レナの兄貴に転生しました【完結】   作:でってゆー

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皆さん
あけましておめでとうございます。
今年もこの小説を読んでいただければ幸いです。


話し合い

どうしてこうなってしまったんだろう。

今日も僕たちを取り返しに公由さんの家に両親がやってきていた。

一体これで何度目になるのだろう。

公由さんと口論をし、最終的に追い返される両親を何度見送ったことか。

もうやめてくれ、もう二人だけでこの村から出て行って、遠いところで幸せになってくれていいんだ。

僕たちのことなんて忘れてくれていいんだ。

 

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「・・・・どうしてこうなったんだろう」

 

この言葉を、何度口に出したことだろうか。

どうしてこうなった?

そんなことは自分自身がわかっているというのに。

 

なぜなら今のこの状況を作ることになった原因は、元を辿れば僕にあるのだから。

2年前、まだダム建設の話が出てすらいない時。

僕は沙都子と新しくやってきた父との仲が良好ではなかったことをずっと気に病んでいた。

沙都子は新たな父が仲良くしようとする行動を全て無視し、父は最初はどうしてたらいいかわからずに困っている様子だったが、次第に沙都子を叱りつけるようになった。

母さんもそれを見て疲れたように項垂れてしまっていた。

 

それを見て両親にとって僕たちは邪魔な存在だと思った。

 

だから二年前のあの日、僕は公由さんに家に住まわせてもらうように必死に頼み込んだ。

僕たちが消えれば両親は2人だけで仲良く暮らせるし、僕たちも公由さんの下で静かに暮らせると思っていたのだ。

結果は公由さんに優しく叱られて家に送り帰されるだけになったけど。

 

けど、あの日は僕たち家族にとって重要な分岐点だった。

 

公由さんに手を引かれながら家に帰ってきた時、公由さんは僕たちの両親に僕たちが自分の家にやってきたこと、僕が家に住まわせてくれと頼んだことを説明した。

ひとしきり説明が終えると、公由さんは僕たちの両親を厳しく叱りつけたのだ。

両親は公由さんの言葉に黙って耳を傾け、最後には僕たちに頭を下げながら謝ってきた。

 

 

公由さんから説教を受けた日から父は僕たちとの仲をより深めようと積極的に行動してくれた。

僕たちが好きなものを知り、僕たちが楽しめるような話題を語りかけてくれた。

沙都子はそれでも素っ気ない態度を続けていたけど、それでも諦めずに父は沙都子と向き合ってくれた。

僕たちのことを心配して尋ねてきてくれた公由さんにも両親と仲良くなれたと笑顔でお礼を言えた。

それを聞いた公由さんは安心したように笑って帰っていった。

公由さんに言ったことは真実ではなく、半分以上僕の願望だったけど、遠くない内に実現できると信じていた。

 

僕たちも普通の家族になれるのでは期待したんだ。

 

でも、僕のそんな期待は村にダム建造の話が来た時に粉々に砕けた。

繋がりかけていた僕たち家族の絆は、もう修復不能な程断ち切れてしまったのだ。

 

今でもたまに考えてしまう。

 

もし雛見沢にダム建造の話がなければ。

両親がダム賛成派にならなければ。

あるいは、あまり考えたくはないが、この村がダム中に沈んでしまっていたら。

 

僕と沙都子は、両親と幸せに暮らすことが出来ていたのだろうかと。

 

「・・・・はぁ、これ以上考えてもしょうがない。沙都子を追いかけないと」

 

ため息を吐きながら嫌な考えに陥っていた思考を終了させる。

沙都子は僕以上に今の現状にストレスを抱えているはずだ。

こっちにやってきていた両親に叫んでいたのがいい証拠だ。

沙都子は両親に叫んでいった後、自分の部屋へと閉じこもってしまった。

 

「悟史君」

 

沙都子と話すために沙都子の部屋に向かおうとした時、背後から聞き慣れた友人の声が届く。

今いるはずのない少女の声に反応して慌てて声のほうへと振り返る。

 

「れ、礼奈!?どうしてここにいるの!?」

 

振り返ると予想通り礼奈がそこにいた。

慌てて礼奈がここにくる理由があったかを思い出そうとするが記憶には見当たらない。

 

「礼奈、来てもらって悪いんだけど沙都子と大事な話があるんだ。だから悪いんだけど少し待っていてくれないかな?」

 

礼奈がどうしてここに来たのかわからないけど、ひとまず沙都子と話すことを最優先に考える。

 

