レナの兄貴に転生しました【完結】   作:でってゆー

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綿流し後1

「お父さん....?」

 

地面へと伏したまま動かない父を呆然と見つめる。

父の身体から血が流れ、地面を赤く染めていく。

 

公由さんが懸命に父に声をかけているが返事は返ってこない。

 

その光景を僕と父を刺した母は呆然と見つめ続ける。

 

頭の中に映るのは先ほどまでこちらに笑いかけてくれていた父の笑顔。

不慣れながらも不器用に沙都子の頭を撫でて笑う父の姿。

 

そんな記憶の中の父の姿が視界の上から血が流れてくるかのようにゆっくりと赤く染めっていく。

 

「悟史君しっかりするんじゃ!君の父親を救うために早く人を呼んできてくれ!!」

 

「っ!?え、あ....」

 

公由さんの声で現実へと急速に引き戻される。

その反動か思考がぐちゃぐちゃになり声がうまく出ない。

地に伏せる父と未だに呆然としたままの母へと視線を向ける。

 

今、ここを離れて母がまた錯乱してしまったら。

最悪の状況を想像してしてしまい動こうとした足が止める。

 

それを見た公由さんはさらに大きな声で僕に叫ぶ。

 

「早く!君のお父さんを失っていいのか!!儂は出来る限りの応急処置をする!」

 

「っは、はい!!」

 

公由さんの言葉を受けて今は父を病院へつれていくことだけを考える。

泣くのも後悔するのも今は全部後回しにするしかない。

 

そう無理やり心を封じて気絶した沙都子を床に寝かした後に人を見つけるために走る。

なんでこんな時に限って近くに誰もいないんだ!

 

まるで()()()()()()()()人気のなさに顔を歪める。

 

今この瞬間にも父の命が消えていっているのもしれないのに!

焦燥を覚えながら祭り会場へと足を進める。

もう祭りは終わっているけど今ならまだ大勢の人がいるはずだ!

 

「監視対象の発症を確認....これより捕縛に入る」

 

「雀1了解」

「雀2了解」

 

感情のない無機質な声が僕の耳に届く。

僕以外の声がしたことで慌てて足を止めて声のほうへと顔を向ける。

 

声の先には三人の男性が茂みの中から現れ、こちらへと歩いてくる姿が見えた。

全員が同じ服装していて、顔は帽子を深くかぶっているせいで良く見えない。

 

村の人達じゃない?

いや、今はそんなことを言ってる場合じゃない!!

 

「あの!むこうで父が血を流して倒れてしまって重症なんです!!病院へ連絡か、父を病院まで車で運んでいただけないでしょうか!?」

 

「「・・・・・」」

 

「あ、あの....?」

 

僕の声に全員が無反応を示す。

緊急事態にも関わらず無反応な態度を示す彼らに恐怖を覚えて後ずされる。

 

「監視対象以外はどうする?」

 

「現場に居合わせた他の者達は錯乱した監視対象に殺された....そういう筋書きだ」

 

「了解」

 

「な、なにを言っているんですか!?そんなことよりも早く病院へ!父が本当に死にそうなんです!!」

 

僕の言葉には反応せずに三人でわけのわからないことを言っている彼らに向かって叫ぶ。

しかし彼らは僕の叫びを全く反応することなく歩き始める。

 

彼はどうしてか、父のいる方向ではなく僕のほうへと近づいてくる。

 

「な、なんで僕のほうへと近づいてくるんですか!」

 

「「「・・・・」」」

 

僕のほうへと近づいてくる彼らから後ずさりながら叫ぶ。

しかし先ほどと同じように僕の声に彼らは答えることなく無言のままこちらへと近づいてくる。

 

「あ....うっ.....」

 

「運が悪かったな」

 

3人の内の1人が小さく呟く。

なんで、どうしてこうなるんだ!

早く父さんを助けないとダメなのに、どうしてこんな状況になってしまうんだ!!

