うちのカルデアに星5の鯖がようやく来たんだけど、全クラス揃えるとか夢物語だよね? 作:四季燦々
今回はバレンタインイベでの出来事です。さあ、作者はえっちゃんを当てることをできたのか!?真実は本文の中です!
新宿は配信されてすぐの土日でフリクエ含めてクリアしました。超面白かったです。ストーリーもいいし、キャラもかっこいい可愛いし、戦闘楽しいしで良かったですねー。
とりあえず、うちに早くオルタ勢をお呼びしたいです。だから、ピックアップはよ!
えっ?サンタオルタに邪ンヌリリィ?新宿で大活躍でしたねー。
ピピピッ!ピピピッ!と一定のリズムを刻む電子音がマイルームに鳴り響く。モゾモゾと潜っていたシーツから手を伸ばし、枕元にあった音の発生源――カルデア式近未来型目覚まし時計を叩く様に止める。そのまま少しだけ起きようと試みるものの、真冬のベッドというある意味炬燵との二大巨塔のうちの一角に絶体絶命のところまで追い込まれてしまった。が、そこは人理修復の旅を続けた根性で乗り越え、寝ぼけ眼のままベットから起き上がる。
実は、今日はちょっとばかり早起きしておかなければならない用件があったため、朝の身支度をすませるとすぐにマイルームを後にする。向かった先は食堂。すでに起きていたブーディカさんに朝の挨拶をし、朝食をお願いする。作ってもらっている間、今回特別に貸してもらった冷蔵庫を開けて中の様子を確認してみた。
冷蔵庫の中には色々な形に整えた『それ』がトレイの上に規則正しく並べられている。これらはオレが今日という日の為に心を込めて作ったもので、サーヴァントの皆にプレゼントしようと考えているのだが――
「――皆、気に入ってくれるかな」
今日は1年に1度、気持ちを伝え感謝する日。本日1日はカルデアの職員達も英霊達もきっと落ち着かない1日になるだろう。
『バレンタインデー』。甘くちょっぴりほろ苦い、そんなオレの1日が幕を開けるのだった。
今回の催し、一言でいうと『大混乱』だった。それはオレだけではなくカルデア全体を巻き込んだ大変見事な『大混乱』だった。
カルデアには多くのサーヴァントがいる。オレが日頃から背中を預け、苦しい時も悲しい時も共に乗り越えてきた大切な仲間達である。今回はそんな彼ら彼女らに日頃の感謝の気持ちを込めてチョコを用意したのだ。
もっとも、日本のお菓子会社の陰謀に従うのであれば女性から男性へチョコを渡すのが主流。しかし、それは日本に限ったことであり、海外などでは普通に男性から女性へと送る場合も良くあるのだという。そしてカルデアがあるのは日本ではないため、そこら辺の主流はノーカンだ。
……一々回りくどい言い方をしたが、そこらへんは分かってくれ。こういう女性が積極的に盛り上がっているイベントに男として参加するのにはそれなりの気恥ずかしさがあるんだよ。まあ、男もそわそわして落ち着かないということもあるし、現にカルデアの男性職員達は朝から非常に落ち着きがねえし。研究や仕事続きでヨレヨレの白衣がいつもより綺麗であったり、ボサボサに放置している髪型が整っていたりと各々がいつもよりちょこっとだけ身だしなみに気を付けているのが分かる、チョコだけに。
「ねえ、マスター。私としてもそれは流石に寒いと思うんだけど……」
「えー、渾身のバレンタインギャグだったのにー」
「はいはい、面白い面白い。そんな寒いギャグは置いといて、もう他の人たちにはお礼はして回ったのかしら?結構な数があったわよね」
「その点に関しては抜かりねえよ。女性サーヴァントだけじゃなくて野郎サーヴァントにももちろん渡してきたぜ。お返しに色々もらってマイルームが溢れてるけどな」
「女の子としてはやっぱり複雑よねー。チョコ渡して、すぐにお返しもらえるのって」
「元々渡すつもりだったからな。もちろん、女の人たちにはホワイトデーに別で用意するつもりだぞ」
「……そういうところマメよね、あなた」
テクテクと隣を歩く少女――魔法少女プリズマ☆クロエことクロエとそんな会話を交わす。本来であればマシュが付いてくるはずだったのだが、彼女は今頃食堂で忙しなく動き回っていることだろう。理由を尋ねるなど無粋な真似はしないでくれよ?
