新しい世界で俺は忍者になる!   作:ルーニー

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ある意味で難産でした。


パーティで嫌な空気出されると萎えるよね

両親に言われてから気づいたんだが、いつの間にかクリスマスだった。周りはもみの木にきれいな飾りつけをして、子供がつけたのか色とりどりな光が明るい昼間でも輝いていた。12月も終わりに近づいているということもあって空気が冷たく肌を突き刺すが如く痛さも感じるが、こういう空気の中で体を動かす時ほど気持ちのいいものはない。体の奥底からあふれ出るかの如く熱に外気に触れることで冷やされていく体のなんという気持ちのいいことか。ここ半年近く続いているモチベーションの低さとは別にこの中をランニングして気持ちよくなろうという気分でいた。

 

そう思っていたのに、どうして俺は見覚えのある車の中で縛られているのだろうか。デジャヴを感じる。

 

「あんた、また走りに出ようとしてたわよね。今日は空けときなさいって言っておいたわよね?」

 

呆れたように深くため息を吐きだすのは小娘。頭痛がすると言わんばかりに頭を横に振り、また深くため息を吐く。

いや、確かに言われてたけどあれって今日の夕方にタヌキの入院している病院へ行くって話であってそれまでは何もなかったはずじゃなかったか?

 

「……あんた、本当に会いに行くだけだと思ってたの?」

 

怪訝そうな表情でそういう小娘だが、それ以外に何があるのだろうか。少女と小娘、あと運動音痴が一緒に行くらしいことは聞いてるのだが、こんな大人数で何しに行くのだろうか。

 

「あんた、本当に世の中の行事に興味ないのね。普通クリスマスといえばプレゼントを交換するでしょ」

 

まぁ、あんたに常識を求めるのは間違ってたけど。なんて続けてまた深くため息を吐き出す小娘。そうか。普通はプレゼント交換するものなのか。

 

「まぁ、今回はプレゼント交換というよりプレゼントを渡すために行くんだけどね。入院してるのにプレゼントを準備なんてできないでしょ」

 

ほーん。今回そういう目的で行くんだ。俺なんも考えずに行けばいいやって思ってた。

 

「だから、どうせ行くだけでいいやとか思ってるだろうと思ってたから、今からプレゼントを買いに行くわよ。お金は心配しなくていいわ。私が預かってきてるから」

 

なんで小娘が俺のお金を持ってるんだ。そう思って確認したら先生経由で両親に連絡がついて俺が公園に行っている間に両親から預かってきたらしい。おい、なんで小娘を信頼してお金を渡してるんだ。財布ごと渡されてるのかよ。しかもなんか結構な金額入ってるし。

 

「あまり時間も多くないわけだし、近くのデパートでいいわよね」

 

どうせ良くないと言ったところで行かないという選択肢が与えられないし、他に代案があるわけでもないから大人しく座ることにした。

タヌキに渡すもの、ねぇ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「着いたわよ」

 

暗くなってまだ間もない時間。病院の前に一台の車が止まった。大きさやその形から高級車であろうことが予想できるその車から、少女と少年が1人ずつ降りてきた。

 

「結局こんな時間までかかるとは。別に良かっただろこれ買わなくて」

 

「どうせ筋トレしかしないんでしょ。お金もおばさまから出てたんだし、いいじゃない別に」

 

少年は手に持った茶色の紙袋を見てため息交じりのボヤキに、少女はあきれたような表情を浮かべる。

 

「少女は少女で先に行くし、ってか少女が行ってるならお前も先行けばよかっただろ」

 

「1人で放っておけるほどあんたに信頼があると思ってるの?」

 

呆れた表情を浮かべる少女に、解せぬと渋い顔をする少年。その後も少女の文句を右から左へ受け流して病院へと入り、目的の病室へ向かう。その最中でも説教のごとく出される少女の小言にげんなりとした表情を浮かべていたが、さすがに目的の病室に近づいたら少女も小言を言うのをやめる。病室の前につくと少女が少年へ大人しくしてなさいよと一言いい、その言葉に解せぬと表情をゆがめるのを無視してノックをしてドアを開ける。そこには少年たちが予想していた楽し気な雰囲気の病室はどこにもなく、あったのは不穏な空気で満たされていた部屋だった。

 

「お前らクリスマスだってのに病室で何してんだ?」

 

「っ!お前!」

 

