うちのカルデアに星5の鯖がようやく来たんだけど、全クラス揃えるとか夢物語だよね?   作:四季燦々

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お久しぶりです!遅くなって申し訳ありません!
今頃になってようやく羅生門と鬼ヶ島のピックアップガチャの話です。

今回は意外な結果になりました。まさか貴方様が来るとは……!

あと、チャレンジクエスト。頼光さんはまだしも、ばらきー強すぎ。あんなにリトライしたクエストも初めてだぞ。でも、本人ポンコツなんだよなぁ……。

ま、まあ。気を取り直して。本編をどうぞ!

追記
ばらきーの口調が間違っていたので修正。ノッブと混ざってしまいました。ぐだぐたの呪いです(冤罪)


羅生門と鬼ヶ島で鬼退治に行って来たんだけど、鬼って容赦なさすぎだよね?

『鬼』

 

実際にその存在がいたのかいなかったのか、今もなお語り継がれる日本を代表する妖怪。創作の物語の中では人間と幾重にも戦いを繰り広げられてきた種族。圧倒的な膂力に頑強な肉体、日本中にその名を馳せ、人々からは恐怖の対象として見られてきた者達。

 

――まさか、そんな奴らと戦うことになろうなどと、一昔前のオレだったら考えられないよなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ばらきー、お前1ヶ月お菓子抜き」

 

「な、何故だっ!?」

 

「先輩、それはいくらなんでも……」

 

止めるなマシュ。この馬鹿子鬼には一度はっきりと言ってきかせないといけねえんだ。だいたい、こいつは事あるごとにキッチンに忍び込んではお菓子を漁るわ、すぐ施設の物壊すわ、酒を飲みまくって辺りを酒の匂いまみれにするわで散々カルデアの皆さんに迷惑をおかけしてんだ。それに今回のことはいい加減許せん。

 

「おいおい、こりゃ何の騒ぎだ大将」

 

それだけは!それだけはやめんかあっ!と泣き叫ぶばらきーの声がマイルームにて反響する中、頑として態度を変えないオレとそんな2人の間をオロオロと彷徨うマシュ。そこにライダースーツを纏いサングラスをかけたサーヴァントが訪ねてきた。つい先日の特異点で散々お世話になったゴールデンライダーこと、ライダーの坂田金時である。

 

「ゴールデンいいところに来た。ちょっと豆持ってきてくれ豆。あの緑色の枡に入った豆な。それ食って、あと相撲の礼装つけて1発こいつをグッナイさせてやれ」

 

「ふざけるな貴様ァ!今の吾は体力も霊力も普通のサーヴァントぞ!あんなダメージ叩きだす豆からの宝具など死んでも食らわんからなッ!」

 

「いや、いきなり宝具撃てとか言われても意味分かんねえじゃんよ。そもそもなんで鬼である茨木が泣かされてんだっつーの」

 

状況を全く理解できないゴールデン。とりあえず今にもオレに飛びかかってきそうな茨木を警戒したのか、いつでも対処できるようにオレの隣へと立ちながら目の前で涙目の子鬼を残念そうな目で見つめる。

 

「でっ、なんでこんなことになってんだ?」

 

「それが、茨木さんがまた悪戯を……」

 

「またやったじゃんよこいつ……。だけどよ、大将には気の毒だがそんなのはいつものことじゃねえか」

 

「はい、いつもであればもう少し穏便に収まっているんですが、今回はその、私が先輩と一緒に食べようと思っていたケーキを盗み食いしてしまったようで……」

 

マシュの説明にああ……とゴールデンは小さく呟くと呆れたように茨木へと視線を向けた。宿敵のそんな視線に居た堪れなくなってきたのだろう。茨木の視線が徐々に泳ぎ始める。

 

そう、マシュの言う通りこの悪戯鬼。よりにもよってマシュがオレの為にせっかく用意してくれたケーキを盗み食いしやがったんだ。これにはオレの怒りも有頂天。鬼退治も辞さない所存である。

 

「おい、ばらきー。オレが今まで何度お前の悪戯を注意してきたか分かるか?」

 

