おいでなさいませ、血霧の里へ!   作:真昼

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アカデミー編 第四話

 朝、まだ日が昇ってから間もない頃、ユキトと満月は自室を出た。満月が取りに行く物があるといって、一旦ユキトと別れ。ユキトは前日に決めてあった集合場所の演習場へ赴く。

 集合場所へ着いたユキトは、影分身の術を行って、片方は演習場の片隅にある池へ向かわせる。本体は木蔭で瞑想の形をとり、チャクラを練る復習を行う。

 

 一時間程して、先ほどまで広場にはユキトと樹木と頬を撫でる風しか存在していなかった所に新たな気配が現れる。ユキトが目を開くと、ムズミ姉さんが広場に来た所だった。ムズミ姉さんと軽く挨拶を交わし、瞑想に戻るユキト。ムズミもユキトの隣に座り瞑想を始める。

 

 今日からユキトとムズミの二人は、満月から性質変化について学ぶこととなっていた。性質変化について、ユキト自身も前日から色々と調べれるだけ調べてみた。それで、わかったことがいくつかあった。

 この里は水の国というだけあって水の性質持ちが多いこと。ほとんどの中忍以上の者は性質変化の術を使えること。中忍になるための壁の一つとされている。さらに、上忍クラスにもなれば2つ以上の性質を使える者が多くなるらしい。また、血継限界の一つとして、特殊な性質を持つことがあるらしい。所詮はアカデミー生の身であるユキトには調べる情報にも限度があった。

 しかし、調べれた情報だけでも習得するだけで大変なレベルアップをすることは間違いない、そう確信してユキトは満月の講義を聴きに来た。

 

 ―――というか水分身の術とか水牢の術とかあまり知らないのによくできたな。もらった巻物通りにやっただけなんだけどな。

 

「二人とも来てるみたいだね」

 

 暫くして満月が駆けつけ、三人そろう。満月はユキトとムズミ姉さんに一枚ずつ小さな紙切れを渡した。

 

「これはチャクラ感応紙といってね。忍のチャクラの性質を調べるのによく使われる紙さ。この紙にチャクラを流しこむことで、そのチャクラの性質がわかるのさ」 

 

 その説明に愛読していたハンター×ハンターの水見式みたいだ、と前世で見た漫画のような展開に内心期待を膨らませるユキト。

 

 ―――どうしてもワクワクしてしまうのはロマンだからだな。そういや、原作でも主人公が似たようなことをやってたかな? 修行シーンは流し読みしてたからあまり覚えてないや。

 

「性質には5種類あってね。水、火、雷、土、風……このチャクラの性質から五大国の名前も取られたといわれてるよ」

 

「ボクの紙を見て」

 

 そういって満月が紙を前に出し、チャクラを流し込む。すると、いきなり紙切れが濡れ始め、ビショビショに変化する。

 目の前で起きた現象に、目を丸くするユキトとムズミ。

 

「ボクの性質は水だからチャクラを流すとこうなる。つまり……、水の性質なら紙が濡れるのさ」

 

「火なら紙が燃える。風なら紙が切れる。雷なら紙にシワが入る。土なら紙が崩れる」

 

 ―――本当に水見式みたいだ。もしかしたら、水見式でも似たようなことができるかもしれないな……。むしろ、なんで今までやってこなかったんだろう俺……。少し落ち込むな。

 

「アタシからやるわ!」

 

 勝手にテンションを上げ、勝手に落ち込んでいるユキトとは対照的に、ムズミはやる気満々のようだ。

 

「ハッ!」

 

 ムズミが気合の入った掛け声と共に紙にチャクラを流す。すると、満月と同じように紙が濡れ出す。やはり、水の里には水の性質を持つ人が多いのだろう、とムズミの結果に調べた事を頭の中で復唱するユキト。

 

「アタシは水の性質ね」

 

「ボクと一緒か。これならボクから術も色々仕込めるかな」

 

 満月の言葉に納得する二人。

 

 ―――確かに同じ性質なら修行方法も似るだろうな。さて、次は俺だが……。何の性質なんだろうか。これで、一人だけ違う性質だと修行をどうするかが問題になってくるな。なるべく、水だと嬉しいんだけど。

 

「じゃあ次、俺な」

 

 チャクラを流す事自体に慣れているユキトは特に気負うことなく、右手からチャクラを流し込む。

 

 すると……。

 