その元凶であろう人物たちに目を遣りつつあきれたような声色で溜息を吐く少年に、一部を除いた全員が驚きの表情をあらわにしていた。お前、クリスマスを祝うという殊勝な心掛けなんてあったのか、と。

 

「……赤チビ、何かしたなら謝った方がいいぞ」

 

「チビっていうな!つうかなんであたしが何かやった前提なんだよ!」

 

「運動音痴はなにかやらかしたら即謝るタイプだし、お前らも謝ればだいたいは水に流すタイプだろ。だったらキツいこと言うお前が何かやらかして謝ってないとしか思えないんだが?」

 

やれやれと言わんばかりに首を振る様子に怒り心頭な様子で襲いかかろうとするが、暴れては不味いと思ったのか肩をつかんで思い止まらせようとする。その様子を見てこれだから子供はと言わんばかりにこれ見よがしに深くため息を吐いた。その態度にまた怒り心頭という表情の少女を尻目に、ふと金色の髪を二つに括っている少女と目が合った。しばらくジッと金髪の少女を眺め、それをどうしたらいいのかとおろおろし始める少女だったが、このやり取りに身に覚えがある少女たちはまさかと思い頬を引くつかせていると、少年が不思議そうな表情で金髪の少女に声をかけた。

 

「……そこの金髪、誰だ?」

 

「やっぱりかこのバカは!」

 

それを見て怒りのままに耳をつかんで引っ張ろうとするが、それを察知してたのか伸びてくる手を上半身を動かすだけで避けていく。苦々しい表情をしながらも名前を紹介されるも、覚える気はないのかどうでもよさげな返事を返すだけだった。

 

「なぁ、さすがに会ったことぐらい覚えとるやろ?」

 

「クラスメイトの顔も覚えてないから、たぶん本当に覚えていないんだと思う」

 

「……忘れられてたん?」

 

「うん」

 

苦労しとるんやなぁ、と図書館で出会った友達への同情と、やっぱり他人を覚える気のないバカへの呆れが混ざった複雑な表情を浮かべる。

 

「しかし、入院してるって聞いていたけど、なんだ。顔色悪くはないな」

 

ベッドで起きている状態の少女にのんきな表情を浮かべる。確かに入院と聞くと具合が悪そうだというイメージが強いが、いつも苦しんでいるというわけでもない。今回みたいににぎやかにしていても問題ないぐらいには大丈夫だというと少年は納得したのかしてないのかよくわからない気の抜けた返事を返す。

そして思い出したかのように手に持っていた茶色の紙袋を渡される。聞けばクリスマスのプレゼントだというが、まさかそんなものを持ってくる日が来るとはと驚きを隠せずにいた。最も、一緒に来た人を見ればその子が買うようにしたということは理解できたが、それでも買ってくるとはと思わずにはいられなかった。

形や大きさを考えると本かなと思い、断りを入れて紙袋を開ける。そこに入っていたのは、『一から始める人との関係づくり』というビジネス本。

 

「これはあんたに必要なもんやろ!」

 

思わず叫んでしまったが、その本のタイトルを見た全員がその通りだとうなずく。金髪の少女はうなずいてもよかったのかわからないのかオロオロとしていたが、少年は特に表情を変えることなく、むしろ不思議そうな表情をしていた。

 

「お前学校に行けてないんだろ?だったら社交的になれる本でも買っておけば治ったときに役に立つだろうと思ったんだけど、いらなかったか?」

 

「そんな気遣い欲しくなかったわ!」

 

もらったものを突き返すようなことはしたくはなかったが、いやする気はないのだが、ブーメランを投げてきたこいつには突き返したい。そう思ってしまっても仕方ないと少年以外のこの場にいた全員がそう思った。

 




この小説を書いていて一番難しいのは名前を書かずに表現しようとするところですな。なんでそんなことしてるのかと言われたら、もうずっと名前出てないし今更出すのもなぁという感じもあるのでなんとなく出しません。ただ出したい気持ちはめっちゃ出ますね。表現力のある人がうらやましいです。
そして今気づいた。主人公空中で戦えないじゃん。どうしよう。

作中でキャラクターの名前を出すか出さないか

  • 読みにくいから出してほしい
  • どちらかと言えばほしい
  • 別にどっちでもいい
  • いらねぇってばよ!
  • そんなことよりも修行だ!

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