 

心の中で叫び声をあげるが現実の僕の口は痺れてしまったかのようにきちんと動いてくれない。

そして何も出来ずに固まってしまった僕へ彼らがゆっくりと手を伸ばそうとした時。

 

 

 

 

 

「人の子達よ....彼にそれ以上近寄るのは許しません」

 

 

 

 

「え....?」

 

聞いたことのない少女の声が耳に届く。

そして瞬きの間に僕と彼らの間に立つように()()()()()()()()()が現れていた。

な、なんで?さっきまで僕たち以外誰もいなかったはずなのに。

 

「「なっ!!?」」

「い、いつの間に!?」

 

驚いていたのは僕だけじゃなく、先ほど無機質な反応ばかりだった三人から初めて言葉に動揺の感情が乗せられる。

 

「今すぐこの場から去りなさい....綿流しを汚す貴様たちを私は決して許さない」

 

「「「っ!!」」」

 

彼女から放たれた言葉には膝を折ってしまいそうな程の重さが込められていた。

僕に言われた言葉ではないはずなのに僕の頬に冷や汗が伝う。

 

彼らは少女の発言を警戒しながら後ずさる。

そして懐から何かを取り出そうとした時。

 

「愚かな人の子達よ、私に二度言わせるつもりですか?」

 

冷たい少女の声が耳に届いた瞬間、僕の視界から彼女の姿が消えた。

 

「「「ひっ!!?」」」」

 

少女の姿が消えた後、男達から小さな悲鳴が発せられる。

彼らに目を向ければ、そこには視界から消えた少女が彼らの目の前に現れていた。

さっきまで彼女は僕の近くにいて、彼らとは距離があったはずなのに。

 

まるで瞬間移動したかのように移動した少女に冷や汗を流す。

 

「愚かな人の子達よ....私の大切な子を傷つけた貴様たちを私は決して許しはしない。今すぐ私達の前から消え失せなさい。さもなくば....オヤシロ様が貴様たちを祟り殺すぞ!!!」

 

少女が出した声とは思えないほど冷え切った声が空気を凍らせる。

彼女の言葉を受けた男達は彼女の異様な雰囲気に完全に飲み込まれていた。

 

男達が震えながら後ずさろうとした時。

 

 

「悟史!どこだ!!いたら返事をしてくれ!!」

 

 

遠くから灯火が僕の名前を呼ぶ声が響いた。

それを聞いた男達は小さく舌打ちをした後に逃げるように暗い夜道へと消えていった。

 

彼らが消えた後、入れ替わるように灯火がこちらへ走ってくるのが見えた。

 

「と、灯火!!会えてよかった、本当によかった!」

 

灯火の顔がはっきり見えたところで目に涙が浮かぶ。

さっきまでの緊張の連続で壊れそうになっていた心が温まるのを感じる。

あ、そういえばさっきの女の子は。

 

「いなくなってる....」

 

周囲を見回して探すが彼女の姿がどこにも見当たらない。

まるで最初から少女など、ここには存在していなかったかのようだ。

いや、今はそんな場合じゃない!早く灯火に父さんのことを説明しないと!

 

「悟史!よかった、無事だったんだな」

 

「え、無事?い、いや僕は大丈夫だけど父さんが大変なんだ!!か、母さんが突然錯乱して公由さんを包丁で刺そうとして....そ、それを庇った父さんが、お腹から血を....!」

 

しどろもどろになりながら灯火に先ほどの状況を説明する。

灯火に説明する内に父さんの状況を思い出して焦燥感が湧き上がる。

父さんのことを思い出し、荒い息を吐く僕の肩を力強く灯火が握る。

 

「悟史、大丈夫だ。お前の父さんは必ず助かる。今梨花ちゃんが入江さんを呼んでこっちへ向かってる。すぐに診療所に運んで治療してくれるさ」

 

「そ、そうなんだ。よかった....ありがとう灯火。でもどうして僕達の状況がわかったの?」

 

「あ.....い、いや遠くから沙都子の悲鳴が聞こえた気がしてな!気のせいだとも思ったんだけど念のため入江さんを呼んで俺はこっちに走ってきたんだ!」

 