 手元から3分の2ほどまで、紙は凍り。先端にはチロチロと火が出て燃えているという不思議な現象が起きていた。

 

 ……。

 

 ―――聞いた説明と違うんだが……。一応燃えてるってことは火ってことなのか。

 

「満月。説明」

 

 とりあえず困った時の満月先生だ、とばかりに視線を満月に向けて、説明を求めるユキトとムズミ。

 

「……これは」

 

 しかし、ユキトとムズミの視線を受けている満月も困惑しているようだ。隣のムズミも何で満月が困惑しているのかわからない様子だ。

 

「ユキト……。君の両親は本当に忍者じゃないんだね?」

 

 いきなり妙な質問をユキトに始める満月。何を馬鹿な質問を、と返そうとしたユキトだったが、満月の瞳が思った以上に真面目だった為、今は別れて暮らしている両親の姿を思い出す。

 

「あぁ、一般人も一般人。隣の町で傘屋を開いてるぞ? 俺をスカウトした、青さんのお墨付きだ」

 

「へぇ、あの説教好きが言ったなら、そうなんだろうね」

 

 ユキトの返事を受けて、いきなり黙考しはじめる満月。

 

「どうしたのかしら?」

 

「さぁ?」

 

 急に黙って考え始める満月の姿を見て、ユキトとムズミ姉さんが顔を見合わせ、肩をすくませる。性質変化について素人同然な二人にとって、チャクラ感応紙が濡れることも凍ることも、燃えることも初めて見る現象だ。しかし、満月にとってはソレはまったく違うものだったようだ。

 

「……ユキトの性質変化は水、風、それに火で多分あってると思う」

 

 暫くしてから、考え終わった満月が説明を開始する。その言葉に驚くユキト。前日に調べた通りならば、性質を複数持つのは上忍クラスの筈だからだ。

 

 ―――俺は性質を3つ持ってるのか……。あれか? 転生特典か? そんなものないと思ってたけど実はあったっていうオチなのか?

 

 しかし、そんな簡単な話だけで、満月の説明は終わらなかった。ユキトが理解出来るように、一拍置いてから再び説明を始める満月。

 

「そして、チャクラが凍る……。これは氷の性質、氷遁の才能があるってこと。……血継限界の一つだよ」

 

 その言葉に、驚くユキトとムズミ。正確には、少し驚き方が異なっていたが、それに気づいていたのは満月だけだった。

 

 血継限界。それは忍者が巻物や口伝で伝える術と違い、遺伝によって一族内にのみ伝えられる特殊な術であったり、体質であったりする。どんな血継限界も、一様に強い力を擁している。そしてそれ故の弊害も多々あったりする。

 

 ―――確か……、原作でもそれに焦点が当たることもあったはずだ。

 

 満月の話は終わっていない。次に出てくる言葉が自分にとって非常に良くないものだと半ば確信するユキト。嫌な汗がじわじわと発生する。徐々に心臓の音が大きくなっていく。

 

「……氷遁使いは非常に強い力を持っていて、それ故に水の国では国を乱す呪われし雪一族と呼ばれ……。過去に迫害された歴史を持っている。現在ほとんどの血族は身を隠して暮らしていると言われている」

 

 満月な言葉にユキトの心臓はかつてないようなビートを響かせる。二人にさえ心臓の音が聞こえるんじゃないかと錯覚させる。

 

 ―――……これはなにか? 俺終了のお知らせか? いやいやいや、俺迫害されるの? 逃げればいいのか? ムズミ姉さんはオロオロとしてるし。満月は……。

 

「……ククッ」

 

 ―――満月のやろう! 他人事だと思って笑いやがって!! ぶん殴ってやろうか!?

 

「そんな顔をしなくても大丈夫だよユキト」

 

「へ?」

 

 満月の説明を受けて、ユキトは人生の瀬戸際とばかりに焦っていた。そんなところに、冷や水を浴びせる満月。

 

「呪われし一族ってのを広めたのは、元々他国の間諜なのさ。まぁ、一般人には広く伝わってしまって信じられてしまってるけどね」

 

「ぇ?」

 

「強い力を持つ氷遁使いの雪一族。これをどうにかしたかった他国の忍は雪一族を迫害されるように一般人に噂を広め、雪一族に地位がおびやかされると思った幹部の一人がその姦計に乗った。そして、雪一族は迫害を受けることになった。……まぁその後、水の国は雪一族が居なくなって戦力が落ちてしまい、その幹部は国家反逆罪として処刑されましたとさ。めでたしめでたし」

