宮永家の日常   作:るみにゃん

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瑠魅花の命を受けて憲兵所に立ち寄った二人の少女
此処は東海憲兵所であり、東海地方一帯の護りを責務としている。

二人はここの統括を任されていて、名前も団長の意志で改名された
弦巻憲兵団・・団長・弦巻マキ陸軍大将、副団長・東北ずん子陸軍中将
常日頃と各地の情報を収集してる。



第四章 消失した孤島

憲兵隊長「弦巻団長!以上が報告書であります!」

 

時刻は午前11時の時、此処は静岡県浜松市中区にある陸軍憲兵本部

元々は旧宮永軍の中枢とも言える陸軍司令本部である

ここから、全国各地の宮永陸軍に指令などの情報を発信していた。

 

大戦終戦後は、軍という組織を解体せざる得ない事態に追い込まれたために

宮永軍が建てた各地の本部と共に陸軍司令本部もなくなった

時代が進むにつれて新たに瑠魅花が設立させたのが憲兵隊本部である。

 

元々瑠魅花が指揮をしていたけど、マキが来てからはすべてを任せていた

ずん子も加わり、今では二人で力を合わせながら弦巻憲兵隊として日々活動している

そこで一人の隊員が資料を片手に本部室を訪れていた。

 

マキ「なるほど・・敵の所在に関する情報が何も得られてないんだね」

 

渡された資料を確認しながらマキの表情が険しくなった。

 

憲兵隊長「は!一部では複雑な地形もあり、我々も出来る限り努力してるのですが・・」

 

マキの伝令で全国に配置されてる憲兵隊に捜索の指令を飛ばしたけど

集まった資料の中に目ぼしい情報が何も得られてなかった

瑠魅花の考えが的中していて、マキとずん子も薄々わかっていた。

 

ずん子「憲兵隊といっても偵察に充てられる部隊は限られます・・」

   「小国でも山など複雑な地形が存在する日本では限度がありますね」

 

マキ「うーん・・元々の手がかりがないから仕方ないよ」

 

ずん子の言葉にマキは片手で頭を支えながら悩んでいた。

 

マキ「報告書は受け取った、大変だと思うけど偵察をこのまま続けて」

 

憲兵隊長「は!有力な情報を手にできるように目下全力で励みます!」

 

憲兵隊長は敬礼をしながら本部室から退出した。

 

マキ「まったく・・どうすればいいんだろ・・・」

 

そのまま机に頭を置きながら呟いた。

 

ずん子「まぁ、展開してからそんなに経ってないんですから・・」

 

そんなマキに対してずん子は背伸びをしながら窓の外を眺めていた

気が長いずん子に対して、気が短いマキにとっては早期の情報を期待していた。

 

マキ「ずんちゃんはいつものんびりしてるよね?」

 

ずん子「焦っていても何も始まりませんしねぇ」

 

何事にも限界はある・・それを超えるやり方は失敗の元凶になりかねない

常に冷静で落ち着いた対応をすることで見える視野も広がり、失敗も起こりづらくなる。

 

ずん子「マイペースが一番です・・周りのことを気にするとよくないですよ?」

 

マキ「でも・・るみかさんは一刻を争うって・・・」

 

ずん子「だからと言って・・真っ新な状態で何ができるというんですか?」

 

その言葉にマキは何も言えなかった・・

何かしらの手掛かりがあれば話は別だけど、現状は指令なしで戦地に向かうのと同じだった

周りが見えない時こそ、冷静に事を進めることで早期の解決に繋がる。

 

ずん子「るみかさん達がうまくやってくれます・・私たちはその手助けですわ」

 

マキ「まぁ・・私達は私達の出来ることをすればいいかな」

 

そう言いながらマキは席を立った。

 

ずん子「あら?何処か行くのですか?」

 

マキ「自分の目で確かめるのも必要かなと思ってね」

 

マキは壁に立て掛けてある竜神槍を背負いながら身支度を整えた

しかし、ずん子はそんなマキを止めた。

 

ずん子「いけません!マキさんは師団長なのですよ!?」

 

マキ「でも!こうして情報を待ってるだけだと何も進まないよ!」

 

ずん子「だからと言って・・代表自身が動くのはありえないです!」

 

ずん子の必死な説得にマキは悔しさを露にしつつ槍を置いた

席に座りながら両手で顔を覆い、項垂れた。

 

ずん子「お茶でも入れますね・・ずんだ餅もいかがですか?」

 

