レナの兄貴に転生しました【完結】   作:でってゆー

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ひぐらしのなく頃に

俺の名前は前原圭一。

 

この雛見沢に三週間前に引っ越してきた男だ。

 

新幹線や電車やらを乗り継いで数時間、そこからさらに車で山道を登った先にこの雛見沢はある。

 

この雛見沢にはコンビニもファミレスもない、あるのは美しい大自然のみ。

そんなところだが俺はこの場所を気に入っている。

 

それはやはり都会では手に入らなかったものを手に入れたから。

 

「圭一くーん!」

 

家を出て学校へ向かう通学路、そこのいつもの待ち合わせ場所に彼女はいる。

 

「お寝坊したのかな?かな?」

 

「いや礼奈が早いだけだろ、たまには少しくらい遅れてもいいんだぞ?」

 

夏の日差しから逃げるために木々の木陰にいた礼奈がこちらに手を振りながらやってくる。

竜宮礼奈、俺と同い年の女の子で可愛いものを見ると暴走する少し変わった奴だ。

 

「礼奈が遅れたら圭一君を待たせちゃうじゃない」

 

うん?礼奈は俺が待ってくれると思ってるのか?

よし、だったら少しからかってやるか。

 

「その時はおいてく」

 

「ええ!?」

 

「サクサクおいてくドンドンおいてく」

 

そう言って礼奈をおいて通学路を進む。

それを見た礼奈が慌てて追いかけてくる。

 

「はうぅ、ひどいよぉ。いつも待っててあげてるのにぃ」

 

涙目でそう告げる礼奈に内心で笑みを浮かべながら振り返る。

 

「嘘だよ」

 

精一杯の決め顔で礼奈にとどめの言葉を告げる。

 

「礼奈が来るまでずっと待って「おはよう二人とも!」どわぁ!?」

 

あと少しで俺の口説き文句が炸裂するというところで誰かが俺と礼奈の間に強引に割り込んでくる。

まぁここで割り込んでくる奴なんて二人の内のどっちかだ。

 

「今日は悟史か。もう少しで俺の口説き文句が炸裂するところだったのに!」

 

「あはは・・・・抜け駆けはよくないよ圭一」

 

爽やかな笑みを浮かべながらこちらに牽制の言葉をさしてくる悟史。

転校してからのこの三週間でこのグループの関係はだいたいわかった。

 

とりあえず悟史は礼奈に惚れていて、天然な礼奈はそれに全く気付いてねぇ。

 

「・・・・少し目を離してたら人の妹を口説こうとしやがって、良い度胸だな圭一君」

 

「出たなシスコン!」

 

俺はこの三週間で俺の宿敵となった男の声が聞こえて叫ぶ。

 

竜宮灯火、こいつは礼奈の兄、こいつは礼奈とは別のベクトルで変わってる。

 

灯火も悟史も俺の一つ上になる。

 

「出たぞシスコンだ、礼奈や魅音達がほしかったら俺を倒していけ」

 

「いや別にほしいとか、そういうわけじゃ」

 

「そこは倒すって言うんだよ!まぁ渡さないけど」

 

「いやどうしてほしいんだよ」

 

そうしていつものように四人で学校までの道を歩く。

悟史はこっちに寄ると学校まで遠回りをしないといけないのに毎日こっちまで歩いて来てる。

 

なんていうか、そこまでして礼奈に会いたいんだろうけど、いつも灯火に邪魔されてて少し哀れだぜ。

 

でもなんやかんやで二人で俺達に合流してるから仲が良いんだろうな、二人は同い年だし子供の頃からずっと一緒にいるらしいから当然なんだろうけど、少し羨ましいと思ってるのは内緒だ。

 

そうして四人で歩いていると、いつもの登校メンバーの残り二人の姿が見えてきた。

 

「あ、おはよ四人とも」

 

「遅いよー私立ってるの疲れちゃった」

 

そう言ってこちらに合流した二人、魅音と詩音。

 

相変わらずそっくりでまだ慣れねぇ。性格は全然違うんだけどな。

 

「お兄ちゃんおんぶして連れてって。あ、やっぱりお姫様だっこで!」

 

「あ、じゃあ詩音の次は私ね。お兄ちゃん」

 

「そんなことしたら学校に着いたら足がプルプルしてるわ」

 

そう言いながら灯火に抱き着く二人に思わず口が開く。

 

