うちのカルデアに星5の鯖がようやく来たんだけど、全クラス揃えるとか夢物語だよね? 作:四季燦々
ちなみに今回はカルデア・ラジオ局ネタ有りなので一応ご注意を。皆さんもぜひ視聴してみましょう!非常に面白いですよ!
ひとりのリクさん、誤字報告ありがとうございました!
ガチャは舞えば出るってファラオに言われたんだけど、あれってやっぱり迷信だよね?
『監獄塔 シャトーディフ』
あの場所で過ごした7日間は、人理焼却を巡る旅の中でも一際異質なものであったと今でも思う。戦場では片時も離れなかったマシュという相棒とも逸れ、頼れるのは己の魂と戦いの時のみ召喚できる英霊達のみ。時々思い返す度にあれは本当に夢だったのではないかと考える。しかし、確かにあの7日間の間オレの肉体が魂を抜かれたような状態に陥っていたのは事実であり、関係しているオレとサーヴァント達には紛れもない記憶が残っている。
絶望に染まり、恩讐に抱かれ、悪という空間で戦い抜けたことは今振り返っても奇跡だった。もう一度同じことを繰り返せと言われたら、次こそはオレの魂はあの監獄塔に捕らわれてしまうだろう。
だが、そう恐怖する一方で、共に戦い、最後には敵対した1人の英霊。
「あの、先輩、今回先輩がどうしても召喚してみたいというサーヴァントがいることはすでに聞きました。マスターである先輩がそれを望むのであれば私は良いと思います。ですが……」
「んん?何か問題でもあったか?」
「問題、というわけではありませんが、ちょっと教えてほしいことがありまして」
召喚部屋にて。いい加減このくだり飽きたとか言ってはならない。まあ、とにかく今日も今日とて召喚である。正月の祝福ムードもすっかりと鳴りを潜め、通常運行モードもカルデアが戻ってきた頃。オレはあるサーヴァントの召喚にチャレンジするためにこの部屋を訪れていた。
今回オレがチャレンジするのは、
エドモンとの縁はそれはそれは密度の濃いものだったと今でも思える。突然魂だけ拉致られ、7日間も意味不明な塔に監禁されたのだ。おまけにこのまま何もしないと死ぬだの、どうにかしたれば戦い抜き試練を乗り越えろなどというブラック企業も裸足で逃げ出す真っ黒っぷり。なんとか英霊を召喚できたからいいけど、これオレの身体1つで乗り越えろとか言われたらただのムリゲーである。こちとら中身はただの一般人なんだっつーの。
紆余曲折あり、どうにか試練を乗り越え最後に立ちふさがったエドモンもぶっ飛ばして無事オレの魂はカルデアに帰還した。いやーあの時のマシュの泣きっぷりはすごかったね。だってオレの本体は7日間植物人間のような状態だったらしいしね。わんわん泣きじゃくるマシュを慰めるのは一苦労した。でも、不謹慎だが泣き顔が超可愛かったのでオレは的には得した気分でした。
さて、その泣き顔も可愛い後輩がオレへと疑問を込めた視線を送ってくる。いや、正確にはオレともう1人この部屋にいる人物に向けて、か。今回の召喚にあたり、オレはこの人物に応援を要求した。その人物とは――
「まっ、マシュ嬢が不思議に思うのは当然だわな。俺も意味不明だもん。おーい、マスター。俺なんか呼んだって全く役に立たないぞ。なんせ、俺は最弱のサーヴァントだからな!」
「別に戦うわけじゃないからいいんだよ。とりあえず、今回はよろしく頼むぜ。『アンリマユ』」
ニシシシッといたずらっ子のような笑みを浮かべながら思いっきり自虐の言葉を吐く人物――いや、英霊。そう、オレが今回応援として来てもらったのは自称最弱のサーヴァント。でもぶっちゃけその能力とか特性とか見たら超絶危険な英霊。エドモンと同じく
「何故今回に限ってアンリさんを?あっ!いえ、決してアンリさんが力不足とかそういうわけではなく純粋な疑問として」
「別に俺は気にしないぜー。なんせ自他ともに認める雑魚サーヴァントだからな。まあ、英霊には負けないって看板も抱えてるけどよ」
「そ、そんなことありません!アンリさんも先輩を支える大切なサーヴァントです!」
「……なあ、マスター。マシュ嬢純粋過ぎじゃね?あまりの眩しさに俺消えちゃうぜ?」
「当たり前だろうが。うちの大天使だぞ」
今更言われるまでもないわッ!
