うちのカルデアに星5の鯖がようやく来たんだけど、全クラス揃えるとか夢物語だよね? 作:四季燦々
おそらく共感してくれる人もいるんじゃないかなと思います。
うちのカルデアに星5の鯖が来ないんだけど、あれって都市伝説だよね?
部屋中を明るく照らす光が触媒となっている十字盾の上へと収束していく。何かに対して呼びかけるように優しく集っていくその光は、折り重なるようにその力強さを増していき、やがて大きな光体へと変質していった。
その前に立つ人物が2名いる。1人は少年、よくて青年といった若年の人物。日本人らしい黒髪は光から発せられる圧力と風によって揺れ、同じく日本人らしい黒い眼はこの眩さの中これでもかと言わんばかりに見開かれている。
もう1人の人物は薄い桃色の髪を揺らす眼鏡をかけた少女だ。おそらく少年と同い年ぐらいだろう。どちらかというと平凡な顔立ちの少年とは違い、紛れもなく10人に聞けば10人が美少女と答える容姿。平時であれば柔らかな雰囲気が零れているであろうその表情は、今は緊張の面持ちで光の中心地を凝視していた。
そんな2人が見守る中、ついに光の中心から今までで一番の光が爆発するかのように輝きだした。あまりの光量に2人は目を潰されないように反射的に目を閉じる。大気中に溶けていくように光は霧散していき2人はようやくその中心地を確認。そして――
「――バーサーカー、スパルタクス。早速で悪いが、君は圧制者かな?」
「――帰れぇぇぇぇぇ!!!」
とりあえず少年は目の前の人物に全力を持って飛び蹴りをぶちかますのだった。
「もうスパルタクスはいいわ!!宝具レベルもとっくに5だよっ!何回出てくんだよ!?というか、どうせ出てくるならマタ・ハリさんとか出て来いやっ!いや、それもとっくに宝具のレベル5だけども!こう絵面的な意味で筋肉達磨とエロい姉ちゃんとじゃまだマシなんだよ!!」
「せ、先輩落ち着いてください!スパルタクスさんは何も悪くないです!それに、ここまで英霊に好かれるなんてすごく良いことじゃないですか!」
「筋肉ムキムキの変態パンツに好かれても嬉しくないよっ!?ちくしょうめ!」
召喚したスパルタクスをマッドで美人で、実は大本は男でいろいろぶっ飛んでいる天才の下へと送り出したオレは荒れていた。後輩系超天使な我が相棒にして最初のサーヴァントであるマシュに宥められ、徐々に落ち着きを取り戻していくが、召喚の度にこうも同じことが繰り返されると気が滅入るというものだ。
「はぁ~、どうしてうちにはこう星5のサーヴァントって来ないんだろ。オレ彼らになんか悪いことしたかな……」
「特に何もしていないと思いますけど、やはりそこは先輩のリアルラックの問題なのではないでしょうか?」
「人生やり直してラックにステ極振りしてこいってか」
やだ、うちの後輩系小悪魔なサーヴァント辛辣すぎ。世の中の不平等さと相棒の悪意のない言葉に突き刺されていたオレは辺りを見渡す。今回召喚したものがゴロゴロと転がるその風景を今一度確認してみた。
赤の黒鍵、緑の黒鍵、青の黒鍵、アゾット剣、アゾット剣、ライオンのぬいぐるみ、激辛麻婆豆腐、赤の黒鍵、青の黒鍵……
剣系の概念礼装多すぎィ!!うちのカルデアにはアーチャーのエミヤすらいねえんだぞ!?つか、黒鍵と麻婆とかどこの愉悦神父だこらぁ!?むしろここまでくるとなんでライオン出てきた!?サーヴァント出て来いサーヴァント!
