Fate/Grand Mahabharata 幕間 作:ましまし
上手く書けているといいのですが……
【プロローグ】
「見つけましたよ、マスター」
屋上から飛び降り、落ち続けるだけだった私をふわりと抱き留めたのは赤い髪と、金の鎧のサーヴァント。
スラクシャ……!
「そうです。色々言いたいことはありますが、まずは此処から逃げましょう……。余裕がありません、辛かったら寝てください」
え。
何を、と聞く間もなく。
容赦なく魔力を吸い上げ、現れた馬を認識したと同時に私の意識は途絶えた。
【マイルーム】
……えーと、スラクシャ。
「なんですかマスター」
その恰好……いや、なんでもない。
スラクシャはあの黄金の鎧はそのままに、いわゆるサリーと呼ばれるインドのドレスを身に纏っている。
鎧はそのままと聞くとゴツく感じるけど、実際はサリーの面積はそこまでなく、布が足りない部分を鎧がカバーして露出自体は少ない。
なにより、控え目な色のサリーが輝く鎧を引き立てていて綺麗だ。
……本人は嫌そうだけど。
「ステータスには突っ込まないんですか」
なんかもう、諦めた。
「そういえばこの布、なにやら認識阻害というか、アサシンの気配遮断のような効果があるようですよ」
何故でしょうね、と首をかしげるスラクシャに私も首をかしげた。
【サクラメイキュウ】
「私は新たなる月の女王。あなたたちには私の
迷宮の中で待ち受けていたのは表でもお世話になったマスターの1人、遠坂凛。
凛、なのだが……この変わりようは何と反応したらいいのだろう。
「…………」
ああ、スラクシャが! スラクシャが呆れたような戸惑ってるような、要するに微妙な表情で目線を彷徨わせている!
すごいぞ凛! フォローの達人であるスラクシャをここまで困らせるなんて!
「はぁ? この
全部。
「なんですって!?」
「マスター。オブラートに包みましょう。それだけでも少しは軋轢が……無くなるような、無くならないような」
頭殴ったら、治りますかね。
ポツリと、思わずこぼれたようなスラクシャの言葉に全力で賛同したくなった。
【用務員室】
空気が重い。
誰かこの空気を何とかしてくれ。いや、しかし折角の再会を邪魔するのもどうなのか。
用務員室に引きこもっていたマスター、ジナコも硬直している。
当たり前だ。自分のサーヴァントが突然別のサーヴァントに抱き着いたら誰だって驚く。
普通ならすぐに引き離さなければならないだろう、しかしそれはできない。
2人のサーヴァントの顔は、双子のようにそっくりだった。
声が聞こえた時はまさかと思った。勘違いであってほしいと願った。
オレたちはサーヴァント。いかに特別な状況だろうと、マスターが違う以上、いずれ殺しあわねばならない。
だが、扉を破り入ってきた見慣れぬ姿の、見慣れた顔を認識した瞬間――
オレは考えるより先に片割れへ腕を伸ばしていた。
【サクラメイキュウ2階層】
『下着だけを脱いで下さい』
……………………は?
聞き間違えたのかと思って、もう一度、ゆっくり言ってくれと頼む。しかし、現実は非情だった。
スラクシャを見るとこちらも絶句している。
よかった。ラニや生徒会の面々と違って、私のサーヴァントはまともだった!
だからと言ってこの状況は何も好転しないのだが。
……仕方ない、スラクシャ。
「私はなにも見ません、聞こえません」
瞬時に私の意志を汲んで後ろを向き、耳をふさぐサーヴァントの姿に目頭が熱くなった。
【サクラメイキュウ4階層】
「……まさか、お前と戦う日が来るとは」
マハーバーラタの大英雄カルナ。
同じくマハーバーラタの大英雄スラクシャの兄である彼は
彼女はそれを真っ向から見つめ返した。
「本当に、思ってもみませんでした。だからと言って――手加減はしないでください」
スラクシャ……。
「気にしないでください、マスター。あの僧も言っていたでしょう、間が悪かっただけです」
でも、
「大丈夫です。むしろ、生前の鬱憤を晴らす勢いで行きましょう」
お、おう。
ニッコリと笑うスラクシャに気圧されて頷いてしまう。
あれ、シリアスどこ行った?
【用務員室】
「そういえば、カルナさんの妹さんってどんな人なんスか?」
「……何故そのようなことを聞く? その端末で調べればいいだろう」
突然投げかけられた質問。
意図が読めずに質問で返せばジナコは呆れた顔を見せた。
「目の前に本人をよく知ってる人がいるのに、なんでわざわざ調べなきゃいけないんスか」
よく、知っている。
そうだろう。生まれ落ちたときから、常に側にいた。オレをよく見ていたアイツは、誰よりもオレを知っている。
オレもそのつもりだった。アイツがオレを知るように、オレもアイツを知っていた。
……知っていた、つもりだった。
今となっては口が裂けても言えない。本当に知っていれば、鎧を失ったオレを見たアイツがどんな行動をとるかわかるはずだった。
なのに、
「カルナさーん! 聞いてるー!?」
ジナコの声に思考が引き戻される。
マスターの質問。スラクシャが、どんな奴か。
「……オレとは違って、良く出来た奴だった。オレの至らぬところを補い、そのせいで迷惑をかけたこともある。だが、最期までオレを見捨てることをしなかった」
文字通り、最期まで。
伝わるだろうか。口下手なオレは妹がいないと正確に意図を伝えられない。
「ふーん……」
気のない返事に気づかれないよう肩を落とす。オレではスラクシャの事を伝えるには力不足だったらしい。
「なんていうか、あれっスね。カルナさん、妹さんのこと好き過ぎっしょ」
顔緩んでたッスよー。
惚気って書くのむずかしいですね!
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