「マスターも本当にマシュ嬢好きだねぇ……。それにしても、俺も今回呼ばれた意味が分かんないだけど。クエストとかならまだ分からんでもねえけど、召喚に呼ばれても何にも役に立たねえぞ?仮に護衛ならこの前来た星5の……武蔵、だっけ?そいつ連れて来ればいいじゃんよ」
確かに。護衛的な意味なら武蔵ちゃんに来てもらえば盤石になるだろう。あの子メッチャ強いしね。ヒット数増やせるとかマジパネエ。だが、今回連れてきたのはそんな武蔵ちゃんではなくアンリ。もちろん、何も考えずに連れてきたわけではない。むしろ、今回の召喚はアンリにかかっていると言っても過言ではないのだ。
「――前回武蔵ちゃんが来て、オレは今一度自身の召喚について考え直してみて、あることに気付いた。時にお前ら。オレのところにどうして今まで星5のサーヴァントが来なかったのか分かるか?」
「先輩の幸運がすごく低いからですよね?」
「マスターの幸運が俺並みに低いからだろ?」
「ぐぎぎぃ……!た、確かにそれもある」
「いや、どう考えてもそれしかねえだろ。いい加減認めろよマスター。あまりにも星5が出なくて現実から目を逸らしたくなるのは分かるけどよ」
「シャァラップ!逸らしてないから!メッチャ現実見てるから!むしろ見過ぎで泣きそうなまであるから……!」
「やべえ、うちのマスターめんどくせえ……」
違うんだ。オレも最初はそう思っていたけど、よく考えてみたら来ない理由に思い当たったんだ。
「それで、先輩。その気づいたこととは何でしょうか?」
「マシュ、オレとお前が召喚する時、オレ達はいつも何を持っていた?」
「えっ?持っていたものですか?基本時には聖晶石に時には呼符。あとは出てきた礼装を回収する入れ物……それくらいでしょうか?」
「そのとおりッ!流石はマシュ!」
「えっと、ありがとうございます?」
そうだ。オレ達は召喚する際、
「――『触媒』だ」
「「触媒?」」
マシュとアンリがオウム返しのように言葉を繰り返す。『触媒』とはその英霊に関する物の事である。本来の英霊召喚であれば触媒を用意して、その英霊に干渉して召喚するのが一般的である。それとは違ってカルデアの召喚は触媒を用いず、石や呼符を用いて召喚するのだ。つまり、干渉する要素がない。だから、オレの下には星5が来ないのだと結論付けた。決してオレに運が無いとか、そういうわけではない、断じて。
「どうだ。これは盲点だっただろ?」
「「…………」」
ドヤ顔で語るオレとは反対に微妙な顔の2人。あれ?どした?
「あの、先輩。先輩のおっしゃりたいことはよく分かりました」
「そんで、分かった上で聞きてえんだけどよマスター。もしかして俺を呼んだ理由は――」
「ん?そりゃ、お前さんが
「「…………」」
オレの即答に困り顔になってしまうマシュ。うわ、こいつマジかよと、顔全体で表現するアンリ。
「その、先輩。確かに触媒があればサーヴァントを引き寄せやすくなるとは私も知っていますが、結局のところカルデアの召喚方式で召喚する以上、触媒は関係ないのでは……?」
「…………はっ!?」
「うわ、こいつマジかよ……」
マシュの申し訳なさげに伝えてくる事実に思わずハッとなるオレ。確かにそうだ。召喚の術式やらなんやらがカルデア式のまんまだったら触媒あっても意味ねえじゃん!というか、今度は実際に口に出しやがったなアンリ。
「い、いや、でもほら。今回は触媒になるアンリもいるし、多少は影響が……」
「あのな、マスター。確かにマスターの言ってたサーヴァントは
「……どうやっても?」
「どうやっても。第一、俺そのエドモンとか言う奴全く知らねえし。縁とか皆無だし」
「…………」
現実という名の凶器をオレに突きつけるアンリ。何故か気の毒そうな目でオレを見てくるマシュ。3人の間でものすごく気まずい雰囲気が漂う。
「――――よし、とりあえず召喚してみよう」
しばしの沈黙の後、とりあえずごり押すことにした。
「今のやりとり丸々カットですか先輩!?」
「こういうところはたくましいよな、うちのマスター」
うるさいうるさいうるさーい!(フレイムヘイズ感)
もうこうなったらどうにでもなれっ!触媒があろうと無かろうと知ったことかッ!どうせオレの幸運はEランク以下なんだ!当たるときは当たる!爆死する時は爆死する!それだけだ!