「もうマジでなんでだよ。なんでここには同じサーヴァントしか出てこないんだよ。おかげでキャメロットじゃ火力不足で仕方なく令呪でブーストしまくったんだぞ……」
「エウリュアレさんとロビンフッドさんが異様なほど活躍しましたよね」
「あの2人いなかったら確実に途中で詰んでたわ。特にガウェインで」
魔力もカッツカツになりまくって干からびるかと思ったわ、と出てきた礼装を事前に持ってきていた箱に回収しながら愚痴る。とりあえずライオンは最近来たばかりの褐色白髪の小悪魔娘にでもやるとしよう。普段は無駄に妖艶な大人ぶっているが意外とこういうかわいい系好きそうだし。
「先輩、このあとどうしますか?まだ挑戦してみます?」
「いや、もう今日はいいや。というかどうせ星5なんて出ないだろうから今いる戦力の強化でも考えよう。主に種火とか再臨素材の優先度を」
「なら私もご一緒してもよろしいですか?この後は特に用事もないので」
「もちろんいいぞー。というか、マシュも一緒に考えてくれるとありがたい」
オレの返答の何かがお気に召したのかマシュは嬉しそうに笑う(可愛い)。彼女は礼装の入った2つある箱のうち1つを持ってくれた。本来であれば力仕事は男であるオレの役目なのだが、彼女はサーヴァントであるためその細い体つきからは想像もつかないほど力持ちだ。つか、ただの一般人であるオレよりも普通に力がある。腕相撲しようものなら瞬殺されるレベルで。
隣で楽しそうに笑う彼女に癒されつつ、オレ達は清潔感溢れる廊下を談笑しながら歩き始めた。
きっかけはほとんど偶然だった。人理継続保障機関、通称カルデアに足を運んだのは。そもそも魔術の家系に生まれはしたものの、ほぼ没落状態であったため魔術などには関わらず普通の生活を送っていたオレの下にカルデアから連絡がきたのだ。マスター候補の1人として選ばれた、と。
唐突な招待状になんでよりにもよってオレが、とまるで意味が分からんぞ的な状態だったが、退屈な生活に飽き飽きしていたため、思い切って遠路はるばる標高6000メートルもの雪山の地下に作られたこの施設へと訪れたのだ。もっとも交通費はカルデア持ちだったからというのもある。実費だったのなら絶対にこんな辺境な地には来ない。
なんか、長くなってきたな……。簡潔にまとめよう。
カルデアで事故に巻き込まれて他のマスター候補もろとも人理が滅ぶ(なお事故ではなく事件だったもよう)
↓
「お前これから人類最後のマスターな」
「ファッ!?」
↓
「サーヴァントと時代修正の旅へレッツゴー!」
「MA☆TTE!」
↓
魔術王が人理を滅ぼした?なにおー!ゆ"る"ざん"!
↓
とりあえず第七特異点待ち←今ココ!
というわけで、最初のサーヴァントであるマシュとともに今日まで何とか生きてきたのである。いや、ほんと今まで何度死にかけたことか。こちとら魔術の家系とはいえただのパンピーなんよ?魔力とかほぼ無いんだぞ?魔術とかカルデアの礼装使ってようやくってレベルよ?しかも1度使ったらリチャージに滅茶苦茶かかるんだぜ……。
こんなへっぽこマスターであるオレが手っ取り早く戦力を得ようと考えた場合、行きつくのは英霊召喚である。要は強いサーヴァントを召喚してそいつらに戦闘とか全部任せちゃおうぜというわけである。
そんなわけで聖晶石やら呼符やら使って召喚を行うわけだが、何故かオレのところには星5のサーヴァントが来ない。星4ですら100回引いて1回出るかどうかの割合で来ない。マジで来ない。呪われてるんじゃないかってレベルで来ない。
ただでさえクソザコマスターであるオレだが、おまけに運もないとかダメっぷりに拍車がかかりすぎてる。よくもまあこんな奴に人類の未来を託したものだと誰か笑ってくれ。ほら、笑えよ。早く笑えよ!いいから笑ってくれよぉ……!
「せ、先輩?いきなり笑いだしてどうしたんですか?というか泣いてるっ!?」
「なんかもう死にたくなってきた……」
「本気でどうしたんですか!?ああ、もうそんな顔して……」
そういってハンカチを差し出してくるのは、マイルームのテーブルを挟んで前に座る後輩系超天使(2回目)。うう、今はその優しさが身に染みるぜい……。
男としてもマスターとしても情けない姿を晒したオレは渡されたハンカチで今更恥も外聞も無いと目からの水を拭き取る。それを見てはマシュはしょうがないですねと苦笑しながら眼鏡越しにオレを眺めてきた。うちの相棒が天使過ぎて辛い。
そもそも、別に今のサーヴァント達に不満があるわけではない。聖人悪人狂人変人ともはやなんでもありな連中ではあるが、ここまで共に戦ってきた大切な仲間なのである。苦しい戦いを一緒に戦い抜き、死にそうなところを何度も助けてもらったりした。そんな奴らに不満など抱くわけがない。
「それにしても、本当にどうしたんですか。いきなり泣き出すなんてさっきスパルタクスさんに突撃したときにどこか痛めましたか?」
「い、いやそうじゃなくて……」
「そうじゃなくて?」
「なんと言うか、オレって頼りないマスターだよなぁって思って。魔術もろくに扱えないし、戦闘なんかじゃサーヴァントの後ろに隠れているだけの案山子だし、じゃあ戦力を強化して皆の負担を減らそうって思って召喚しても強いサーヴァント呼べないし……」
「先輩……」
「オレには皆を直接守る力なんてない。だから、強いサーヴァントを呼んで、少しでも皆の危険性が無くなればいいと思ったんだけど、そいつらには見向きもされない。これから戦いはさらに厳しくなるってのに、オレは皆の為にできることが……」
アカン、言っててさらに死にたくなってきた。自分で自分の不甲斐なさを列挙してみたけどこれは酷い。いつまでたっても魔術師として成長の欠片も見えず、戦力補給もできず、終いには後輩にこんな愚痴をこぼすオレをマシュや他のサーヴァントの皆も呆れてるよなぁ……。
「――――そんなことありません!」
「はえっ?」
「先輩は頼りないマスターなんかじゃないです!他の方達もきっと同じ気持ちです!」
またもや自嘲した笑いがこみ上げてきそうになっていたその瞬間、オレの意識を引き上げるようにマシュが鋭い声を上げた。あまりに勢いが強かったため思わず変な声が出てしまった。
「私達サーヴァントが戦えるのは先輩というマスターがいるからです。どんなに強い相手が立ち塞がろうと先輩と一緒なら乗り越えられる、後ろから私達を支えてくれる。そう信じているから私達は負けないんです。諦めずに立ち上がれるんです」
「支えるって……でもオレにはそんな力なんか……」
「確かに先輩の魔力はマスター候補の中でもぶっちぎりで少ないですし、ダヴィンチちゃんも『むしろなんで魔力持ってんの?アクセサリーかなんか?』と言っていました」
ここで上げて叩き落すうちの後輩マジパネェ。油断しているときに渾身のボディーブローとかノックアウト必至だぜ……!
