うちのカルデアに星5の鯖がようやく来たんだけど、全クラス揃えるとか夢物語だよね?   作:四季燦々

18 / 36
お久しぶりです!皆さんいかがお過ごしですか!

今回はアガルタピックアップの話です。例によって真名バレがありますのでご注意を!あと今回はおまけが長いです。何故かというのは本文を読んでみれば何となく分かると思いますので説明は省きますね。

水着イベも終わりリヨイベももう終わります。そろそろ次の水着イベですかね?何やらレースのようで作者も非常に楽しみです。

前回の投稿からFGOでも色々ありましたが、あとはあとがきで語りたいと思います!
では本編をどうぞ!


アガルタって女性の国だったんだけど、主人公の周りには女の子いなかったって嘘だよね?

「――すまん。なんていうかうまく言葉が出てこねえや。何分初めてのことだから……」

 

「私は気にしないよマスター。変に凝ったセリフよりも君自身の言葉で私は聞きたいんだ。それに、そう思ってもらえるのなら君の騎士としてとても誇らしいよ」

 

そう言って目の前でクスッと微笑む彼女()。いつも被っている鍔の広い帽子を脱ぎ、日の光のように輝く金色の髪を靡かせる。ピシッと伸びた背筋に百点満点の所作。戦いに赴くにはやや軽装過ぎる服装だが、腰に愛剣であるレイピアを下げる姿はまさしく騎士だった。

 

「その、口下手で何の工夫もないありふれた言葉かもしれねえけどさ、ちゃんと伝えるよ」

 

「うん。ぜひ君の口から聞かせてほしい」

 

スー、ハーと深く息を吸う。これから彼女()に伝える。マスターとして……いや、1人の人間としての言葉を。ずっとずっとオレに寄り添ってくれていた存在への精一杯の気持ちを。

さあ、伝えよう。それがきっと、オレと彼女()の新たな一歩になるはずだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――絆レベルMAX、おめでとうデオン」

 

「ありがとうマスター。これからも私の剣は君のものだよ。フランスの騎士、シュバリエ・デオン。白百合の如く君の隣でこれからも花開きつづけることを誓おう」

 

告白かと思った?残念、絆レベルMAXのお祝いでした!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、それにしてもようやく絆レベルがMAXになったかー。1番初めにオレの下に来てくれたデオンがそうなるのは予想してたけど」

 

「懐かしいね。あの炎上する冬木で召喚された時は色々不安もあったけど、そんな君が今では立派なマスターになったよ。フランスの名立たる騎士にも負けないぐらいね」

 

「あっ、やっぱり初対面の時ってそんなこと思ってたんだ」

 

「き、気を悪くしないでくれよマスター。魔術も戦いの経験も無い人物に召喚されたわけだからね。その、確かに騎士として主を守るのは当然のことだけど、正直あの時は戸惑ってしまったよ」

 

「いやいや、別に気にしたりしねえよ。確かにあの時にオレは右も左も分からねえずぶの素人だったし、戦いの指示だって無知丸出しだったからな。ほんと、負担をかけさせちまって悪かった」

 

「……でも、そんな君が今では人理を救った世界最高峰のマスターだ。その事実は胸を張って誇ることだよ。もちろん、私もそんな君に仕えることができていることは至上の喜びさ」

 

「あ、ありがとう……」

 

面と向かってハッキリとそういうことを言われるかなり照れくさい。今の会話でも分かるとおりデオンとはマシュを除いて1番長い付き合いだ。それがアガルタを突破したことにより、ついに絆レベルがMAXになりそれを互いに祝いあっていたというわけである。

まあ、あんまり豪勢なことができるわけでもないのでこうしてデオンと2人で彼女()の部屋でお茶会をしているだけなんだけどな。

 

「さて、この後の予定だけどデオンは大丈夫?」

 

「もちろんさ。特異点アガルタに関連する召喚を行うのだろう?今日は私が護衛を務めさせてもらうよ」

 