「し、知らん!そんなこと吾には関係ない!吾は鬼!人から恐れられ、食らい、奪ってきた存在だ!そんな吾が何故人間の言うことを聞かねばならんのだ!」

 

「反省の色無し。1ヶ月で少しは反省するだろうと思ったけどやっぱりダメみたいだな。3ヶ月に延長だ」

 

「あああっ!それだけはっ!それだけは勘弁してくれマスターッ!」

 

「自業自得とはいえ鬼が形無しじゃん」

 

隣の不良っぽいが根は真面目なライダーが情けない表情になる。強大な力を持つ鬼達を何体も目の当たりにしてきたゴールデンだからだろう。今の茨木の様子は彼の中での鬼の印象に何か改革をもたらしたのかもしれない。

 

「ったく、羅生門の特異点の時は傍迷惑で歪んでいたとはいえきっちりと鬼らしかったっつーのに」

 

「……羅生門の時と今の吾は別物だ。そんな話されても知らんもんは知らん」

 

羅生門。それはつい先日鬼ヶ島での特異点の少し前に発生した特異点である。聖杯で注いだ酒を飲んでしまった茨木がその途方もない魔力に取りつかれ、京の町で大暴れした事件のことだ。もっとも、鬼ヶ島でもまた別の人物が大暴れしてたけどな。

 

あの時の茨木はマジでヤバかった。何だよ、腕14体倒さないと本体にろくにダメージ与えられないって。正直ふざけんなって思える強さだった。つか、普通にやりすぎでしょあれ……一応ぶっ飛ばしたけど。

 

「おのれぇぇぇ……!酒呑さえいれば貴様らなどいともたやすく地に伏せてしまえるというのに……!」

 

「お言葉ですがばらきーさん。先輩は令呪を持っていますからどうあがいてもそれは無理かと……」

 

「うるさいわ団子モグモグ小娘が!気合の問題に決まっておろうが!」

 

「だっ……!?ち、違います!アレは礼装の為にたくさんモグモグしてしまっただけで、日頃の私はあんないやしんぼじゃありませんから!ほ、本当ですからね先輩!」

 

「お、おう。そこまで力説しなくても分かってるから」

 

あれっ?でもなんでわざわざ犬のコスプレしてたの?ただ食べるだけならコスプレいらないよね?私、気になります!

 

「そ、そういえばゴールデンさんは一体どうしてここへ?何か先輩にご用事があったのではないですか?」

 

「おっと、俺としたことが忘れるとこだったぜ。ちいっと大将に頼み事があってな」

 

「オレに?どうしたゴールデン」

 

無理やり話題を変えたマシュの空気を読んだゴールデンマジクール。キャスジルさん喜びそう。と、今はそんなことより話を聞こう。

 

「――さっきダヴィンチちゃんから聞いたんだけどよ、羅生門及び鬼ヶ島に関連したサーヴァントが召喚されやすくなってるらしいんだ。そこで大将に頼みてえんだが、頼光さんを呼んでやくれねえか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わりぃな大将。無理言っちまって」

 

「いや、ピックアップと聞いて黙ってるわけにもいかねえしちょうどいいさ。それに珍しくゴールデンが頼みごとをしてきてくれたんだしマスターとしてそれに応えねえと」

 

「まったく、うちのマスターはso coolだぜぃ」

 

「あっ、でも召喚できなかったらごめんな。こればっかりは時の運だから」

 

「おう、そこらへんは分かってるぜ。こうして実行に移してくれるだけで全然かまわねえよ」

 

ゴールデンの依頼を受けたオレは早速召喚部屋へと赴いていた。いつものように呼符と石をしこたまこさえてやってきたわけだが、よくよく考えたらこうしてサーヴァントの誰かに依頼されて召喚するというのは初めてかもしれない。

 

「にしても、どうして頼光さんを召喚してほしいって言ってきたんだ?もしかしてママが恋しくなったとか?」

 

「ち、ちげえじゃんよ!頼光の大将は仁義とか恩とかすっげえ義理堅い人なんだよ。だから、マスターに恩を返したいって常々思ってるはずだ。俺はその協力をしてあげてえって思っただけだ」

