レナの兄貴に転生しました【完結】   作:でってゆー

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兄隠し編6

「・・・・じゃあ、その男は白ってこと?」

 

「・・・・はい、私はそう思います」

 

葛西が報告をした内容に眉をひそめる。

 

情報に入っていた東京から来た警察官の男。

この男が雛見沢に来ることはわかっていた。

 

だから葛西に後をつけさせて相手のことを探らせた。

そして結果は白。

 

「・・・・」

 

正直言うと信じられないというのが本音。

葛西のことは()()信用してる。

 

その葛西が言うのだから少なくてもこちらに敵対している可能性は低い。

だが、このタイミングで東京から警察官が休暇でここにくる。

 

それがあまりにも怪しすぎる。

私達に白と思わせて接近するのが目的だとも考えられる。

 

「・・・・他の進展はどう?」

 

「雛見沢の住民から興宮までの住民も調査中ではありますが・・・・()()()()()()()()()()

 

「・・・・そっちは引き続きお願い、油断はしないように」

 

「わかりました」

 

私の言葉に頷いて葛西は下がる。

他の人たちにもおねぇの振りをして言っておかないとね。

 

あっちはこのままおねぇの振りをして指示を出しながら監督は葛西に任せるとして。

・・・・やっぱり直接こっちは確かめるしかないか。

私が動けば相手も何か動くかもしれない。

 

「やっほ詩音、そっちはどう?」

 

「おねぇ。なかなか面倒かな・・・・お兄ちゃんはどう?」

 

「ああ、今日も元気に騒いでるよ。いい加減慣れてほしいなぁ、お兄ちゃんを守るためなんだから」

 

そう言いながら苦笑いを浮かべるおねぇに私も同じ表情を作る。

もう少し我慢してほしい、そうすれば前みたいに戻れるから。

 

「昨日は礼奈が遊びに来て家のことを話してたみたい。まぁ、やっぱり気になるよね。そろそろ男の子か女の子かわかるって話だし」

 

「ほんと!?うわぁ、どっちだろう!私も気になる!」

 

おねぇの言葉に思わず声が弾む。

 

お兄ちゃんのお母さんが妊娠していたのを知ったのが四か月前の綿流しの夜。

あの時急に血相を変えて診療所へ向かったお兄ちゃんに追いついて聞いた時は、驚いたけど信じられなかったなぁ。

 

こっちは決死の覚悟で追いついたのに、待っていたのはお兄ちゃんのスライディング土下座だったからね。

 

「私は女の子な気がするなぁ」

 

「えー私は男の子だと思う」

 

二人で生まれてくる子について話し笑う。

どっちでもいいんだ。その子はお兄ちゃんや礼奈の弟や妹だけど、私達にとっても可愛い弟や妹なんだから。

 

「梨花ちゃんと沙都子も嬉しそうだったよ。やっと自分たちより下の子ができたってね」

 

「あはは、二人が一番年が近いからね。私達よりお姉ちゃんになる感じが強いのかも」

 

きっと沙都子はお姉ちゃんぶろうとするだろうなぁ。

梨花ちゃんはどうだろう?意外と一番かわいがったりするかもしれない。

 

「その子のためにも、さっさとケリをつけないとね」

 

「うん、そうだね」

 

・・・・そのためにも、あの男を見定めないと。

 

 

 

 

 

 

 

「パパーはやくー」

 

「あ、こら!走ったらあぶないでしょ!」

 

俺達を置いて走っていく美雪を雪絵が慌てて追いかけて行く。

 

ホテルスタッフの方に教えてもらった興宮の観光名所を朝から回っているが、心の中では雛見沢のことが頭から離れない。

 

どうにかして灯火君と会わないことには状況がわからないし、何を手伝えばいいのかも判断できない。

 

観光名所を回っている中で大石さんに教えてもらっていたペットショップにはもうすぐ着く。

そこで何かわかればいいんだが。

 

「パパー!はーやーくー!!」

 

「ああ、今いくよ!」

 

こちらに手を振る美雪に追いつくために駆け足で急ぐ。

せっかく三人で旅行に来たんだ、こっちも楽しまないとな。

 

「あなた、次はどこに行くの?」

 

「ああ、ちょっとペットショップに行ってみたいんだけどいいかな?」

 

「え?いいけど、どうしてわざわざ興宮で?」

 

「いきたいー!」

 

俺の行先に当然疑問を持つ雪絵に言い訳を言おうとしたところで美雪がこちらに飛びついてそう叫ぶ。

どうやらペットショップに興味あるみたいだ。

 

そのまま美雪の言葉によって行先はペットショップに決まる。

雪絵には悪いけれど、ここで行かないという選択肢はない。

 

「ここのすぐ近くのようだから、このまま歩いていこう」

 

「ええ、わかったわ」

 

「だっこー」

 

「はいはい」

 

歩き疲れた美雪を雪絵が抱き上げて歩き始める。

ペットショップは本当にすぐ近くにあって歩いて五分くらいで到着した。

 

「へー意外といっぱいいるのね」

 

「ねこー!」

 

ペットショップに入ると多くの動物が出迎えてくれる。

室内は普通だな、あるのはペット用のフードや小道具くらいだ。

 

「・・・・いないか」

 

室中にはスタッフを含めて数人いるけれど、灯火君の姿はない。

素直にいるとは思ってなかったけど、まさか店裏にいたりするのか?

