うちのカルデアに星5の鯖がようやく来たんだけど、全クラス揃えるとか夢物語だよね?   作:四季燦々

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お久しぶりです!大遅刻申し訳ありませんでしたぁぁぁぁ!!(土下座

今回遅れたのには訳があるのですが、長くなるのでその説明は活動報告でさせていただいております。今後の執筆についても触れていますので、覗いていただければ幸いです。

それでは!お待たせしました!今回は第3異聞帯、シン国のお話です!
僕のカルデアがどのようにこの異聞帯を突破したのか、ご覧あれ!




絶対統治の世界で憎悪に囚われた人と邂逅したんだけど、変わらぬ想いこそ真実の愛だよね?

――――大気が震えた。

 

――――愛する者を喪って泣いた。

 

――――絶対統治の世界に、女の叫びが木霊した。

 

――――2000年にもおよぶ人類への憎悪が、ただ殺すと刃を向けた。

 

 

 

 

黒く濁った厭悪が殺意の雨となって降り注ぐ。天の青を白き樹枝が侵食し、太陽の輝きを遮ろうとその腕を伸ばしていた。

 

――『空想樹メイオール』。第1、第2の異聞帯とは異なり完全に開花した空想樹は、『虞美人』の真祖としての力も取り込み天災の如く魔力を振りまいていた。ひび割れた幹には星々の輝きと見紛う銀河が渦巻き、虞美人の叫び(憎しみ)を声無き殺意にのせオレ達へと浴びせている。

 

「チィ!!流石に一筋縄じゃいかねえってかぁ!!?オラァ!!」

 

今回の異聞帯を巡るにあたり、助っ人として召喚されたモーさんが一瞬の隙をついてメイオールへと肉薄する。携えた燦然と輝く王剣(クラレント)の刀身が血のように染まり、赤雷を纏った斬撃を放つが、樹の幹を僅かに傷つけるに留まった。

 

「かってぇなクソが!!」

 

舌打ちの後、吐き出すように悪態をつくと、反逆の騎士は持ち前の身体能力でその場をすぐに離脱。刹那、彼女がいた場所へ毒蛇のような魔力が解き放たれる。あのまま回避行動を取らなければ、セイバークラスの対魔力といえど消し炭にされていただろう。

 

「技能使用。しゃあっ!!」

 

モーさんと入れ替わるように、自身に道術を使って強化した哪吒が、メイオールへ渾身の火尖鎗を突き付ける。螺旋状の炎を纏ったその一突きは、しかし鉄壁の護りの前に弾かれてしまう。さらに、お返しとばかりに数本の魔力を束ねた極大のレーザーが、神殺しを成さんが如く襲い掛かった。

 

「――ッ!!」

 

目の前に迫った憎悪の濁流を、哪吒は足元の風火輪を全力で回転させることで回避する。空を舞う妖精のように天を駆けた彼女は、再び攻撃の隙を探るようにその周囲を飛び始めた。

 

「――マスター、この状況いかがなさいますか!?メイオールの耐久性は相当なもの。このまま持久戦を強いられてしまった場合、我々の魔力が尽きる方が早いですが!」

 

オレとマシュを背中に乗せ、天空を走るケンタウロス姿のサーヴァント――三国史において呂布と共に戦場を駆け巡り、屈指の名馬と呼ばれた『赤兎馬』。文字通り人馬一体と化した彼が、メイオールのレーザーの合間を駆けながら問いかけてくる。マシュもオレ達の背後を警戒しつつ、アイコンタクトで訴えてきていた。

 

いまだに自身の身体を侵食している毒の倦怠感に抗いながら、思考を巡らせる。この毒を飲んでしまい、随分時間が経った。本来ならば毒など全く効かないのだが、今回はコヤンスカヤが調達した特別製。ゆっくりとだが、確実にオレの身体を蝕んでいっている。正直、今ではもう満足に歩くこともできず、礼装の力もろくに使えないほど衰弱しきっていた。

 

こうして2人(1人と1頭)の力を借りることで、ようやく戦場に居られるのだ。このまま戦いを長引かせてはサーヴァント達よりもオレの方が先に力尽きてしまう。

 

「……この均衡した状況を打破するためには、あのメイオールの頑強さを貫いて、一気に勝負を仕掛けるしかない。そのためには、超高火力の一撃が必要。今この場で唯一可能性があるとしたら、それはモーさんだ」

 

