レナの兄貴に転生しました【完結】   作:でってゆー

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今回の話はあまり進展なしです。
すいません。


兄隠し編2

「それでは、久しぶりの再会を祝して乾杯!」

 

「乾杯!」

 

大石さんから差し出されたグラスと自分のグラスをぶつける。

ぶつけた拍子でグラスからこぼれそうなった泡を口で救いながら一気に飲み干す。

 

「良い飲みっぷりですねぇ」

 

「ええ、前の時はこちらの方はお付き合いできませんでしたから、今日は二年前の分も飲みましょう」

 

「いやはや、これは明日は二日酔いですね。んっふっふっふ!」

 

そう笑いながらも酒に口をつける大石さん。

そのまま笑いながら酒を飲んでいると頼んでいた食べ物が次々と運ばれてくる。

 

「さぁ、じゃんじゃん食べましょう。今日のお金は経費で落ちるようになってますから」

 

「経費って、別に今日はプライベートですよね?」

 

「いやいや将来有望な赤坂さんと仲良くなるためです。いくらかかろうと安いものですよ」

 

笑いながらそう言って酒のおかわりを頼む大石さん。

まぁいいかと俺も苦笑いと共に酒の注文を頼んだ。

 

「二年前にお世話になった方達はお元気ですか?」

 

「ええ、今日も麻雀をしていますよ。二軒目で合流しますのでその時に本人達に聞いてあげてください」

 

「そうですか。お元気ならよかったです。あ、でも二軒目はちょっと、妻に怒られますので」

 

思い出すのは以前に麻雀の卓を囲んだ男達。

一人は情報屋で俺に園崎家の情報をくれた。

彼のくれた情報で背筋が凍ったのをよく覚えている。

 

今でもどうして園崎家が俺が東京から来たのかを知っていたのかわからない。

・・・・さすがに今回のことは把握していないよな?

 

いや今回に限っては普通に遊びに来ただけで別に悪いことをしにきたわけじゃないんだ。

 

堂々と雛見沢に行けばいい。

 

その後も東京でのこと、この二年間のことを大石さんに話す。

大石さんも麻雀での出来事や興宮で起こったことを俺に話してくれた。

 

そうして話と酒が進み、ある程度酔いが回りだした時に俺がずっと聞きたかったことを大石さんに質問した。

 

「・・・・それで、昨日の昼のことですけど」

 

「ああ、そういえば途中でしたね」

 

俺の質問に大石さんは今思い出したようにつぶやく。

仕事でもない酒の席で真面目な話をするのはと思ったりはするが、どうしても気になる。

 

「運が悪いってどういう意味ですか?俺が知る限り興宮で最近事件は起きてはいないと思うのですが」

 

「・・・・んっふっふ。確かに興宮では起きていませんねぇ」

 

俺の質問に大石さんは意味深に笑う。

興宮では起きてはいない、だとしたら俺の予想通りか。

 

「・・・・雛見沢ですか」

 

「ええ。とはいえ事件が起きたわけではありません。ただ近いうちに何か起こるかもしれないと個人的に思ってるだけです」

 

「・・・・詳しい話を聞いていいですか?」

 

「いや、どうも最近雛見沢が妙な雰囲気になっているんです。事件が起きているわけではないのですがね」

 

「妙な雰囲気ですか?」

 

俺はてっきり灯火君や園崎家がまた何かをしていると思っていたんだが、雛見沢全体で起こっていることなのか?

 

「まぁ私の勘です、それに心当たりがありますしね」

 

「・・・・その心当たりとは?」

 

「灯火さんです」

 

「ああ、やっぱり」

 

大石さんから出た名前に思わず頭を抱える。

灯火君、やっぱり今回も君じゃないか。

 

「・・・・彼が何かしたのですか?」

 

「正確には彼が何かしたわけではないんです。ただ私としては信じられないのですが」

 

「彼が何かしたわけではない?なのに彼がその雛見沢の心当たりになるんですか?」

 

大石さんの言葉をきちんと把握できない。

なんだ?一体彼は何をやらかしたんだ?

 

大石さんは取り出したタバコに火をつけて口に咥える。

そして煙を吐き出しながらその理由を口に出した。

 

「灯火さんは今、雛見沢にいません。だから彼が雛見沢で何かを出来るわけがないんですよ」

 

「・・・・って彼は雛見沢にいないんですか!?」

 

まさかの言葉に思わず声が大きくなってしまう。

せっかく会えると楽しみにしていたのになんてことだ。

 

「そ、それは彼が引っ越したということですか?」

 

「ええ、正確には彼だけです。ご家族の方は今も雛見沢にいますよ。なんでも衣服について勉強するためだとか」

 

「そ、そうだったんですか。ちなみにどちらに?」

 

「茨城だそうです。雛見沢とは少し離れていますねぇ」

 

大石さんの言葉に愕然とする。

衣服の勉強か、灯火君はそっちに興味があったんだね。

 

確かに田舎を出て都会に学びにいく子は多い、灯火君も専門学校に入って寮暮らしか一人暮らしをしているのだろう。

 

「それで灯火君がいないことでどうして雛見沢に影響が出るんですか?」

 

ま、まさか彼がいなくなったことで園崎家の機嫌が悪くなり、そのせいで雛見沢の様子が変になったというわけじゃないよな?