 

 満月の話から生死が掛かった話だと思っていたユキト。話が終わって、緊張して強張った表情から、ぽかんっとした呆けた表情に変わる。その表情の変化を見てクククッと笑う満月。そんな満月を見て、苦笑いしているムズミ。三者三様の表情だ。

 

「はぁ……。つまり、何の問題も無いのか?」

 

「ああ、中忍以上ならだいたい知ってるんじゃないかな? 下忍程度なら知らないかもしれないけどね。まぁ名家の出身者や上忍なら確実に知ってるだろう話さ。一種の戦訓なんだよ、雪一族の話は」

 

 ―――なるほど。昔そのような姦計が行われ、しかも地位に固執した幹部がその策に乗ったせいで戦力が落ちてしまった。以降、同じ過ちを犯さないように、中忍以上の者には戦訓として伝えられる……と。そして、伝えられた者は今まで信じてた噂が他国の姦計と知って、己は間違わないようにしようと、考えるというわけか。

 

 満月の言葉を一つ一つ、噛み砕いて理解していくユキト。先ほどまで、リズミカルな音を立てていた心臓を静まらせるように頭を回転させていく。

 

 ―――しかし、他国の里もえげつないことをする。一回広まった以上、噂を否定するのは難しい。しかも、絶え間なく戦争をしているわけで、恐れられた噂はさらに広まっていくってことか。そして、迫害を恐れた雪一族は忍びから距離を置き、隠れてすごす。その結果、真実は雪一族に伝わることはない。

 俺の両親のどっちかは、隠れ続けてきた一族の末裔なのだろうか。そうだとしたら、もはや自分が雪一族の血を引いてる、ということさえ知らないのかもしれない。

 ……まぁ単に転生特典って可能性もあるから、真実は闇の中。一般人に噂が広まっている以上、両親に雪一族ですか? とは聞けないしな。まぁ迫害されないってことがとりあえずわかって良かった。

 

「なるほどねぇ。もし両親のどっちかって言われたら、親父の方かなぁ。運動神経良いし。母親は運動まるっきりできないしなぁ」

 

「一概にそういうわけじゃないだろうけど、可能性は高いだろうね。あと、くれぐれも……」

 

「ああ、両親には何も聞かないし、伝えない。それぐらいわかってるさ」

 

「そういやムズミさんも、信じてたのかな?」

 

 ユキトと満月の目線がムズミの方へ向く。

 

「う……。そうよ……。信じてたわよ! 小さい頃から聞かされ続けてたし……ね。まさか、真実がそんな話だったなんて思わなかったわ」

 

 二人の視線に耐えられなかったムズミが疲れたように話す。ムズミの話を受けて、ユキトは里への浸透具合がどの程度か把握する。

 

 ―――実際、疲れる話だと思う。小さい頃からの価値観がひっくり返されたんだもんな。俺もびびりすぎて疲れた。

 

「そういや。このことは教官に伝えてたほうが良いのか?」

 

「いや、鬼灯家の方から上に伝えとくよ。レベルの低い教官が噂を信じているかもしれないしね」

 

「わかった。頼む」

 

「しかし、ユキトが氷遁使いとはね……。これでまた、楽しめそうだ。血継限界なんて滅多にいないからね」

 

 ―――あぁ、やだやだ。これだから戦闘中毒(バトルジャンキー)兼、殺戮中毒(キリングジャンキー)は。こちとら今の話で疲れてるというのに、これからの事考えると、さらに疲れてきた。

 

「まぁ、使い方わからないし。当分はお前たちと一緒に水遁系の修行を行うさ。暇な時間に色々試してみるつもりだけど」

 

「早く使いこなしてボクを楽しませてくれよ」

 

 満月を除き非常に疲れる話を終えて、ユキト達三人は改めて水遁系の修行から開始し始めた。

 

 

 

 

  ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 戦争中とはいえ、五大国と呼ばれる国の、しかも忍者の里がある街はそれなりに活気がある。道行く人々は、左右に広がっている店という店を目で物色しながらも、寸暇惜しんで歩いていた。第二次忍界大戦から4年。人々にとって生活がやっと安定して来たところだ。しかし、その何処か焦るように平和を満喫する人々の姿は、近くに再び大きな戦が起こることを予感させるものであった。

 事実、大国に挟まれている小国同士の国境線では、争いが長引いているという噂だ。これが拗れれば、三度目の大戦。つまり、第三次忍界大戦へと発展することになるだろう。

 