「沙都子ちゃんなら大丈夫だよ、お兄ちゃんが沙都子ちゃんを追いかけて行ったから」

 

「え!?灯火も来てるの!?それに沙都子を追いかけて行ったって」

 

礼奈が来ているなら兄である灯火も一緒に来ていても不思議ではない。

でも灯火が沙都子を追いかけて行ったってことは、さっきまでの公由さんと両親の会話を2人に聞かれていたってことで。

 

それを理解した瞬間、さぁっと顔から血の気が引くのを感じた。

礼奈には僕たち家族のことについて何も話していないのだ。

先ほどの光景は何も知らない礼奈にはひどいショックを受けてもおかしくない光景だったはず。

咄嗟に礼奈に謝ろうと口を開くが、それよりも早く礼奈が言葉を発する。

 

「いきなり家に来ちゃってごめんなさい!それに、さっき悟史君のお父さんとお母さんが公由さんとお話にしているのも聞いちゃったの!聞かれたくないことなのに、本当にごめんなさい!」

 

頭を下げながら謝る礼奈に何も言えなくなってしまいそうになる。

当然の事態に頭が混乱しそうになるが、なんとか整理して言葉を絞り出す。

 

「頭を上げてよ礼奈、家族のことを黙っていたのは僕だし、それより灯火が沙都子を追いかけて行ったってどういうこと?」

 

出来れば礼奈には僕たちの家族のことを知ってほしくはなかった。

礼奈は優しいから僕たちのことを心配して悩んでしまうだろうから。

でも灯火はもともと僕たちの家族のことを知っている。

その灯火が沙都子を追いかけてどうするつもりなんだろう。

今の沙都子はとても不安定だ、いくら灯火でも、いや灯火にだからこそ感情のままに強く当たってしまうかもしれない。

 

僕が自分の心配を礼奈に語ると、礼奈はこちらの心配を払拭するかのように自信を持った笑顔でこう言った。

 

「お兄ちゃんなら大丈夫だよ。きっと、沙都子ちゃんに本当の気持ちを気付かせてあげられるよ」

 

それにこれは沙都子ちゃんだけじゃないよっと礼奈は僕を見つめながらそう口を開く。

 

「私も悟史君とお話をしに来たの。家族について悟史君の本当の気持ちを聞くために」

 

「え・・・・」

 

礼奈の言葉を聞いて目を見開く僕を、礼奈は今までにない真剣な表情で見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・」

 

あの人達へ感情のままに叫んだ私は、家の中に入ると同時に公由さんが用意してくれた自分の部屋へと逃げるように駆け込んだ。

そして止まることなく自分の部屋のベッドに倒れこむ。

枕に顔を埋めながら、手で布団を掴んで皺が出来る程握り締める。

頭の中をミキサーでかけられたかのように感情がぐちゃぐちゃになっていた。

 

なんなんだあの2人は。

いつもいつも私とにーにーを返せと言ってきて!

本当は私たちのことになんていらないと思ってるくせに!!

それで公由さんに迷惑をかけて、この前にはお泊り会の時には灯火さんと梨花にまで私たちのことで心配をかけていることがわかった。

 

「あんな2人、いっそのこと死んでしまえばいいんだ!!」

 

「物騒なこと言ってんじゃねぇよ」

 

私が感情のままに叫んだ瞬間、それに返すように聞き慣れた男の声が耳に届く。

 

「っ!!?」

 

慌てて枕から顔を上げて声のしたほうへ顔を向ける。

 

「お邪魔してるぞ」

 

そこには片手を上げながら意地の悪そうな笑みを浮かべる灯火さんの姿があった。

 

「と、灯火さん!?どうしてここにいるんですの!?というか乙女の部屋にノックもなしで入るとはどういう了見でしての!」

 

慌てて部屋に下着などの乙女的に見られたくないものがないことを確認する。

しかし私が部屋の確認を終える前に彼は私の言葉に対して鼻で笑うことで返事をした。

 

「お前が乙女?・・・・ふっ」

 

「死にたいようですわね」

 

灯火さんの馬鹿にしたような笑みを見て拳を握り締める。

そのままこのムカつく男の横っ面を殴ろうとして、現状の状況を思い出して振りかぶった拳を止める。

 

「って違いますわ!どうして灯火さんが私の部屋にやってきているんですの!?にーにーと公由さんは何をしているんですの!?」

 