カチャリと紅茶のカップを口にするデオン。その仕草1つ1つが非常に魅力的で本当に騎士なのか、どこかのお姫様じゃないのか、そもそも性別は結局どっちなの?といくつもの疑問が脳裏を駆け巡ったが、騎士なのはデオンの戦い方を見ていれば分かるし、性別に関しても本人が話を逸らしているわけだから無暗に聞いてはいけないと思い口には出さなかった。

あと、デオンの淹れてくれる紅茶めちゃ美味い。茶菓子として用意された手作りマカロンも非常に美味だし、何この完璧騎士。召喚終わったら紅茶の淹れ方とマカロンの作り方教えてもらおう。

 

――ああ、そういえばアガルタで思い出した。

 

「なあ、デオン1つ聞いてもいいか?」

 

「何だい?」

 

「――アガルタの街で手に入れたあのメイド服。あれどうしたの?」

 

「ブフッ!!?」

 

噴き出した。さっきまで優雅に(『優雅たれ』ではない)紅茶を嗜んでいたデオンが思いっきり紅茶を噴き出した。そりゃもう豪快に噴き出した。具体的にいうと対面して座っていたオレの顔に紅茶をぶっかけるぐらい。

 

「す、すすすすまないマスター!大丈夫かい!?火傷してない!?」

 

「いや、そこまで熱くなかったし大丈夫だから。ぐにゅ!?ちょっ!自分でやるって!」

 

「わ、私がしてしまった不始末だから!しばらく我慢してくれマスター!」

 

「フグフグフガッ!フガガガッ!フガアァ!?(痛い痛い痛い!鼻取れる!取れちゃう!?)」

 

慌てたようにタオルを持ってきてグニグニとオレの顔に押し当てるデオン。羞恥からなのかマスターに不敬を働いてしまったからなのか分からないが、余裕に満ちていた表情はすっかり真っ赤っかに染まってしまっている。

 

拭くのはもう許すからもう少し優しく拭いてくれませんか!?あなた筋力Aなんだよ!籠める力強すぎてオレの顔面抉れそうなんだけど!

 

「ま、まったく!い、いいいきなり何を言うんだ君は!?」

 

「良かった!鼻も目もある。本気で取れるかと思った。だって結局あの後服の所在を知らなかったから。――その反応、もしかしてコッソリ持って帰ってきてたり……」

 

「し、しししてない!してないから!」

 

えぇ~?本当でござるか~?さっきからチラチラとクローゼットの方に視線が向いてるのはどうしてでござるか~?

 

「なあ、デオン。あのクローゼットの中――「わあぁぁぁぁぁ!!」――ごめんて、そんなに必死にならなくても」

 

「も、もう!君はそういうところは初めの頃から変わらないな!人をからかうのもほどほどにしたまえ!」

 

「でも、結構ノリノリで着てたじゃん」

 

「ノリノリなんかじゃない!あ、ああれはアストルフォに……!」

 

確かにあの理性蒸発のポンコツ英霊にいい様に釣られたのは分かるけどさ、あの衣装持ってきたの君だからね?人の寝室に忍び込んでわざわざチョイスしてきたのYOUだからね?

というか、うちにはアストルフォいないんですけど……。あの男の娘英霊は一体どこから来たんですかねぇ。

 

さて、いい加減からかうのもここらへんにしておこう。臍でも曲げられて護衛をボイコットされたら大変だ。正直見た目が美少女にしか見えないから羞恥に染まった顔が可愛くてしょうがないのでついついやりすぎてしまう。ほら、可愛いものは愛でなくちゃいけないから(使命感)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして訪れた召喚部屋。今回の召喚は呼符が7枚、10連が1回で挑戦する。いつもと同じくらいかわずかに少ないことには目を瞑ってほしい。何故かって?察せ(水着イベ開始の印が付いたカレンダーを見ながら)

 

「何だかここでの初めての召喚を思い出してしまうね」

 

「そういや、この召喚部屋での最初の護衛はマシュとデオンだったっけ。あれから随分と時間も経ったしな。サーヴァントの数もすんげえ増えてるし」

 

寧ろ被り過ぎてるサーヴァントが多いまである。おい、星3勢。君たちのことだからね?