少しでも雰囲気を和ませようとずん子は提案した。

 

マキ「そんな気分じゃないよ・・・日本が危機に晒されてるんだ」

 

ずん子「じゃ、今から用意しますから待っててくださいね」

 

マキ「・・・・(ずんちゃんには敵わないよ・・調子が狂うんだから)」

 

部屋を出ていくずん子の様子をマキは眺めながら呟いた。

 

ずん子は副団長として、マキを含める部隊全員のことを気遣っていた

一部の間ではお母さんと称され、ムードメーカーとして憲兵団ではなくてない存在だった。

 

戻ってきたずん子はマキの前にお茶と2個のずんだ餅が乗った皿を置いた

自分の下にも1個多めのずんだ餅を置いた。

 

マキ「ずんちゃんは、本当にずんだ餅が大好きだね」

 

ずん子「当たり前ですよ!ずんだ餅がない世界なんてあり得ないです」

 

そう言いながらずんだ餅を頬張るずん子がどことなく可愛く思えた

マキもそんな姿を見ながらずんだ餅を口に含んだ

不思議と今まで食べたずんだ餅よりも一段と美味しく感じたのは気のせいだろうか。

 

美味しそうに食べるマキを見たずん子は大成功と言う表情で微笑んだ

少しだけ和んだ場の空気・・だが、そのひと時はすぐに冷めた

ずん子の机に置いてある電話が鳴ったのだった。

 

ずん子「はい、こちらは弦巻憲兵本部・・本部室になります」

   「・・・!それはどういうことですか!?」

 

マキ「ずんちゃん・・・?急にどうしたの!?」

 

ずん子「はい・・わかりました!貴方達は直ちに事態の収拾に努めてください!」

 

ずん子は受話器を置いた、その表情はさっきとは違う深刻な感じだった。

 

マキ「ねぇ・・さっきの電話は何だったの?」

 

マキは不安な表情で訊ねた。

 

ずん子「沖縄憲兵団からです・・西表島が消失しました」

 

マキ「・・・!?」

 

その言葉にマキは豹変した。

 

マキ「すぐに憲兵団の手配を!沖縄に投入するよ!」

 

ずん子「落ち着いてください!まずは状況確認をしま・・・」

 

マキ「落ち着いてられないよ!日本国土の一部が消失したんだよ!?」

 

ずん子の言い分を遮るようにマキはわめいた

団長としてはあまりにもお粗末すぎるその姿は冷静さを完全に失っていた

だが、それを静止させるために瑠魅花はずん子を副団長として補佐役に就けたのだった。

 

ずん子「いい加減にしてください!マキさんは自分の立場をわかってるのですか!?」

 

マキの両肩を掴んだずん子は、鋭い表情で普段は言わない言葉を吐き出した

あまり見ることのない表情にマキは目が覚めたように血の気が引いた。

 

マキ「ごめん・・少し熱くなり過ぎたよ・・・」

 

マキは申し訳なさそうな表情で椅子に座った

冷めたお茶を啜りながら、片手で顔を押さえた。

 

ずん子「そのお茶は冷めてますよ・・淹れ直しますね」

 

ずん子は元の表情でマキのお茶を取り換えた。

 

マキ「そして・・これからどうするの?」

 

ずん子「それはマキさんが考えることだと思いますが・・そうですね」

 

指揮官として、副官に指示を仰ぐのはどうかと思いながらずん子は考えた

この知らせは瑠魅花の下にも届いてるはずなのですることは一つだけだった。

 

ずん子「九州地方の憲兵団に協力を要請しましょう」

   「硫黄島航空隊にも近海の偵察を向かわせます」

 

マキ「わかった!直ちに伝令を飛ばしてちょうだい」

 

マキの指示にずん子は微笑みながら応えた

受話器を手に取り、熊本憲兵団と硫黄島航空基地に事の事情を知らせた。

 

この伝令により、熊本から多数の憲兵団が沖縄に出立し

硫黄島でも、現代の最新鋭戦闘機・・紫電六〇五が2個中隊に分かれて展開した。

 

この紫電六〇五の作りは旧日本軍の紫電改を真似ているが、装甲は対空機銃に耐えれる強固を誇り

日本を含める世界各国で高い評価と羨望の眼差しを集めていた。

 

