果てがある道の途中   作:猫毛布

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第22話

 最初は――興味本位であった。

 GGOの世界へと誘われたシノンはよく耳にする存在に興味を抱いた。首都SBCグロッケンにて噂の尽きない男であった。

 

 深緑髪の長身男――ナッツ。

 噂は多岐に渡った。主武装はハンドガンである。主武装はサブマシンガン。主武装は――。

 そういった武器に関しては勿論の事、戦闘スタイルも同様に多数の情報が入り混じっていた。

 そして眉唾のようなモノもある。

 

 ――GGOが始まって、現在に至るまで死んだ事が無い。

 当然、ナッツ本人が証明した訳でも、『【急募】僕を殺せる人、おる?【Pv強者】』なんて掲示板に立てた訳でもない。そんなモノはクソスレ扱いされてデータの山に埋もれるのだ。

 始まりはスコードロンの一つがナッツの名前を出した所からである。逆恨みにも等しい晒し上げであった。証拠に投稿者は掲示板の住民達に叩かれていた。

 情報を否定していた掲示板の住民達が興味本位を切欠としてパーティを組み、ナッツへと襲撃した。

 結果としてそのパーティは負け、新たにスレッドが立てられる事になる。そんな事が幾度も起こり、その全てをナッツは撃退した。

 そしてナッツは不死者(イモータル)へと成ったのだ。

 死なず。殺されず。相手へ一方的な死を与える存在。

 不死者と呼ばれる様になった事で「ナッツを倒せばレアアイテムをドロップする」なんて噂も付随したのは言うまでもない。そもそもナッツとてプレイヤーであり、そして襲撃してきたプレイヤー全てを倒しているのだ。レアアイテムの一つや二つ持っていて然るべきである。

 

 

 そんなレイドボスの様な男に興味を抱いたのは決して悪いことではない。それこそGGOを生きるプレイヤーとしてはある種の『当たり前』とも言えた。

 画像で見るだけでは物足りず、幸いな事に自身は狙撃手だ。そして何より、()()()を抱えた自分がどれほど強くなったのか……。

 レイドボス討伐よろしくパーティの募集に自身の名前を挙げるのに時間は掛からなかった。

 

 

 レイドボス討伐パーティだったならば、これ以上に面倒は少なかっただろう。

 シノンは首に巻いたサンドイエローのマフラーで口元を隠しながらそう思う。マフラーが吸いきれなかった溜め息が顔の両脇で結わえた房の細かく揺らした。

 レイドボス討伐であったならば、効率重視のパーティが出来上がって居ただろう。けれども、現在のパーティメンバーは何処か緊張感がない。

 不死者という観覧物の見学。事実の確認。運が良ければレアアイテムをゲット。その程度にしか思っていないのだろう。相手がプレイヤーであるから、という根本的にレイドボスとは違う理由で。

 慢心や油断が見て取れる。と、言うべきか真剣ではないのはよく分かる。女性である自分に嬉々として話しかけてくるからだ。

 言葉巧みに現実世界の事を聞いてくるパーティメンバーを苦笑いと当たり障りもない言葉で躱しながらシノンは自分の容姿を呪う。

 スカイブルーの髪も、お人形めいた華奢な少女のアバターを。お陰で現実世界では必要にならないだろうナンパの避け方を覚えてしまった。

 ともあれ、アバターを捨てるには些かレベルを上げすぎた事は確かであろう。知人であるシュピーゲルが頑なに「勿体無い」と言うのも原因であるに違いない。

 

「来たぜ」

 