 

「じゃあ、始めてもいいか?」

 

「いつでも大丈夫だよ。マスターのタイミングで始めてくれ」

 

先程の取り乱しはどこへやら。優雅に微笑む騎士の存在を感じながらまずは呼符での召喚を行う。最近の召喚の結果を鑑みて思ったんだ。もう単発だろうが10連だろうが当たればいいんじゃね?と。順番とかどうでもよくね?と。

 

グルグルと召喚の光を放ちながら回り始める召喚サークルを傍目に見ながら、誰が出てくるのかワクワク半分、不安半分なオレ。

アガルタの世界は男である自分にとっては色々とキツいことも多々あったが、出会ったサーヴァント達は一部を除いて確かに英霊と呼べる者達だった。強いていた政治は正気とは思えない理不尽に溢れていたし、血の匂いや死の気配が常に隣り合っていたし、その国に住みたいかと問われれば即答で断るだろう。でも、彼女達の信念は確かなもので、これこそが自分の道、自分の国だという誇りがありその点については尊敬の念を送らざる得ない。

 

不夜城のキャスターやレジスタンスのライダーに関しては……まあ、ね。特にキャスターに関しては召喚された時どんな顔をすればいいのか分からないからな。最後、彼女の言葉にブチギレてしまってマシュやデオンや他のサーヴァント達の静止がなければ殴りかかってたかもしれないし、今会ったとしてもまともに会話できる自信がない。

 

「あっ、マスター見てくれ!」

 

「ん?どした?――って、おおおおお!?」

 

物思いに耽っているとデオンがポンポンとオレの肩を叩いて白魚のような綺麗な指で先を指さす。何かあったのかと思い顔を向けると、そこには金色にバチバチと光るクラスカード。おおおお!今回久しぶりに単発引きが冴えてるじゃねえか!って、ちょっと待て。

 

「マスター。私の見間違いじゃなければあのクラスってランサーだと思うんだけど」

 

「どっからどう見ようとランサーだな。アガルタにランサークラスのサーヴァントなんていたか?」

 

デオンの言うとおり金色のカードに刻まれているのは槍兵の紋章。だがアガルタのピックアップの中にランサークラスのサーヴァントなどいなかったはず。ということはこれはすり抜け!?

 

「こりゃ、カルナさんとか獅子王とかエルキドゥとか来たんじゃね!?ついにうちに星5のランサーがご降臨されたんじゃね!?」

 

「落ち着いてくれマスター。まだそうと決まったわけではないよ。もしかしたらフィオナ騎士団の彼かもしれないだろう?」

 

「おい、古傷抉るのやめーや。トラウマが蘇っちゃうだろ」

 

懐かしきバビロニアピックアップ。アレは酷い事件だったね……。というか、フィンさんの扱いが我ながら酷いなおい。

 

期待に胸を膨らませるオレとあくまで冷静なデオン。そんな2人が見守る中、ついに召喚されたサーヴァント。さあ、アガルタピックアップ中にある意味空気の読めないすり抜けをしてきたのは誰だっ!

 

ふわりと裾の広いスカートを翻し彼女は現れた。頭には捻じれた不思議な角を持ち、竜のような尻尾を生やしている時点でまず純粋な人間ではない。彼女の残虐性を示すかのような槍をマイクスタンドのように構え、不敵な笑みを浮かべる。見た目はまだまだ幼さの残る少女にしか見えないが、その実伝説に名を残すほどの非道を行った人物。その者の名は――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アナタが新しいマネージャー?よろしく、大切に育ててね♡」

 

自称売れっ子アイドル。その壊滅的な歌声は敵味方関係なしに葬り去る天性の音痴。鮮血魔嬢改め何度も出てきて恥ずかしくないんですか娘こと、『エリザベート・バートリー』だった。

 

「やっちゃったぁぁぁぁぁぁ!!ついにエリちゃんシリーズコンプリートしちゃったぁぁぁぁぁ!!」

 

ハロウィンにブレイブにカーミラさんに引き続き、ついに出番かと登場してしまったランサーエリザベート。何度も出てきて恥ずかしくないんですかとかもういい加減言い飽きたわ!