両翼には四基の原子力ミサイルと粒子弾機銃4挺を備えた重武装

これだけの武装を付けた上で小回りの良さと風よりも早い速力で世界の大空を制覇していた

すべては宮永家が誇る特殊技術のたわものであり、宮永家内だけの主力武器である。

 

低燃費に優れたその航続距離は地球を一周することも容易い

先ほども挙げられた速力も魔法を用いた仕様になっており、二日で回れる速力を持つ

一切音がしない無音エンジンと広範囲のレーダー網で無双の零戦と語り継がれた。

 

マキ「さて、私たちは何かすることあるのかな?」

 

ずん子「マキさんは事務作業があるでしょ?私は現地に赴きますわ」

 

マキ「あ!ずんちゃんだけずるいよ!」

 

いつもしっかりしているずん子は、コツコツと仕事をこなしていたので作業が少なかった

マキの分も手伝うくらいの余裕を持っているのでどっちかというとずん子の方が団長に相応しかった。

 

ずん子「マキさんは仕事が残ってるでしょ!政府に提出する書類は終わったのですか?」

 

マキ「国・・いや、世界の危機が迫ってるんだよ!?事務なんてやってる場合じゃ・・」

 

ずん子「その書類だって日本の秩序に関わる大事な物です!」

 

マキ「でも・・!私だけ留守番なんて嫌だよ!」

 

ずん子の言うことも聞かずに駄々をこねだすマキは子供のようだった

こうなってしまってはどうしようもないのでずん子もため息を吐いた。

 

ずん子「仕方ないですね・・輸送機を使いますから機内で作業してください」

 

マキ「やった!とりあえず、必要な書類を詰め込むね!」

 

嬉しそうに重要な書類を鞄に詰め込む姿をずん子は苦笑いをしながら見ていた

準備を終えた二人は、隊員に車の手配をさせて浜松基地に向かった

あらかじめ連絡を入れておいたので、二人が搭乗する輸送機は滑走路内で待機していた。

 

マキ「これって・・輸送機と言うよりは一式陸攻だよね・・・?」

 

ずん子「まぁ、宮永家の航空機は旧日本軍スタイルを重視してますからね」

 

マキが言う一式陸攻「一式陸上攻撃機」と言うのは、大戦時に旧日本軍が使用した爆撃機である

日本海軍では攻撃機として呼ばれてたけど、宮永家内では爆撃機として認識していた。

 

マキ達が搭乗する一式陸攻も紫電改同様に改良されていて、正式名称は二式特務爆撃機である

紙装甲として有名だった旧日本海軍の汚名を返上すべく、宮永家内で総力を上げて作られた

装甲は対空機銃を一切通さない強固な作りとなっていて、撃墜された記録も存在しない。

 

機銃も粒子弾機銃5挺と基準を超える2000kg爆弾(胴体)と800kg爆弾(両翼)を備えている

速力も紫電六〇五に劣るが・・現代戦闘機並みの速さを誇る

胴体に付く巨重爆弾は魚雷としての機能を持ち、大型空母すらも轟沈させる威力を持つ。

 

航空整備兵長「輸送がメインと聞きましたので、なるべく軽くするために爆弾は取り外しました!」

 

二式爆撃の最終テストを監督する兵が敬礼をしながら答えた。

 

ずん子「ご苦労様です!人員はパイロットと機銃を扱う兵だけで大丈夫です」

 

航空整備兵長「了解しました!念のために道中まで護衛機を付けさせてもらいます」

 

マキ「いや、敵地に行くわけじゃないから大丈夫だよ」

 

ずん子「そうですね・・国内を飛行するので問題ありません」

 

航空整備兵長「いえ、近頃はテロ集団も進出してますので念のためです!」

 

ここ最近は日本国内でも治安の悪化が進んでいた

これも悪霊の進行により、各地では事件や事故なども相次いでいる

浜松基地でも明確な情報が多数入っていて、周辺の警戒を厳重にしていた。

 

旅客機ですら単独で飛ぶことも許されない世の中・・銃の発砲も許されてしまい

悪霊に支配され・・深海棲艦の出現も確認された今、各国が一致団結しなければ生き残れない

しかし、日本は戦後の影響で独自の兵器も作れず・・宮永家の存在が唯一の救いだった。

 

悪霊の支配下に落ちた日本国民は、宮永家の不甲斐なさを恨み蔑んで来たけど・・

瑠魅花の活躍によって完全ではないけど、少しずつその存在を認めつつあったのだった。

 