 そんな面倒からシノンが解放されたのは、件のレイドボスが予定通りに現れてからである。

 掩蔽物である瓦礫の隙間から双眼鏡で覗いていたメンバーの声に全員の意識は少しばかり引き締まる。

 狙撃手である自身は肩に担いでいた《ウィンチェスターM70》のスコープを覗き、小さな黒い点を発見し、ゆっくりと倍率上げ、ピントを合わせてようやくその姿を確認した。

 茶褐色のボロボロの外套を揺らしながら歩く目標(ターゲット)。外套の中に装備が隠されているのか、何を装備しているかは分からない。

 情報通りであるならば、彼はMob狩りに行く筈であるから光学銃を持っている筈だ。果たしてGGO内で彼にプライバシーがあるかは思考の端に置いておくとして。

 

 目標が予測目的地へと到着するまでの間に幾つかある狙撃ポイント。狙撃手であるシノンが独断で決定した襲撃場所であるが、誰も文句を言う事は無かった。

 ナッツが姿を現した事で各自が持ち場へと向かう。《H&K G36C》を持ったナンパ男がシノンへと視線を送りながら連れ去られていくが、シノンはソレをアッサリと無視した。

 そんな男に呆れ果てながら、シノンはメンバーに伝えていた狙撃地点とは少し離れた場所へと走る。信じていない訳ではないけれど、念には念を入れたかった。

 地面に腹を付けて寝そべり、グリップに頬を押し当ててスコープを覗き見る。

 深緑色の髪が風で揺れ、長身を隠すボロボロの外套がパタパタと慌ただしく動いている。

 

『……配置に着いた』

 

 ヘッドセットから聞こえた雑音(ノイズ)混ざりの声。ソレに続くように他のメンバーからも到着の声が聞こえた。

 シノンはその声に短く返事をして、照準器を合わせる。距離と風向き、標的の移動速度を考慮して着弾位置を合わせ、トリガーへと指を掛ける。

 スコープの向こうにライトグリーンの円が出現する。目標とした男の胸元を中心とした円が静かに縮小しては拡大する。

 一定の感覚で拡縮する《着弾予測円》の中に目標を入れながら、シノンは大きく息を吸い込んで、ゆっくりと息を吐き出し続け、止める。

 トクン、トクンとシノンの鼓動に合わせるように拡縮していた円のリズムが遅くなる。

 縮小――

 拡大――

 

 縮小……

 

 拡大……

 

 緊張による心拍上昇など感じさせない。

 時間が引き伸ばされたと錯覚するほど思考が冷める。

 不安、恐怖、緊張。その全てを捨て去る。

 指に力が入る。内部にある機構がゆっくりと音を立てる。

 

 目標が停止し、両腕を広げた。まるで撃てと言わんばかりの行動であり、同時にそれは冷徹な機械へと成ったシノンを単なるプレイヤーへと戻すのには十分な異常であった。

 飲み込まれた息と同時に放たれた弾丸。その弾丸は真っ直ぐにナッツへと向かい、外套に新しい穴を開けた。

 

「――外したッ!」

 

 即座に思考を仕切り直しシノンはスコープを覗き、慌てて掩蔽物へと転がり込んだ。

 その掩蔽物を削るように当たった何かがナッツが構えていたライフルの銃弾であることはあのナンパ男でも分かる事だろう。

 掩蔽物を乱打する銃弾が「居るのはわかっている」とシノンの鼓膜に訴える。

 狙撃の失敗など多々あるけれど、ココまで即座に居場所を割り出された事は無かった。フラッシュサプレッサーの異常? 神がかった勘? 情報の漏洩?

 どれもあり得ない。

 

 銃声は未だに聞こえるけれど、掩蔽物に当たる銃弾は少なくなった。パーティメンバーが攻撃を開始した事はすぐに理解した。

 混乱する頭を無理やり機械のソレへと落とし込み、シノンは身を屈めながら移動を開始する。

 

 援護。狙撃ポイントの変更。周辺地形。掩蔽物。目標の立ち位置。

 ここ一ヶ月程で染み付いた行動が身体を動かす。

 掩蔽物の影から目視で目標を確認し、太陽の位置を確認する。スコープが反射する事はないだろう。

 ならば、何故自身の場所がバレた? 発火炎(マズルフラッシュ)での特定……いや、彼は撃たれる前に両手を広げてみせた。

 自分が撃たれる事が分かっていた様に――。

 即座に切り捨ては湧き出てくる思考の波を抑えつけて、シノンはスコープを覗き込む。

 