 

「はあい子犬。ようやく私を呼んだわね。まったくアイドルであるこの私にオファーをかけるのにどれだけ時間を掛けてるのよ。まあ、これも私が気品高い超レアなアイドルだからしょうがないのでしょうけど。格が違い過ぎるってのも考え物よねえ」

 

「やかましいドラ娘。こっちはついに揃ってしまったお前らシリーズに頭を抱えてんだよ」

 

具体的に言えばアルテラさんもびっくりな破壊力満点の歌声を持つこいつらをどうやって隔離するかってことを。

 

「あらあら。そんなに身構えなくてもいいわよ。これでも私はスタッフを労わることぐらいできるんだから。もちろん、その分私に尽くしてくれたスタッフに限るけど。シンデレラにだってなれる私の歌声で昇天させてあ・げ・る♡」

 

「そのためには先ずは強面のプロデューサーに笑顔を褒められてこいやダメドルめ」

 

もしくはスクールアイドルになって閉校寸前の高校救ってこい。

 

「それでそれで!私を呼んだってことはライブ会場が整ったってことよね!?早速リハーサルするから案内しなさい!」

 

「いやいやしねえから。今回は単純に召喚しただけだから。ましてやライブとか却下だから。ダメ、絶対」

 

「なーんーでーよー!私はアイドルなのよ!?だったらライブをするのが常ってもんじゃない!どうにかしなさいよマネージャー!」

 

ワーワー!と喚き散らすエリザベート。小柄な体格で見た目だけなら美少女な為、迫力は無くまるで小動物が戯れてきているようにも感じられる。オレ自身様々な特異点でエリザベートには助けられたのだし、なるべくサーヴァント達の要望にも応えるようにしているのでできれば彼女の希望であるライブも開いてあげたいのだが、如何せん危険度が高すぎる。誰もあの世への片道切符なんていらんだろう。

 

どうしたものかとデオンへと視線を送る。彼女()彼女()で微妙に顔を引きつらせていたわけなのだが、やがて小さくため息をつくとその小さな口を開いた。

 

「――ライブ云々のことはとりあえずロビンフッドにでも聞いてくると良い。彼ならどうにかしてくれるだろう」

 

「丸投げっ!?」

 

「えっ!あいつここにいるの!?なによ、口ではぶつくさ言っててもちゃんとマネージャーとして待機してくれているんじゃない!そうと分かったら早速ライブに向けて打合せね!じゃあ、子犬に性別不詳の騎士!また後でね!」

 

言うが早いか、エリザベートはピューと効果音でも付きそうな勢いで召喚部屋を後にした。残されたのは嵐のよう後のような静けさ。そんな雰囲気が漂う中、オレはジトーとデオンへとやや冷たい視線を送る。

 

「な、何だいマスター?」

 

「……デオンってたまに容赦ないことするよなーって思って」

 

「し、仕方ないだろう!あのまま居座られたら召喚どころではなかったし、何より私は彼女が苦手なんだ!」

 

「それは分かるけど……。あとでロビンのこと労わってやれよな」

 

「う、うん……」

 

とりあえずいきなりドラゴン馬鹿娘に突撃されているであろう緑茶さんに黙祷。シャーウッドの英雄の胃が非常に心配になった一幕であった。

 

結局あの後呼符単発引きは冴えなかったため、気を取り直して10連に挑戦である。最近調子のいい10連引き。ここいらでピックアップサーヴァントを引き当てたいところだがはたしてどうだろうか。

 

ガチャガチャと虹色の石を召喚サークルへと注ぎ込む。先程と同じように光の束がグルグルと回転を始め、大きくなったりと小さくなったりと絶え間なく輝きの周期を繰り返す。やがてサーヴァントが召喚された証である3本ラインの光の帯が出現し、その中から金色に輝くクラスカードが現れた。

 

「おおっ!また金色のクラスカード!これは良い調子じゃね?」

 

「今日は良い感じに召喚できてるじゃないかマスター。最近の君の召喚運の向上は最初のころと比べて目を見張るものがあるよ」

 