「それにしてもわざわざ付き合ってもらって悪かったな。何か予定でもあったんじゃないか?」
「大丈夫よ、あなたにチョコ渡す以外に今日の予定は無かったし。それに、召喚の瞬間ってやっぱり気になるじゃない?」
そう、今回の護衛はクロエなのだ。先程も言ったようにマシュは忙しい。でも、オレにはある人物を召喚しなければならないという使命がある。そう……新たな眼鏡キャラをッ!
彼女との出会いはまるで夢のようだった。というかマジで夢だったんだけど。
突然オレは謎のロボットになっており、その彼女――『ヒロインXオルタ』通称えっちゃんと行動を共にした。とある惑星から脱出したり、学園生活を過ごしたり、ヒロインXと争ったりと、短くもそれはそれは濃い時間を過ごした。なんでも、彼女は対セイバーを掲げるヒロインXに対抗する対対セイバーのサーヴァントらしい。なにそれ、意味が分からないよ(QB)
ん?いきなりロボットになったとかそっちの方が意味が分からない?何を言ってんだ、ここはカルデアでオレはマスターだぞ?(説得力)
まあ、そんな感じでえっちゃんが召喚できるかもしれないというダヴィンチちゃんの報告により、予てから溜めておいた聖晶石と呼符を持ってこの召喚部屋へと赴いたのだ。
「それで、マスター。そのえっちゃん……だっけ?来てくれそうなの?確かあなたのステータス幸運Eだったわよね」
「あれ、なんで知ってんの?」
「知ってるも何もカルデアの職員達は皆口々に言ってたわよ。人理を修復したマスターは戦闘等ではずば抜けた才を発揮するけど、いざ召喚となるとてんでダメになるって。もしかして召喚部屋にあなたの幸運値に対する魔術的な妨害でも現れてるんじゃないかって調査と修理もしたそうよ」
結果何も異状なかったみたいだけど、とクロエは続ける。
えっ、何それ知らないんだけど……。あっ!もしかして以前一時期召喚が行えなかったのってその調査をしてたせいなのか!?じゃあ、あの時『何かあったの?』って聞いたら、『君は気にしなくていい。これは私達にも任せなさい。なに、別に修理してしまっても構わんのだろう?』とすっげえたくましい感じで言われたのもそういうことかッ!?
「うわ……それならカルデアの皆の分のチョコも用意するんだった」
「とは言っても、あなたサーヴァントの分だけで手一杯だったじゃない。気遣いも良いと思うのだけど、素直に甘えるのも悪いことじゃないと思うわよ?知らないふりの方がいいんじゃないかしら」
「うーん。だけど日頃感謝してるのには違いないからさ、在庫次第だけどあとで何か渡すよ」
「……はあ、しょうがないわね。それなら私も手伝うわよ。あんまりお菓子作りなんてしたことないけど」
「えっ?いいのか?」
「あなたがこのことを知らなかったということは意図的に隠されていたのだろうし、私はそれをバラしちゃったしね。職員の皆にお詫びも兼ねてって事よ」
「サンキュークロエ!助かるぜ!」
ようし!そうと決まったら、ここで気前よくえっちゃん召喚しちゃってチョコ作りに戻るぞ!
今回はいつもより気合を入れて準備した。石が30連分に呼符10枚。たぶん今までで1番1度の召喚数が多くなるのではないだろうか。つまり、それだけ今回の召喚にかけているということだ。
「おーし。まずは早速10連1発目だ!」
そりゃーと石を召喚サークルの中へと投げれる。グルグルと光が溢れるお馴染みの光景を見守っていると、早速サーヴァントが召喚されたようで光の中から人影が現れた。背丈的に女性のような気がする。おおっと!?これはいきなり大当たりかっ!?
「YES!YES!YES!キタキタァァァ!えっちゃんだろこれ!」
「うわ、なにこの人。テンション上がりすぎて流石に怖いんですけど……」
傍らに立つクロエが非常に失礼なことを呟いているが、今は別にどうでもいい。えっちゃんに会えるならそれぐらい気にするまでもねえわ!