 任務の二日前、修行を終えたユキトはムズミと一緒にそんな偽りのような活気に溢れている街に忍具を買いに来ていた。任務で使うため、普段の訓練用の忍具ではなく、ちゃんとした、戦闘(ころしあい)も行える忍具を買うためだ。実家に行けばある程度揃う満月と違って、ユキトとムズミは急遽、買い揃えなければいけなかった。忍具を購入する代金に関しては、購入物一覧を予め作成しアカデミーに提出することで、先に支給してくれることになっていた。

 

「でも、ユキトはよくそんな年で忍者になろうとしたわね」

 

「単に生き残れる力が欲しかっただけだよ」

 

 忍具を取り扱っている店で一通りの忍具を買った二人は、ぶらぶらと町を歩きながら話していた。ユキトもムズミも今日は完全にオフの日としたようであった。

 

「ふぅん。それにしても、アナタの一族って隠れ住んでるんじゃなかったかしら。この前、隣町に住んでるとか言ってたけど。かなり里と近くない?」

 

「あまり町でその話はしないでくれよ。だけどそれは……謎、だなぁ。隣街に来たのは俺が生まれてからだし。元々親父が記憶喪失で行き倒れてるところを、母さんが介抱して、そしてお互いに一目惚れ。……って言ってたよ。隣のおばちゃんが。」

 

「……なんか、アナタのお父さんが一族の線が濃いわね」

「だな」

 

「でも、素敵じゃない!」

 

 ユキトの両親の馴れ初めを聞いて、ムズミのテンションがいきなりヒートアップし始めた。どんなところでも、女性って恋話が好きなんだなぁっと、ユキトは遠い目をしながら考えていた。

 

「記憶喪失でここが何処かもわからない傷ついてる一人の男。それを、偶然にも見つけ介抱する女性。そして……、お互いにお互いを一目惚れになり、恋に落ちる二人。ラブロマンスじゃない!」

 

 ムズミの瞳が妙にキラキラし始める。その姿にユキトはプレッシャーを感じて押され始める。

 

「素敵だわぁ! 最近流行してる女歌舞伎の演目みたいじゃない! アタシもいつかそんな恋をしてみたいわ」

 

 とうとうムズミはトリップし始めた。その姿を見て、このままでは何かが危険と判断したユキトは、起死回生の一手とばかりに言い放つ。

 

「ってか女歌舞伎って何?」

 

 しかし、ユキトが放ったその言葉は完全なる悪手であった。

 

「知らないの!? 本来、歌舞伎ってのは男性が演じるものなのよ。それもそれで風流でいいんだけどね! 最近流行ってるのは役者が全員女性なのよ! それで、演目も恋物語が多かったりして、女性に大人気なの! それにね…………」

 

 ムズミのマシンガントークがひたすら続いていく。その姿にユキトは完全に引いてしまって、話の半分も頭に入ってこない。

 

 ―――これはムズミ姉さんのある意味地雷を踏んだか? 語り始めると止まらないってやつか。……どうしよう。

 

「わかった!? それでさっき言った演目が今からブレイクするとアタシは思うの!! そうだわっ! 今から見に行きましょう!」

 

「……ぇ?」

 

「アンタたちはいつも修行ばっかりしてるでしょ! 少しは趣味ってものを作らないとダメだと思うの! 人生それだけだと殺伐してるわ!」

 

「そ、それなら満月も一緒にいる時の方が良くない?」

 

「アイツは連れて来ようと思っても意地でも来なさそうじゃない」

 

 ―――まずい! これは良くない流れだ。俺の第六感が今すぐ逃げろと告げている。とりあえず、瞬身の術でこの場を離れ……。

 

 そんなユキトの冴えわたった第六感も、暴走するムズミの前では意味を為さなかった。離脱しようとした、その僅かな踏込に入る為の一瞬。そんな僅かな溜めを突かれ、ユキトの腕はムズミ掴まれていた。

 

 ―――何ィ!? 瞬身の術を発動しようとした瞬間、腕を掴まれただと……!? しかも、握力が尋常じゃない!?