「最初は本当に金枠のサーヴァントがデオンしかいなかったからなぁ。特異点攻略も骨が折れたのは鮮明に覚えてるよ」

 

何しろレアリティが低いと火力が足りない。耐久力も足りない。素材だって十分に揃っているわけじゃ無かったから育成だって不十分。そんな中でよく戦い抜けたものだと我ながら感心する。

おっと、話が脱線してしまった。今は召喚されたサーヴァントだ。このクラスは――バーサーカーか。

 

「バーサーカーのクラス、となるとマスター。召喚されたのは……」

 

「ああ。これがすり抜けとかじゃなければ間違いなく()()だろ」

 

彼女――通称エルドラドのバーサーカー。アマゾネスを率いていた彼女はカリスマに溢れており、見た目はまだまだ少女という見てくれにも関わらず圧倒的な武力を見せつけていた。オレもアガルタにて彼女と幾度か戦闘をしたが、その凄まじい気迫と戦闘部族の頂点に君臨する力に苦戦を強いられたことは記憶に新しい。

 

「一応警戒しといてくれデオン。普通に会話はできると思うけど、いつ狂化して襲い掛かってくるかも分かんねえから」

 

「心得たよ」

 

オレの指示にいつでも抜刀できるように剣に手を添えるデオン。

エルドラドのバーサーカー。彼女にとっての怨敵とも言える存在――『アキレウス』。普段の彼女はバーサーカーではあるが会話程度のコミュニケーションは行えたのだが、一度狂化が掛かってしまうと目に映る者全てをアキレウスと見なして襲い掛かってくるのだ。狂化が掛かっている分、ただでさえ桁外れな力がさらに増幅してしまうためとても手に負えなくなる。

 

やがて、バチバチと空気を揺らす召喚光を発しながら召喚されたサーヴァントが現れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――アマゾネスの女王、ペンテシレイア。召喚に応じ参上した。……まず聞くが、アキレウスがいるなら出せ。隠し立てすると殺す」

 

小柄な体躯に似合わないほど引き締まった筋肉。白髪の下に見える顔立ちこそ美少女と謳っても過言ではないが、その目つきはどこまでも鋭い。両手に構える棘付きの黒い鉄球は振り下ろされるだけでオレなど容易く肉塊に変えてしまえるだろう。

オレ達の予想通り、そこにはアガルタで死闘を繰り返したペンテシレイアがそこにいた。

 

「よっ、ペンテシレイア。召喚に応えてくれてありがとな」

 

「以前会ったマスターか。よもや貴様の下に召喚されるとはな」

 

「あの戦いで縁が結べたんだろうな。それで早速なんだけど契約してくれるか?」

 

「その前に私の質問に答えろ。――アキレウスはここにいるのか?」

 

途端、部屋の温度が5度は下がった。彼女から発せられる凍える様な鋭い殺気が肌を刺す。ふざけた答えを言ったら容赦なく殺すと、その狂化に染まった目が物語っていた。一度その殺気を身に受けていたはずのデオンも表情こそ変えないものの、ツーと冷や汗を流している。

 

「……悪いがアキレウスはここにはいねえ。前に一度だけ会ったことはあるがそれだけだ」

 

「――嘘は言っていないようだな」

 

ジャラララと持ち上げていた鉄球が下ろされる。同時に放たれていた殺気も収まり、部屋の温度も戻ってきたように感じた。ふへー、緊張したー。

 

「さて、契約という話だったが私は別に構わん。だが、女王であるこの私を従えるのだ。それこそ負け犬のような無様な態度をとってみろ、容赦なく殺す」

 

「分かってるよ。じゃあ、契約成立。これからよろしくなペンテシレイア」

 

そう言って彼女に手を差し出す。ペンテシレイアは一瞬逡巡するような様子を見せたが、ああ握手かと呟くとオレの手を取った。自身の身体をいじめ抜き、鍛えた上げたその手は少女らしい大きさに関わらずゴツゴツと硬い感触だった。

 