 目標と仲間達の戦い。いいや、戦いなどではない。こうして遠距離で見れば一方的な戦闘であった。

 当然だ。そもそも目標である男は一人なのだ。複数人に囲まれてしまえば――。当然の思考に引っかかりを覚えた。

 人数が足りない。自分を合わせて五人。現在戦闘に参加しているのは三人。スコープを僅かに滑らせ倒れている存在を見つける。ナンパ男だ。

 視認出来る限り――ポリゴン片へと変換されていない所を考えれば死んではいない。それこそ、パーティとして名前を連ねているからこそ死ねば分かる。

 

「――ッ」

 

 シノンの背中を冷たい何かが走る。

 スコープで見た目標がコチラを見ていた。視線が合った。気のせいではない。確実に。

 あり得ない。掩蔽物で視界を切って移動したのだ。それに戦闘中に他のメンバーを放置して自身の場所を確認するなんて――。

 けれど、彼は間違い無くシノンを見たのだ。

 

 未知の現象に遭遇した事による本能的な恐怖。その恐怖をシノンは噛み締めて、無理やり笑ってみせる。

 (フェイク)だ。偶然だ。思い込みだ。

 思考に無理やり言い聞かせてシノンはM70を構える。ボルトハンドルを操作して空になった薬莢が弾き出され、弾薬がバレルに押し込まれる。

 五月蝿い心臓を呼吸を止める事で無理やり抑えつけ、トリガーに指を掛け――指を離す。

 射線上に仲間の背中が入り込んだ。撃てない。

 愛らしい眉の間に皺が寄り、それでもシノンは冷徹にスコープを覗き続けた。来るべきチャンスの為に。

 

 

 最初に死んだのは、今回のパーティの取り仕切り役であった。《スプリングフィールド M14》を装備していた標的に接近され、頭が弾け飛んだ。

 ソレを皮切りにして《イサカM37》を装備していた一人が銃床で殴られ、アサルトライフルとは思えない銃声によりポリゴンへと散った。掩蔽物へと逃げようとしていたもう一人はその背中を撃たれて倒れた。

 既に倒れていたナンパ男の頭に銃を突きつけた狩人は何の戸惑いも無くその引き金を絞った。

 

 呆気なかった。自身が新しい狙撃位置に着いてから起こった一方的な虐殺をそう感じる他無かった。

 その虐殺を容易く行った男はドロップしたアイテムを見ること無く、コチラが隠れている掩蔽物へと弾丸を撃ち込んでくる。

 撤退……背中を撃たれて終了。

 ログアウト……無抵抗な所を撃たれて終了。

 シノンは溜め息にも似た空気を吐き出し、呼吸を深くする。

 果たして彼の接近と自身が狙いを付けて彼を撃ち抜く事。どちらが早いのだろうか。

 

 トリガーへと指を掛け、意識を研ぎ澄ませていく。ライトグリーンの円が銃を構えながら歩いてくる彼を捉える。

 脈動と同期して拡縮する円。掩蔽物である瓦礫が散り、鼓動が大きくなる。

 落ち着け――落ち着け――。

 止められた息、音が離れていく感覚、縮まる円。

 彼の手元が動く。リロードであろうか、手元にマガジンが握られている。狙うならば今――……。

 いいや、これは揺さぶりだ。

 トリガーに掛かった指がピクリと動き、停止した。思考の中の違和感。現状見ている限りの彼の行動。嘘。偶然に思わせる必然。

 今撃てば、避けられていたかもしれない。そんな思考が過ぎった。ただそれだけの()()だった。

 交換されたマガジンが地面に落ち、二つに割れる。いや、割れた訳ではない。跳ねたのはマガジンともう一つ、円柱型の――っ。

 