ずん子「わかりました・・では、護衛機を5機つけください」

 

航空整備兵長「はっ!優秀なパイロットをお供に就けさせていただきます!」

 

マキ「それじゃあ、出発しましょうか」

 

ずん子「そうですね、今は一秒でも惜しいですわ」

 

そう言いながら、二人は兵長に敬礼をしながら搭乗した

最終整備を終えた整備班は爆撃機から離れ、護衛に付く戦闘機の整備に移った

動作テストのみなので数十分で終了して、各員が滑走路の外に出た。

 

滑走路には飛行間近の二式爆撃が先頭で後方に二列体制で護衛機が並んだ

パイロットも管制塔との通信を終え、離陸の準備にかかった

プロペラが回り、徐々に動き出す各機に整備班が脱帽をして振った。

 

二式パイロット「離陸します!お気を付けください」

 

パイロットの気遣いに二人は微笑みながら頷いた

こうして二式爆撃と護衛5機が浜松基地を飛び立ち、沖縄の那覇空港に向かった。

 

マキ「ふぅ・・あとは着くまで待機だね」

 

ずん子「そうですね・・このまま無事に到着できればいいのですが」

 

ずん子は窓の外を眺めながら不安そうな表情をした。

 

マキ「海上には哨戒部隊・・上空にも各基地から偵察機が飛んでるから大丈夫だよ」

 

不安そうなずん子をマキは気遣った。

 

警戒兵「マキ団長の言う通りです!たとえ現れたとしても機銃で落とすだけです!」

 

5挺の機銃のうち、後尾を担当する兵が親指を立てた

ずん子もそんな二人を見ながら微笑みながら親指で返した。

 

 

 

 

浜松基地をたってから一時間近くが経ち、那覇基地まであとわずかな距離まで来た

このまま行けば30分程度で到着するので、護衛機も頃合いを見て退却を始めた。

 

航空隊長「二式爆撃パイロットに告ぐ!目標地点に近付き・・我らの任務もここまでとする」

    「当機の武運長久をお祈り申し上げます!」

 

二式パイロット「道中の護衛感謝します!帰りの際も気を付けてください」

 

ずん子「私とマキさんからもお礼申し上げます」

 

双方の通信が終えると護衛機はそのまま旋回して、浜松基地に帰っていった

二式爆撃機はこのまま辺りの警戒をしながら那覇空港まで向かった。

 

二式パイロット「応答!那覇空港管制塔に告ぐ、当機はこれより着陸準備に入る」

       「直ちに滑走路を空けてほしい」

 

管制塔「見たところ軍用機に見えますが・・失礼を承知で当方の目的をお願いします」

 

二式パイロット「詳細は極秘のため報告できない!しかし、こちらは宮永空軍の者です」

 

管制塔「了解しました、特別に着陸を許可します」

 

通信を終えると一部の滑走路でライトが点灯し、着陸スペースを確保してくれた

よく見ると空港各地に対空機銃と対空ミサイルが設置されていて、機銃には兵が配置されていた

照準は二式爆撃に向けられていて、先ほどの通信で砲塔も降ろされた。

 

ずん子「やけに警戒されてますね・・空港と言うよりは基地ですわ」

 

二式パイロット「仕方ありません・・沖縄は南北大戦で悪霊が上陸した激戦地ですので」

 

マキ「そういえば、弦巻組も総動員で死闘を繰り広げて来たんだっけ・・」

 

今から30年前・・突如日本を襲った悪霊群、それは今まで戦ってきた悪霊とは違った

日本にも悪霊は存在する、それは怨霊や地縛霊・・妖怪と言っても昔話に出てくる下級ばかりだ

宮永家にとっては脅威ではなく、ほとんどの悪霊が市民に触れることなく散っていった。

 

しかし・・悪霊を統治する者が国外の悪霊と手を組み、宮永家を襲った

百戦錬磨の宮永家も苦戦を強いられ、じり貧に陥った・・

招かねざる客の沖縄上陸を許してしまった。

 

弦巻組と共闘して防衛に徹したが、最終的に中国地方まで撤退を余儀なくされた

沖縄から九州地方を制圧され、度重なるトラブルによって残すは静岡のみとなってしまい

真っ先に土地を奪われた沖縄市民は・・宮永家を恨み、誰も頼らずに独自の防衛を覚えた。

 

ずん子「あっちこっちで砦を構築し、私たちが知らない裏ルートも存在しますわ」

 

