宮永家の日常   作:るみにゃん

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突如ゆかりを襲った謎の少女

昼間には感じられなかった悪霊の気配

表向きは普通の廃校だったけど、夜になり裏の世界が二人を襲う

疑問が疑問を重ねつつ、二人は校長室に向かった

この学校で行われ来た事・・

その真実に辿りつくべく、二人は可能性を信じて校長室の扉を開けた


第三章 二人を迎えるもの… 後編

校長室の前に来た二人は辺りを見回した

目の前の校長室以外は部屋がなく、別の部屋とは100mほどの距離があった。

 

ゆかり「どうして他の部屋と距離が離れてるんでしょうか?」

 

瑠魅花「わからない・・でも、何だか嫌な雰囲気がするわね」

 

校長室の中からは何かしらの妖気を感じていた

人が居る気配はないけど、普通とは違う雰囲気だった。

 

ゆかり「ここら辺の空気はすごく冷たくて息苦しい感じがします」

 

何もない廊下なのにどことなく違う感じがした

窓に差し掛かる月明りが辺りを照らし、静かな廊下は冬じゃないのに肌寒い

時が止まったように不安だけが二人を覆い、二人は息を吞んだ。

 

瑠魅花「とりあえず、中に入ろうか」

 

瑠魅花はゆかりに言った。

 

ゆかり「早く真相を解き明かしたいですからね・・扉を開けます」

 

ゆかりは頷きながら校長室の扉を開けた

校長室の中はどこの学校も同じ感じで中央奥に机が置かれ、棚には資料などが収納されている。

 

ゆかり「結構綺麗ですね・・水槽には熱帯魚などが飼育されてますし」

 

瑠魅花「元気に生きてる所を見ると最近まで人が居たことが伺えるわね」

 

右の壁際に置かれている大きな水槽を見ながら他にないか見回した

ゆかりも引き出しを物色しながらめぼしいものを探した。

 

瑠魅花「何かありそうだと思ったけど、普通に校長室だったのかな?」

 

棚に収納されている資料に目を通しながらため息をついた

部屋に入る前は不穏な気を感じ取っていたから何かしらの情報があると期待していたのだった

中に入った途端に気が晴れてしまっていたので今では感じ取ることができなかった。

 

ゆかり「でも、何かしらの物はあると思います・・そんな感じがしますわ」

 

ゆかりは引き出し以外にも肖像画や部屋中の置いてあるものを虱潰しに探した

瑠魅花もそんな姿を見つつ、軽く頬を叩きながら探し始めた。

 

 

 

探し始めてから数時間が経ち、時計は三時頃を指していた

家の方には電報を送ってあるので帰らなくても心配ないけど、相手の動向が気掛かりだった。

 

瑠魅花「あれから結構な時間が経ってるわね・・どんどん相手の有利に進んでるわ」

 

何一つ手掛かりが見つからない中、瑠魅花は段々と落ち着きがなくなってきた。

 

ゆかり「るみかさん・・こういう時こそ冷静にならないとですわ」

 

ゆかりは瑠魅花の両肩に手を置きながら微笑んだ

そんな表情を見た瑠魅花は自然と笑みを浮かべながら落ち着きを取り戻した。

 

瑠魅花「そうね・・最初に私が言った言葉なのに逆になっちゃったわ」

 

ゆかり「るみかさんは私より経験してるんですから」

 

他愛もない会話に場の空気が少しだけ和んだ気がした

改めて辺りを見回すと瑠魅花は何かに気が付いた。

 

瑠魅花「ねぇ・・よく見るとあの壁おかしくない?」

 

瑠魅花は大きな水槽が置いてある奥の壁を指差した。

 

ゆかり「水槽越しからはよくわかりませんが・・何かおかしいですかな?」

 

瑠魅花「ちょっと水槽退かすの手伝ってくれるかしら?」

 

ゆかりは瑠魅花のお願いを聞き入れると二人で水槽を横にずらした

水槽を退かしたことでゆかりも壁の違和感に気が付いた。

 

他の壁と違って水槽が置かれてた壁は湿気っていて一部が脆くなっていた

水気と言ってもガラスに水滴もついてるわけでもなく明らかにおかしかった。

 

ゆかり「確かここは隅の方だったから・・この先は外ですよね?」

 

ゆかりは壁を擦りながら尋ねた。

 

瑠魅花「そのはずよ・・どの道此処は廃校になるんだから壊しても問題ないよね?」

 

ゆかり「正面玄関を破壊したんですから・・今更何も言いませんわ」

 

特に断る理由もなく、瑠魅花さんのことは理解してたのでゆかりは壁から離れた

安全を確認した瑠魅花は右手を壁に向けて詠唱を唱えた。

 