 即座に思考を戻し、シノンは躊躇せずにトリガーを絞った。

 彼を包み込む煙幕に一瞬だけめり込んだ弾丸は着弾が確認出来なかった。

 

 やられた。撃っていれば――。

 そう考えた所で仕方がない。すぐさまボルトを引っ張り次の弾丸を装填する。

 

 スモークの中から、自分に向かってではなく横に向かって新しい何かが投げ込まれた。円柱型のソレは地面に落ちてから回転しながら同色の煙を吐き出していく。

 その方向へと逃げるつもり――? 嘘? 陽動?

 思考が乱れ、ライトグリーンの円形が激しく揺れる。それでも何かに即応出来るようにM70は構え続ける。

 煙幕から横に向かって外套が飛び出した。揺れる外套に反射的に狙いを定めてトリガーを引き絞る。着弾予測円は広かったが、見事に弾丸は外套へと命中した。

 取った。不死者を倒すことが出来た。

 一瞬だけ歓喜に満ちた思考が()()()()()()()()を見て一気に冷める。

 

 冷めた思考が捉えたのは煙幕から真っ直ぐに飛び出してきた狩人が原因だ。牽制射撃を行っていた先ほどまでとは違う、射撃もせずにただ真っ直ぐにコチラへと走っている。

 ボルトハンドルへと手を伸ばし、排莢、装填、構えた瞬間に地面が揺れる。

 

 

 

 

 

 浮遊感が身体を支配した。

 声を出す間もなく、空が穴へと飲み込まれていく。ビュウビュウと風を切る音が耳を揺すり、手から離れそうになったM70を引き寄せて抱きしめて目を瞑る。

 一度何かに臀部が打つかり、落下速度が下がり――数秒程してシノンは最下部へと落ちた。幸いクッションのようなモノがあったのか、HPバーは僅かに減るだけに終わった。

 

「んー!」

「え? きゃっ!?」

 

 ()()()()()からの声と自身を叩く長い手にようやくシノンは尻に敷いた男から腰を上げた。

 口を塞いでいたのかゲホゲホと咳き込む長身の男は恨めしくシノンを睨んで、溜め息を吐き出してから上を見つめた。

 

「ダンジョン条件はペアやったんか? パーティ登録もしとらんからちゃうか……。《マスターキー》も装備してたけど、ソレで開いたら苦労せんなぁ」

 

 外套も無く、戦闘に必要最低限の筋肉を残した細身。その機能的な肉体に張り付くようにして濃紺のシャツが手首まで伸びている。サスペンダーのように肩から腰に掛けられたベルト。脇にはハンドガン、腰にはマガジンポーチ。カーゴパンツにも似たシャツよりも暗いズボン。

 ようやくしっかりと姿を確認出来た標的はシノンを見ることもせずに考えを纏めていく。

 

「んー……狙撃手限定って訳でもなさそうやし、《投げ物》無いのも要因か? わからんなぁ」

 

 敵である自分を無視して考察を口にしていくナッツ。少しばかりムッとなったシノンは腰に控えていた《FN ハイパワー》をナッツへと向ける。

 

「ん?」

「ココでアナタを倒せば――」

「あー、やめときやめとき。僕を殺してもレアドロップが出る訳やなし、ここから出れる確率下がるだけやし」

 

 ドロップしたアイテムを更にドロップするかもしれんやろ、とケラケラ笑う。不死者と呼ばれ、躊躇もなかった戦闘をした男とは思えない陽気さである。

 ケラケラと笑いながら歩み寄ってくるナッツに呆気にとられてしまった。

 ナッツの腕が伸びる。銃を構える手を握り、逆の手でスライドを掴み銃を奪う。

 たった一瞬で起こった事に目を白黒させるシノンを余所にナッツは変らずケラケラと笑いながらマガジンを外してスライドを引いて残弾を吐き出させる。

 