そうして、これまたお馴染みの爆発的に輝く光明の中から1人の人物が文字通り飛び出してくる。
シュタッと華麗に着地した人物の特徴として最初に目に飛び込んできたのは、虎柄の着ぐるみパジャマ。頭には猫耳のようなジャガー耳がついているにも関わらず、普通に人間としての耳もあるという矛盾。ランサーのクラスであるはずなのに持っている武器はジャガーの手が付いた棍棒。見た目からすでに妖しいそのダメなお姉さん系のサーヴァントは――
「――ジャガーの戦士、ここに見参!タイガーじゃないからそこんとこヨロシク!そこのキミ、目を逸らさない!使ってみると案外強いぞっ!」
「帰れタイガー」
第七特異点でそれなりに世話になった色々常識的なものをぶっちぎってしまったサーヴァント。名をジャガーマンという。正直バーサーカーよりタチの悪い奴を召喚してしまった。
「へいへい、そこのマスター。何度も言ってるニャ。私はタイガーではなくジャガー。アーユーオーケー?」
「思いっきり英語じゃないですか。せめて中南米の言語使ってくださいよ、スペイン語とか」
「冷たいこと言うニャってマスター。マスターと私はテスカトリポカメイツじゃない」
「この生贄要求するウーマンめ。誰がテスカトリポカメイツだコラ」
お前と一緒にすんな。オレはまだ常識人の範疇に収まってるつーの。って、さっきから黙りこくってるけどクロエどうした?
「ふ、藤村先生……?なんで先生が召喚されてるの?」
「おや?おやおや?この依代となった人間と知り合いかニャ?この野性味あふれる身体、すごい重宝してるわー」
「というか、どうして先生の身体を依代になんてできるの?」
「聖杯の不思議POWERね」
「悔しいけど納得してしまった自分がいるわ……」
だから英語じゃねえかと再度ツッコむ。とはいえ聖杯と言われたら何も言えないんだよな……。流石は万能の願望器、やることなすこと規格外れで意味不明だわ。
「とにかく、あなたにはすでにいるジャガーマンの宝具レベル上げてもらうから、自分の部屋で待機しててください」
「ええー!せっかくこんな綺麗なお姉さん召喚したんだし、もっと楽しいことしようニャ」
綺麗なお姉さん(笑)ですね、分かります。
「――今すごく腹立ったニャ」
「き、気のせいじゃないですか。いいからあとでいくらでも話ぐらいは聞いてやるから部屋で待機しといてくださいって。こっちはまだ召喚が残ってるんですから」
「しょうがニャないニャー。じゃあ、部屋で待ってるわよマスター」
そう言い残し、ジャガーマンは召喚部屋を後にする。どうでもいいけど全然口調安定しなかったな。あと、野生の勘怖すぎ。
その後も召喚は続いたものの、現れたのはハサンちゃんハサンさんハサンちゃんと礼装といったラインナップだった。ハサンちゃんの押しが強いぜ……。可愛かったけど、とりあえずダヴィンチちゃんの下へ。えっちゃんはまだ来てないです。
「じゃあ、一旦出てきた礼装を回収するぞー」
「分かったわ。……あら?これイリヤかしら?」
「んー?おおっ!マジだ。何々、『チョコ・エンゼル』?なるほど、イリヤちゃんマジ天使ってことだな」
「犯罪臭がするからやめなさいなマスター。えーと、『好きなあの人にブレイブチェイン!』って……この情報あの子が考えたわけじゃないわよね?」
「流石にそれは……えっ?ないよね?」
ありえそうで否定できん。前にフォウ君の例もあったしね。うちの礼装達、超真面目に書いてある奴もあれば、どう考えてもふざけてんだろってやつもあるからなー。なんだよ、『カッコーの巣の上で』って。一言言っとくとリヨぐだ子は人類悪(断言)
「あれ?また藤村先生だわ」
「『ブレスフル・タイム』?へー、この人がクロエ達の先生なのか」
クロエが手に持つ礼装。そこにはたくさんのチョコレートにうっとりとする1人の女性が映し出されていた。この人がクロエやイリヤの世界で教師をしている『藤村先生』か。なるほど、確かにジャガーマンにそっくり……というかもう本人である。依代ってすげえな。
ってことは、イシュタルもそっくりなのかな。あの女神様結構うっかり属性持ってるけど、まさか依代の人もそうとかないよね?