 

「すいません、最近茶髪の少年がここによく来たりしていませんか?」

 

「え?いえ、来てはいないと思いますよ?狭い町なので来る人は決まっていますから」

 

「・・・・そうですか」

 

念のためスタッフに聞いてみたが手掛かりはなし。

店内を見回してみるが、何か手掛かりになりそうなものは見つからない。

 

外れだったか、いやしかし礼奈ちゃんのあの言葉には間違いなく何かあるはずなんだが。

 

「パパーみてー!」

 

悩む俺に美雪が声を上げて呼ぶ。

見ればゲージの中にいる犬に手を伸ばして撫でていた。

 

「あ、こら。ゲージの中に手を入れたら危ないぞ」

 

「ああ、大丈夫ですよ。その子は人懐っこいので」

 

ゲージに手を伸ばす美雪に注意しようとしたところでスタッフさんからそう声をかけられる。

確かに美雪に撫でられて嬉しそうにしてるから大丈夫か。

 

「可愛いわね。東京に帰ったら犬でも飼ってみる?」

 

美雪と一緒に嬉しそうにしっぽを振る犬を撫でながら雪絵がそう口にする。

 

「ああ、それもいいな。番犬になるし」

 

もし犬を飼うなら訓練して警察犬にでもしようかな。

いや、さすがにそれはやりすぎか。

 

「・・・・犬の嗅覚で彼の居場所がわかったりしないかな」

 

唯一の手掛かりが無駄に終わって思わずそんなことを呟いてしまう。

 

・・・・実はこの子の首輪とかに灯火君からのメッセージが書いてたりとかは、しないか。

 

諦めきれずに周囲に目を凝らすが見つからない。

参ったな、これで完全に手がかりがなくなった。

 

内心で頭を抱える。

礼奈ちゃんのあの言葉に深い意味なんてなかったのか?

 

「犬を飼うなら何がいいかしら?チワワ?それとも柴犬?」

 

「・・・・ドーベルマンとか」

 

「・・・・あなた、絶対警察犬にする気でしょう」

 

ジト目を向けてくる雪絵に目を逸らす。

そして何気なく頭の中で言葉をつぶやく、

 

犬を飼う・・・・・犬、飼う。

 

「っ!?」

 

何気ない考えによってずっと解けないでいた難問の答えが浮かぶように、不意にその答えは俺の頭に舞い降りる。

 

「そういうことか」

 

どうしてこんな簡単な発想をすぐに思いつかなかった!

これは連想ゲームのようなものだ。

 

ペットショップは動物を飼う場所。

 

そしてペットショップと言えばであがる候補は犬と猫だろう。

 

犬を飼う場所。犬と飼。

 

犬飼としき!二年前に雛見沢で誘拐されていた大臣の孫だ!!

 

そして礼奈ちゃんの言葉。

 

ペットショップがお気に入りでよくそこにいる。

 

ペットショップではなく犬飼としき君だと考えるなら、としき君がいた場所こそが正しい。

 

としき君がいた場所、いや誘拐されていた場所だ。

 

としき君が誘拐された場所は雛見沢の外れにある小屋、大石さんと一緒にそこに乗り込み、灯火君たちと遭遇した場所。

 

今灯火君がいるのはあそこか!!

 

「あなた?どうしたの?」

 

「パパー?」

 

突然独り言を口にした俺に二人が首を傾げる。

 

もし灯火君が俺を持っているのなら早く行くべきだ。

 

さすがにあの場所に常時いるとは思えない、だって小さな小屋があるだけだぞ。

きっといつもは雛見沢のもっと安全な場所にいて、一定時間だけあそこにいると考えるほうが自然だ。

 

こんな回りくどいやり方で人気のない場所を指定したんだ、灯火君は気軽に会えるような状況じゃないのは確実だ。

 

きっと敵に狙われているのだろう、そしてその敵に狙われるリスクを負ってまで俺と会うために集合場所を伝えた。

 

きっとリスクを負ってでも何か俺に伝えたいこと、頼みたいことがあるんだ。

 

「ごめん雪絵、どうしても外せない用事が出来てしまった」

 

「え?」

 

「すまない、今日はここまでにしてホテルに戻る。二人を送った後に行かなければならないところがあるんだ」

 

雪絵と美雪には本当に迷惑をかけてしまっている。

でも、今回だけは俺のわがままを許してほしい。

 

「わかったわ。もう!そんな顔されたら何も言えないじゃない!」

 

「すまない」

 

「いいのよ、あなたは警察官だもんね。じゃあホテルに戻りましょう」

 

雪絵はそう言って美雪を抱き上げて笑う。

ああ、本当に良い妻を持ったな俺は。

 

三人でペットショップを後にしてホテルへと急ぐ、

 

待っていてくれ灯火君、すぐに行く。

 

 

 

 

「・・・・」

 

 

 

 

 


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