「先に言うけど持っとるM70を撃つよりも僕が君のタイムカード切る方が早いで」

「……わかった」

「いやぁ、残業してくれて助かるわぁ」

 

 確定した負けと自身のアイテムドロップなどを考えて、シノンは今しがた来たパーティ申請を受ける。自身の名前の下に現れた名前とHPバー。

 

「それで?」

「このダンジョンの脱出確率上げる為のパーティやと思えばエエよ」

「……アナタ一人でも行けそうだけど?」

「あー。入るつもり無かったから弾数がなぁ」

 

 脇のホルスターに入ってた《ワルサー PPK》を引き抜いて引き金を絞る。カチン、という音が虚しく響いて、シノンは深く溜め息を吐き出した。

 あれだけ自信満々に決め台詞まで吐き出したコイツは銃さえ装備していなかったのだ。いや、装備はしているが弾丸が無い。

 

「そっちは?」

「こっちも少ないわ」

「ふーむ……ま、敵に見つからんように行ったらエエやろ」

 

 落としていたハイパワーとマガジンを拾い上げ、スライドをずらして中を確認してからマガジンを装填し、スライドを操作する。

 グリップをシノンの方へと向けて手渡そうとして、シノンが訝しげにナッツを見る。

 

「……私が撃つとか考えないの?」

「撃ってもエエけど、レア武器も持ってない僕のドロップアイテムなんて高が知れてるで?」

 

 それもそうか……。と変に納得してしまいシノンはハイパワーを受け取る。

 

「と、言うの忘れてたわ。ナッツ言います。よろしゅうに」

「……シノン」

「ん。ほな、適当にハンドシグナルだけ決めてささっと進もか」

 

 

 

 

 

 

◆◆

 

 ナッツとのダンジョン攻略は思った以上に楽であった。

 落下時に落としたのか、それとも囮に使った外套と一緒に置いてきたのかM14すら装備していないナッツであったが、ダンジョン攻略における()()は凄かった。

 

 先に居る敵の把握。罠の解除及び設置による敵撃破。隠蔽能力の高さ。

 まるで()()()()()()()()()()()()()ようにも思えてしまう程にナッツは自然にソレをやってのけていた。

 ただその技能に比例するように彼のドロップ率は悪かった。それもナッツは慣れているようだったけれど。

 時折挟まれる休憩の時も()()()()シノンにはさっぱり興味が無いのか、マッピングに集中していたりする。会話らしい会話も雑談程度にシノンが噂の確認をする程度である。

 

「倒したらレアドロップって……なんやそれ。レアモンスターかレイドボスの話やんね?」

「アナタの話に決まってるじゃない」

「なんでそうなってるんや……あれか、倒しすぎたんか? いや、でも攻めてくるから殺してるだけやし」

 

 うんうんと唸っているナッツに苦笑しながらシノンは流れている噂の大概は本当なのだと確信した。

 だからこそ、聞かなくてはならない。

 

「今日の襲撃も知ってたのかしら?」

「……日取りだけやけどな」

「やっぱり……」

「相手の数まではわからんよ。情報屋も面白がって教えてくれんし……」

「不死伝説に傷を付けたいのよ」

 

 死んどらんだけやのに……と溜め息と一緒に呟いたナッツにシノンは更に踏み込む。

 

「どうして……あの時両手を? 私の場所が分かってたとか?」

「神様やあらへんしわからんよ。両手広げたんも偶然みたいなモンやし」

「都合のいい偶然ね」

「……死なへん為には何をしたらエエか」

 

 ナッツの口から溢れるように呟かれた言葉にシノンは背筋を凍らせる。内容を聞いた訳ではない、ただナッツの雰囲気が軽々しいモノから変化した。

 

「情報の精査。地形の把握。自分と相手の技能を度外視するとして、これだけは完璧にしただけや」

「……つまり、襲撃位置を予測してた?」

「そうやね。まあ何個かあったけど、全部警戒してたし。狙撃手前提で考えててよかったわ」

 