「凛のこと?えっと、そ、そうじゃないかしら?」
なんだか思いっきり目を晒されたでござる。これはマジでうっかりさんなのか?
イシュタルの依り代となった人物のことを考察しながら礼装を回収し終わったオレ達は再び召喚サークルへと次の石を注ぎ込む。まあ、最初の10連から来るとは思ってなかったからね。大丈夫大丈夫、あと20連と10回単発引きもあるし流石に来るでしょ(フラグ)
そして再び発光する召喚サークル。その光の中からシュバッ!と華麗に飛び上がる人影。オレ達の目の前に降り立ったその人物は――
「――ジャガーの戦士、ここに再び見参!もう一度言うがタイガーじゃないからそこんとこヨロシク!」
「……おい」
「また藤村先生……」
「やあやあ、マスターに魔法少女ちゃん。このジャガーマンさんが来たからにはもう大丈夫。大船どころか箱舟に乗った気で安心するニャ!」
現れたのはつい数分前に部屋から見送ったジャガーマンだった。いや、確かにさっきもハサンちゃん連発できたし分からんでもないよ?でもさ、よりにもよってなんであんたなんだ。
「いや、もういいから。宝具レベル上がるのは嬉しいけどもういいですから。さっさとゴーホームしやがってください」
「ドライだにゃー。まあでも?私は良識あるサーヴァントだから?ここはマスターの指示に従っておくニャ!」
じゃあ、さらばニャー!と勢いよく召喚部屋から走り去っていくジャガーマンⅡ。その後は何故か出てきた清姫に死ぬ気でご退場願い、召喚された礼装を集めた。ちなみにえっちゃんはまだまだ来ない。
「あの、マスター。これ……」
『魔性菩薩』とかいうなんだかすごそうな礼装を拾っていたオレにクロエが気まずそうに話しかけてくる。彼女の方へと振り向くと、そこには2枚の礼装を差し出してくる彼女がいた。そして、その手に持っている礼装はというと……
「……『ブレスフル・タイム』」
「ねえ、流石に藤村先生来過ぎじゃないかしら。私ちょっと怖いんだけど……」
「オレだってこええよ。こんなに同一人物(依代だが)が次々召喚されると鳥肌もんだわ」
これさ、えっちゃんピックアップだよね?加えて言うならジャックちゃんとの合同ピックアップだよね?(メタ)
ハサンちゃん達はまだギリギリわかる。まだアサシンというジャックちゃんとの共通点があるし、同じように清姫もえっちゃんと同じくバーサーカーという共通点がある。
しかしだ、ジャガーマンに関しては何も共通点無くね?あの人ランサーだよ?確かに再臨したらヤのつく自営業みたいになってアサシンっぽくなるけどランサーだよ?まさか、依代の人の礼装がバレンタイン仕様だから召喚されやすくなってるとか無いよね?
「……まあ、流石に3回目はねえだろ。もし次来たらジャガーマンの宝具レベルMAXになっちまうし、そうそうこんな偶然も続きはしねえさ」
「どうしよう。うちのマスターがとんでもないフラグを立てた気がするわ」
「大丈夫大丈夫。いくらオレの幸運のステータスが低いからって、ピックアップに関係ないサーヴァントを立て続けに召喚するなんてアホみたいなことは起きないって」
「ねえ、なんで?なんで自分からフラグを強固なものにしていくの?やめときなさいってば」
それにこれだけ言っとけば逆転フラグも立つって。ほら、死亡フラグを立てまくって逆に生還フラグを立てるとかあるじゃん?それと一緒だ。
「さあ、そろそろ来てくれよーえっちゃん。これで30連目だ!」
これで持ってきた石の全てを消費したことになる。眩しく輝く閃光。そして、その中からまた新たな人影が現れたのを確認。よしよし、やっと来てくれたかえっちゃん。ようこそ、我がカルデアへ!