 

「あの鬼ヶ島でも思いましたが、ゴールデンさんは頼光さんのことを本当によく分かっていますよね」

 

「まあ、ちっせえガキの頃からずっと一緒にいたし、背中だって預けてた相手だからな。それくらい口に出さずに分かってねえと鬼達の相手なんざできねえのさ」

 

「お母さんだから、とは言わねえんだな」

 

「だからちげえって!あんじゃん!ほら……色々あんじゃん!」

 

顔を赤面させ必死に捲し立てるゴールデン。まったく、別に照れることねえと思うんだけどな。特異点で僅かな間とはいえせっかく再会できたんだからもっと素直に喜べばいいのに。まあ、そのあとすぐに血生臭い戦いに突入してしまったし、あと良い年した男としても色々複雑なのかもしれないけど。

えっ?じゃあオレはどうなのかって?そりゃあ、あの母性の塊(胸部)に埋もれたいと思っていますとも。

 

「おいマスター。あんなビリビリする牛女など呼ぶのではない。呼ぶのなら酒呑にしろ」

 

「だから選べねえんだっつーの。第一、お前はなんでついてきてんだ」

 

「クハハハハッ!酒呑が召喚されるかもしれないだぞ!吾が大人しくしてるわけがなかろう!」

 

「この酒呑大好きっ子め……」

 

さっきまで甘味を取り上げられてピーピー泣いていた姿はどこへやら。すっかりいつもの調子を取り戻したばらきーが高らかに笑う。こいつはゴールデンが鬼ヶ島だけではなく羅生門でのサーヴァントも召喚されやすくなっているという言葉を聞き逃さず、それなら酒呑童子も来るのではないか意気揚々とオレ達についてきたようだ。

 

「これ以上悪戯鬼が増えると流石にカルデアが混乱するぞ。第一、ばらきーですでに手一杯だっての」

 

「クフッ!酒吞さえいれば貴様など恐れるに足らず!すぐに食ろうてやるわっ!」

 

「そんなことしたらカルデア中のサーヴァントを敵に回すことになりますよばらきーさん。もちろん私も黙ってはいません」

 

「俺っちも流石にそれは見過ごせねえな。それに、ここにはお前以上の怪物がわんさかいるじゃんよ。俺だってあのハサンとかいう暗殺集団に目を付けられようもんならベアー号があっても逃げられる可能性は五分五分だろうからな」

 

「うっ……」

 

いやー、オレも色んなやつに好かれちまったもんだなー!確かに自惚れとかじゃなくてマジでそうなりそう。

 

ばらきーに付き合ってやるのもほどほどにして、そろそろ召喚を始めることに。今回は呼符が20枚ぐらい、そして石が10連を1回できるぐらい用意してきた。次の特異点のことも気になるが、せっかくゴールデンに頼まれたんだ。大盤振る舞いでいこうじゃねえか。

 

「というわけで呼符ゴー!」

 

何の材質でできているのか分からない符を召喚サークルに投げ込む。というか、いつも気にしてないけどなんでこんなので召喚できるんだろ?カルデアの召喚方法謎が深いわー。

 

パアァァァ!と召喚サークルを中心に光が部屋の中に溢れる。すると3本ラインの光の帯が発生したことによりサーヴァントが召喚されたことが分かった。浮かび上がるクラスカードには暗殺者の刻印が刻まれている。

 

「おおおっ!これは酒呑ではないかマスター!よくやったぞ!珍しく誉めてやろう!」

 

「いやよく見ろばらきー。確かにアサシンクラスのクラスカードだけどよ――」

 

「はい、どう見ても色は銀色です。稀にある金色への変化もないですし、これは星3のアサシンですね」

 

「銀色か……。銀色も嫌いってわけじゃねえが、やっぱりゴールデンに限るよな。さいっこうにクールでイカした色ってのはやっぱりゴールデンだぜ」

 