「あっ!待ってください先輩!」
うおぉぉぉ!と手に持つ石と呼符を召喚サークルの中に突っ込もうとした瞬間、マシュから待ったの声がかかる。ギリギリのところで投げ入れるのを止め切ったオレは何事かと彼女へと視線で語りかけた。
「これはダヴィンチちゃんに聞いたことで、眉唾物ではありますが、召喚の成功率を上げる方法があるそうです」
「それ、どうせ『自己改造』とか『変化』とかそんな感じのスキルを使え~とかじゃねえの?オレただの一般ピーポーだからそんなスキル持ってないんですけど」
「ぎゃはははっ!人理焼却を救ったマスターが一般ピーポーとか!謙遜し過ぎて嫌味に聞こえるぜマスター!でも俺はそういうのは大いに結構!嫌いじゃないぜ?」
「そういうんじゃねえっつーの」
本当に謙遜とかじゃないんだけど。実際オレが1人で救ったわけじゃないし、むしろ助けられた記憶の方がはるかに多い。と、今はそのことは置いといて。
「で、マシュ。実際のところどうなん?」
「――『舞う』と良いらしいです」
「…………はい?」
『舞う』?
「『舞う』ってあの『舞う』?ダンシングのこと?」
「はい。私も真偽の方はどうかは分かりませんが、エジプト式の幸運上昇のおまじないらしく、舞を舞うとその方の運気が上がるとか。ニトクリスさんが発祥らしいです」
「エジプトのファラオは一体何してんの?」
何?あの人も何か運に頼りたいことでもあったの?宝具の即死の確率でも上げたかったの?メジェド様も一緒に舞ったのかな?
「とにかく、効き目があるかどうかは分かりませんが舞ってみましょう!」
「ええ~。今から?オレ1人で?」
「大丈夫です先輩。マスターと常に共に在るのがサーヴァントの使命。サーヴァントはマスターと一心同体です。私もお付き合いします。……少し恥ずかしいですけど」
そう言ってほんのりと頬を染めつつマシュが笑う。こんな信憑性の欠片も無いことに付き合ってくれるうちの後輩マジ天使。寧ろ女神。いや、女神はやっぱ無し。ウルクに行った後だとなんか女神って例え使いたくねえわ。
「じゃあ、やるか。なんか特定の振りがあったりするのか?」
「いえ、特に無いそうですよ?自らが思うままに舞えばいいそうです」
「自由度高すぎませんかね、エジプト式……。まあ、適当にやってみるか」
「おおー頑張れマスター、マシュ嬢。俺はもう用無しみてえだし戻るぜー」
そう言ってさっさと召喚部屋を後にしようとするアンリ。そんな真っ黒野郎の肩をガシリと掴んでその歩みを止めさせる。
「――まあ、待てよアンリ」
「なんだよ、マスター。もう俺に関してはやることないだろ?」
「確かにそうだが。なあアンリ、お前暇だよな?」
「あん?まあ、暇っちゃ暇だけど。……おい、まさか」
「お前も舞え」
ニタリと悪代官のような笑みを浮かべながらオレはアンリの肩に置いた手にさらに力を込める。英霊とはいえ、自分で言っているように、実際アンリは最弱のサーヴァントとして名乗りに値するステータスだ。つまりは、魔力で強化してしまえば人間であるオレでもその筋力を御しきることはできるのだ。
「嫌に決まってんだろ。なんで俺がんな意味不明なことに付き合わなきゃいけねえんだよ」
「サーヴァントはマスターと一心同体。だろ?3人で舞えば確率上がるかもしれんし」
「一心同体は時と場合によりますぅー。サーヴァントでもマスターぶっ殺す奴とかいますぅー。あの青タイツとかもそういうクチだろ。あと、確率は上がんねえから」
「どうしても嫌か?」
「い・や・だ」
「…………」
「…………」
互いの間で再び漂う沈黙。丸々10秒は経過した後、オレはハァと大きくため息をついた。
「そうか、なら仕方がない」
「やっと諦めたか。なら俺はもう行くz「――令呪を以て命ずる」――おいバカ、やめろ」
右手に刻まれた令呪に魔力を注ごうとした瞬間、アンリが全力でそれを阻止しにきた。なんだ?今からオレは苦肉の策を取らなければならないのだが?