「――ジャガーの戦士、ここに三度見参!大事なことなので3回言うぞ!タイガーじゃないから私!」
「「――――」」
「おおっと!またまた私を引き当てるニャんてマスターやるじゃない!これはついに私を最前線で使えという神の通告では?さあさあ!敵の中に突っ込んで暴れろと命令してくれ!」
「――令呪を以て命ずる。自害せよランs「マスター!流石にそれはダメよッ!!」――ハッ!オレは今何を……」
速攻で令呪使おうとした瞬間、慌てたクロエに止められハッと我に返るオレ。あぶねえあぶねえ、あまりの急展開ととんでもない苛立ちに無意識に令呪使うところだった。
「……いや、いやいやいやいやいやいや。嘘だろ?ないわー、これはいくら何でもないわー」
「ええー?こんなにも美人で強いサーヴァント召喚しといて何を言ってるのかニャー。お姉さん、悲しいぞ?」
「――令呪を以て命ずる。自害s「だからダメだってマスター!気持ちは分かるけど堪えて!」――ハッ!またしても……」
そんなコントみたいなことを繰り返しているうちに10連召喚は終了。現れたサーヴァントはこのジャガーマンの他にハサンちゃんに清姫。ねえ、これえっちゃんピックアップだよね?依存系サーヴァントピックアップじゃないよね?
というか、召喚された礼装の中に見間違いじゃなければ『ブレスフル・タイム』が2枚ぐらいあった気がするんだけど。
「……どうしよう。なあクロエ、どうしたらいい?オレはもはや一周回って無に近いこのやり場のない怒りと絶望をどこに向ければいい?」
「ちょっ!?ヤバい目してるわよあなた!?しっかりしなさいよ!」
「おーいマスター、大丈夫かニャー?お姉さんが慰めてあげようかー?ケツァルコアトル以上の包容力をみせてしんぜよ!」
「あなたが原因よっ!いいから、さっさと部屋から出ていきなさい!次こそ令呪は発動されちゃうわよ!」
「おおっ!それは困るニャ!じゃあ、また後でねーマスターとちょっとやらしい魔法少女ー」
「うるさいわね!余計なお世話よ!」
バタバタと召喚部屋から退散していくジャガーマンIIIを見送る(3回目)。その背中を見て、オレはとてつもなく虚しい気持ちになってしまった。知らぬうちにツーと一筋の滴が目から零れ落ちる。
「あなたも良い年した男が泣かないの!ほら、まだ呼符があるんでしょ?チャンスはまだ残ってるわ」
「呼符……そうだ、そうだよな!まだチャンスはある!10枚あるから実際10連と大して変わんないよな!良し!オレ達の戦いはこれからだッ!」
「だからどうしてそうフラグを立てるのよあなたはッ!?」
オラオラオラオラオラ!と呼符を叩きつけるように召喚サークルに投げ込む。さあ、今度こそ!今度こそ来てくれえっちゃん!セーラー服という貴重な属性を持ってやって来たまえ!
眩く光る召喚の光が収まる。そして、全身全霊を懸けた召喚の結果は――――
「元気出しなさいってマスター。こういう日もあるわよ」
マイルームの前でクロエがオレを一生懸命慰めてくれる。そう、この言葉でもうお察しであろう。爆☆死である。呼符10枚使うじゃん?召喚されるじゃん?そのうち9枚が礼装なの。あっはははは!もう笑うしかないよね!しかも、そのうち3枚は『ブレスフル・タイム』。
ちなみに唯一召喚されたサーヴァントは荊軻さんでした。何でやねん。
「ほら、部屋にもついたし私はもう行くわね」
「クロエが天使過ぎてマスター辛い」
「流石に私はあの子の礼装みたいなのは勘弁ね」
じゃあ、今日はもう休みなさいなと、ヒラヒラ片手を振りながら去っていく魔法少女。そういえば結局カルデアの職員の人達の分のチョコ作れなかったな……。まあ、オレは今はこんなんだし碌な物は作れないから後日改めて渡すとしよう。
「はあ……」
ポスリとマイルームのベッドへと倒れ込む。洗濯されたシーツの良い匂いと柔らかな素材が包み込んでくれる。このままちょっと寝てしまおうかと思っていると、ピーという開閉音とともにマイルームの扉が開く。
「先輩!失礼します!」
開いた扉の先。そこには彼女がいた。桃色の髪をわずかに乱れさせ、緊張しているのかどこかギクシャクとしている少女。今日、オレが誰よりもチョコを欲しいと願っていた人物が扉の先に立っていた。
――何故かサーヴァントとしても武装を展開しながら。
