Fate/Grand Mahabharata 幕間 作:ましまし
今年もよろしくお願いします。
もーいーくつねーるーとーおーしょーおーがつー
廊下を歩く私の横を、アステリオスに乗ったナーサリーライムとジャックが歌いながら通り過ぎて行った。何あれ可愛すぎか。
ていうか今の歌聞いて思い出したけど、そうか正月か。思い出されるのは毎年必ず流れる「餅を喉に詰まらせて死亡」のニュースだ。もっと楽しい思い出は無いのか私。
とりあえず確実に出るだろう雑煮やお汁粉には気を付けよう。
「あ、スラクシャさん。こちらにいらしたんですね」
「マシュさん、可愛い振袖ですね。似合ってますよ」
薄いアイボリーの振袖と花の髪飾りは一見地味に見えるかもしれないが、着物には小さい梅の花が大量に描かれており、濃い桃色の帯と袖口から覗く長襦袢、なにより彼女自身の髪の色が華やかなのでマシュさんの清楚さが引き立てられていた。
「ありがとうございます。先ほど、メディアさんたちが着物を持ってスラクシャさんを探していましたが」
「わかりました。全力で逃げ切って見せましょう」
「逃げるんですか!?」
逃げますとも。
私は6月の「気絶したと思ったら女装していた事件」を忘れてはいないぞ。
「マスターはどちらに?」
「……先輩なら、着物に着替えた後、清姫さんに挙式だと追いかけられて……」
「……それは……」
今頃カルデア中を逃げ回っているであろうマスターに黙祷。
「そういえば、食堂の方でカルナさんがエミヤさんに着付けをしてもらっていましたよ」
「そうなんですか?」
……あ、待って。兄上って着物きれるの?似合う似合わないじゃなくて、こう、体格的に。
「至急、布が必要ですね。ありがとうございます、私はこれで」
「はい! ……タオル、ですか?」
部屋で暇つぶしに作ったり編んだりして余りまくった布類を持って食堂の中へ入る。予想通り、赤い着物に黒い帯とシンプルな格好をしたエミヤが帯を持って困っている様子だった。
「兄上、エミヤ」
「スラクシャか。その布はどうした」
「布だと?」
それだ! みたいな表情のエミヤに笑って布を差し出す。
「さっきマシュさんが、こちらでカルナが着付けをしてもらっていると聞いたので」
カルナは細い。成人男性的にその細さはアリなの? って聞きたくなるほど細い。女の立つ瀬がないくらい細い。
ので着物を着ようとすれば確実に帯が余ると思ったのだ。一応持ってきたが案の定だったらしい。
「流石兄妹だな。有難く使わせてもらおう」
「サーヴァントになった以上、霊基再臨以外で見た目が変わらないのが残念です」
そもそも私らは鎧もあって着られる服に限りがあるというか、格差社会もあって似たようなのしか着られなかったしな。
カルナの着物は着物、というより書生服と言った方がイメージしやすいだろうか。
紺色の着物に白いシャツと黒い袴。普段目にしないような色の組み合わせは意外なほどカルナに似合っている。
……が、どこか寒そうというか、不健康そうに見えるんだよなあ。
それはエミヤも同じだったらしい。納得いかなそうに首をひねっている。
「もう少し明るい色が欲しいな。その、なんというか」
「寒さを我慢している貧乏学生感が否めませんよね」
「……………もう少しオブラートに包んで言えんのかね」
兄上色白いからなあ。
「せめて、マフラーでもあれば良いのだが」
「マフラー……。あ、少し待っててください」
持ってきた布の山を漁る。確かこの中に……あった。
「これなんかどうですか?」
「これは……スカーフ?」
「暇つぶしで大量に色んな物作ったんですよね。結局余ってるんですけど」
ちょうどこれを作り終わった時に賢者タイム入ったんだよね。何やってんだ、って。
「捨てようにもこんな一気に出すわけにもいかなくて……」
「ああ……。つい大目に作ってしまうと処理が大変なのは分かっているのだが……」
「話が噛み合っていないが」
ハッ。
「ゴホン。ではカルナ、どうだね? 君が良いのならこれにしようかと思うのだが」
「かまわん。どれも同じだ」
「はいはい、ありがとうございます」
「……流石兄妹だな。私にはさっぱりわからん」
苦笑しながらエミヤがカルナの首にスカーフを巻く……おお! 良い感じの差し色になった。
「似合います! 貧乏感がなくなりました!」
「そうか」
「だからオブラートに……」
今更カルナに遠慮したところでねえ。
「お前は着ないのか」
「着ません」
「かまわん。(スラクシャが作ったものなら全て問題ないので)どれも同じだ」
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本編のほうも更新しているので、まだ見ていない方はよろしければどうぞ