「なぁ、前から思ってたんだけど。お前らって普通に血はつながってないよな?実は腹違いだったりするのか?それとも狭い村だから同年代の子はみんな兄妹的な感じなのか?」

 

この三週間でずっと気になっていたことをついに口にする。

みんな当たり前のように二人が灯火をお兄ちゃんって呼ぶのをスルーするから聞くタイミングを逃してしまっていたんだ。

 

「普通に血はつながってないね。村でもさすがにそういったことはないかな」

 

「普通に私達がお兄ちゃんって呼びたいからそう呼んでるだけ」

 

「なっ!?じゃあお兄ちゃん呼びは単にそういうプレイなだけってことかよ!!」

 

「プレイ言うな」

 

灯火がジト目でそうツッコんでくるがこっちは今すぐ鉄拳をお見舞いしたいくらいだ。

このシスコン、全世界のモテない男達を敵に回してやがる!

 

「俺が都会で灰色の青春を送っていた時に灯火は妹ハーレムできゃきゃうふふしてたってのかよ!これは全世界のモテない同志たちの代表としてお前をぶん殴る権利が俺にはある!!」

 

「悔しかったら奪ってみせろよ圭一君、残り時間は少ないぞ!と言っても渡さないけど」

 

「だからなんだよそれは!」

 

暖かな日差しが降り注ぐ通学路に俺の魂の叫びが響いた。

 

 

 

 

 

「梨花、忘れ物はない?」

 

「大丈夫なのです」

 

「水筒は持った?あなたこの前忘れてたでしょ」

 

「みぃ!大丈夫なのです!」

 

玄関で何度も忘れ物がないかを確認してくる母に私は少しうんざりしながらそう答える。

全く、子供じゃないんだから忘れ物なんて・・・・たまにしかしないわ。

 

「行ってきますです!」

 

まだ小言が続きそうな予感がしたので言われる前に玄関から外に飛び出す。

 

「いいのですか梨花?お母さんのお話はまだ終わっていなかったのですよ」

 

「平気よ、あんなのいつものことじゃない」

 

心配そうな表情で浮かぶ羽入にそう告げる。

 

そう、何でもない当たり前の日常よ。

 

外では父がいつものように神社の掃き掃除をしていた。

 

「行ってらっしゃい梨花。今日も楽しんでおいで」

 

「はいなのです!」

 

手を振る父に笑みで答えながら階段を下りる。

階段を下りるとすでに沙都子が私が下りてくるのを待っているようだった。

 

「おはようですわ梨花、それに羽入もおはようですわ」

 

「みぃ、おはようなのです沙都子」

 

「あうあうあう!おはようなのですよ沙都子!」

 

挨拶した後はいつものように三人で一緒に学校まで登校する。

 

今日は久しぶりの部活の日だ、最近は圭一の村の案内とかで出来なかったけど今日は圭一を部活メンバーに加えると魅音が言っていた。

 

やっとだ。

 

やっと全員が揃った。

 

圭一、あなたが来るのを私達はずっと待っていたのよ。

 

「にーにー達よりも早く学校に行きますわよ!圭一さんに私のトラップをくらわせる準備をしなくてはなりませんわ!」

 

「みぃ、この前は悟史が気付かずに圭一より先に入って酷い目に遭っていたのですよ」

 

「あうあうあう!?そもそも教室でトラップをしかけたら危ないのですよ二人ともー!」

 

陽だまりの通学路を私達は走りながら学校へと向かう。

 

当たり前の日常をしっかりと楽しみながら。

 

 

 

 

 

「おっほっほっほ!まだまだ詰めが甘いですわね圭一さん!」

 

「沙都子!今日はまた随分とスペシャルなトラップコンボを!」

 

教室の扉の先では圭一君と沙都子が騒いでいるのが見える。

ほんとさすがだな。一瞬でこのメンバーに溶け込んでるよ。

 

違和感が全くない、むしろ圭一君が来たことでようやくしっくりきたと思える。

 

そして、圭一君の発症は・・・・ない。

 

圭一君の様子を見た俺は内心で安堵の息を吐く。

 

圭一君が葬式で東京に行って雛見沢を離れた時は少し心配だったが問題なさそうだ。

 

これでもう本当に終わり。

 

長かったこの物語の締めが出来る。

 

あの半年前の梨花ちゃんの死を偽装してからずっと事態の収束に動いてた。

 

本当に富竹さんが鷹野さんを説得してくれたことが大きい。

 