各々が反応を見せる中、ようやく召喚された人物が姿を現した。

その人物のことを一言で言うのなら、今の部屋の明るさに似合わない『黒』だろう。肌も変異が生きたのか黒。身に着ける軽装の服も黒。そしてまるで闇の一部のような雰囲気の黒。細身の体躯ながら、その実内面には80以上もの人格を有する多重人格暗殺者。

 

「――我ら影の群れを従えた以上は勝利も必至。ご安心召されよ、マスター」

 

暗闇の中から聞こえてくるような存在を感じさせないサーヴァント。百貌のハサンことハサンさんだった。

 

「あっ、ハサンさんだったか。よっす!」

 

「相変わらず大将はアサシン相手でも物怖じしねえな。今の俺っちはライダークラスだからさっきも言ったけどアサシンクラスは苦手だぜ……。まっ!元々バーサーカークラスだから苦手なのは変わらねえけどよ!」

 

「なんだ酒呑ではないではないか!帰れまっくろくろすけ!」

 

「ばらきーさん、その物言いはあんまりでは……」

 

軽い挨拶を交わす者、相性的に身震いするも最初から変わんなかったわ!と笑い飛ばす者、理不尽にかなり危ないことを言う者、それを咎める者。これぞまさしくフリーダム。

 

「……相変わらずマスターの周囲は混沌としていますな」

 

「ハサンさんの多重人格&分身も大概だけどね」

 

「言ってくださるな。これは我が刃、我が毒、我が罠。ありとあらゆる武器となるのですから」

 

「うん。いつも助けられてるからもちろん分かってるよ。でもさ、もう少し砕けてくれてもいいんだぜ?ずいぶん前にハサンちゃんにも言ったけど」

 

「主に使える身として、この礼節は当然です」

 

うーん。相変わらずハサン組は態度が堅い。ハサン先生はそれなりに砕けて話してくれるようになったけど、ハサンさんもハサンちゃんもまだまだ畏まってるな。キャメロットの時みたいに不遜な態度でも全然OKなのに。すごいのは英霊としての皆の力であってオレは普通の人間なんだからさ。おやっ?今どこからか一般人(笑)って聞こえたぞ?

 

「それでは我らが力が必要な時はいつでも申してください我が主。諜報、暗殺、拷問。主殿のご期待に添えるよう常に身体を備えておりますので」

 

「いや、流石に拷問とかはしないからね?それじゃ部屋で待機しててくれハサンさん」

 

「御意」

 

シュッと闇のようなサーヴァントが目の前から消え去る。流石は気配遮断A。瞬きした瞬間にはすでにその姿はなかった。

 

それから呼符での召喚を試みるものの、結局頼光さんを召喚することはできなかった。というか、バーサーカーのクラスカードすら出てこない。何たる不運。成果としては『起源弾』というキャスター殺しの礼装が手に入ったことぐらいだろう。ただでさえキャスター絶対倒すマンであるゴールデンライダーがさらに強化されてキャスター絶対殲滅するマンにランクアップしてしまうのは確実だろう。

 

「なんだか最近先輩の単発引きが栄えませんね。これはいよいよもって幸運上昇の波が収まりつつあるのでしょうか?」

 

「やめてマシュ、怖いこと言わないで」

 

まだ今年半年もあるんだよ?今になって運気が下がるとか恐怖しかないんだけど。もうすぐ夏だから海とか水着とかイベントがあるんだからさ(メタ)

 

「うがああぁぁぁ!どんなに待っても酒吞が現れないではないか!かくなる上はこんな役立たずの絡繰りなど破壊してくれるわっ!」

 

「ゴールデン、豆食って礼装装備して宝具開放」

 

「任せるじゃんよ」

 

「――と思ったけど、鬼は寛容だ。今しばらく我慢してくれよう」

 

「ああ、先輩やゴールデンさんが段々ばらきーさんの扱いがお手の物に……」

 

あれ?何かマシュが遠い目してる。どうかしたのか非常に気になるが、案に聞いてくれるなと言われているような気がするのでここは召喚に集中することにしよう。

 

「よし、じゃあ今度は10連召喚だ。頼むぜー頼光さん。ゴールデンの為にも来てくれよ~」

 