「…………」
「…………」
「……カチコミ?」
「違いますからっ!?これは、その……気合入れです!」
斬新な気合の入れ方だな、おいと内心でツッコんでいると、マシュはもじもじとしながら盾を持っていない方の手を差し出してきた。その手の平に乗っているのは赤いシンプルな箱。これが何なのか分からないほど、オレも馬鹿じゃない。
「――今日は日頃お世話になっているマスターへ感謝の心をお伝えしたくて……。で、ですからこのチョコレート、受け取ってもらえますか?」
頬を赤くし恥ずかしそうに笑うマシュ。オレはその箱を宝石を扱うように大切に受け取る。
「――なあ、マシュ。中身見てもいいか?」
「あっ、は、はい!ですけど、あまり期待しないでくださいね?チョコ作りの経験なんて皆無でしたし、ブーディカさんに教わりながらだったので……」
不安そうに言うマシュの言葉を聞きながら、中身を揺らしたりしないようにテーブルへと置きゆっくりと開けていく。ラッピングされているリボンを解き、蓋を開ける。
「――すごいな」
現れたのはチョコレートケーキ。ハート型で真ん中にベリー系のフルーツ、彼女を象徴する白い盾のホワイトチョコ、真ん中にはマシュと筆記体で書いて飾られていた。
他のサーヴァント達の物と比べたら非常にシンプルなチョコだろう。まあ、彼女達は全員が全員個性が溢れすぎているというのもあるが。比べるなんてとても失礼なことだと重々承知しているがそれでもオレにとっては一番のバレンタインチョコだ。
「ありがとうマシュ。すっげえ嬉しい」
「よ、喜んでもらえたなら良かったです。先輩の下へと来る途中にクロさんと出会って、非常に落ち込んでいる聞いていたので」
「そうか、クロエが……」
「それなら日を改めた方がいいかと考えましたが、日頃の感謝を伝えるのは今日しかないと思ったので。すみません、強引な感じになってしまって」
「そんなことないさ。おかげで滅茶苦茶元気出た。……なあ、マシュ。これ今食べてもいいか?」
「い、今ですか?もちろん、それは先輩に差し上げたのでいいですけど……」
アワアワとテンパるマシュ。そんな彼女に癒されつつ、オレはフォークを食器棚から取り出して椅子に座りチョコレートケーキと対面する。本当のことを言うとこのまま永久保存したいぐらいなのだが、流石にそれは色々とアレなのでやめておく。だから、せめて心から味合わせてもらおう。
あまりにこのチョコレートケーキが尊過ぎて、フォークを入れることすら罪になるのではないかと錯覚してしまうがそこはなんとか押し殺していざ入刀。ハートの先端を切り取り、その部分を口へと運ぶ。もう見ていられないのだろうか。この時マシュは恥ずかしさからか目を両手で目を隠してしまっていた。
「――美味しい」
「ほ、本当ですか?」
「ああ、このケーキ本当に美味しいよ」
すごく温かい味だ。甘過ぎず、ビター過ぎず。食べる人のことを心から思って作ってくれたんだろう。なんというか、マシュの気持ちが伝わってきてすっげえ幸せだ。
「あっ、そうだ」
「……?先輩?」
オレはマイルームの冷蔵庫の中から、あるものを取り出す。皿の上に置かれたそれは、奇しくもマシュがくれたのと同じチョコレートケーキ。小さな星型のクッキーを乗せ、ホワイトチョコの四葉のクローバーを添え、同じくホワイトチョコでFrom ―― to Matthewと書いた。そう、オレがマシュの為に用意した日頃の感謝を伝えるバレンタインプレゼントである。
「オレからも日頃のお礼だマシュ。いつも傍にいてくれてありがとう。守ってくれてありがとう。これはオレの気持ちだ」
「先輩……」
「――これからもよろしくな」
「――はいっ!マシュ・キリエライト、これからもあなたの為に尽力します!よろしくお願いしますね、マスター!」
互いに照れつつも笑い合う。最近、こうしてマシュと笑い合う時間が増えた気がする。人理焼却を防ぎ、平和な日常を取り戻したことで、ありふれた当たり前のような時間を過ごせる世界になったからだと思う。
「そうだ。せっかくだし一緒に食べないか?お茶の用意をするよ」
「あっ、それなら私がしますよ先輩。先輩は座って食べててください」