 

 離脱する方向へと顔を向けていたユキトが、ゆっくりとムズミの方へ顔を向ける。

 

「時間もあることだし、見に行くわよ!」

 

 そこには、物凄く良い笑顔をしたムズミがいた。ここまでの笑顔は見た事が無いとユキトは断言出来る。だが、ユキトは捕食者に掴まった気分であった。

 

 ―――あぁ……ズルズルと歌舞伎の演目場に引きずられ連れてかれていく。脳内でドナドナが流れているのは気のせいだろうか……。

 

 活気がある街の中で、一際女性たちの出入りが激しい建物に入っていくユキトとムズミ。ユキトに言わせれば、気づけば演目場に座っており、演目が始まって、気づけば終わっていたという感じであった。

 

 

「あぁ、やっぱり近松・恋道行はいいわぁ……」

 

 演目場から、人に流されるように出た二人はお土産売り場みたいな所にたどり着いていた。しかし、どうやらムズミはこちらの世界にまだ戻って来ていないようだ。

 

 ―――なんか前世でいう宝塚歌劇のような感じだった。まぁ確かに、面白かったのかな?

 

 ユキトの今の心境を例えるなら、絶対普段なら見ない番組を偶然見たり、不可抗力で見ることになり、見終わった時には、なかなか面白かったなと思う。そんな心境だ。

 

 しかし、それでもユキトが自分から見ようとは思わない。あまりにも男女比に差がありすぎたのだ。一人で来たとなると、周りが女の人だらけで非常に気まずいことになるだろう。周りの女性の目が怖かったということもある。

 

「小物売りの所へいきましょう!」

 

 ムズミはやっと戻ってきたと思ったらテンションはフルスロットル全開であった。色々物色してトリップして、また見回してを繰り返している。暫くして、ムズミは小物売りの間にあった展示物の中でも一際目立つ所に飾られていた綺麗な女物の羽織が飾ってある所で止まって、またトリップし始める。

 

「いつか、こんな羽織を着て任務に行きたいわ」

 

 ―――……いやいや、こんな派手な物を羽織ってたら、居場所とかすぐにばれないか!? っていうかそれはどんな任務だ!? トリップしすぎだろ!?

 

「あら、そこの男の子がこういう綺麗なのを羽織るのも風流だと思うわよ?」

 

 ユキトがムズミのトリップ内容に心の中で突っ込みを行っていると、展示の案内係のお姉さんに声を掛けられた。

 

「確かに! それもありですね!」

 

「あと…………」

 

 その言葉に即座にトリップから復帰するムズミ。案内係との会話が盛り上がり始め、二人で会話が進んでいった。その間、ユキトは何故か言い知れない孤独を味わい、遠い目をしながら自分の存在について哲学的な疑問を浮かべるのだった。主には『俺、何でこんなところに居るんだろ?』であった。

 

 

 

「どうしたんだい、ユキト。今日は忍具を買いに行ったんじゃないのかい?」

 

 あの後も、ムズミに連れまわされたユキトは寮に帰る頃には、いつもの修行以上に疲労が襲っていた。あまりにも疲れており、それが顔に出ていた為、満月に心配されることとなった。

 

 

  ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 任務一日前、各自の修行の成果を報告する。といっても、たった一週間なので劇的にレベルアップをしているわけではない。ただ、満月に散々しごかれたうえに、相当必死に修行を行ったムズミは下忍クラスではあるが、感知の術を使えるようになっていた。そして、改めて自分たちの術を確認しあったり、連携の確認を行った。

 勿論、三人共戦闘が起こるような任務ではないと思っているが、万が一のため戦闘が起きた時の対処や陣形を決めた。いざという時に、混乱するよりはよっぽどいいからだ。

 前衛は水遁忍術を多く扱え、体術にも秀でてる満月。中衛とフォロー役を影分身の術や医療忍術、体術などバリエーション豊富な俺が。後衛に戦闘力は低いが、感知の術を扱え、全体を見渡せるだろうムズミ姉さんが務めることになった。

 

 準備は十分に行った。

 

 そして、次の日。

 

 実地研修という名の任務が始まる。




雪一族に関して以下考察。
① 白の額には霧隠れの里の額当てがある。
② 白の存在を青が知っていた。
③ ①②より白は里で修行を行い、下忍にはなっている。
④ 白の言うとおりだったら、ばれたら即抹殺の筈なので③と矛盾している。
⑤ 穢土転生の術で白が現れ氷遁を使った時、霧隠れの里じゃなさそうな忍びが呪われし一族とか叫んでいる。

以上より、本文のように考察しました。実際、土の国とか姦計とかしそうじゃないですか。先代土影と先々代水影はライバル関係だったみたいですし。

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