だが、メイオール――いや、もはやあれは虞美人の意志そのものか。彼女もそれぐらいのことは分かっているのだろう。先程からモーさんへの手数が増え続けているのが証拠だ。今のところ彼女自身なんとか捌ききっており、流石というべきか反撃まで加えている。もっとも、それも時間の問題だろう。いずれ圧殺されかねない。

 

「はっはっはっ!!たかが大樹と侮っていたわけではないがやるではないか!!これを賜わす!!ひれ伏すがよいぞ!!」

 

そんななか、上機嫌に水銀を操り、刃へ盾へと変化させ応戦するのはこの異聞帯の王――『始皇帝』。異聞帯の世界を賭けた戦いの中で、オレ達のことを認めてくれた偉大なる帝は、暴走した虞美人と空想樹を止めるためにオレ達との共闘をかって出てくれた。その力は絶大で、細かい傷を幹へと次々に刻んでいき、豪雨の様に降り注がれる魔力を完璧に防ぎ傷1つ負っていない。

――しかし、そんな彼でも()()()()のだ。

 

「始皇帝も力を貸してくれてはいるけれど、彼の宝具はそもそも補助系宝具だ。自身を強化できたとしても、メイオールの持つ耐性が硬すぎて意味がない」

 

一見して絶望的な状況。しかし、まるっきり手がないというわけではない。要はメイオールの耐性をブチ抜けるサーヴァントを今この場に呼び寄せればいいのだ。幸い、今のオレにはあと1騎分なら召喚できるだけの魔力と体力は残っていた。

 

そして、該当するサーヴァントも思い浮かんでいる。ダ・ヴィンチちゃんやホームズからは、通信で霊基の調整は完了しており、いつでも呼べるとも言われている。

 

 

 

だが、彼の者を今この戦場に、この相手に、敵対させるのはどうしても躊躇われた。

 

 

 

本当は、彼の力を借りずにこの異聞帯を突破する気だったのだ。

 

 

 

だって、それはあまりにも残酷な再会だったから。

 

 

 

相手の傷口を容赦なく抉る、外道だったからだ。

 

 

 

我ながらこんな発想しか浮かばない頭に吐き気がするが、他に方法がない以上、オレはこの手段を取ろう。

 

非情に、残酷に、悪辣に。身も心も傷つける手段を。

 

きっと虞美人さんにはさらに恨まれる。それでも、オレ達(汎人類史)は負けるわけにはいかないんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「力を貸してください!!――ッ!!」

 

令呪によって結ばれた魔力の繋がりを辿り、霊基グラフに刻まれたサーヴァントがこの場に召喚される。一瞬の召喚光の後、思い描いた人物が戦場に降り立った。

 

赤兎馬と同様に、ケンタウロスのような風貌の巨体。霊基の再臨を繰り返すたびに増えた6本の腕にはそれぞれ長刀を持ち、機械仕掛けの身体は緑色の魔力が脈動している。空中で蹄の音を響かせながら目の前へと現れたサーヴァントは、無機質だがどこか人情を感じさせる瞳でオレを見た。

 

 

 

 

「――召喚に応じ『項羽』、今ここに推参した。主導者よ、指示を求む」

 

 

 

 

この異聞帯で何度も激突し、つい先程最後の力を使い切って倒れた楚漢戦争時代の武将。中国の四千年という歴史のなかで、類い稀なる武勇を刻んだ伝説的な猛将。そして、虞美人との絆をなによりも大切に想っていた1人の男。

 

「――この世界で主導者の召喚に応じた際、何か意味があると考えていたが……なるほど。これこそが、私の成すべきことだということか」

 

「項羽さん、貴方には辛い選択を強いてしまい、本当にすみません……」

 

「その謝罪は不要だ、主導者よ。私はただ、未だ彷徨える妻を救い出す。それだけだ」

 

「……はい。貴方の助力に心からの感謝を」

 

赤兎馬からマシュの手を借りながら下馬し、項羽さんへと頭を下げる。非道な手段を選んだオレを、偉大なる武将は許すと言ってくれた。オレなんかより彼の方が辛いはずなのに、その言葉は温かかった。

 

ならば、彼の覚悟に応えなければいけない。それが、マスターとしてのオレの役割だ。

 

「――令呪を以て命ずる。項羽さん、彼女を――貴方の愛する人の護り(憎しみ)を振り払ってください!」

 

「承知した」

 