でもなぜかこの話をすると富竹さんは慌てながら目を逸らすんだよな。

 

鷹野さんは雛見沢症候群の研究が中止になることを受け入れ、今できることをしようと動き出した。

 

山狗は完全に解体され、診療所内にある軍事転用を目的として作られた物は全て処分されたらしい。

 

東京から帰ってきた鷹野さんが現れ、俺に泣かされたと言って微笑み、今までのことを謝ってきた時は驚きのあまり固まってしまった。

 

その後、鷹野さんは俺の知る限り悟史の両親や事情を知る梨花ちゃんとも話していたけど、深くは聞いていない。

 

梨花ちゃんは鷹野さんを許したと言って笑っていた。

悟史達からもそれとなく聞いたけど特になにもなかったとのことだった。

 

結局鷹野さんと他の人たちの間でどういった話があったかわからないが、俺の知らないところで解決している以上、俺から何も言うことなんてなかった。

 

しばらくして鷹野さんは富竹さんと一緒に診療所を、雛見沢を出て行ってしまった。

 

それからまだ俺は二人と会ってはいない。

 

だから診療所にいるのは入江さんだけだ。

入江さんは一人で俺達のために雛見沢症候群の治療法を探してくれている。

 

入江さんの話では鷹野さんはここにいる間に凄まじい気迫で雛見沢症候群の治療法を探してくれていたらしい。

 

そしてその研究が一段落すると富竹さんと一緒に出て行ってしまったようだ。

去り際の鷹野さんの笑みはすごく穏やかだったと入江さんは微笑んでいた。

 

東京の赤坂さんの話では雛見沢の研究は完全に隠蔽しようと動いているらしく中々しっぽは掴めていない、だが雛見沢に害が及ぶようなことは絶対に防ぐと言ってくれた。

 

梨花ちゃんの死の偽装協力の際に大石さんにも事情を説明してる。

 

今も赤坂さんと連携をとりながら雛見沢を守ってくれているようだ。

 

あとは村の警戒を解くだけだけど、これが苦労した。

そりゃそうだよな、俺と詩音の件があった時から警戒してて、とどめに梨花ちゃんの死の偽装だって手伝ったんだ。

 

それを俺が終わったから、はい解散!で解散なんてしてくれるわけがない。

 

結局、お魎さんに茜さん、それに公由さんといった村の重鎮たちに俺達の事情をかなり深くまで説明することになった。

 

梨花ちゃんの両親、入江さんにも参加してもらって雛見沢症候群のことも含めて状況を説明し、村中が納得するための話を作り上げた。

 

それによってなんとか村は落ち着いた。

 

このままじゃ他所から来た圭一君が警戒されて、それが原因で圭一君が雛見沢症候群を発症したなんて笑えないからな。

それに万が一、この話を聞いて圭一君が誤解しないように話を作る際も本当に気を使った。

 

これで圭一君を迎えることが出来て、こうしてみんなで笑えるようになった。

 

「はう!泣いてる沙都子ちゃんかぁいいよう!お兄ちゃん!私達も交ざろ!」

 

「ああ、そうだな」

 

礼奈に手を引かれながら教室に入る。

 

この光景をただ見ているだけなんてもったいない。

 

今日は圭一君が部活に入る。

 

そして綿流しだってある。

 

今まで一番騒がしい綿流しにしないとな。

 

 

 

私はきっと今日の日を一生忘れることはないだろう。

 

「はい、お兄ちゃん。いつもの(メイド服)だよ」

 

「魅音、当たり前のようにそいつを俺に渡してくるな」

 

「圭ちゃんに綿流しがどういうものか教えるんでしょ?だったら相応しい恰好にならないと」

 

「ま、まじかよ。俺の想像していた祭りと全然違うんだが」

 

魅音の渡してきたメイド服に灯火が頬を引きつらせ、圭一が戦慄する。

 

そして灯火が慌てて誤解を解こうと圭一に説明をし、それを詩音と礼奈が邪魔をしてさらに酷い誤解になっていった。

 

そんな騒がしい中でみんなは笑っている。

 

そして一斉に祭りの中に駆け出した。

 

みんなでたこ焼きの早食い勝負をした。

 

そして全員が熱いと騒ぎ、ひそかに仕込んだ辛子入りの外れを引いた羽入が悲鳴を上げる。

 