瑠魅花「出来る限り最小限に止めつつ・・ファイア!」

 

右手から炎が噴き出し、交わりながら誘爆を起こした

脆かった壁は簡単に破壊され、中くらいの穴が開いた。

 

瑠魅花「・・ねぇ、これってどういうこと・・・?」

 

ゆかり「・・・・・」

 

二人はその先の光景に目を疑った

普通なら外に出るはずなのに・・その先にあったのは闇に覆われた空間だった。

 

瑠魅花「・・・!?」

   「ゆかり!すぐに戦闘態勢に入りなさい!」

 

ゆかり「へ・・・?」

 

しばらく眺めていた瑠魅花が血相を変え、慌ててゆかりに命じた

いきなりのことにゆかりは呆然と立ち尽くして瑠魅花を見た。

 

その途端、奥の方から奇怪な雄叫びを上げながら何かが近づいてきた

人ではなく動物でもないその足音はこの世の物ではないことを瑠魅花は感じ取っていた。

 

瑠魅花「いいから武器を構えなさい!敵が近づいてきてるわよ!?」

 

その言葉にようやく理解したゆかりは慌てて得物を詠唱した

しかし、あまりにも反応が遅れた影響で得物が召喚される前に敵が襲い掛かった。

 

瑠魅花「っく・・!このままじゃゆかりが危ない!」

 

あまりの速さに正体まで気づけなかったけど、瞬時に攻撃魔法を詠唱して敵を吹き飛ばした

ゆかりは態勢が整ってなかったためにいきなりのことで倒れこんでしまった。

 

ゆかり「あ・・あ・・・あり・・」

 

瑠魅花が居なければ確実にゆかりは死んでいた・・

それを理解したゆかりは震えながら言葉も満足に話せなかった。

 

瑠魅花「ゆかり!しっかりしなさい!」

 

瑠魅花はゆかりの両頬に手をやりながら喝を入れた

ゆかりも頷きながら瑠魅花の力を借りて起き上がった

そして、二人は吹き飛ばされた敵に目を向けながら正体を暴いた。

 

ゆかり「何なんですか・・これ?」

 

瑠魅花「なるほどね・・これですべてが明らかになったわ」

 

二人が見たのは化け物そのものだった・・

一見人型に見えるけど、手足の爪がかぎ爪のようになっていて肉体もゴツゴツしかった

鋭い牙と角から鬼のような恐ろしい形相で背筋が凍るような恐怖を漂わせた。

 

ゆかり「えっと・・これって死んだのでしょうか?

 

瑠魅花「中級魔法を至近距離で放ったからね・・ひとたまりもないはずよ」

 

念のため瑠魅花は警戒しながら化け物の生死を調べた

化け物からは妖気もなくなり、脈や血相も停止してることから死んだと見た。

 

瑠魅花「大丈夫ね・・たぶん、あの一撃が致命傷になったのね」

 

その言葉を聞いてゆかりはほっとしながら胸をなでおろした。

 

瑠魅花「でも、今回の件でゆかりはたくさん反省しないといけないよ?」

 

その言葉を聞いてゆかりは息を呑んだ・・

瑠魅花の言う通り、今回ゆかりの活躍はほとんどなく・・足手まといが多かった

感情任せに突っ走って自ら危険に飛び込んだり、瑠魅花の助けがなければ命が危うかった。

 

今回は瑠魅花がパートナーだったから危険も最小限に止められたけど、

これがほかのメンバーだったら間違いなく最悪な事態に陥っていた

Lランクのハンターとしてはあまりにも酷い失態にゆかりは落ち込んだ。

 

ゆかり「ごめんなさい・・私のせいで迷惑かけちゃって・・・」

 

ゆかりは今にも泣きそうな表情でスカートの裾を両手で握っていた。

 

瑠魅花「・・・・・」

 

ゆかり「・・!?」

 

瑠魅花はそんなゆかりを見て優しく抱いた

ゆかりも突然なことに戸惑いつつも瑠魅花から伝わる温もりに安堵した。

 

瑠魅花「大丈夫よ・・ランクと言うのはその人の力の証明」

   「今回は褒められる所がなかったけど、ゆかりはよくやってるわ」

 

ゆかり「るみかさん・・るみかさん・・・!!」

 

瑠魅花の優しい言葉にゆかりは涙を流しながら強く抱きしめた

そんなゆかりの頭を瑠魅花は撫でながら安心させた。

 

瑠魅花「今日は帰ろうか・・いろいろとあって疲れたし」

 

ゆかり「はい・・この件は帰った後に話し合いましょう」

 

ゆかりは涙を拭きながらいつものゆかりに戻った

時計は既に5時過ぎを指していて外も明るくなってきた。

 