「そうだったんだ...とても楽しい綿流しのお祭りの日だったのに、どうしてこんなことに」

 

最高の一日になるはずだった。

なのに、なんでこんなことになるんだ。

神様はきっと僕のことが嫌いなんだ。

今まで辛いことばかりで楽しい記憶なんて灯火達と遊ぶ時くらいだ。

 

なんで、なんで僕達がこんな目に遭わないといけないんだ。

 

「悟史.....」

 

「ごめん....早く父さんのところへ戻ろう!あ、入江さんはここの場所を知らないから案内しないと」

 

「いや、場所の案内は羽にゅ、じゃなくて梨花ちゃんがしてくれる。だから俺達はお前の父さんのところへ行こう。俺も園崎家で応急処置は習ってるし、お前の母さんのことも気になる」

 

「わかったよ!じゃあ早く戻ろう!」

 

「ああ....あまり大騒ぎにはしたくないしな。悟史の両親が頑張ってきたこれまで無駄にしてたまるか」

 

父さん達の下へ戻りながら灯火の言葉に頷く。

そうだ、このことが広まれば両親はもうこの村にいることが出来ないかもしれない。

この半年間、両親は僕達のために村の一員に戻るために頑張ってきていたんだ。

その努力をこんなことで台無しになるなんて絶対に嫌だ!!

 

両親の安否と今後のこと、いろいろ不安が僕の心を不安にさせようとするが、それらを何とか振り払って僕達は両親の元へ走った。

 

 

 

 

 

最悪だ....一番恐れていた事態になってしまった。

 

悟史と一緒に両親の下へ向かい、倒れていた悟史の父さんへの応急処置と錯乱して暴れ始めた母をなんとか大人しくさせた。

その後すぐに入江さんがやってきて悟史達の両親は診療所へ緊急搬送された。

 

今は悟史と目を覚ました沙都子と一緒に手術室へ運ばれた2人の父の安否を診療所で待ち続けている。

なんで、なんでこんなことになったんだ!

 

錯乱した2人の母は自分達が村の人達に殺されると叫んでいた。

目には狂気が宿り、どう見ても正気ではなかった。

そして極めつけは自身の手の爪で首に食い込むほど強く搔きむしり始めたことだ。

 

あの姿を見てしまったら、もう考えられる病気は一つしかない。

 

「「・・・・」」

 

 

焦燥する悟史と沙都子になんて言えばいいかわからない。

一緒にやってきていた公由さんに梨花ちゃんも俺と同じように2人に何も言うことが出来ずに辛そうな目で2人を見つめている。

 

そうして全員が重い空気の中何も言わず待ち続けること数時間。

手術室の扉がゆっくりと開き、中から入江さんが姿を現した。

 

「っ!?入江さん!!父さんは!?父さんは無事なんですか!!?」

 

「大丈夫です。命に別状はありません、今は病室で眠っています」

 

入江さんの姿を確認した悟史が慌てて父の容態を確認し、入江さんは落ち着いた様子で悟史と沙都子に父の様子を説明し始める。

 

どうやら刺さった包丁はあまり臓器を傷つけはおらず、命には関わることはないようだ。

入江さんの話を聞いた2人は安堵で涙を浮かべる。

梨花ちゃんも公由さんも安心したようにため息を吐いていた。

 

「本来であれば興宮にある病院へ搬送すべきなのですが....そうした場合このことが公になり悟史君達の母親が....」

 

「「・・・・」」

 

入江さんの言葉で二人とも黙り込む。

もし他の病院へ搬送してこの件が広まれば公由さんを包丁で刺そうとした2人の母親は警察に捕まってしまう。

錯乱していたとはいえ、夫を刺してしまっているのだからバレれば警察が動くのは間違いない。

そのなった場合、悟史達の両親が雛見沢で暮らすという夢が途絶えてしまう。

今までやってきた二人の努力がなくなってしまうのだ。

 

「この件については私に任せてください、絶対にお二人のご両親を助けます」

 