「だから俺は別にそういうんじゃ……」

 

「ゴールデンさん、たぶん先輩も分かっててわざと言ってると思いますし、ここは無視が安定ですよ」

 

「お、おう……。嬢ちゃん、なかなか大将に辛辣じゃね?」

 

「「えっ?別にいつも通りじゃね?(じゃないですか?)」」

 

「いや、まああんた達がそれでいいなら何も言わねえけどよ……」

 

「酒吞酒吞酒吞酒吞酒吞酒吞酒吞酒吞……!」

 

ほら、マシュの天然な毒舌って今に始まったことじゃないからね。もう耐性ついて逆に当たり前になっちゃってるからね。あと、ばらきー怖いぞ。

 

グルグルーと先程の呼符での召喚の時のように召喚サークルが回転を始める。まあ、とりあえず一発目は順当に礼装かなーと様子を見ていたのだが――

 

「先輩、私の見間違いでしょうか。何だかバチバチ言ってませんか?それも金色に光りながら」

 

「オレも同じ反応を目の当たりにしてるから間違いじゃないと思うぞ。いや、うん。マジかー」

 

どう見ても高レアサーヴァント召喚の反応です、本当にありがとうございました。おい、単発引きが調子悪くなってきたと思ったら今度は10連の運気が上昇ですか?片方が沈むと片方が上がるの?シーソーゲームなの?モグラ叩きなの?

 

パアッ!と一際大きな光が溢れ、召喚されたサーヴァントを示すクラスカードが現れる。刻まれる刻印は先程見たものと同じだった。つまりアサシンのクラスの高レアサーヴァントである。ちなみにばらきーは「ぬぬぬぅ……!」と手を合わせながら目を閉じて必死にお祈りしているせいでまだそれを見ていなかったりする。ゴールデンは顔に一筋の冷や汗を流していた。これから召喚される者にこれ以上ない心当たりがあるのだろう。そして――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アサシン、酒呑童子。ふふ。うちを召喚してくれて、おおきにありがとう。好きにやるけど――かまへんね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ですよねぇぇぇぇ!!」

 

思わず叫ばずにはいられなかった。

召喚されたのは小柄な体躯のサーヴァント。だが、油断することなかれ。この一見少女にしか見えないこの存在こそ、大江山に城を構えた鬼達の頂点の一角。ばらきーこと茨木童子が敬愛してやまない伝説の存在。星5アサシン『酒呑童子』。

つかサラッと来やがりましたよこの星5様。

 

「しゅ、しゅ、酒呑ンンンンンッ!!」

 

「おや茨木。あんたはんもおったんか。これは良い時に呼ばれたみたいやわぁ」

 

独特のゆったりとした口調。色々と露出が危ない服装。両の手に盃を持つも、一切の隙がない立ち振る舞い。聞いてる相手を蕩けさせてしまうような甘ったるい雰囲気を醸しながら、ばらきーをサラッと躱した酒呑童子はそのトロンとした視線をオレと隣に立つゴールデンに向ける。

 

「まさか、小僧の方から呼んでくれるとは思っとらんかったわぁ。――マスターさん含めて、ようやくうちを受け入れる覚悟をしてくれたんやねぇ」

 

「「――っ!?」」

 

ギラリと口元から覗かせる鋭利な牙を見たオレとゴールデンは、ゾクリと背中に冷たいものを感じ一気に距離をとる。判断とかそういうのではなく、生き物としての本能による反応だった。

これが『鬼』。日本に古来より言い伝えられてきた本物の絶対強者。

 

「なんやその反応。うち傷ついてまうわぁ」

 

「酒呑のすごさに恐れ慄いたのだ!流石は酒吞!」

 

「茨木、あんさん少し黙っときぃ」

 

酒呑の態度にガァーンとショックを受けるばらきー。そのまま隅っこの方で『の』の字を書き始めてしまった。まあ、待ち焦がれていた相手にあんな態度取られたらショックだよな……。ドンマイばらきー。

 