うーん。見た目は本当に可愛いのにこうも仏頂面だともったいねえな。いや、可愛いとか美しいとかペンテシレイアにとってとんでもない屈辱だろうから口には出さないけど。下手に伝えようものなら第二のアキレウスになりかねん。人間でしかないオレは速攻でゴートゥヘルである。エリちゃんの歌声と良いレベル。

 

「マスター。貴様今良からぬことを考えなかったか?」

 

「いえ!何にも考えてないですクイーン!」

 

「まったく君は本当に緊張感がないな」

 

それが君の良いところでもあるけどと、今まで沈黙していたデオンが口を開く。その手はすでに剣に添えられていない。もう大丈夫だと判断してのことだろう。

 

「なんだ、誰かと思ったがあの時の騎士か」

 

「改めて挨拶をしよう、誇り高き女戦士達の女王よ。私はシュヴァリエ・デオン。マスターを守る白百合の騎士だ」

 

「ああ。今更私の紹介など不要だろう。あの時我が精兵を抑えこんだその力。敵ながら素晴らしかったぞ」

 

「お褒めいただき光栄だ。しかし、あれはアストルフォや外的要因の力もあってのことだよ」

 

「謙遜することはない。戦いとは何を用いようと勝者が絶対なのだ」

 

ペンテシレイアの言葉にデオンは一度頭を下げた。敵同士で異文化の相手であろうと、やはり騎士として王に称えられるということは誇らしいことなのだろう。

 

「――どうだデオン。私の配下に入るつもりはないか?貴様程の腕前ならばすぐの上へと昇り詰めることはできるだろう」

 

どっちもかっこいいなとオレが見惚れていたその時だった。ペンテシレイアがとんでもない爆弾を投下してきたのは。

 

「えっ?」

 

「はい?」

 

「むっ、どうした?」

 

ポカンとしたオレ達の反応が理解できなかったのかアマゾネスの女王は不思議そうな表情をする。いやいや、ちょっと待って。デオンをペンテシレイアの配下に?つまりアマゾネスの一員になれと?女性しかいない部族の一員に?

 

「二度も言わせるな。さっきからそう言っているだろう。それともあれか、騎士として一度忠誠を誓った相手がいる以上、鞍替えなど出来ぬというわけか?」

 

「いや、確かにそれもあるんだろうけど……」

 

「マ、マスター。私は彼女にどう伝えればいいのだろうか……?」

 

「し、知らねえよ!」

 

ゴニョゴニョとデオンと小声で言い合う。だってほら、デオンの性別ってほら。……ね?

 

「ええい!はっきりしない!言いたいことがあるならとっとと言ったらどうだ!女王の言葉だぞ!」

 

痺れを切らしたペンテシレイアがついに怒鳴りだす。ビクゥ!と肩を震わせたオレとデオンは顔を見合わせて恐る恐る怒り心頭の女王様へと向き合う。あー、この後どんな反応されるんだろう。不敬とか言われて肉団子にされなければいいけど……。

 

そうなりそうだったらデオンを盾にして真っ先に逃げよう。大丈夫、今日のデオンには『月霊髄液』持たせてるから、スキル使えば3ターンくらい稼げるはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絆番外編

 

「し、死ぬかと思った……!」

 

「本当だね……。君があの礼装を持たせてくれてて助かったよ」

 

「まさか赤面して襲い掛かってくるとは思わんかった。いや、デオンの容姿を鑑みたら当然の誤解なんだけどよ」

 

「私自身、日頃から性別は誤魔化しているから間違っているとも訂正しづらかったからね。女王陛下には悪いことをしたよ」

 

カルデア内の廊下をテクテクと歩く。先程ペンテシレイアに真実を伝えた帰りである。あの後、ペンテシレイアに『デオンの性別は~』云々を伝えたところ、自身の勘違いを恥じたことの照れ隠しなのか彼女は赤面して攻撃してきたのである。もっとも、本気の彼女には程遠いものだったので2人だけでもどうにか抑え込むことはできた。それでも結構ギリギリだったが。

 

とりあえず、トロイア戦争の関係者であるヘクトールさんを紹介しておいた。今頃戦いの話にでも花を咲かせていることだろう。

 

