レナの兄貴に転生しました【完結】   作:でってゆー

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いつもと違う世界

痛い。

 

身体中から狂いそうなほどの痛みが走る。

 

やめて。

 

いくら心で泣き叫ぼうが痛みは止まない。

 

もう嫌。

 

今回もダメだった。

私は何回繰り返すのだろう?

 

私はあと何回死ぬのだろう。

 

 

誰なの?

 

一体誰?

 

私を殺すのは一体誰なの?

 

 

 

 

 

 

 

「っ!!?」

 

意識が突然覚醒し目を覚ます。

 

「・・・・ここは」

 

時間は朝早くのようで小鳥の鳴く声が耳に届く。

場所は・・・・昔の私の家のようだ。

 

「・・・・巻き戻ったのね」

 

また私は死んだのか。

 

「・・・・私はまた」

 

殺された時の記憶を思い出そうとするが失敗する。

殺されるときの記憶はノイズだらけで全然思い出せない。

 

「っ!もういや!!」

 

どうして私は死ななきゃいけないの?

 

沙都子に圭一、レナ、魅音、詩音。私はみんなで楽しく過ごしたいだけなのに!

 

「梨花!」

 

涙が溢れそうになった時。私に耳に聞き慣れた声が届いた。

 

「・・・・羽入」

 

声がした方を見ると紫色の髪に頭に2本の角が生えた少女、羽入がいた。

 

羽入は私がこの世に生まれ落ちてから親よりもずっと一緒にいてくれた存在だ。

 

その姿は私にしか見えない。

 

死ぬ度に私は羽入の不思議な力によって前の人生の記憶を受け継いだまま何度も新しい人生をやり直してきた。

 

「・・・・今日は何月何日?」

 

「昭和50年の6月の19日なのです」

 

「そう、今回はかなり前に戻れたのね」

 

しばらく殺される心配がないことに安心する。

でもだからどうしたというのだ。どうせ最後は殺されてしまうのに。

 

死ぬまでの時間が少し伸びただけだ。

私はそう思い、自嘲気味に笑う。

 

「・・・・19日ということは今日は綿流しなのね」

 

「そうなのです!昨日、灯火が一緒に行こうと誘いに来たのですよ!」

 

「・・・・灯火?」

 

誰だそれは?聞いたことのない名前だ。

この時期に私が一緒に綿流しに行く子なんていたかしら?

 

この時期はまだ圭一はもちろん、沙都子やレナ、魅音とだって知り合いになっていないのだから。

 

最初に知り合いになる魅音とだって出会いはまだ先だ。

 

「梨花!この世界は他の世界とは大きく違うのです!この世界なら、灯火のいるこの世界なら!今度こそ生き残れるかもしれないのです!!」

 

「は、羽入?」

 

大きな声でそう叫ぶ羽入に困惑してしまう。

ここまで希望を目に宿す羽入は初めて見た。

 

「梨花。私はこの世界で生き残りたいのです!必ずこの世界で最後にするのです!」

 

あうー!!と叫ぶ羽入。

この子、悪いものでも食べたのかしら。

とりあえずトウガラシでもいっとこうかしらね。

 

「待ちなさい!1人で勝手にやる気を出さないで!まず灯火って誰よ!?聞いたことないわ!」

 

「灯火ですか?灯火はですね、 えへへ!あうあうあうー」

 

なぜか頬を染めてニヤニヤしている羽入。

こいつ、説明する気あるのかしら。

 

「早くしなさい。キムチ食わすわよ」

 

「あうあうあう!キムチはダメなのです!説明するのです」

 

「早くしなさい」

 

「竜宮灯火。レナのお兄ちゃんなのです」

 

「・・・・はい?」

 

羽入の言葉に思わず変な声が出る。

レナのお兄ちゃん?

 

「何を言ってるの!?レナに兄なんていないわ!」

 

今まで数々の世界を生きてきたが、レナに兄がいたなんて一度も聞いたことがない。

そんな私の当然の疑問に対して羽入は真剣な表情で私に告げる。

 

「灯火はこの世界で初めて現れた人なのです」

 

「・・・・嘘でしょ、そんなことがあるわけ」

 

「梨花、これは本当のことなのです。灯火は確かにレナの兄としてこの世界で生きています」

 

「・・・・レナのお兄ちゃん」

 

どんな人なのだろう?

 

レナのように可愛いものが大好きなのだろうか?