ペタ……ペタ……と酒呑童子が裸足で歩く音が召喚部屋に響く。先程は思わず引いてしまったが、今のオレには令呪があるし隣にはゴールデンもいる。最悪の事態にはならないはずだ。マシュには目線でいつでも外部と連絡とれるように指示してある。仮に酒呑童子が暴れるようなことになれば、すぐにでもカルデアのサーヴァント達へ招集がかかるはずだ。

 

「いきなり逃げるなんて酷いわぁ。うちに会いたくて召喚してくれはったんやないん?」

 

「……俺っちたちは頼光さんを呼ぼうとしてただけだ。お前じゃねえ」

 

「ということは今ここにあの乳臭い牛女はいないということやなぁ。これは良いことを聞いたわぁ」

 

「ちっ!俺としたことが口走るなんてな。coolじゃねえ」

 

「そないなことあらへんよぉ。小僧は昔からイケメンで落とし甲斐のある魂やさかい、もっと誇ってもかまわんよぉ」

 

「おめえに褒められても嬉しくねえじゃんよ」

 

傍から聞いてると軽口の応酬のように聞こえるが、両者の間にはピリピリとした雰囲気が漂っている。これは殺気だ。相手を如何に殺すかという戦う者の放つ圧力だ。最初から最後まで殺し殺される関係だった2人だからこその鋭い空気だった。

 

「小僧は相変わらずいけずやわぁ。マスターさんもそう思わへん?」

 

「そこでオレに振るのやめてくれませんかねぇ……」

 

「だってさっきから会話に入れへんで寂しそうにしとったさかい。すまへんなぁ、今の私はマスターさんの物やし。……マスターって言い方何だかしっくりこんへんし、旦那はんって呼んでもええ?」

 

「好きに呼んでくれて構わねえけど……えっ?契約してくれんの?」

 

「……?そのために呼んでくれはったんやないの?」

 

「いやまあ、契約を結ぶサーヴァントを召喚するつもりだったけどよ……。まさか、こんな素直に契約してくれるとは思わなかった」

 

「旦那はんも酷いわぁ……。うち、これでも旦那はんのこと前に見たときからええなぁと思っとったんよ?それにここに居れば退屈しなさそうやし」

 

それに小僧もいるわ牛女はいないわで高待遇やわぁと妖艶な笑みを浮かべる酒呑童子。とりあえず暴れたりする様子は無いようだし、これなら大丈夫そうだ。

 

「おい、大将。契約を結ぶのは大将の自由だから俺っちは何も言わねえけどよ、こいつの前じゃ油断するんじゃねえぞ。気づいたら溶かされて食われかねねえじゃんよ」

 

「そんな面白くないことせえへんよぉ。やるとしても、もっともぉっと旦那はんのことを堪能してからやわぁ」

 

「大将、マジで油断するなよ?」

 

大丈夫……だよね?えっ、マジで大丈夫だよね?気づいたら骨の髄までしゃぶりつくされてたりしないよね?

 

「じゃあさ、まずは信頼を得るという感じで一つ頼まれごとを任されて欲しいんだけど」

 

「なんや早速かいなぁ。旦那はんはせっかちやわぁ」

 

「おい、その妙にエロい言い方やめろ」

 

見た目ただの童女なのになんだその色気は。これが年のこ――

 

「旦那はん?今うちに対して失礼なこと考えなはったやろぉ。いけない御人やわぁ」

 

「いいいいいいいえ!?別に考えてねえですともはいっ!」

 

「うふふっ。次は許しまへんからなぁ」

 

ペロリと舌なめずりをして鋭い牙をギラリと光らせる酒呑。ちょっ、怖ええぇぇぇぇぇ!!何なのこいつ!?何で分かった!?直感のスキルでも持ってんの!?