仮に灯火さんが遊びに来ていたとしても直接私の部屋に呼ぶのはどう考えてもおかしい。

 

「悟史は礼奈が足止めしてる。公由さんは沙都子の部屋に入っていいか聞いたら笑顔で許可してくれたぞ」

 

「・・・・」

 

公由さん、仮にも乙女の部屋に男を許可なく上げるのはどうかと思いますわ。

というか礼奈さんも来ているんですわね。

一体どうして・・・・

 

「・・・・さっきの話の時、灯火さん達もいらっしゃいましたの?」

 

「ああ、お前がいつものお嬢様口調をなくして両親に叫んでいたのも聞いてた」

 

「っ!?」

 

予想していたとはいえ、実際にそう言われると思わず顔を歪めてしまう。

そして、灯火さんの登場で忘れていたあの人達への怒りが再び自分の胸の中から沸きだしてくるのを感じた。

 

「・・・・そう、聞いていましたのね。なら灯火さんもあの二人がどれだけ自分勝手なのかわかりましたでしょう」

 

あの二人は私たちを自分の子供だから取り返そうとしているんじゃない、私たちが自分たちの所有物だから取り返そうとしているんだ。

そうじゃなければ好きでもない私を取り返そうと考えるわけがない。

 

私は愚痴をこぼすように自身の過去を語る。

 

私は本当の父をよく覚えていない。

私が物心も付かない内にお母さんと離婚していたからだ。

私が幼稚園に通っている時から母親は何度も再婚を繰り返していて、その度に新しいお父さんだと名乗る男がやってきてニコニコと私に話しかけてきた。

再婚したばかりの男は私を実の娘のように可愛がってきて、私に自分のことは本当のお父さんだと思っていいと言ってきていた。

 

やってきた男たちは毎回私にそう言うけれど、彼らが私の本当のお父さんなわけがない。

だって私は本当のお父さんの顔だってよく知らないのだから。

それなのにやってきた男たちは私にお父さんと言わせようとしてくる。

それが私にはとても気持ち悪く感じて、彼らを家から追い出そうと行動した。

 

最後にはどの男も私をイライラしたように見つめ、私のことを嫌う。

物を投げつけられたり、ベランダに追い出されて鍵を閉められたことだってあった。

 

そして最終的にお母さんは離婚をして、その度に私を罵った。

 

お前なんて生まなければよかった。

 

お母さんが泣きながら私に吐き出したことを聞いて

 

私はお母さんにとって自分がいらない子だということを自覚した。

 

 

「・・・・これでわかりましたでしょう、あの二人は本当は私なんて必要ありませんの。なのに私たちを連れ戻そうとする。きっとここに残していったら私が自分たちの邪魔をするから監視をするために連れ戻そうとしているに決まっていますわ!!灯火さんもそう思いますわよね!」

 

声を荒げながら灯火さんに向けて自分の考えを口にする。

私の言葉を聞いた灯火さんはゆっくりと口を開き

 

「思うわけないだろ、このバカ」

 

呆れたような顔でこちらを見下ろしながらそう言った。

 

「っ!!?」

 

「あー礼奈が俺が適任だって言った意味がようやくわかった。確かにこれは俺が一番向いてるな」

 

彼はため息を吐きながら、彼の予想外の返事で固まる私の傍へとやってくる。

 

「優しく話していこうって思ってたが、さっきの話を聞いたらそんな気も失せた」

 

ベッドに座る私に傍までやってきて、私と目線を同じところまで下げた彼は再度口を開く。

 

「沙都子、喧嘩の時間だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・そうだったんだ。前の泊りの時に礼奈たちも聞いてしまっていたんだね」

 

「うん、黙っていて本当にごめんね」

 

「ううん、気にしなくていいよ」

 

先ほどの件もあって本当に申し訳なそうに謝る礼奈に苦笑いを浮かべる。

礼奈の言葉には驚いたが、礼奈が先ほどの件を見ても落ち着いていた理由がわかった。

そして、礼奈がさっき言った家族に対する僕の本当の気持ちを聞きにきたという言葉にも納得がいった。

礼奈は優しいから僕たちの話を聞いたら僕たちを助けようとここに来たとしても不思議じゃない。

灯火もお節介なところがあるから礼奈と一緒にここに来たのだろう。

ということは灯火は今頃、礼奈が僕に話しているように沙都子に話しかけに行ったということだろう。

 

「・・・・それで、さっき礼奈が言ったことってどういうことかな?」

 