――瞬間、彼の足元が爆発した。令呪のブーストにより、さらに霊基を強化された歴戦の猛将は、空を裂くように戦場を駆け抜ける。

 

ピタリと、殺意の雨となって降り注いでいた魔力が一瞬消失する。誰よりも身を捧げた存在に気付いたメイオールの挙動が、その瞬間だけ止まっていた。

 

『――ッ!!――――――ッ!!!!!!』

 

だが、すぐさま空想樹自体がブルブルと震え、ドス黒い憎悪が辺りを支配する。声帯など持たないはずのメイオールが憤怒の限りを叫び、まだ『雨でしかなかった』魔力が、上下左右と四方から項羽さんへ牙を向け始めた。

 

――消えてしまえ……!お前は偽物だ。私の愛する人はもう居ないのだ……!

 

黒い雨が、彼女の流す涙のように止めどなく戦場を濡らす。だが、項羽さんは決して臆することなくメイオールへと接近し続ける。完全に躱しているわけではない。行動不能にならないギリギリのラインを見極めているのだ。オレには、まるで彼女の痛みや悲しみを受け止めているように見えた。

 

「――では、決着としよう」

 

重圧な声が響いた。迫る項羽さんに気付いたモーさんが驚きながらも、小さく舌打ちしてその場を譲る。哪吒はどんな状況になっても対応できるように周囲を飛び回り、始皇帝は小さく笑みを浮かべ、自身の操る水銀に乗り距離を取った。

 

 

 

「――力を以て山を抜き、気迫を以て世を覆う!我が武辺、此処に示さん!」

 

 

 

文字通り嵐となって、項羽さんはメイオールへ迫る。解き放つは彼の持つ宝具。山を抜き取るほどの力と世界を覆い尽くす気力。生前の彼の歌を体現するような、絶大な破壊力を持つ対軍宝具。

 

 

 

「セリャァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

 

 

防御など考えない、嵐の激突。項羽さんの宝具――『力抜山兮氣蓋世(ばつざんがいせい)』。

 

 

 

『――――――――――――ッ!!!!!』

 

 

 

怪力乱神を宿した項羽さんの一撃は、着実にメイオールの守護を貫いていく。比例するように、メイオールから声無き哀哭が響き渡る。

 

 

 

――なぜ、と。なぜ、よりにもよって貴方が。他の誰でもない貴方が、私の前に立ちはだかるのかと。

 

 

 

「オ、オオオオオォォォォォォオオォォオオオォォオォ!!!!!」

 

 

 

項羽さんは応えない。ただひたすらに全力でぶつかり、メイオールの守護(彼女の壁)を削り続ける。携えた剣が折れ、機械の身体が朽ちようとも、項羽さんは止まらない。

 

 

 

――彼にとって戦う理由など単純なものだった。汎人類史や異聞帯などではない。世界中の人々を救いたいわけでもない。

 

 

 

――ただ、愛する人がそこにいるから。絶望に囚われ、泣いているから。

 

 

 

――機械の身体で造られた彼が救うのは世界ではない。たった1人の、愛する人のみ。

 

 

 

「――ッ!!ハアアアァァァァッ!!!!」

 

そして、ついに項羽さんの宝具がメイオールの護りを全て破壊する。同時に、ギギギッとスクラップのように崩れ落ちる項羽さんは、一度だけ焦点の合わない視点をオレへと向ける。

 

――イマ、ダ

 

「――ッ!!サーヴァント最大火力!!この隙を絶対に逃すなあッ!!!」

 

瞬間、モーさんの赤雷を纏った魔力が、哪吒の燃え上がる火尖鎗が、赤兎馬さんの弓より射られた大槍が、始皇帝の水銀の波が、メイオールへと突き刺さる。その全てを、完全に無力化された状態で耐えきることなど、空想樹には不可能だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩、お身体の調子はいかがでしょうか?一応バイタルは正常値を示していますが、何か気になる点などありませんか?」

 

「いや、まったく問題ない。正直半信半疑だったけど、ちゃんとあいつも契約は守ってくれたみたいだ」

 

時間は過ぎて、現在ノウム・カルデア。シン国での戦いから5日が経過し、オレの身体を蝕んでいた毒も、検査の結果完全に消滅していた。

 

「さて、じゃあ行こうかマシュ」

 

「いつもの召喚、ですね。準備は既に完了してます」

 

あの方も召喚部屋で待機しているようです、とマシュは最後に付け足す。彼に召喚に挑戦すると伝えたのは、彼が霊基を修復しマイルームを訪れた時だ。あれはシン国から帰還してから2日目だったはずだから、3日前ということになる。まさか、ずっと待機していたのか?