マキ「すべては悪霊に屈さない力無き抵抗だったんだね・・」

 

宮永家すら太刀打ちできない悪霊相手に市民だけでどうにかなるとは思えない

弦巻組も自分たちの身を守ることで精一杯だったために何もしてあげれなかった

おそらく、多くの犠牲も出たことだろう・・。

 

そう考えると力ある自分たちの存在が恨めしく思えた

本来なら守っていくべき存在が守りだけを考え、見て見ぬふりをしてきたことに罪悪感を感じた

弦巻だけではない・・結月も東北も同じだった、それなのに宮永家だけが迫害されるのはおかしかった。

 

マキ「るみかさん・・宮永家の人たちが可愛そうだよ・・・!」

 

マキは悔しさを露に拳を握りしめた。

 

ずん子「それだけの力を持ってたのです・・全国に拠点を置くほどの勢力です」

 

二式パイロット「独立国家・・政府の番犬とも伝えられる特殊組織とも聞きますが」

 

ずん子「間違ってません、悪霊退治を家業として国民からの評価も高かったですし」

 

彼らは一般市民とはかけ離れた一族で昔から代々受け継がれる能力者の集いである

表では依頼を受け持つ除霊・退治屋だが、裏では政府御用達の第二軍(第二日本帝国軍)と呼ばれる。

 

マキ「敗戦国家である日本は軍再建ができない・・宮永家は利用されたんだね」

 

ずん子「言い方が悪いです・・宮永家は日本を愛し、守るために自ら名乗り出たのですよ」

 

マキ「るみかさんは関係ないじゃないか・・・そろそろ着陸じゃない?」

 

二式パイロット「はい、着陸に入りますのでシートベルトを付けてください」

 

操縦席から外を見ると滑走路が目の前に見えた

ギアを降ろし、着陸態勢に移った。

 

ずん子「熱くならないでください・・誰もがわかってることです」

 

マキ「わかっていても言いたくなるんだよ・・」

 

ちょっとした昔話に場の雰囲気が冷め、マキはそっけない表情で外を眺めていた

ずん子は小さくため息をつきながら目を閉じた。

 

無事着陸した二式爆撃は格納庫前まで誘導され、ハッチが開かれた

降りた二人を迎えたのは管制長と数名の社員だった

管制長と二人は握手をし、互いに自己紹介をした。

 

マキ「管制長自らのお出迎え感謝します・・弦巻憲兵隊団長の弦巻マキです」

 

ずん子「同じく副団長の東北ずん子です」

 

管制長「遠路はるばるご苦労様です、那覇空港管制長の田村と申します」

   「いろいろと訳ありみたいですが・・話は中で致しましょう」

 

田村は那覇空港の会議室に二人を案内して、二人はパイロットに二式爆撃を移動させるよう命じた

会議室に案内された二人は席に座って話を始めた。

 

田村「これは推測なのですが・・西表島の件で訪れたのでしょうか?」

 

ずん子「お察しの通りです、九州からも憲兵団が訪れてる予定です」

 

田村「それでしたら既に沖縄憲兵所で待機されてるそうです」

 

マキ「あれ・・どうして管制長がそのことまで知ってるのかな?」

 

田村「沖縄は小さい島ですから・・よそ者が来れば自然とわかります」

 

田村の言う通り、本土から離れた沖縄では地元市民の顔など見慣れており

観光客や別の所から流れた者は一目でわかってしまう

既に九州憲兵団のことは沖縄全土の市民が知っていた。

 

ずん子「まずいですね・・もし、敵が潜んでいたら一大事です」

 

マキ「確かにそうだね、こっちは隊で来てるから先手を打たれる可能性があるね」

 

ずん子「西表島のことで何か変わったことはなかったでしょうか?」

 

田村「いつもと変わりませんが・・そういえば、あそこだけ空が曇ってましたね」

 

マキ「それって、あの島全体を覆う程度の雲なのかな?」

 

田村「はい、そこ以外は快晴だったので不思議に思いました」

  「地元市民も噂していて・・その次の日に消えてしまったのです」

 

他の情報からも・・漁師や米軍の哨戒艇も調査で近づいたけど

近づくにつれ、急に波が荒れて近づくことができなかった

航空機も操縦中にトラブルが発生して、幸い墜落しないで済んだという。

 

ずん子「現在は近づいても何も起きないのでしょうか?」

 

田村「そうですね、米軍が調査に向かったところ何もありませんでした」

 