黙り込む2人に入江さんが力強く答える。

入江さん達が警察に強いコネクションがあることを俺は知っている。

きっとそれを利用してこの件をうやむやにするつもりなのだろう。

この件については入江さん達に任せるしかない。

 

「ありがとうございます入江さん。それで、母さんの様子は....」

 

「・・・・はっきり言ってお二人の母親のほうが重体です」

 

「「っ!!?」」

 

深刻そうな表情で語る入江さんの様子を見て顔を強張らせる悟史と沙都子。

俺と梨花ちゃんは2人の母親の状態を予想出来ているため入江さんの言葉を聞いて黙って目を細める。

 

「今は眠っています....睡眠薬を投与したのでしばらく眠ったままでしょう。詳しい話は検査した後にお話します。今日はもう休んでください、お二人が倒れてしまってはご両親も心配します」

 

入江さんは泣きそうな悟史と沙都子をなんとか落ち着かせながら説明を続ける。

入江さんの説明を受けた2人は父の様子を見守るため、彼が運ばれた病室へと向かっていた。

公由さんも辛そうに表情を歪めながら2人へ付き添う。

 

そして診療所の廊下に残ったのは俺と梨花ちゃんと入江さんの三人だけになった。

 

「入江さん....悟史達のお母さんは....この前詳しく説明してもらった」

 

「詳しいことはまだ検査中ですが、おそらくはそうでしょう....詳しい話は私の診察室でお話します」

 

「「・・・・」」

 

辛そうに顔を伏せる入江さんの案内したがって入江さんの部屋へと向かう。

そして部屋に到着するなり、入江さんはこちらへ深く頭を下げてきた。

 

「すいません....灯火さんから散々悟史君達のご両親に注意してくれと言ってもらっていただきながら、このようなことになってしまって」

 

本当に申し訳なそうに頭を下げる入江さんにすぐに頭を上げてくれるように答える。

入江さんが2人を注意して見てくれていたのは知っている。

俺も気付けなかったのに入江さんを強く責めるなんて出来ない。

 

「入江さんのせいじゃないよ....でも前にこっそり検査した時には問題ないって言ってたけど、その時は症状とかは本当に何もなかったの?」

 

「ええ....確認したのは今から一月ほど前ですが、その時の診断結果では雛見沢症候群の発症は確認出来ませんでした」

 

「・・・・その診断結果って入江さんが出して確認したの?」

 

嫌な予感を感じて入江さんに確認する。

俺の言葉を聞いた入江さんは疑問顔で俺の質問に答えてくれた。

 

「いえ、診断結果は鷹野さんに出していただきました。私はそれを聞いただけです。しかし、鷹野さんは私以上に雛見沢症候群に詳しい女性ですので診断結果に間違いはなかったはずです」

 

「そう....ですか」

 

ああ、やっぱりか。

俺の予想通りの答えに爪が食い込むほど拳を強く握りこむ。

やっぱりこの件の黒幕はあんたなのか、鷹野さん。

 

悟史達の母親の発症。

これには間違いなく鷹野さんが絡んでいるはずだ。

今の俺が想像しているパターンは二つ。

 

一つは雛見沢症候群を発症させる薬を使って雛見沢症候群を無理やり発症させた。

でも現時点で雛見沢症候群を発症させる薬の開発が出来ているとは思えないからこれは違うだろう。

 

ならば二つ目。

もともと雛見沢症候群の症状が現れていて、それに気付いた鷹野さんは入江さんに報告をせずに彼女が発症をするのを待った。

いや、発症を促進させるために彼女に何か言って疑心暗鬼を加速させた可能性だってある。

 

そしてもし仮に鷹野さんが全く関係なかったとしても、この状況を鷹野さんが見逃すとはとても思えない。

 

「失礼します入江所長」

 

頭の中で状況を整理している最中にタイミング良く今もっとも会いたかった女性の声が耳に届く。

殺意を隠しながらゆっくりと声のほうへと振り返る。

 

「あら....梨花ちゃんに灯火君もいたのね」

 

「ええ....2人もこの件には無関係ではありませんから。それで....結果はどうでしたか」

 