「メドューサさんみたいに美人な方にはデレデレしますし、ブーティカさんみたいに胸の大きい人を見つけるとすぐ凝視してますし、ナーサリーさんみたいな小さい子達には異様に優しいですし……!」
「待てぃ!今それ関係ないよね!?あと最後のやつは誤解を招くからやめてくんないっ!?そして具体的に名前出すと信憑性が増しちゃうから!」
上げて上げてその後に全力で叩き落すなんてドSティックな技術どこで学んできたのっ!お父さんそんなの許しませんよ!
「それでも先輩は私達のマスターなんです。私達が最も信頼して、一緒に人理を救いたいと思える、そんな人なんです」
「マシュ……」
「だからそんな悲しいこと言わないでください。本当に先輩の言う通り先輩に何の力もなかったとしたら、私達はこれまでの六つの特異点のいずれかで倒れていたはずです。そうなっていないのは何より、私達のマスターが先輩だったからです。強力なサーヴァントがいなくても、カルデアの皆さんの力を存分に引き出せる先輩だからこそ私達は勝つことができているんです。こんなマスター、どの時代どの場所を探しても先輩以外いませんよ」
力強い瞳だった。けどそれは思わず目を逸らしたくなるような強さではなく、守りの力を持つ彼女だからこその温かさと包容力のある瞳。そんな、優しい強さだった。その優しさに包まれていたら、なんだかさっきまでの自分が情けなくなってきた。
「ごめん。ちょっとオレ自棄になってたかもしれねえ。そうだよな。星5のサーヴァントなんかいなくても皆がいるんだ。それさえあれば、誰にも負けないよな。例えあの魔術王だろうと」
そうだ、なに弱気になってんだオレは。戦力が少ないのは百も承知。魔力が圧倒的に少ないオレが切れる手札も限られてる。そんなの初めからずっと変わっていないじゃないか。今更楽な道に逃げようなんて発想がすでに間違ってるんだ。できることを100%やりきる、そんな基本的なことを忘れそうになっていたとは。
星5がなんだ。星4や星3、星2でも星5に負けない力を発揮してくれる奴らはいる。例えステータスで劣っていようとも、それをどうにかするのがマスターであるオレの役目だ。力が無くても考えるんだ。大事な仲間達と最善で最良で最高の結末を迎えるために。
「――ありがとな、マシュ。こんな頼りないダメダメマスターだけど、これからもその背中預けてくれるか?」
「――――はいっ!もちろんです!」
美しく咲き誇る花。その髪色もあって満開の桜のように咲き誇った笑顔を見せる彼女はとても美しかった。その笑顔は迷ってうじうじしてばかりのオレに、再び固い決意をさせる。
――この笑顔が溢れる世界を守るためならオレはいくらでも立ち上がろう。弱くても無様でも醜くとも歴史という大きな壁に抗おう。仲間たちと共に人類の未来だって救ってやろう。
「それじゃ、誰を優先的に強化するか考えるか」
「そうですね。最近入ってきたクロさんはどうでしょうか?宝具の回転率もいいらしいですし、強化していけばアーチャーとして秀でた力を発揮できると思います」
――行くぞ、魔術王。
「あっ、そういえば先輩。聖杯転臨って知ってますか?なんでも星5じゃないサーヴァントでも星5以上の性能にレベルアップできるそうですよ?」
「マシュ、さすがにこの話の流れでそれは台無しだと思うんだ……」
お久しぶりです。四季燦々です。
最近はまっているFGOで何か書いてみたいなと思い、衝動的に筆をとりました。あらすじにもある通り、これは僕のカルデアの現状で、書けば何か出るかなと思い書きました。
いや、ホントとりあえず誰でもいいので星5が欲しいです。でも課金はしたくないんです、貧乏ですから。ちなみにうちの主力は一番最初の10連で出たデオン君ちゃんです。あとは配布鯖ですね。
ああ、ネロ様来ないかなぁ。できれば嫁の方で。もしくはジャックちゃんとか。
おそらくFGOの小説は書いたりはしないと思います。ですが、感想やアドバイスなどを頂けると嬉しいです。ではでは。
追記
念願のネロピックアップ引きました。
ええ、来てくれましたよ。これからよろしくお願いします、カーミラさん(泣)