入江と出会い、灯火と圭一と悟史でもっともメイドに相応しいのは誰かという議論が始まった。

そして話し合いの結果、全員が着ればいいじゃないという結論に達して三人とも逃げ出した。

 

そしてその後はまたペアになって行動しようと沙都子が言い出し、礼奈と悟史が二人っきりになろうとするのを灯火が邪魔していた。

 

灯火、あんたもいい加減、親友の応援くらいしてやりなさいよ。

 

でもあの様子を見ていると礼奈が悟史の気持ちに気付くのは遠そうね。

 

それに最近は公由の方から悟史に親戚の子を紹介してて面白かったわ。

 

興宮の子で悟史より年上の子のようだけど、どうなるか楽しみだわ。

 

それと沙都子も紹介されてて困ってたわね、沙都子は自分の気持ちに気付いているのかしら。

早く素直にならないと後悔しちゃうわよ。

 

敵に塩を送るわけじゃないけど、親友として少しだけお節介くらいはしてあげてもいいけどね。

 

その後はみんなの家族と合流した。

 

私の両親はもちろん、悟史と沙都子の両親もいて、全員の両親が集まって私達の話で盛り上がっていた。

 

特に茜と沙都子達の両親が笑いながら話している姿は印象的だった。

 

そして両親が話している間、私達は菜央ちゃんに夢中になっていた。

 

一歳になった菜央ちゃんはまだ言葉は話せないけど言葉の意味を少しずつ覚えてきているようだ。

 

私達が彼女の名前を呼ぶと嬉しそうに満面の笑みで応えてくれる。

その姿に全員がメロメロになって彼女の名前を呼び続けていた。

 

最近の竜宮家では誰が菜央ちゃんに最初に名前を呼ばれるのかで毎日激しい争いが行われているらしい。

 

全員が一番最初に自分のことを呼んでほしいらしく、暇さえあればママやパパやと菜央ちゃんに言っているようだ。

 

最近では全員のあまりのデレデレ具合から菜央ちゃんは竜宮家の乙姫なんて呼ばれている。

 

それを聞いた灯火はもし浦島太郎が来たら全力で追い返すと本気で言っていて呆れてしまった。

 

彼の妹好きもそろそろなんとかしないとと密かに思っていたりする。

 

そして今回の綿流しではサプライズがいくつかあった。

 

一つ目は私達に内緒で赤坂が家族を連れて綿流しに参加してきたことだ。

 

赤坂はずっと東京で私達のために頑張ってくれていたことを灯火から聞いている。

そのお礼もかねて満面の笑みで赤坂のことをパパと呼んであげた。

 

結果修羅場になったわね。

 

それはどうでもいいけど、赤坂の娘の美雪と仲良くなれたから私は満足だ。

 

そしてもう一つのサプライズは鷹野と富竹がやってきたことだ。

 

半年前に雛見沢から出て行ったきり、どこに行ったのかわからなかった二人だけど元気そうで安心した。

 

あの日、鷹野が私に謝ってきた時のこと。

 

この世界の鷹野と私が今までいた世界の鷹野ははっきり言って別人だ。

 

この世界では私自身に何か迷惑をかけたと言われたらそんなことはない。

でも灯火の命を狙ったのは許せない。

 

だからいっぱい恨み言を言ってやろうと思っていたけど、鷹野の惚気話を聞いてそんな気も失せてしまった。

 

富竹も大変ね、私はああはなりたくないわ。

 

そして今までのカケラで鷹野が私に行ってきたことは全部許した。

 

ある意味であなたのおかげで灯火に出会えた、そう考えれば許せる気がしたから。

 

「「「梨花ちゃん頑張れー!」」」

 

奉納演舞を舞う私をみんなが応援してくれる。

それに内心で笑みを浮かべながら舞い続ける。

 

ちゃんと見てるかしら羽入?

