やはり俺の青春スポコンは間違っている   作:鉄瓶28号

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お久しぶりです。大学が始まり体調を崩してしまいました。

今回から本格的なテニス会です。コツ等はあくまで自分の経験で書いているので他の方、特に経験者の方は違和感を持つかもしれません。もし「他にもこんなコツあるよ」という方がいればお教えください。よろしくお願いします。


彼に「足りないもの」を見つけるために、強大な敵にも立ち上がる。

「岡田サービスプレイ!」

 

ついに始まってしまった…

戸塚の前情報曰く「ライジングフラットの使い手」だそうで、言ってしまえば全国的にも珍しい選手だそうだ。バウンドする球が上がりきる前に叩く"ライジング"とネット上スレスレを通す必要のある"フラット"を使いこなす岡田は大胆かつ繊細な技術を持ち合わせていると言っていいのだろう。そんな相手に俺のテニスが通用するのか、否通用するはずがない。

だがしかし「自分の足りないところ」を探し出すのが戸塚からのお達しである。それなら俺に残された道は一つだけ。

 

「本気でやるしかな」

パァン!

 

はい?えっ、今の何。あっ、サーブ??あんな速度、八幡新幹線ぐらいしか見たことないよ??全国区になるとこの速さのサーブが普通になるの?

 

「15-0」

 

ここまでの相手だ、本気でやらなきゃ自分の悪いところが見える前に1セットなんて簡単に取られちまう。あ、さっき言いたかったのはこれです。ラケットを握り直し構え正面から岡田を見つめ直す。

よく見ろ…よく見れば触るくらいなら出来るはずだ…!

ルーティンを終えた岡田がトスを上げる。一番高くまで上がったところを…叩く!

 

「くっ!」

 

届かないか!球を見るだけじゃ俺の反応じゃ届かない!今の俺には打ってから動くようじゃこの相手には到底届かない、そういうことか…?ならばどうする比企谷八幡。バクチでも打ってみるか?いや、それじゃああまりに無謀すぎる。何かあるはずだ。考えろ考えろ。…そうだ身体の開き具合とラケットの振りを見るのはどうだろうか。そうだ、それである程度の範囲に絞ってみよう。

 

「30-0」

 

岡田はまた、空高くにトスを上げ…身体を大きく開きラケットを肩から振り上げる…スライスか?つまりコースは…

 

「ワイド!」

 

よし、何とか触った!!ボールは返ら…ないか…!

 

「アウト!」

「くそっ」

 

コースが分かってもまだ触るので精一杯だ。これだとサービスゲームは岡田の一方試合になるぞ。…しかし今の俺にはこれで精一杯だ。とにかくこれで返して何とかラリーに持っていくしかない。

 

「40-0」

 

今のでうまくいったんだ、この方法はきっと間違いじゃない。次もこれでやってみるか。

岡田はラケットの振りとほぼ同時に身体を開く。これはフラットだな。そして…

 

「ボディ!」

 

正面に来た球を回りこみラケットを伸ばす。触ってくれ…!

 

「ネット。ゲーム、ウォンバイ岡田。ゲームカウント1-0」

 

ストレートでキープかよ…。俺と岡田の間にはどれくらいの差があるのだろうか。それを考えるだけで冷や汗が止まらなかった。

 

 

 

「は、八幡は勝てるだろうか…」

「いや、流石に勝つのは無理なんじゃないかな…」

 

いくら成長の早い八幡でも、全国レベルの相手岡田君に勝てるわけがない。それだけに3本目でサーブにかすった時はひどく驚いた。どうやら八幡は僕が言った「足りないところ」について自分で補完しようと頑張ってるみたいだね。

 

「あ、材木座君。そろそろ試合の時間じゃない?」

「む、もうそんな時間か。我も出向いてくるか!では戸塚氏、出陣してくるぞ!」

「あ、いってらっしゃい。頑張ってね!」

 

それにしても八幡、本当に成長が早い。運動神経に恵まれなかったとはいえ、僕が一年間毎日練習してやっと満足に打てるようになったサーブでさえものの一ヶ月足らずで形にしたんだもんなぁ。そのうちに本当に岡田君とまともにやりあったりして。

…そういう意味じゃ材木座君も恐ろしいな。

 

休憩時間、俺は身体を休ませつつ頭はフルに回転させていた。まだ岡田の真骨頂、ライジングフラットを見ていないのにこのザマだ。基本のレベルに天と地の差があるということなのだろう。今のゲームはリターンゲームだったから相手が全国レベルというのも踏まえて一方的だったのはまぁ、良しとしよう。次は俺のサービスゲームだ。一方的にやらせてたまるか。

 

「タイム」

 

タオルを置き立ち上がる。よし、やってやるか。

 

「……まだ俺のベストではない。見た感じ相手は初めて間もない初心者か?そんな奴にサーブを触られたのか…。本調子を決勝にあわせるとしてここでは20%、いや最悪の事態を考え30%ぐらいの……」

 

え!え!?何!何だこいつブツブツ何か呟いてますよ!!!

こえぇー、全国こえぇー。あ、俺も目腐ってるし対して変わらないか。

 

「…よし」

 

まずは俺のサーブを入れることから考えなくては。コースはどうする?球種は?…まずはライジングフラットを見てみたい。ここは…

 

「…っふん!」

 

まずはボディに渾身のフラット。よし、入ったな。しかしそれを難なく返す岡田。…ライジング、もちろんフラットで。

 

「くっ!」

 

球が早いのは勿論だが、タイミングが掴みづらい!返ってきた球を

触ることしかできない俺の返球はフラフラと上がりこれを…逆クロスに打ち込まれる。

…まぁ、予想はしていたがこれはキープも厳しいんじゃないか?そもそも1ゲームでも取れれば万々歳だろ、これ。

 

「0-15」

 

しかし当初の「足りないもの」を見つけるまでは帰れない。さて、次のサーブは何処に何を打とうか。俺はまた頭をフル回転させるのであった。




テニスシーンって、すごく難しいですね。

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