。だからこそ、カルデアでの追いかけっこであればオレに分がある。流石に非常事態であれば違うだろうが、今回のケースは別に急ぐことでもない。……あとが非常に怖いとかは考えないようにしよう。
バダバタとマシュから逃亡を図ったオレは自分のマイルームへとたどり着く。が、そのまま中へと入ろうとするその行動はマイルームの扉の前でソワソワとしている小さな影に止められた。
「――リリィ?」
「あっ!
扉の前に居たのは今回の大騒動の原因……って、この言い方はちょっと可哀想か。中心人物のジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィだった。オレは長いからリリィと呼んでいる。……他にもリリィの可能性を持つサーヴァントはいるが、この子を除いて1人としてうちには居ないので大丈夫だろう。
その彼女はオレを見つけると子供らしい非常に愛らしい笑顔を見せ、トテトテと駆け寄りポスリとオレの胸の中へと飛び込んできた。突然の行為に少々面食らってしまったが、ひとまず疑問に思ったことを口にする。
「どうしたんだ?もしかして自分の部屋の場所が分からなかったのか?」
「あっ、いえ!自室に関してはナヨナヨしているお医者さんに教えてもらいましたので大丈夫です。すでに場所の確認も終えているので問題無しです」
ロマンェ……。ほぼ初対面の女の子にナヨナヨしいって言われるとか流石に同情するぞ。うちの最高責任者代理の扱いに心中で涙しながら、オレはなるべく優しくリリィを引きはがして彼女に目線を合わせるように片膝をついた。
「じゃあ、どうしたんだ?」
「えっと、その……改めてお礼を言いたいなと思いまして……」
オレの身体から離れ、マゴマゴと口籠もったリリィだったがやがて頰を朱に染めながらえへへと笑った。
「本当にありがとうございました、
リリィは背筋良くその小さな身体を曲げて深々と頭を下げてきた。ジャンヌは幼少の頃奔放な少女だったと聞くが、非常に礼儀正しい子でもあったのだろう。動作の1つ1つに育ちの良さを感じる。
「オレは君にほんのちょっとだけヒントを与えてあげただけだよ。自分の夢も、望みも、存在する意義も、その全てを見つけたのリリィ自身だ」
「
「ですがも何もねえよ。頑張ったのはお前だ。必死に考え抜いたのも、貫くために戦ったのもお前だ。そういうところは他のサーヴァントにも負けてねえよ。だからドーンと胸張っときゃいいんだよ」
「……分かりました。本当に、本当に本当に!ありがとうございました!
「ははっ、どういたしまして。さっ、今日はリリィも疲れただろう。早く部屋に戻って休んでこい」
「はい!じゃあ、お休みなさい!――私の大好きな
最後にリリィはとびっきりの笑顔を見せてその場を後にした。嬉しそうな駆けていくその後ろ姿は、本当にただの子供のように無邪気で純粋だった。もうあの子は大丈夫だろう。胸に秘めた夢や望みがある限りきっとどんな困難を前にしても立ち上がれるに違いない。
こうしてカルデアのクリスマスの小さくて大きな事件は幕を閉じたのだった。
さて、それにしても――
「――やっぱり小さいジャンヌ・オルタもいいけど大人版ジャンヌ・オルタさんも来て欲しいなぁ。ルーラーのジャンヌさんでも可」
―ちょっとした後日談―
「マ、マシュ?その、まだ怒ってる、のか?」
「何のことですかマスター。私は怒ってなどいません。ええ、怒ってなどいませんとも。それでマスター、何か御用ですか?」
「(メッチャ根に持ってるじゃん……)ああ、いや。そのお詫びと言っては何だけど、これ」
「……これは」
「その、ほらクリスマスの時期はきっと色々忙しいだろうからちょっと早めのクリスマスプレゼントをって思って」
「マフラー、ですか?」
「うん、これからさらに寒くなるしマシュなら似合うかなって思って。め、迷惑だったか?」
「そういうわけでは……」
「確かにマシュを蔑ろにしたのは悪かったと思ってる。すげえ反省した。次、もしこういうことがあったら必ず相談する。今回のことは……本当にごめん」
「――――ふふふっ。全く、先輩はしょうがないですね」
「えっ?」
「この前のリリィさんの件はこれで許してあげます。ですが、今度からは私に隠し事は無しですよ?」
「お、おう、本当にすまんかった」
「分かってくださればそれでいいです。あれ?このマフラーちょっと長めですね」
「嘘!?うわ、しまった。ちょっと長いやつ用意しちまった。ごめん、マシュ。こう長いと使いづらいよな」
「……いえ、それならばこうして」
「マ、マシュ?」
「ふふっ。こうして2人で首に巻いてしまえばちょうどいいですよ、先輩」
「あ、ああ」
「――暖かいですね、先輩」
「――そうだな。本当に、暖かいよ」
ということでクリスマスイベのお話でした。この幸せそうなイベントのあとに第七章やると絶望感が半端ないですよね!いや、ホントあのストーリーはすごかった。
今回遅れた理由はいくつかあるのですが……
1.作者のリアルで非常に重要な催しがありその準備に追われていたため。
2.第七章の攻略と最終決戦に向け絆レベル上げ、戦力強化に勤しんでいたため。
3.インフルエンザと喘息を合併し、割とガチで入院しそうになっていたこと。
ということがありました。まあ、どれも読者の方々からしたら知ったこっちゃねえ!ということなので本当に申し訳ありませんでした。これからは更新ペースは上がると思います。たぶん(最終決戦に備えながら)
この更新が滞っている間にうちのカルデアにも新顔が増えました。フィンさん、槍メドゥちゃん、バサクレスさん。相変わらず星5は出ませんがこれは良い戦力強化になりました。
終いにはフレポの星5と名高いアンリ・マユ君まで来てくれました。……こいつ出るのになんで星5出ないでしょうか。確かこいつの方が難しかったような(白目)
そういえば、コメントの方での皆さんの近況報告、いつも楽しみに拝見させていただいております。時間の合間を縫って返信しているため、コメントへの返信に時間がかかってしまうことはご了承ください。返信の方は必ずしていきます。
では、今回はこれぐらいで。それでは皆さん、最終決戦でまたお会いしましょう!