「いやいや、マシュは座っといてくれ。理由はよく分かんないけどその格好をしてるってことは何かしらゴタゴタがあったんだろ?疲れてるだろうし、椅子に座って休んでてくれよ」
慌ててお茶を用意しようとするマシュを止めて、テーブルに座らせる。ちょっとだけ抵抗しようとしたマシュだったが、やがて諦めたようにストンと椅子に座った。
お茶を淹れてテーブルに戻ってきたオレは、マシュと自分のケーキの隣にそれを置く。そして、椅子に座るとマシュと向かい合うような形となった。
「じゃあ、いただきます」
「はい、いただきます先輩」
パクリとマシュからのチョコレートケーキをもう一口。うん、やっぱり美味しい。
「先輩のケーキもとても美味しいです。負けた気がしてちょっぴり悔しいですね」
「勝ち負けとかは置いといて、これでもかってぐらい気持ちを込めたからな。渾身の力作だ」
「そんな良いものを私がもらってもよろしかったんでしょうか?」
「当たり前だろ?それはマシュの為だけに作ったんだよ。むしろ他の奴になんかにやるもんか」
「あ、ありがとうございます……」
顔を真っ赤にしてちょびちょびとケーキを食べるマシュ。うん、調子に乗ってクサい事言ったけど、すっげー恥ずかしい。まあでも――
「来年はもっと凄いチョコを用意しますね、先輩」
「おっ、ならオレはそれを上回る凄いチョコを用意してやろう」
「も、もう!では私は先輩よりももっともっと凄いチョコを用意します!」
「じゃあオレはさらにその上のやつを」
「私はさらに凄いチョコを!スーパーです!グレートです!」
「オレはウルトラでギャラクシーなチョコを」
「子どもですかっ!?変なところで張り合わないでください!私の立つ瀬がないじゃないですか!」」
――彼女とこうして笑っていられる時間が少しでも続けばいいと、オレは幸せを噛みしめながら思うのだった。
おまけ
「そういえば先輩。えっちゃんさんという方は召喚できなかったんですよね?」
「うっ、思い出したくないことを。まあそうだけど……」
「クロさんが感心してましたよ。『マスターの幸運の低さはある意味宝具級』とか何とか」
「なにその表現、酷い。せっかくのセーラー服装備の文学系眼鏡女子だったのになー」
「……むう」
「どしたマシュ?」
「――先輩、私も読書は好きです」
「お、おう。知ってるけど」
「私も日頃は眼鏡してます」
「まあ、そうだな」
「なら、あとはセーラー服を用意するだけですね」
「……はい?」
「このケーキを食べ終わり次第、ダヴィンチちゃんの下へ行って用意してもらいます」
「ちょ、ちょっとマシュさん?いきなりどうしたんだい?」
「――先輩」
「な、なんでしょう?」
「私のセーラー服姿、楽しみにしていてくださいね」
ということで、バレンタイガチャではなんの成果も上げられませんでしたァァァ!(進撃感)
ちなみに、タイトルはえっちゃんの事ではなくマシュの事だったり。
ガチャですが、一応星5の礼装が来たんですけど、何故かタイガーフェスティバルな状況になってしまい。どうやら虎の呪いにかかっていたようです。
元々、ネロ・ブライトが来るだろうから石と呼符を貯蓄。しかし、実際はえっちゃん。ネロちゃまが来なかったのは残念でしたが、えっちゃん可愛いヤッター!ついでにジャックちゃんも狙っちゃえー!ということでいざチャレンジ。
結果、大☆爆☆死。本気で泣くかと思いました。
まあ、その後マシュからのチョコに全力で癒されたんですがね。もう、どこまでもマスターをダメにするデミ・サーヴァントですねこの子。
ちなみに、チョコは持っている全ての女性サーヴァントからはもらい、全ての男性サーヴァントには性別を変えてチョコを渡しました。うん、日頃お世話になってるしね。いつもありがとう、皆。
ところで、皆さんは最初のチョコは誰にあげたorもらいましたか?僕はどちらもデオン君ちゃんです。彼(彼女)にはFGOを始めた時から非常に助けられてきましたしね。一番の古株だったので。
ではでは!また次回お会いしましょう!次回は……新宿のお話かな?
PS
感想欄に小説と関係ないことを書いてしまうと消される可能性が高くなってしまうようなので、もし色々と報告や質問がある方はメッセージを送ってもらえると消されずに返信できると思います。よろしかったらどうぞ。