 

「それにしても、虞美人さんは召喚に応えてくれるのでしょうか?」

 

「分からない……。彼女は人間を恨んでいる。始皇帝が英霊になることを提案してはくれたけど、それに応じるかは虞美人さん次第だ。だけど――」

 

――きっと彼女は会いたがっている。世界すら巻き込んで守ろうとした、最愛の人に。

 

マシュの問いかけにはっきりとした返答はできなかったものの、一種の核心があったオレは、新しく建造された召喚部屋へと赴く。扉の前には、まだ見慣れていない大きな体躯。あの戦いでの傷(故障?)はすっかり修復された項羽さんが、眠るように静かに瞳を閉じていた。その閉じられた瞳が、オレ達の気配を感じたのかゆっくりと開かれ光を宿す。

 

「お待たせしました、項羽さん。すみません、回復が遅れてしまって」

 

「今大事なのは主導者の休息。この程度の時など、私には瞬きに過ぎぬ」

 

「そう言っていただけると幸いです。早速召喚を始めたいと思います」

 

「承知。私も同行させてもらおう」

 

もちろんです。というか、今回に限っては貴方もいなくては。

 

簡単に言葉を交わしたオレは、マシュと彼と共に召喚部屋へと入室する。カルデアと同じように設計したというが、流石は魔術協会三大部門の一角アトラス院。術式だけでなく内装も完璧に同じにしたらしく、どこか懐かしさを感じた。

 

だがそんな懐かしさを感じると同時に、どんなに似せても幾度となく召喚に挑戦をしたあの部屋ではないことが、少しだけ悲しくなった。

 

「――っと、いかんいかん。これから召喚に挑戦しようってのにセンチになってんじゃない」

 

いつだって召喚には最大の警戒を。基本中の基本だ。こう、バーサーカー的な意味でも爆死的な意味でも。

 

今回挑戦するのは、もちろんあの女性――『虞美人』さんを召喚するためだ。彼女が人理の護り手に本当になってくれたのかは定かではないが、可能性はある。なによりここには項羽さんがいるしね。

 

「じゃあ、早速10連目いきます」

 

「先輩、頑張ってください!」

 

「…………」

 

バラバラーと聖晶石を30個召喚サークルへと注ぎ込む。すぐさま、あの部屋で見慣れた召喚光が辺りを照らし出し、礼装やら、すでに召喚済みのサーヴァント達が現れる。生憎、彼女のクラス(暗殺者)を示すクラスカードは出現しない。

 

「これは……」

 

「う、うーん……」

 

「…………」

 

残念、この10連では来てくれなかったようだ。

 

……というか、さっきから黙っている項羽さんが地味に怖い。えっ?なに、どうしたの?もしかして怒ってる?嫁さん召喚できない不甲斐ないマスターに対して怒ってる?なんか緑色の魔力がピカピカしてるんですけど。

ヤ、ヤバい……!なんとか取り繕わなければ……!

 

「まっ、まあ?初っ端からあの意固地な先輩さんが来るとは思ってませんし?なんなら、いつもどおりですし?」

 

「……先輩、項羽さんからものすごいプレッシャーを感じるんですが」

 

「シィィィィ!!動揺している姿を悟られるなマシュ……!項羽さんはオレ達に期待してくれているんだ……!なんとしても成功させるんだ……!」

 

「コオォォォォォォォォォォ……」

 

「先輩、先輩。項羽さんがなにか気を溜めてます。すごくピカピカし始めてます」

 

ス、ステイステイ!!落ちついてください項羽さん!まだ大丈夫!まだ石はあるからもう少し耐えて、お願い!

 

「さ、さあ!気を取り直して次の10連いくぞー」

 

「そ、そうですね!ここからが本番ですよね!」

 

「…………(シュゥゥゥゥ」

 

よかった、ピカピカが弱くなった……!