先ほどの礼奈が言ったこと話へ自分から戻す。

礼奈が僕たちのことを心配してくれるのは嬉しい。

でも・・・・少し余計だ。

 

今更僕たちが何かしたとしても結果は変わらないんだから。

 

「言葉のままだよ。私は今日、悟史君の本当の気持ちを聞きにきたの」

 

 

「・・・・」

 

礼奈は僕の言葉に即答する。

僕の目を真っすぐ見つめがら真剣な表情で。

僕は礼奈の言葉に何と返したらいいか思いつかず黙ってしまう。

 

「私ね、お泊り会の時にお兄ちゃんの話を聞いた時に2人には家族と一緒にいてほしいって思ったの。でも、その後すぐにみぃちゃんに否定されちゃった。2人は家族と離れて公由さんの家で暮らすほうが幸せだからって」

 

そう言いながら礼奈は悲しそうに俯く。

あの時の灯火の話を聞いて事情を知っている魅音は僕たちは公由さんの家で暮らすべきだと判断したようだ。

園崎家の人間である魅音がそういう結論を出すのは当然だろうと思う。

礼奈の言葉を聞いた僕は、自分が無意識に拳を握り締めていることに気付いた。

どうしてだろうと考える前に礼奈は顔を上げて再び口を開く。

 

「でも!みぃちゃんの言葉を聞いても私はそれが本当に2人の幸せになるとは思わなかった。だから今日、悟史君に会いにきたの、悟史君の本当の気持ちを聞くために」

 

「・・・・僕は」

 

礼奈の言葉を聞いて頭の中がグルグルを回り始める。

思い出すのは以前に見た夢だ。

僕と沙都子が家族と仲良く暮らす夢。

家族で笑顔で食事をしていて、カボチャが嫌いな沙都子を母さんが注意して、父が苦笑いをしていた。

それを見て、僕は。

 

「っ!」

 

不意に思い出してしまった夢の影響か、無意識に口が開きかけていたことに気付いて慌てて口を閉じる。

 

「僕は、このまま公由さんの家で暮らすべきだと思う。沙都子もそれを望んでいるし、両親も僕たちを忘れて村の外で暮らせる。これでみんなにとって一番幸せだよ」

 

そうだ、それがみんなが幸せになる一番正しい選択なんだ。

このまま両親が村に留まり続ける限り、2人への村からの迫害は続く。

仮に両親が僕たちを無理やり村から連れ出したとしても沙都子は父と仲良くは絶対に出来ない。

もう僕たちと両親が夢のように仲良くなんて絶対に出来ない。

家を抜けだして雛見沢に戻るに決まっている。

僕だって灯火達と離れるなんて嫌だ。

 

 

だからこれが一番正しい、みんなが幸せになるにはこれしかないんだ。

これが僕の願いなんだ。

 

 

「嘘だ!!」

 

 

「っ!?」

 

僕の話を聞いた礼奈は短く、けど力強く断言した。

 

僕の思いが嘘であると。

 

「悟史君、礼奈が聞きたいのは悟史君の気持ちなんだよ」

 

「そ、そうだよ。さっきのが僕の気持ちだよ!」

 

「嘘だよ、さっきのは悟史君の気持ちなんかじゃない。沙都子ちゃんや両親のことばかり考えて自分のことを全然言えていないよ」

 

「っ!?」

 

礼奈の言葉で息が詰まったように口が固まってしまう。

礼奈はそんな僕を知ってか知らずか畳みかけるように口を開く。

 

「さっき悟史君はそれがみんなの幸せだって言ったけど、その中に悟史君は入ってるの?悟史君にとってそれが本当に一番幸せなことなの?」

 

「・・・・」

 

 

礼奈の言葉を聞いて完全に口を閉じてしまう。

礼奈の言う通りだ。

確かに僕は沙都子や両親の幸せを言い訳にして自分の気持ちに蓋をしている。

だけど、僕の気持ちを言ったからどうなるというのだ。

すでに現状はどうにもならないほど進んでしまっていて、僕が本当の気持ちを告げても困らせてしまうだけだ。

 

 

「あのね、悟史君は沙都子ちゃんのお兄ちゃんだから自分の気持ちより沙都子ちゃんの気持ちを優先してるよね。それはとっても優しくて、悟史君らしいと思うよ」

 

礼奈は黙ってしまった僕の近くにまでやってきて優しく語りかけるように口を開く。

僕は黙ったまま礼奈の言葉に耳を傾ける。

 