 頭が冷えた。もしもナッツの言葉が本当ならば、今回の襲撃は彼の手の平の上から出ていない事になる。

 自分の狙撃も。ポイントの移動も。……ここに入ってしまった事は彼の手の平から零れ落ちたようだけれど。

 

「自分とは予定外の時に来たら?」

「抵抗はするよ。まあ、死んでも死ぬだけやろ」

「……それもそうね」

 

 肩を竦めたシノンにナッツは少しバツが悪そうにコメカミを指で掻いた。

 その表情に疑問を感じたけれど、表情自体が一瞬だったので聞くタイミングを逃してしまった。

 

「ほな、攻略に戻ろか。頼りにしてんで、狙撃手(スナイパー)

「レイドボスに言われちゃ、頑張るしか無いわね」

「……ずっとソロでやってた影響なんかなぁ?」

 

 長い身体を縮こませるように肩を落としたナッツのクスクスと笑いながらシノンが追随した。




>>時系列
 前話より前の話。

>>レイドボス『The Nuts』
 人型モンスター。近接戦闘で相手の銃を奪ったり、フレンドリーファイヤー狙いの行動をする。HPが減り発狂状態になると《ブローニングM2》を乱射する。
 ドロップ品は店売りの装備各種。

>>落下したらダンジョン
 曲がり角に食パン加えた女の子並のテンプレ。

>>銃の奪取
 マーシャル・アーツでダイスを振ろうっ!

>>FF<フレンドリーファイア>
 あるんですかね? イカジャムの大会はFFあり"設定"だったので、オンオフの切り替えが出来るとしても、レイドボスに挑むのにFFオンって……。
 ご、ご都合主義だから(震え声

>>お尻成分
 クッション。

銃器簡易説明
>>ウィンチェスターM70
 狙撃銃(スナイパーライフル、SR)。今回で登場しているのはシリアルナンバーの高いモノでレア度低め(という独自設定)なので狙撃手見習いのシノンさんでも手が届く。ボルトアクション。

>>G36C
 アサルトライフル(AR)。折りたたみ式のストックで小さくて可愛い(確信)。マガジンも半透明でセクシー……エロい!

>>スプリングフィールドM14
 AR。今回は下部にマスターキー付き。反動が強いので、今回もセミオートです。

>>マスターキー
 ソードオフ・ショットガン(銃身の短いモノ)。今回はM14の下部に装着。
 何でも開きます(マスターキー)(意味深)。

>>イサカM37
 散弾銃(ショットガン、SG)。昔の洋画で警察の方が所持していたり? ポンプアクション。

>>FN ハイパワー
 ハンドガン。ハイパワー(強いとは言ってない)。弾数が多いので(ハイパワー)。

>>ワルサー PPK
 ハンドガン。有名な二回死んだりする某スパイ様の銃。シリーズ的にも面白いけれど見始めるなら最近のモノだけでイイんじゃないですかね(遠い目

>>投げ物
 グレネード各種。

>>✕✕アクション
 ポンプやら、ボルトやら、レバーやら。排莢と装填の方法……でいいんですかね(不安気)。あと狙撃銃でもボルトアクション以外のモノもあるんだゾ(白目)。

 ハンドガンの説明文で出てくる『ダブルアクション』や『シングルアクション』はまた別です。ややこしいゾ……。

>>ちょくちょく銃が古くないですかね……
 お、そうだな(震え声
 レア度関係がどういったシステムで決められているかが分からないので、なるべく古いものなどを並べています。さすがにトミーガンとかを出す予定は無いですけど……というかアレは逆にレア設定されてそうですね。
 有名所……それこそ、ドラグノフやら、ガバメント、サイコガン、S&W M500……レア度高そう(震え声)。
 逆に銃でレア度が低い物とは一体……? 民間用とか大量生産物だとか……? うーん……あんまり気にしない方がいいんだろうなぁ。

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