 

背後から感じる圧倒的威圧感にビビりつつ、オレは次の10連分の石をサークルへと放り投げる。再び回転の後、いくつかの礼装やサーヴァントを吐き出すも、一向に金色のアサシンカードは来ない。

 

「…………」

 

「あっ、あっれー!?今日は調子が悪いのかなー?おっかしいなー↑」

 

「先輩、動揺しすぎて声が裏返ってます……」

 

「いや、違うから。これメッフィーの真似だから。急にやりたくなっただけだから」

 

ああっ!背後からの視線がすごい。メッチャ見られてるの分かるもん!あの人目からビーム出てんじゃねえの!?機械の身体だからありえるって!

 

「あっ!先輩!きましたよ金色回転!」

 

「おおおっしゃぁぁぁぁ!!空気読める先輩大好き!!」

 

良かった!マジで良かった!このまま頭に風穴空くんじゃないかと思った!!来てくれてありがとう!お礼といっちゃなんだけど、これからここで項羽さんとイチャイチャするがいいさ!!

 

「あれ?ですが、このクラスは……」

 

助かったことに歓喜しつつ、2人のこれからのカルデア生活を想像していると、マシュがカードに刻まれている刻印に疑問を持つ。

えっ?なに?今更怖いんだけど、と震えながら確認してみると、刻まれていたのは――

 

狂戦士(バーサーカー)だと……!?」

 

「これは……虞美人さんではありませんね」

 

現れたのは期待していた暗殺者の刻印ではなく、まさかの狂戦士。つい先日項羽さんを召喚した際にも見た、あのクラスカードが光の中から現れる。

 

「コオオォォォォォォォォォ……!!」

 

「ああっ!さっきよりも項羽さんの溜めが強くなって、ものすごくピカピカしてます!」

 

「ごめんなさい!何かの手違いなんです!わざとじゃないんです!!」

 

ピカピカ再び。アワアワしながらなんとか猛将を抑えようと躍起になるオレ達。ったく!!誰だこんな時に召喚された空気読めないバーサーカーは!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「■■■■■■■■■■ーーーーー!!」

 

「へ、ヘラクレスさんでした!!」

 

「大英雄ゥゥゥゥゥゥ!!お願いだから空気読んでぇぇぇぇぇ!!!」

 

現れたのは、筋骨隆々の上半身裸の大男。手には無骨な斧を携え、狂化された猛りを響かせる。すでに我がカルデアで最前線で戦ってくれている、ギリシャ神話の大英雄だった。

 

「ゴオオオォォォォォォォオォォォォォォ!!!」

 

「先輩!大変です!項羽さんの音が変わりました!目と口とその他諸々がものすごくピカピカしてます!!なにかこう、パワーを一つにしているような!!」

 

「メテオかよっ!?」

 

「■■■■■■■■■■■ーーーー!!!!」

 

「なんで叫び声で張り合ってんですかヘラクレスさぁぁぁぁん!?」

 

「ウオオオォォォォォォォオオオオオォォォォォォ!!!」

 

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ーーーー!!」

 

「うっせえわゴラァァァァ!!」

 

――――ビービービービービービー!!

 

途端、けたたましいサイレンが部屋中に鳴り響く。今度はなにっ!!?

 

「ああっ!お二人のあまりの叫び声と、あと先輩のツッコミで異常事態用アラートまで鳴り出してしまいました!」

 

「おいぃぃぃ!!なんでオレも原因の1人になってんの!?大合唱かちくしょうめ!!」

 

何故かどっちがより雄たけびを上げれるか勝負する猛将と大英雄。だんだんと大きくなっていくアラートにてんやわんやするマシュ。もう何からツッコめばいいのか分からず自棄になるオレ。

 

ダ・ヴィンチちゃんやムニエルさんをはじめとするカルデア職員が駆け込んで来るまで、このカオスな空間は続くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「落ち着きましたか、項羽さん」

 

「謝罪しよう、主導者。突然の強者に将の血が高揚し、少々熱がこもり過ぎてしまった」

 

「少々」

 

いや、大惨事やったやん。貴方、前に自分がなぜバーサーカークラスにあてがわれたのか分からないって言ってましたよね?バリバリの肉体派バーサーカーですよ。演算はどうした演算は。

 

「とりあえずヘラクレスさんには強化のためにお引き取りいただいたので、マシュが戻ってきたら次に行きます。あと、無言でピカピカするのやめてください。メッチャ怖いです」

 

「私も虞との再会に冷静さを欠如していたようだ」

 

「あくまで冷静にお願いします。あとガン見はやめてくださいね」

 

マスターの心臓がもたないから。こちとら一応病み上がりなんですからね。

ジトーと項羽さんを見ていると、管制室に行っていたマシュが戻ってくる。

 