「それに悟史君は私たちの中で一番優しいから、みんなのことを考えて自分の気持ちに蓋をしちゃってる。特に今回はみぃちゃんやしぃちゃん、それにみぃちゃん達の家族と仲の良いお兄ちゃんにまで迷惑がかかっちゃうもんね」

 

礼奈は僕の気持ちを見透かしているかのように僕の考えを言い当てる。

礼奈は勘が鋭いと思う時は今まで何回かあったけど、今回は特に鋭い。

 

「だからお兄ちゃん達には本当の気持ちを言えなかった。そして沙都子ちゃんの前でも言えなかった、悟史君は沙都子ちゃんのお兄ちゃんだから」

 

兄は妹の願いを叶えてやりたいものだってお兄ちゃんが言ったから。

その後お兄ちゃんは

まぁ、ただカッコつけたいだけなんだけどっと笑いながら言っていたけど。

 

悟史君は沙都子ちゃんの願いを叶えるために自分の気持ちを押し殺してしまった。

 

 

でも

 

「私は悟史君の妹じゃないよ。だからね、私の前ではカッコつけたりなんてしなくていいんだよ。自分の気持ちに正直になっていいんだよ」

 

たとえ悟史君の願いがみんなの迷惑になるんだとしても。

沙都子ちゃんの願いが叶わなくなるんだとしても。

実現がほとんど不可能だとしても。

 

「礼奈は絶対に悟史君の味方だよ」

 

そう言って礼奈は僕の手を取りながら微笑む。

まるで母親のように、泣きたくなるほど優しい笑みを浮かべていた。

そんな礼奈の笑顔を見た瞬間、僕は今までの封じていた気持ちの蓋が壊れるのを自覚した。

 

「っ!!僕は!家族と一緒に暮らしたい!この雛見沢でみんなで幸せな家庭を築いていきたい!沙都子も父さんと仲良くしてて、母さんもニコニコ笑っている。そんな家族を礼奈たちに紹介したい!僕の家族だって胸を張って言いたいんだ!!」

 

握られた礼奈の両手を自分の額へ押し当てながら自分の本当の想いを口から出し続ける。

礼奈はそんな僕の言葉を黙って聞いてくれていた。

そしてひとしきり思いを口にした僕を見て、礼奈は優しい笑みを浮かべたまま口を開く。

 

 

「悟史君ありがとう。礼奈に本当の気持ちを教えてくれて、悟史君を含めたみんなが幸せになる方法を一緒に考えよ!」

 

「うん、ありがとう礼奈。ってごめん!手をずっと握ってて!」

 

礼奈の言葉の礼奈の手を握り続けていたことに気付いて慌てて手を放す。

うう、手汗はすごい。礼奈には気付かれたかな?

礼奈を見れば慌てる僕を見て不思議そうに首を傾げている。

そんな礼奈の姿がなぜか非常に可愛らしく感じ、自分の顔が少し熱くなるのを感じた。

 

「悟史君、顔が少し赤いよ?大丈夫なのかな?かな?」

 

「へぁ!?だ、大丈夫だよ!」

 

僕の顔を見て礼奈が心配そうに僕の顔を覗き込んでくる。

それによって礼奈の顔がさらに近づき、さらに自分の顔が真っ赤になっていく。

それを見た礼奈がさらに心配そうに近づいてきて、僕の顔が真っ赤になって。

 

「ほ、本当に大丈夫だから気にしないで!」

 

し、心臓がバクバクうるさい。

なんで急に、自分で自分の感情が理解できない。

どうしてか礼奈の顔をまともに見ることが出来ないし。

 

「悟史君?」

 

礼奈は慌てて顔を背ける僕を不思議そうに見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ううーん、今回の話は書くのが難しい。
もしかしたら後ほど文章を修正追加するかもしれません。

悟史が自分の気持ちをあっけなく打ち明けたと思いますが、
悟史も無意識に誰かに自分の気持ちを打ち明けたいと思っていたと思うんですよね。
でも園崎家の魅音や詩音、古手家の梨花ちゃん、そのどちらとも関りが深い灯火、彼らには自分の気持ちは困らせるだけなので打ち明けられない。

なので悟史の気持ちを聞くことが出来るのは礼奈だけだったと思います。
まぁ、礼奈の嘘だ!の前にはどんな嘘もつくことは出来ないんですよ。


そして礼奈に惚れてしまった悟史。
個人的には圭一と悟史で礼奈の取り合いをさせたい。

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