こちらへ視線を向けてきた鷹野さんに入江さんが説明を入れる。

それを聞いた鷹野さんは俺達を少し気にしながらも入江さんの言葉に応えた。

 

「診断の結果、やはり雛見沢症候群を発症していることがわかりました」

 

「・・・・やはりそうですか、見る限り症状もかなり進行しているようですし、入院が必要ですね。ストレスのない環境下で過ごせば症状も和らぐでしょう」

 

「そうですね。ですがあまり意味はないと思います」

 

「え....どういうことですか?」

 

入江さんの判断を鷹野さんは一言で切り捨てる。

そして鷹野さんは冷たい表情のまま淡々と報告を続けた。

 

「彼女はすでに末期症状です。治療はもう不可能かと」

 

「ま、末期症状!?そんなことはありえない!も、もし彼女が末期症状なら今までの検査で症状が出ているはずです!!」

 

「末期患者の発症の仕方には差異があります。攻撃衝動をすぐに表に出すタイプもいれば、外見は落ち着いているのに、その内側では疑心暗鬼に陥っているタイプもいる」

 

彼女は後者のようですねっと淡々と語る鷹野さん。

それを聞いた入江さんは絶望した表情のまま固まってしまう。

 

そして鷹野さんは顔に大量の汗を浮かべながら対応を考える入江さんを見つめがら狂気的な笑みをその顔に浮かべる。

その表情を見た瞬間、考えるよりも先に口が動いた。

 

 

 

「ねぇ鷹野さん....悟史達の母親を解剖して雛見沢症候群を研究しようなんて考えてないよね?」

 

 

俺の発した言葉によって全員が固まる。

こんなことで悟史達の両親の努力を台無しにされていい加減怒りで頭がどうにかなりそうだ。

 

「末期症状って言うんだっけ?雛見沢症候群でもっとも重症な状態の患者さんを解剖して検査すればたくさんの情報が手に入るんじゃない?」

 

「と、灯火さん!確かに灯火さんの言うことは間違ってはいませんが、鷹野さんも私も医者として雛見沢症候群の研究のために彼女を犠牲にしようなんて考えていません!!」

 

「・・・・って入江さんは言ってるけど、どうなの鷹野さん?」

 

俺の言葉を聞いて入江さんが慌てて口を開く。

それを聞いた俺は再度鷹野さんに問いかける。

 

「・・・・ええ、入江さんの言う通りよ。研究のために悟史達のお母さんを犠牲にしようなんて考えていないわ」

 

鷹野さんは俺を冷酷な目で見つめながらそう口にする。

口ではそう言っているが、鷹野さんは俺のことを不快そうな目で見ていることがよくわかった。

 

「もしこれで悟史達のお母さんが急に行方不明になったりしたら、俺はそういう風に思うから。そしたら大石さん達に相談して捜査を」

 

「灯火!!もうやめて!!!」

 

頭に血が上って怒りのまま鷹野さんに向かって口を開いていた俺を梨花ちゃんが止める。

梨花ちゃんの顔を見れば目に涙が浮かべていた。

 

梨花ちゃんは俺が黙るのを見た後に入江さん達の頭を下げる。

 

「ごめんなさいなのです、灯火は悟史達の両親がこんなことになってしまって混乱しているのですよ」

 

「いえ、混乱するのも当然でしょう。そもそも原因は私の検査不足にあります。灯火さん、私達は決して悟史達もご両親も見捨てはしません。それだけは信じてください」

 

「・・・・わかりました」

 

入江さんの真摯な言葉を受けて俺も頭を下げる。

そして梨花ちゃんに引っ張られながら部屋を後にすることになった。

 

部屋を後にする瞬間、引っ張る梨花ちゃんを押しとどめて鷹野さんに再度口を開く。

 

「・・・・オヤシロ様はいつもあんたを見てるから」

 

 

「・・・・それはぜひとも会いたいわねぇ。私、オヤシロ様が大好きなんだもの」

 

俺の言葉を受けて、鷹野さんを口元を歪めながら笑って答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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