 

「それで頼み事とはなんどすえ?夜のお相手やろか?」

 

「間接的な言い方を注意されたからと言って、直球でエロいこと言うなし」

 

というか、いい加減話を進めさせてくれ。

 

「ふふふっ。旦那はんをからかうの小僧と同じくらいおもろいわぁ。今はこれで満足やし、ほな、頼み事とやらを聞きましょか」

 

ようやく話を聞いてくれるようになった酒呑童子。その自由奔放な態度に疲れながら、オレは部屋の一角を指さした。

 

「――あいつをどうにかしてくれ」

 

オレが指さす先。そこにはいまだに『の』の字を書きまくるばらきー。同族の情けない姿に、流石に酒呑童子も小さくため息をつくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―後日談―

 

「ごめんゴールデン。マジでごめん」

 

「はははっ!もう過ぎたことだし構わねえよ大将!それに大将としては嬉しいんだろ?俺っちに気を使う必要はねえぜ」

 

「うん、正直アサシンクラスの火力不足には悩んでたし、酒呑が来てくれたことは本当に嬉しいんだけど。でもゴールデンからしたら嫌だったんじゃないかなって」

 

「別に嫌じゃねえさ。あいつはああ見えて約束事に関しては絶対に破らねえ。危害を加える気はねえって言ってんだし、契約時にも念を押しただろ。それなら俺も無駄に警戒する必要ねえじゃんよ」

 

「……酒呑のこと、よく分かってるんだな」

 

「まあ、頼光さんとはまた違った信頼ってやつだ。何度も何度も殺し合いしてりゃ、知りたくなくても自然とそいつのことが分かってくるのさ。鬼には鬼の誇りがあって、それを自分から汚すような真似は絶対しねえ。まあ、茨木の奴はちぃっとそのベクトルから外れちまってるけどよ」

 

「――そっか。オレとマシュの支えあいとはまた違った信頼関係……。うん、勉強になったぜゴールデン」

 

「おうよ!だがよ、大将。守る誇りがあるとはいえ鬼ってのはどこまで行っても狡猾だ。時には大将の手に余ることもあるだろうよ。そん時は俺っちを頼りな。足柄山の雷光ライダー、坂田金時。最高のドライブテクで駆けつけてやるからよ!」




ということで、今回は星5アサシン『酒呑童子』が来てくれました!やったね!
まさかこいつが来るとは思いませんでした。来たときは本気で『はっ?』となり、そのあと『よっしゃぁぁぁぁ!』となりました(笑)
この蕩ける様なボイス、たまらんです(変態)

それにしても鬼ヶ島はともかく羅生門はマジでキツかった。前回はまだ僕は参加できなかったのでよく分かりませんでしたが、ばらきーちゃんあんなに強かったんですね。それを屠っていたマスターさん達マジグランドマスター。

前書きでも述べているように、頼光さんのチャレクエは割とすぐにクリアできたんですが、ばらきーちゃんのチャレクエがキツくてキツくて。最終的にまたもやフレンドマーリンをお借りして、マシュで防御を固めつつ(復刻なので久しぶりにマシュを使いました!)、ジャンヌさんとマーリンでひたすら全体無敵。そんでその特攻礼装をつけた聖処女に腕をぶん殴ってもらってました。アレは寝不足になるぐらいしんどかったです。というかジャンヌさんマジ強い。

そして鬼ヶ島では、ようやく満を持してライダー金時を手に入れました!いや、元々持ってたんですが、第一再臨まで、宝具はレベル1で前回終わってしまっていたので最終再臨、宝具レベルMAXに持っていけて本当に満足です。というか、本当にこいつぶっ壊れ配布鯖でした。

さて、次回はアガルタのお話です。この回を投稿している段階ですでにクリアはしています。フリクエ含めて。個人的には面白かったんですが、皆さんはどうだったでしょうか?おそらく賛否両論あると思いますが、そこらへんはまた次回。

とにかく、うちの最初の金鯖であり、ずっと支えてくれていたデオン君ちゃんのモーション変更とメイド姿はすごく嬉しかったです。アガルタでも大活躍してくれましたよ!えっ?アストルフォ?持ってないです(血涙)

さて、アポも始まりHFももうすぐ公開です。水着イベだってありますし、Fate尽くしの夏になりそうですね!

次回も今回ぐらい遅れてしまうかもしれませんが、気長にお待ちください。ではでは!

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