瑠魅花「そうだ!そろそろ日も昇ってくるから帰る前に見てかない?」

 

ゆかり「日の出ですか・・?私は構わないけど、いつも見てるのですか?」

 

瑠魅花「時間が間に合えばね!勝利の朝日って感じなのかな?」

 

瑠魅花は首を傾げながら応えた

とりあえず、二人は校長室の窓から屋根に上ると朝日が昇る方向に座った

夜明けの空は雲が一つもなく、蒼穹が何処までも続いていた。

 

いつも見る空とはどことなく違う感じがして幻想的だった

日勤が主だったゆかりはいつもこんな空を瑠魅花さんは見てるんだなと思った

瑠魅花の様子を伺っても風を感じてる姿を見て詩人に見えた。

 

瑠魅花「ゆかりはあまりこういう光景を見ないんじゃないかしら?」

 

ゆかり「そうですね・・こんなに風が気持ちよく感じたのは初めてかもです」

 

瑠魅花「ふふ・・ほら見てごらん、日が昇ってきたわよ」

 

微笑む瑠魅花は日の出の方向を指差してゆかりもその方向に目を向けた

その光景にゆかりは目を見開いて感動した。

 

瑠魅花「どうかしら?今まで見てきた日の出とは違う感じがするでしょ?」

 

ゆかり「えっと・・日の出ってこんなにきれいに見えるのですか?」

 

正直ゆかりは驚いていた・・

 

 

 

朝起きる時とか日の出はたまに見たりするけど、普段は何とも思わなかったけど

あれだけの怖いことがあった後だとすべてが何もなかったかのように不思議な感覚になった

今までのことは嘘だったようにすべての不安から解放されたようだった。

 

瑠魅花「人は窮地に立たされた時、それが過ぎ去って見た物は・・・」

   「普段見てるような光景とは違う光景を見ることができるのよ」

 

ゆかり「そうですね・・瑠魅花さんのおかげで目が覚めました」

 

ゆかりは瑠魅花の肩に頭を置き、瑠魅花はそんなゆかりの肩に手を置いて

二人は寄り添いながら昇る日の出を眺めていた

そんな二人が帰宅したのは8時過ぎのことだった。

 

暁「おかえりなさい、今回の依頼は結構苦戦したみたいね」

 

家の玄関を開けると暁が駆けつけながら二人を迎えた。

 

瑠魅花「今回は久々に複雑な依頼だったわよ」

 

ゆかり「予想以上の依頼内容でしたね」

 

暁「何か訳ありのようね・・とりあえず、朝ご飯はどうする?」

 

察しが良い暁は二人の様子から厄介ごとに巻き込まれたと理解していた

でも、疲れてる二人を気遣って詮索をしないようにした。

 

瑠魅花「先にお風呂入りたいわね・・できてるかしら?」

 

暁「事前に伝えてくれたから準備は出来てるわよ」

 

ゆかり「流石ですね!では、ご飯はその後にしますわ」

 

そう言いながらゆかりは瑠魅花と一緒にお風呂に向かった

暁も二人を見送った後に台所に戻って朝食の準備をしていた。

 

他の皆は朝食を既に済ませていて、食卓にはゆかりと瑠魅花・・

何故か茜ちゃんの分が用意されていた。

 

瑠魅花「えっと・・なんで茜ちゃんの分もあるのかしら?」

 

茜「・・・・」

 

ゆかり「大体予想がつくんですが・・」

 

暁「ゆかりの考えは当たってるわね・・まったく」

 

茜ちゃんが起きてきたのは7時30過ぎだったために朝ご飯の時間が過ぎていた

本来なら朝食が抜きになるところだけど、瑠魅花達の分を作るついでに作ってもらった

本当は茜ちゃんが駄々をこねたことから渋々作ったのだった。

 

いろいろとあって朝食も済ませた二人は緊急招集を出してみんなを集めた

今回の件に関しての話し合いで必要とあれば国の力を借りることもあり得る件だった。

 

瑠魅花「皆集まったわね・・これから重大な話をしていくわ」

 

ずん子「その依頼ってLランクの依頼ですよね?私たちでも動向できるのでしょうか?」

 

葵「私たちのランクだと足手まといになったりするんじゃないでしょうか?」

 

瑠魅花達がやってきた仕事は他の皆も理解してたので不安があった

今までの出来事を説明してきた中でも、戦闘が行われるなら尚更だった。

 

ゆかり「確かに危険が伴う依頼ですが・・皆さんに無理はさせません」

 

本題の方は瑠魅花とゆかりが行って、他の皆には情報収集を頼みたかった

重要な証拠などはすべて持ち去られていたのでその行方を知りたかった

日数が経過してたので事は一刻も争う状態だった。

 