「――ったく、この世全ての悪である俺より悪だぞうちのマスター。へいへい、クソザコサーヴァントはマスターの命令に従いますよ、ちくしょうめ」
「あれ?この光景どこかで見たことがある気がします」
ぶつぶつと文句を言いながら降参するアンリ。顎に人差し指を当て、何かを思い出そうとするマシュ。この世の悪感情の集合体のような人物に悪人認定され、計画通りとキラの如き笑みを浮かべるオレ。舞う前からすでにカオスである。
「さあ、そんじゃいっちょ舞いますか!」
結論から言おう。来 ま せ ん で し た。
3人でわっちゃわっちゃと舞うこと数分。これだけ舞えば大丈夫だろうと意気揚々と召喚したものの、見事に爆死である。アヴェンジャーどころか普通のサーヴァントすら来ない。礼装も普通のやつばかり。完全敗北である。
「まあ、知ってた」
「うるせえよ。オレだって薄々感づいてたわ」
「すみません、先輩。私のせいで……」
「あー、マシュは全然悪くないから気にすんな。オレの幸運値が低いのは今に始まったことじゃねえんだし」
「そうそう。マシュ嬢は全然悪くないぜ。悪いのは関係ない俺を巻き込んだ挙句、こんな体たらくな結果を出したマスターだぜい」
「こいつの言葉に納得するのは釈然としねえが、反論できねえ……!」
おのれぇ……!やはり前回の武蔵ちゃんは偶然も偶然、何か星の巡り合わせが狂った結果だったか。やっぱり調子に乗んなってことかねー。星5が1度来てくれたからって浮かれんなって事かもしれん。
おし、少しばかりトレーニングでもしてくるか。確かダヴィンチちゃんが監獄塔に関する高難易度のクエストをシュミレーターで用意したって言ってたし、せっかくだしそれに挑戦してみよう。
「ということで、マシュ。トレーニングに付き合ってもらえるか?」
「はいっ、もちろんです先輩。マシュ・キリエライト、サーヴァントとしてマスターにどこまでもついて行きます!」
「そんじゃ、俺はいい加減帰るぜー。マスターもマシュ嬢もせいぜい頑張れよ」
流石にこれ以上拘束するほどオレも鬼じゃない。今度こそアンリを解放したオレとマシュは、まずはシュミレーターを使用するためにダヴィンチちゃんの下へと向かうのだった。
―トレーニング後―
「ダヴィンチちゃんも鬼畜過ぎだろ。いくら何でもボスラッシュは無いわー。トレーニングとはいえ死ぬかと思った」
「…………」
「あっ、すまんマシュ。ここまでやばいトレーニングだとは思わなくて。流石に疲れただろ?身体の調子とか大丈夫か?」
「い、いえ。身体の方は大丈夫です。お気遣いありがとうございます。その、ただ……」
「ただ……?」
「――ただ、あの時のことを思い出してしまって。先輩が7日間も目を覚まさなくて、私は不安に押しつぶされそうでした」
「マシュ……」
「このまま目を覚まさなかったらどうしようとか、目を覚ましても先輩が先輩じゃなくなっていたらとか。色々考えてしまって……」
「……そうか」
「すみません、暗い話をしてしまって。もう大丈夫ですから」
「――マシュ、よく聞いてくれ」
「先輩?」
「オレは絶対に君の前から消えたりしない。いや、もしかしたら絶対とは言えないかもしれないけど、それでも君に何も伝えずにいなくなったりはしない。今ここに、オレという1人の人間としてマシュへ、そしてマスターとしてこの令呪に誓う。だから、心配しないでくれ」
「…………はいっ!」
「よし。じゃあ、食堂にでも行ってゆっくりするか」
「――先輩」
「ん?今度はどした?」
「私も改めて誓います。貴方と共に未来を歩んでいくと。だから……これからもそばにいてくださいね、
「――ああ、これからもよろしくな」
正直、本気と書いてマジでこんな感じでエドモンピックアップ終了。何も面白味無いな(無情)
くそう、僕もちゃんと舞ってから引けばよかった。舞いとか知らずに先に引いちゃったからなぁ……。
次回はお待ちかね、バレンタインガチャのお話です!こちらはぜひ皆様に聞かせたいネタがあります!この小説でネタがある。この言葉の意味が分かるな?
では、また次回お会いしましょう!
PS
運営対応が厳しくなってきました。ならば、どうするか。消される前に読んでしまえばよかろうなのだぁ!……流石に小説が削除されたりしないよね?大丈夫だよね?