「先輩、アラートで止まっていた召喚サークルが復旧しました。再開してもいいそうです」

 

「ありがとうな、マシュ」

 

「汝にも手間をかけさせてしまった。謝罪しよう、盾の少女」

 

「あっ、い、いえ!そんな、これぐらいへっちゃらです!」

 

(´・ω・`)っぽい顔をする項羽さんの態度に、マシュは慌てて返事をする。この人、機械の身体でなんか常時ピカピカしてるし、怖い顔してるけど、意外と表情豊かだよな。興奮すると目が光るし、結構分かりやすい。

 

「じゃあ、再開しますよ。よっこいせ!」

 

一応最後の10連分の石をサークルへと放り込む。召喚光を眺めて召喚の過程を見届けているが、先程とは違って項羽さんからの鋭利な視線は感じない。どうやらちゃんと冷静でいてくれているようだ。

 

「あっ――!!来ました先輩!金色反応です!」

 

「――ついに来たかッ!?」

 

マシュの声とともに、召喚サークルから感じていた魔力が高まる。ビリビリと部屋の空気が震え、令呪が燃えるような熱を持つ。間違いない、これはサーヴァントの中でさらに上級の反応だっ!

――って、んん?

 

「おお、虞よ……むっ?」

 

「あれ?」

 

「あ……(察し」

 

現れたのは金色のクラスカード。そこに刻まれるは暗殺者――ではなく、『騎士』の刻印。

 

「あのー、先輩これは」

 

「皆まで言うなマシュ……!」

 

「…………」

 

だから、黙らないで項羽さん!気持ちは分かる!すっげえ分かる!オレもメルト召喚に失敗した時そんな感じだったからすげえよく分かる!でも、お願いだから無言でピカピカしないで!怖いって!

 

というか、これもしかして『蘭陵王』さんか……?先輩じゃなくて、彼女のサーヴァントの方が来たのかな。まあ、なんにせよ。来てくれたのは大歓迎だけどな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――我が名はアルテラ。フンヌの(すえ)たる軍神の戦士だ」

 

が、現れたのはあの美青年ではなかった。褐色の肌に幾重にも刻まれた印。白い髪の上にヴェールを身に着け、その下で揺らめく大きな瞳には星の輝きを宿している。手には虹色の光を放つ剣――『軍神の剣』を持ち、近年ではサンタにまでなった破壊の化身。

『良い文明は許す。ただし悪い文明、テメーはだめだ』でお馴染みの絶対破壊ウーマン。アルテラさんの招来だった。

 

「そうきたかぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「アルテラさん!?星5のサーヴァントじゃないですか!?」

 

まさかのすり抜け召喚である。

 

「久しいな、マスター。ようやく私を呼んでくれたこと、感謝するぞ」

 

「あっ、う、うん。色んなところで会ってましたからね。こちらこそ、召喚に応じていただきありがとうございます」

 

最初の出会いは鮮烈だった。いきなり登場したかと思えばレフ――フラウロスを真っ二つにし、オレ達と死闘を繰り広げた。記憶に残らないわけがない。

 

そんな血生臭い出会いだったが、その後色々な特異点を巡る旅の中で、実は純粋で無垢なだけの少女だということが分かった。つまり、力の使い方さえ間違わなければ基本的に良い人である。

 

「私の力、これからはマスターのもとで存分に振るわせてもらおう。ところで……」

 

彼女の表情筋はあまり動いてくれないが、それでも僅かに口元を綻ばせた後、オレの背後を指さす。

 

「そこの大きな、お前。見ない顔……顔?人間か?」

 

「いかにも。姓は項。名は籍。あざなを羽。主導者からは『項羽』と呼ばれている。この姿は訳ありである」

 

「なるほど。いやなに、召喚に応じて来てみたものの、いきなり大きな図体が目に入ったのでな。警戒してしまった、すまない」

 

「かまわぬ。我が巨躯が他者へ恐れを抱かせることは認知している」

 

「うん、そうだな。大きな身体というものは、知らないうちに他者を圧迫してしまう。私にも何故か分かる」

 

「不可解。汝は決して巨体とは呼べない」

 

「私にもよく分からないが、たぶんお前と同じなのだろう。訳あり、だ」

 

「承知。追究は避けよう」

 

「ありがとう。お前は良い奴だな。私はアルテラ、これからよろしく頼む」

 

そう言って握手を交わす両者。あれ?意外とこの2人相性良い?アルテラさんは悪い文明絶対破壊するウーマンだし、項羽さんも山引っこ抜くぐらいだし、破壊系サーヴァントってことで意気投合してる?