「ところでマスター。さっきどこへ行っていたんだい?あとそのケースは?」

 

「ああ、ちょっとマリーさんの所にな」

 

「マリー?どうしてだい?」

 

「デオンに渡したいものがあったんだとさ。でも、良い機会だからオレから渡してくれって」

 

デオンの部屋へと到着したオレ達はお茶会の続きをするつもりだったのだが、その前に一度自分の部屋に来てくれとマリーさんに頼まれたのだ。

 

「それでその中身は?」

 

「えっと……その、これだ」

 

ケースを置き、その中身を取り出す。現れたのは青色のドレスだった。胸元に一凛の赤いバラ、腰元には青色のリボンが結ばれており、どこかデオンがいつも来ている服装に似ている。着る者のことを考えながらデザインされたのだと手に持つだけでよく伝わってくる暖かみのある贈り物だ。オレはそれを宝石を扱うように大事にデオンへと手渡す。デオンは突然のサプライズプレゼントを前にして言葉が出ないようだった。

 

「これを……マリーが?」

 

「うん。絆レベルMAXのお祝いだって。――って、ごめん」

 

「どうして謝るんだい?」

 

「これはマリーさんから渡されるべきだったよな。元々これは彼女がデオンの為に用意していたものだし。ごめん、やっぱり今から呼んでくる」

 

「……待ってくれマスター」

 

部屋を出ようとしたオレの手をデオンが掴む。ドレスを大事に抱えたデオンは俯いたままボソボソと言葉を紡いだ。

 

「……その、今から着るから見てくれないか。マリーには私からちゃんと礼を言っておくから。だから、まずは最初に君に見て欲しいんだ」

 

「……いいのか?」

 

オレの確認にコクリ頷くデオン。そのままオレを椅子へと座らせ更衣室へと消えていった。

 

待っている時間はそこまで長くはなかったと思う。生涯のうちに女装を何度もしていたデオンからすればドレスの着用などお手の物だっただろう。しかし、それでも何だか落ち着かないオレからしたら短い時間も酷く膨大に感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ど、どうかなマスター」

 

やがて更衣室から絶世の美女が現れる。青色のドレスはデオンに着られることによってその美しさをさらに増しているように思えた。まさしく今の彼女()は可憐な白百合。見る者を魅了する輝きにオレは思わず目を奪われていた。

 

「す、すげえ似合ってるよデオン。正直、ドレスを着ているお前を見るの初めてだったから驚いた」

 

「ふふっ。私も、もうドレスは着ることはないと思っていたんだけどね」

 

「何でだ……?」

 

オレの疑問に困ったような表情をするデオン。しばらく考え込んだ後、意を決したようにオレと向かいうように座った。

 

「――マスター。私の嫌いなことって何か覚えてるかい?」

 

「前話してくれたよな。確か、『笑われること』だったよな」

 

「そうだ。よく覚えてくれていたね。でも、どうして嫌いかまでは話してなかったよね」

 

そこまで言うと、デオンは一度深く深呼吸をした。話しにくいこと、なんだろうか。それなら無理に話さなくてもと口をつこうと思ったが、それよりも早くデオンの言葉が零れだした。

 

「私はスパイ後フランスに帰国する際、国から条件を言い渡されたんだ。それは()()()()()()()()()()()()。どうやら私の性別は賭けの対象にされていたようでね」

 

だから男性としての人生より女性とっての人生の方が長かったかもしれない、とデオンは語る。まるでただのお伽噺を話しているような他人行儀の話し方だった。

 

「年齢を重ねるとね、社交界に招待されても私は『見世物』になっていた。ずっと女装を続けている私は群衆にとっていい笑いものだったんだろうね。――だから、私は笑われるのが嫌いなんだ。それは、すごく辛いんだ」

 

今にも泣きだしてしまいそうな表情でデオンは笑う。絵画のような美麗さを見せる微笑み。そこに含まれるのは悲哀でしかない。国の為に精一杯尽くしたというのに、デオンを待っていたのは人間の醜い欲望の捌け口としての在り方だったのだ。

 