マキ「これはいろいろと調査する必要もありそうだね」

 

ずん子「そうですね・・一応、沖縄憲兵所に行ってみましょう」

 

次の目的を決めた二人は、管制長にお礼を言って沖縄憲兵所に向かった

その際、管制長からの計らいで車を用意してもらって那覇空港を後にした。

 

マキ「輸送機はあのまま置いといて大丈夫かな?」

 

ずん子「パイロットの方に留守番を任せたので大丈夫だと思います」

 

マキ「しかし、本当にのどかな場所だね・・これが激戦地なんて信じられないよ」

 

ずん子「南国の国ですからね・・仕事じゃなければ観光したいくらいですわ」

 

二人は世間話をしながらちょっとした沖縄のドライブを楽しんだ

数十分が経ち、沖縄憲兵所に着いた二人は受付係に話しかけた

事前に連絡を入れてたことで向こうも準備ができていて、すぐに案内された

本部室の前に来た二人は、案内係にお礼を言ってノックをした。

 

男の声「入りなさい」

 

ずん子・マキ「失礼します!」

 

男性将校「これはマキ団長にずん子副団長殿・・遠路はるばるご苦労様です」

 

入室した二人は敬礼をし、奥に座っていた男も立ち上がって敬礼をしながら迎えた。

 

マキ「橋本中将!久しぶりだね」

 

橋本「お久しぶりです!元気な姿が見れて安心しています」

 

ずん子「お話したいこともありますが・・こちらに九州憲兵団が来てると思うのですが」

 

話の間を割ることに申し訳なさそうな表情でずん子が訊ねた。

 

橋本「これは失礼、九州憲兵隊は宿舎の方で休ませています」

 

マキ「こちらでは西表島のことで何か情報が来てないかな?」

 

橋本「いえ、明確な情報は報告されてないです」

 

話せる情報は那覇空港で管制長が話した内容と同じ感じで新たな情報がなかった

こんな近くに位置する沖縄でも詳しい情報がないというのは不可解だった。

 

マキ「相手は何かしらの策を講じてると思うんだけど・・」

 

ずん子「そうですね・・これは悪霊の仕業に間違いないです」

 

橋本「こちら側も何かしらの情報がないか調べていく方針です」

 

ずん子「そうですね・・私たちもしばらく滞在しますので協力しましょう」

 

橋本「では、お二人の宿泊施設を手配します」

 

そう言いながら橋本中将は受話器を手に電話した。

 

ずん子「感謝します・・では、私たちはこのまま沖縄の探索をしましょう」

 

マキ「そうだね、どこか情報が得られそうな場所はないかな?」

 

橋本「それでしたら・・国立図書館が良いと思います」

 

電話を終えた橋本中将が提案した。

 

国立図書館と言うのは、那覇市内にある沖縄市民自慢の大型図書館

東京ドーム並みの大きさを誇り、世界各地の古代書物が多数保管されている

関係者のみが許される希少書物も多く納められ、大抵の情報がここで集まるという。

 

ずん子「全国的にも有名な場所ですね・・訪れるのは今回が初めてですわ」

 

マキ「私も一度は見てみたいと思ったんだよね」

 

橋本「でしたら、こちらから手配しますのでゆっくり調べていってください」

 

そう言いながら再び受話器を取る橋本中将、二人は敬礼しながら部屋を出た。

 

ずん子「橋本中将は権限がありますので希少書物も見れそうですね」

 

マキ「他にも見たいものはあるけど・・時間が許されないから絞ろうか」

 

話し合いながら車に乗り込む二人は、那覇国立図書館に向かうために憲兵所を後にした

状況が好ましくない今、皆が四苦八苦しながら敵の情報を集めている

時間が進むにつれ、事態は深刻に陥ってることに焦りを感じている二人

 

西表島消失事件も今回の件に関与してるかは明確ではないけど、否定はできない

出来ることは限られるけど、少しでも瑠魅花さんの役に立ちたいと強く思うずん子とマキは、

有力な情報を手にできると願いながら国立図書館を目指した。

 

 

第四章 終




何の成果も得られなかった二人の下に来た新たな事件

今回の件も偶然にしては出来過ぎてることから、
速やかに現地に赴いた二人を出迎えた沖縄憲兵団

謎が謎を抱えたまま・・新たな情報を得て国立図書館に向かう二人
有力な情報が手に入ることを願って、二人は向かった。

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