会ってみたい。

何せ100年ぶりの新しい登場人物なのだ。

 

「灯火はすごいのです!灯火ならきっと全部なんとかしてくれるのです!」

 

さっきから羽入の盛り上がり方がおかしい。

 

「随分灯火を推すわね。なにかあったの?」

 

「え?えへへ、それはですねーあうあうあうー!」

 

また頬を染めてニヤニヤする羽入。

灯火という人間は羽入に何をしたのかしら。

ここまで変な羽入は初めて見たわ。

 

「梨花ー灯火ちゃんが来たわよ」

 

突然の声に肩が大きく上がる。

あの声は母だ。

 

・・・・母はなんと言った?

 

「あ!灯火が来たのですよ」

 

羽入が母の声で嬉しそうに声を出す。

 

「え!?ちょ!まだ心の準備が!」

 

私が1人で慌てる。

確かに会いたいと言ったけど、今すぐなんて言ってないわよ!?

 

「おーす。梨花ちゃんおはよー」

 

そんな私の声を知ってか知らずか、レナの兄と羽入が言う竜宮灯火が私の前に現れた。

 

 

 

いつものようにお賽銭と手紙を入れて梨花ちゃんのお父さんとお母さんに挨拶をする。

 

今日は待ちに待った綿流しの日だ。

昨日梨花ちゃんに綿流しに一緒に行こうと誘ったら喜んで了承してくれたので今日はどこを回るとかの話をしておきたい。

 

「おーす。梨花ちゃんおはよー」

 

挨拶をして居間に向かう。居間にはいつものように梨花ちゃんがいた。

 

「お、おはようなのです。灯火」

 

「おう。今日は飛びついてこないんだな。珍しい」

 

というか初めてでは?俺が現れると梨花ちゃんが走ってきて俺に飛びつく。

俺と梨花ちゃんのいつもの流れだ。

 

「え!?き、今日はやらないのですよ。にぱー☆」

 

「そっか。そういう日もあるか」

 

別にそうしようって決めていたわけじゃない。

それに最近飛び込まれると高確率で鳩尾に入るからな。

 

「それで祭りだけど、どこか回りたいとことかあるか?行きたいとこを優先して回っていくけど」

 

「うーん、特にないのです」

 

「じゃあ沙都子がりんご飴が食べたいって言ってたし。まずはそこからかな?」

 

「沙都子!?」

 

俺がそう言うといきなり梨花ちゃんが驚いたように声をあげた。

 

「あれ?昨日言ったよな?沙都子に悟史、礼奈も一緒に回るって」

 

「そ、そうだったのです。忘れてたのです」

 

「大丈夫か梨花ちゃん?いつもと様子が違うぞ」

 

「き、気のせいなのですよ!」

 

「そうか?まぁ今日は楽しもうぜ。梨花ちゃんの舞。すごく楽しみにしてる」

 

「はいなのです!」

 

「じゃあ今日はもう帰るから。夕方にまた迎えに来る」

 

「はいなのです!」

 

俺は梨花ちゃんの頭を撫でて、梨花ちゃんの家を後にした。

なんか今日の梨花ちゃん変だったけど・・・・まぁいいか。

 

 

 

「し、心臓に悪いわ」

 

まさかいきなり会うことになるとは予想外だった。

レナの兄なだけあって確かにレナと顔が似てる。

 

レナが髪を圭一くらいにして男っぽくすればああいう感じになりそうだ。

 

予想以上にレナに似てることにも驚いたけど、それよりも聞き捨てられないことを彼は言っていた。

 

「ちょっと羽入!彼は沙都子って言ったわよね!?おまけに悟史!?礼奈はレナのことよね。なんで今の時期に私と知り合いになってるのよ!」

 

この時点では私は沙都子と悟史とは面識はないはずだ。

いえ、別に文句があるわけじゃないけど・・・・びっくりするじゃない!

 

「灯火が悟史と沙都子と友達なのですよ。梨花を入れた五人でよく遊んでいたのですよ」

 

「そ、そうなのね」

 

まさかこの段階で沙都子たちと友達になっているとは。

でもこれは嬉しい情報ね、これでこの時期でも沙都子たちと一緒にいられるんだから。

 

「梨花ーご飯よー」

 

驚いて放心気味になっているのを母の声で目を覚ます。

 

「い、今行くのです」

 

ええい!灯火!あんた何者なのよ!

絶対あとで教えてもらうからね!!

 

・・・・ところで妹のレナってどんな感じなのかしら?

 




羽入はこの世界の記憶があります

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