「何だ、それ……。そんなの、悲しすぎるじゃないか……!」

 

デオンがドレスを着なかった理由も今ではよく分かる。一種のトラウマだったのだろう。また笑われる、馬鹿にされるということがデオンにとってどれだけ辛いことなのかオレは分かっていなかった。今までの付き合いの中でももしかしたら知らず知らず酷く傷つけてしまっていたのかもしれない、そう考えると彼女へどんな言葉を掛ければいいのか分からなかった。

 

「ありがとう、マスター。でも、私はフランス王家に仕えた白百合の騎士。確かに辛いこともたくさんあったけど、それでも私はフランスが大好きだ。後悔は、してはいないよ」

 

それに、とデオンは言葉を続けた。座っていた椅子から立ち上がりオレの方へと歩み寄ってくる。歩き方まで優雅なその姿に見惚れつつも立ち上がる。今度は立った状態で向き合うような形になった。

 

「騎士としていられたからこうして君に出会えた。マリーやアマデウスやサンソンにも。これがいつか終わってしまう夢だとしても、今は君の騎士として居させてほしい」

 

花が咲くような笑顔でデオンは微笑む。さっきまでの悲しい笑顔ではなく本当の笑顔。正直、色々言わないといけないこともたくさんあった。だけど、今はそれらはあまりにも無粋だと何となく思った。

だからこそ。マスターとしてオレがデオンに伝えることは1つのみ。

 

「――これからもオレと一緒に戦ってくれるか、デオン」

 

「もちろんだよマスター。シュヴァリエ・デオン。――いや、『シャルル・ジュヌヴィエーヴ・ルイ・オーギュスト・アンドレ・ティモテ・デオン・ド・ボーモン』として、この存在が尽き果てるその時まで我が生涯で磨き上げた白百合の剣を君に捧げることを誓おう」

 

そう言って、デオンは笑う。つられてオレも一緒に笑顔を浮かべるのだった。




というわけで、エリちゃんとレイアちゃん(略称)が新たに加わりました!

いやー、エリちゃんはネタキャラのような感じですが、ぶっちゃけ性能はかなりいい感じですよね。バランスが取れているといいますか。流石は初期の唯一の金槍。

レイアちゃんは育ててみるとこりゃ強い。サポートもできる。バーサーカーだからもちろん殴れるでいい感じです。デレるとまた可愛いのもGood!

そして、うちのデオン君ちゃんがようやく絆レベルMAXになりました。今回はどちらかというとガチャの話よりこちらの方が比重が多かったかもしれませんね(笑)
アガルタではマシュがいない中、メイン盾として多くの強敵を抑えてくれたデオン君ちゃん。今後も頼りにしています。
というか今回マシュがいねえ……!

さて、FGOも2周年を迎えイベント盛り沢山ですね!そして作者、星5確定ガチャの誘惑の逆らえずついに初課金。10連一回分だけですが初めて石を購入しました。これで無課金勢から微課金勢にランクアップエクシーズチェンジです。

えっ?誰が出たのかって?それはそのうちまた執筆したいと思います。ヒントとしては僕はやっぱり最優のクラスに好かれるようです、ということですかね!

他にもホームズさんが実装だったり、まさかのリヨイベ開催だったり、新水着鯖の公開だったりと息つく暇もなく色々起きてます。リヨぐだ子の質の悪さに思わずドン引きしてしまいました(笑)

ちなみにホームズチャレンジは爆死しました。アニバーサリー礼装は手に入りましたが。ホームズチャレンジのガチャは特にネタもなく普通に爆死したのでカットしますね。

次はお待ちかね水着イベ。とりあえず最初の水着イベのガチャの話を書こうかなと思います。なるべく今月中に。あまりにも更新が遅すぎると反省しましたので頑張って書きます!

最後に、いつもコメントを下さる皆様。本当にありがとうございます。返信が遅れがちですが、必ず返信はさせていただきますので気長にお待ちいただけると嬉しいです。

ではでは、また次回!

PS
そのうち活動報告の方に現在のうちのカルデアのサーヴァントを書くかもしれません。作者も一端整理したくなりましたので。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。