 

・・・・ありそうだ。

 

俺がそう言うと大石さんが大声で笑う。

 

「いやぁ私も最初は絶対にそうだと思っていたんですがねぇ。それにしては妙な感じなんですよ」

 

「・・・・そこで先ほどの話に繋がるんですね」

 

「ええ、私は彼が引っ越したと聞き、赤坂さんと同じように今頃雛見沢は大変なことになっていると思ったんです。知っての通り彼は園崎家のお気に入りですから」

 

「・・・・ではその予想とは違ったということですか」

 

話の流れからして俺の予想は外れているのだろう。

別にそれ自体はそれほど不思議ではない、専門学校に行っただけで家族は雛見沢にいるのだから彼はいずれ帰ってくるんだから。

 

「彼がいなくなったのは三か月前。それからですね、雛見沢の雰囲気が変わったのは。なんというか住民の私達を見る目が変わったように感じました」

 

「・・・・私達って言うと、警察への見る目ということですか?」

 

「いえ、雛見沢以外の人を見る目ですね。何回か雛見沢に行きましたが、何と言いますか見られているような感じがするんですよ」

 

「・・・・」

 

大石さんの話を聞いて考えるが答えは出ない。

雛見沢以外の人を見る目が変わった?

それはつまり雛見沢の住民が他の住民と何かがあったということか?

 

それだけなら灯火君はあまり関係のないように思えるが、彼がいなくなってからというのが気になる。

つまり雛見沢の誰かではなく、灯火君と誰かの間に何かがあってその影響で雛見沢住民の見る目が変わった?

 

二年前のことを思い出しても彼は雛見沢でもかなりの影響力があるようだし、ありえるかもしれない。

もしかしたら服の勉強のためにいなくなったのではなく、そのせいで雛見沢を離れたのか?

 

「まぁ赤坂さん、あまり深く考えないほうがいいですよ。あそこに首を突っ込むと痛い目に遭うのは身に染みてわかってるでしょう?」

 

「・・・・そうですね」

 

「んっふっふっふ。さぁそろそろ二軒目に行きましょうか。旦那たちも待ちわびているでしょうから」

 

「いや本当に少しだけですよ?遅くなると妻に怒られます」

 

そう言って大石さんは最後のお酒を飲み干して立ち上がる。

俺も共に立ち上がりながら頭の中で考え続ける。

 

大石さんの言う通り、関わるべきではないのかもしれない。

でも、もし今雛見沢で何かが起きていて梨花ちゃんや灯火君が困っているのなら俺は力になりたい。

 

・・・・行ってみるか、雛見沢へ。

 

 

 

 

 

「や、梨花ちゃん今時間ある?」

 

「みぃ?魅音なのです」

 

赤坂と大石が話をする少し前。

雛見沢では二人の少女が話していた。

 

「・・・・例のことで少し話があったからね。その報告」

 

「・・・・何かあったのですか?」

 

真剣な表情の魅音に同じく表情を変える。

梨花が聞く体制になったのを見て魅音は口を開く。

 

「どうも東京から警察が一人興宮に来たみたいだよ。この時期に、それも家族一緒で」

 

「・・・・東京から」

 

「そう、今詳細を確認させてるけど、どうも二年前のダム戦争の時に来た男みたいだ」

 

「っ!?それは本当なのですか!?」

 

魅音の言葉に梨花は目を見開いて驚きをあらわにする。

梨花の中ではすでにその人物の顔が思い浮かんでいた。

 

「・・・・どうもこの男が来た理由にお兄ちゃんが関わっているみたいだね。まぁ十中八九今回の件が関係してるだろうね」

 

「・・・・」

 

魅音の言葉に梨花は黙り込んで考える。

このタイミングで赤坂が来た理由を考えるが正解と言えるものは思い浮かばなかった。

 

「ま、とりあえず今は様子見しておくから。また情報があったら連絡するよ」

 

「・・・・お願いするのですよ」

 

「りょうかい、じゃあまたね」

 

そう言って魅音は踵を返して梨花と別れる。

 

「・・・・・魅音」

 

「ん、まだ何かあった?」

 

背中を見せていた魅音に梨花は声をかける。

梨花を見て笑みを見せる魅音を見ながら口を開く。

 

「あなたは、()()()()()()()?」

 

「・・・・」

 

その質問に()()は笑みを深める。

 

「どっちだと思う?」

 

「・・・・」

 

梨花の質問に質問で返す。

それに対して梨花は答えることが出来ずに頬を膨らませる。

 

「みぃ、魅音は意地悪なのです」

 

「あっはっは!ごめんごめん!やっぱり私達の見分けが出来るのはお兄ちゃんだけだね!」

 

「・・・・最近よく入れ替わってるから僕からするとわけがわからなくなるのですよ」

 

笑う魅音に梨花は困ったように愚痴をこぼす。

それに笑いながら今度こそ魅音は踵を返して姿を消した。

 

 

「・・・・赤坂」

 

一人になった梨花は彼の名前を呟く。

その顔に喜びの感情は浮かんでいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 


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