瑠魅花「マキちゃん達は自前の憲兵隊を率いて全国各地の情報を集めてほしいわ」

 

マキ「今はそこまで忙しくないからいつでも展開することができるよ」

 

暁「なら、私は海上一帯に不審な艦船や怪しいものがないかを調べるわ」

 

ゆかり「お願いします・・海軍は暁さんにお任せします」

 

葵「なら、私たちは忙しい間の家事とかを行っていきますです」

 「もちろん、お姉ちゃんも手伝うんだからね?」

 

茜「う・・まぁ、嫌やないけど・・」

 

あまり気が進まない茜ちゃんが心配だったけど、葵ちゃんが一緒なら大丈夫だと思った。

 

瑠魅花「これで意見が合致したわね・・今日は普通に過ごして明日から事を進めていくわ」

 

急なことだったので準備のことも考えて、決行は明日に見送ることにした

瑠魅花達も休む必要があったので、この件は一旦終了して他は職務に戻った。

 

 

 

ゆかり「そういえば・・あの分校はどうするんですか?」

 

瑠魅花「一応・・事件解決は済ませたから依頼は達成ね」

 

ゆかり「そうではないです!報酬の受け渡しや分校の存在を言ってるのです」

   「化け物はそのまま放置してますし・・戦闘の痕跡とか・・・

 

瑠魅花「そこら辺は問題ないわ・・すべては依頼主が証拠隠滅するでしょうね」

 

依頼の件は関係者全員に行き渡ってるはずである上に・・言い訳なんてどうとにでもなる

重要なのはそれを隠滅するために多少の荒事をしないといけないことだ。

 

瑠魅花「報酬金は銀行振り込みか機関を通しての受け渡しになる・・」

 

ゆかり「依頼主との接触は、兵器回収の時ということでしょうか?」

 

ゆかりの問いかけに瑠魅花は頷いた。

 

瑠魅花「彼らは現場に絶対現れるはずよ・・」

 

正直のところ・・情報捜索部隊を展開しても得られるものは何もない

日本全国各地を周るのは広すぎる上に複雑な地形も存在する

もしかしると世界に伸びてるかもしれなかった。

 

事件終了後は帰る前に警備式神を多数展開したので、何かあれば情報が来る

あらゆる生物も感知するので進展があればすぐに駆け付けることができた。

 

瑠魅花「あそこは出入りするのは関係者以外いないわ・・」

 

ゆかり「証拠隠滅するまでは工事もできない・・なるほどですね」

 

ゆかりも瑠魅花の考えを理解し、納得した表情で笑みを浮かべた

今回の件は大事になると二人は予測した

ひと時の平和は去り、再び日本全土に驚異の影が表れ始めた。

 

これを放置すればあの一件の二の舞になり兼ねない・・

この件を早期解決するためにも二人はあらゆる策を講じた。

 




校長室で出会ったこの世に存在してはならない妖・・

身の危険があったが、瑠魅花の活躍によって難を逃れた

しかし、ひと段落してもいられなかった

この間にも事は深刻な状況に進んでいる

今回の件ですべてを理解した瑠魅花は早急に策を講じた

訪れていた平和が一変して脅威の影に覆われ始めた

あの時の大事件は何があっても起こしてはならない

尊い市民を守るためにも宮永家は大きく動くのであった


補足(用語集)
討伐ランク・ハンターランクについて

討伐ランクと言うのは簡単に言えば依頼難易度である
どんな形でも依頼にはそれに合った難易度が定められる・・ランクは以下の通りだ。

C,B,A,AA,AAA,S,SS,SSS,L,LL,LLL

難易度はその人のランクに合わされ、それを超える依頼は規律で禁止されている
無断で行えば・・ランクの剥奪或いは厳重な罰則が与えられる
今の時代は依頼受付にハンター免許を提示するので無断受注はなくなった

例外として、上位ハンターとの同行或いは推薦によって受けることも可能である
依頼の内容は「除霊、捜索、偵察、討伐(暗殺)、奉仕、護衛」と分けられる
依頼発注も一般人は「AA」公共機関で「SSS」それ以降は国の指定で決められる。


一方・・ハンターランクはその人の強さを表す
ランクは上記と同じで昇級は国や機関・・権限者によって上げられる
ランクの他にも勲章なども存在し、物によっては上位依頼を受けることも可能になる。

勲章は以下の順に挙げられる

エース、スーパー、ウルトラ、ミラクル、一ツ星、二ツ星、三ツ星、四ツ星
   シングルハンター、ライン、トライアングル、スクエア

ミラクルで「SS」四ツ星で「L」となる
勲章は機関や国から授与される。

第三章 後編 終

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