 

しかし、結局虞美人さんは来てくれなかったか……。やっぱり人間に味方するのは嫌だったのかな。それとも、まだ心の整理がついていないのかな。

 

 

もしくは――最後の戦いで項羽さんと戦わせてしまったこと、恨んでんのかな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―猛将との語らい―

 

「――項羽さん」

 

「主導者か。このような時間にどうした。ここに陽の輝きは無いが、程無く丑の刻へと至る。早々に休息に入るがよい」

 

既に夜も更けた時刻。もっとも、ノウム・カルデアから空など見えるわけもないから、あくまで時計上の感覚だ。そんな時刻に、オレは項羽さんの下を訪れていた。

 

「お気遣いありがとうございます。ただ、少しお話がしたくて」

 

「――我が妻に関連したものと推測」

 

「……流石です。それも演算ですか?」

 

「否、演算ではない。汝の表情から判断したことだ」

 

「そんな顔してますか……」

 

どんな顔をしているのだろう。きっと、随分と暗い表情をしているに違いない。そんな自虐とも取れることを考えつつ、オレはメイオールとの戦いを思い返す。

 

あの戦いで勝つためにとった手段、間違っていたとは思わない。こちらにだって切れる手札は限られていたし、一番の打開策であったことは事実だ。やらなければこちらが殺される状況で、結果的にオレ達は勝った。

 

――だけど、感情は別なんだよ。

 

「――虞美人さん、泣いていました。そりゃそうですよね。誰だって自分の大切な人と戦いたくない。そんな当たり前のことを分かっていて、オレはあんな手段をとったんです」

 

「汝の迷いは不要だ。あれは戦、互いの存在(世界)を賭けた決戦であった。然らば、汝は勝利を誇るがいい」

 

「ですが……」

 

「私こそ、汝に礼を言おう。鉄と鋼で構成されたこの躯体、我が妻の傍まで導いてくれたことを。主導者の導きにより、囚われた我が妻への救済を達成できたのだ」

 

「項羽さん……」

 

機械の身体に、人間の精神。そんな特例中の特例で召喚された項羽さん。彼がオレの召喚に応じてくれたのは全くの偶然だったけれど、彼自身にとっては満足のいくものになったらしい。

 

彼だって妻の涙など見たくなかっただろう。それでも、憎しみや恨みに囚われた愛する人を放っておくことなんてできなかった。だから、彼は剣をとったのだ。例え傷つけても、それでも大切だから。愛しているから。だから戦ったのだ。

 

「――項羽さん、必ず貴方の下へ虞美人さんを連れていきます。貴方とオレを繋いでくれるこの令呪に誓って、必ず」

 

「感謝する主導者よ。ならば、私は汝のために我が機能を十全に発揮することを誓おう」

 

――いつか必ず、2人を再会させる。それが、今のオレに出来る精一杯のことだから。




はい!ということで今回のガチャ結果は

・項羽さん
・ヘラクレスさん
・アルテラさん

という結果になりました!やったー!星5だー!!
しかし……!し か し !!虞美人さんが来てくれなかった……!それだけが心残りです。

まあ、そのうちピックアップ、ないし星4交換とかあると思うのでまたその時にゲットしたいと思います。

シン国は虚淵さんのシナリオということで戦々恐々でしたが、非常にやりごたえのあるシナリオでした。もう皆かっこいい。特にスパさん。ギャグのようにも見えるあのシーンですが、僕は大好きです。やっぱりスパさんは英雄なんだなって。

そして、項羽さんと虞美人さんの関係性。なんというか、すごく良いです。言葉で表せないぐらい良いです。だからこそ、お呼びしてあげたかった……!(2回目

それでは、今回はこれぐらいで。また次回の投稿を気長にお待ちください!
そして、前書きでも述べましたが、活動報告を投稿させていただいております。今後の投稿頻度に関連する内容なので、気になるなーという方は読んでいただければ嬉しいです。

ではでは!

PS: フレンドの始皇帝さんをかりてぐだぐだイベの高難易度挑戦しましたが、前回あれだけ苦労したクエストだったにもかかわらず完封勝利してしまいました。
やべえよ、この朕……強すぎだろ……。

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