 

私達の長い長い旅はようやく終わるわね。

 

舞台から羽入を見れば、彼女は涙を流しながら私を見て微笑んでいた。

 

 

旅は終わり、でも私達の人生はこれからよ。

 

私達はこれまで取りこぼした幸せを取り戻すんだから。

 

 

私は百年分。

 

あなたは千年分をね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「梨花ちゃんお疲れ様」

 

「ええ、ありがとう」

 

奉納演舞を終えた私に彼は労いの言葉をくれる。

それに私は微笑んでお礼を言った。

 

「それじゃあ綿流しに行くか。ここからは混むからな、みんなは先に川の方に行ってるぞ」

 

「ねぇ灯火。少しだけいい?」

 

みんなのところに行こうとする灯火の手をとって止める。

彼は首を傾げながらも歩くのを止めてくれた。

 

「少し二人で話したいの」

 

「ああ、いいよ」

 

私の言葉に灯火は頷いてくれる。

そうして二人でみんなから少し離れた場所に向かう。

 

「灯火、改めて言わせてほしいの。本当にありがとう」

 

「本当に改まってだな。それはもう半年前に聞いたさ」

 

私の言葉に彼は苦笑いを浮かべながら答える。

そうね、でもいくら言っても足りないくらいだわ。

 

灯火は土手沿いの階段を一段降りて川を流れる綿を見つめている。

 

「・・・・綺麗だよな。今日、羽入に綿流しの本当の意味を聞いたよ」

 

「綿を流すのは自分の罪を流すため、自分で自分を赦すという自らに課す贖罪の方法だったかしら」

 

「ああ、羽入らしい優しい儀式だな」

 

「そうね」

 

二人で流れていく綿を見つめる。

そしてふと思ったことを口にする。

 

「そういえば聞いたかしら?鷹野と富竹の惚気」

 

「ああ聞いた、あの鷹野さんがまさかああなるとは」

 

「ええそうね、私もああはなりたくないって思ったわ」

 

思い出すのは微笑んでいる鷹野と若干引きつった笑い方をする富竹。

関節でも決めるんじゃないかと思うほど強く富竹の腕に抱き着いていたわね。

 

「ま、まぁ富竹さんも幸せそうだしいいんじゃないか?」

 

「そうね、それにあれを見て少し見習わないとって思ったところよ」

 

私はそう言って私の一段下の階段にいる灯火と目線を合わせるために背伸びをし、彼の頬を両手で包む。

 

「・・・・梨花ちゃん?この体勢は一体」

 

「わからないの?ほら、早く目を閉じなさい」

 

「・・・・待って、展開が急すぎない?こういうのには正しい順序があってだな」

 

「妹ハーレムを作ってるあなたに正しい順序を言われたくないわ」

 

「・・・・」

 

よし黙ったわね、もう目をつぶらなくていいわ。

そのままじっとしてなさい。

 

「待った!あれか?梨花ちゃんを助けたお礼的なやつだな。だとしたら別のでいい、そもそもこういうのは将来梨花ちゃんに出来た好きな子ととだな」

 

「あら、それなら何も問題ないわね」

 

早口で私を止めようと言葉を並べる灯火に笑みを浮かべる。

ていうか気付きなさいよ。私だって普通ならお礼でこんなことはしないわよ。

 

「ねぇ灯火、私はあなたのことが好きよ」

 

私は彼を見つめながらずっと言えなかった言葉を口にする。

 

「あなたはその名前の通り、運命という真っ暗な海を彷徨っていた私を導いてくれた光だったわ。あなたは何回も私を救ってくれた。あなたがいなかったら私は暗い海の底に沈んでいたでしょうね」

 

いくら言っても言い足りないくらいの感謝をあなたに送る。

 

私はこんな幸せな結末を迎えることができるとは思わなかった。

 

「圭一でも赤坂でもない。私の好きな人は世界でただ一人、あなたよ」

 

ずっと恥ずかしくて言えなかった言葉。

 

魅音や詩音、礼奈はずっとあなたに言ってる言葉。

 

やっと私も言えた。

 

「返事はまだいいわ、あなたも大変だしね。でもずっと待つのも嫌」

 

だから、そうね。

 

ああ、これにしましょう。

 

私は耳に入ったあの声を聞いて期限を決める。

 

「いつの日か、あなたの心が決まった夏の日」

 

 

 

 

 

 

 

「ひぐらしのなく頃に」

 

 

 

 

 

 

 

あなたの答えを聞かせて。

 

そして出来たら、このお礼を今度はあなたから私に返してほしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




これで「レナの兄貴に転生しました」は完結になります。
今までお付き合いしていただきありがとうございました。
他の作品も読んでくれると嬉しいです。

前に活動報告で書いた通り、IFと業卒をやるかは未定ですが、やる場合は活動報告に書いて、ここでアンケートをしますのでよろしくお願いします。

今後見たいエピソードは?

  • 業卒
  • 後日談(日常話)
  • IF(魔女要素あり)
  • ネタIF(ひぐらし令など)
  • このまま終わるのが綺麗

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