レナの兄貴に転生しました【完結】   作:でってゆー

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お疲れ様です。
新話投稿します。
また前話での感想、誤字脱字の指摘ありがとうございます。

これから今まで投稿した話を読みやすくするために少し訂正を加えていきます。
ストーリーは変わらないのでご了承ください。




IF 覗くもの  (うみねこのなく頃に要素あり版)

悟史と沙都子、親友である2人に俺が出来ることは何だろうか?

今回のお泊り会でそれがわかればと思っていたが、何が最善なのかは結局わからない。

沙都子は両親と共に暮らすことを拒絶し、悟史は沙都子の意見に従った。

なら俺は2人がこれまで通り公由さんの家で暮らせるように動くべきだ。

公由さんも魅音も喜んで協力してくれるだろう。

村のみんなも悟史と沙都子のことを可愛がっているし、ダム建造が完全に凍結すればすぐにでも2人の両親を追い出そうと動き出すだろう。

 

行動の決断まで時間はそう残されていない。

残された時間で少なくとも悟史の本当の意志だけは聞き出さなくてはならない。

思考の海に沈んでいた意識と共に項垂れていた頭を上げる。

 

 

 

と同時に俺の頭は強制的に床へと打ち付けられた。

 

 

「へぶっ!!?」

 

床に顔が接触した痛みと衝撃で間抜けな声が漏れる。

 

「誰が顔を上げてもいいといいましたの?」

 

俺の頭上から凍えそうな程冷え切った声が耳に届く。

 

「さ、沙都子。悪かったって言ってるだろ!何回も謝ったじゃねぇか!」

 

だからいい加減俺の頭から足をどけやがれ!

 

「いいえ!まだまだ足りませんわ!床に頭がめり込むくらい謝ってくださいまし!」

 

俺の謝罪の言葉を聞いて足を退けるどころかさらに力を入れてくる。

うごご、床に顔がふさがって息がうまく出来ない。

俺はお前のために必死に頭を働かせてるのに、この仕打ちはあんまりじゃないのか!

 

「くそ!!俺が何をしたっていうんだ!?」

 

「私と梨花のお風呂を覗きましたでしょう!この変態!!」

 

うん、まぁそうなんだよね。

 

「あれは不幸な事故だったんだ。お前らが入ってると思ってもみなくて」

 

悟史と沙都子の話を聞いた後、ずっとこれからのことについて考えてしまい、誰かが入ってるのを確認せずに浴室の扉を開けてしまったのだ。

2人のために必死に考え事して浴室の確認を怠ってしまった俺を誰が責められようか。

 

「犯人はみんなそう言いますわ!」

 

うん、責めるのは当然沙都子だよね。

くっ、梨花ちゃん!この状況をなんとかできるのは梨花ちゃんだけだ!

今回の件について事情を把握している梨花ちゃんなら、俺がどうして浴室に入ってしまったのか察してくれるはずだ!

 

「り、梨花ちゃんからも沙都子に言ってくれ!あれは避けようのない事故だったんだってことを!」

 

「沙都子」

 

俺の言葉に反応して梨花ちゃんが沙都子に声をかける。

さすがは梨花ちゃんだ、うまいこと言って沙都子の怒りを鎮めてくれ!

 

「沙都子、もっと足に力を入れるのですよ」

 

「梨花ちゃん!?」

 

沙都子にフォローを入れてくれるどころか、さらに追撃の指示を沙都子へと加える梨花ちゃん。

なぜだ梨花ちゃん!梨花ちゃんなら俺がわざと覗いたなんて考えてないだろうに!

 

「みぃ、反省の色が見えないのですよ灯火。僕の裸を見ておいて、簡単に許されるとは思わないことです」

 

あ、これマジ切れしてるやつだ。

俺を見つめる梨花ちゃんの絶対零度の視線が頭部に突き刺さる。

たぶん今の梨花ちゃんの目はひぐらしでお馴染みの鬼の目になっていることだろう。

 

「お兄ちゃん!やっぱり梨花ちゃんと沙都子ちゃんにあーんなことやこーんなことをするつもりだったんだね!」

 

沙都子と梨花ちゃんの続いて礼奈からも怒りの言葉を受ける。

不本意だが、礼奈の言葉に反論できない。

結果的に礼奈の言葉通りの行動を俺はしてしまってるのだから。

 

「どうして礼奈も誘ってくれなかったのかな!!かな!!」

 

「礼奈さん!?怒るところが違いましてよ!?」

 

礼奈の的外れな言葉に沙都子のツッコミが入る。

 

「ていうか別に礼奈は覗く必要ないよね。一緒に入ればいいんだしさ」

 

そして魅音からごもっともなツッコミが入る。

 

「ちっちっち、みぃちゃんはわかってないなー」

 

得意げな声を出しながら魅音へ返答する礼奈。

あ、預言するわ。

これから間違いなく礼奈は変態的発言をします。

 

「確かに私は梨花ちゃんと沙都子ちゃんと一緒に入るのは簡単だよ。今までだってそうしてきたし」

 

「・・・・その度に私の身体の至る所を触ってきましたわ」

 

「・・・・みぃ、礼奈とは一緒に入りたくないのです」

 

礼奈の発言にげんなりとした表情を浮かべる2人。

礼奈、お前は2人に何をしてきたんだ。

 

「う、うん。だったら覗く必要はないよね?」

 

礼奈の発言に少し引きながらもやんわりとツッコミを入れる魅音。

魅音、優しくする必要はないぞ。この変態には教育が必要だ。

 

「それだとお兄ちゃんに裸を覗かれて恥ずかしがる2人を見れないじゃない!!」

 

「「・・・・みぃあ!?」」

 

礼奈の魂の叫びを聞いて羞恥の声を上げる梨花ちゃんと沙都子。

 

「はうー!お兄ちゃんに裸を見られて恥ずかしがる梨花ちゃんと沙都子ちゃん。それを想像しただけで礼奈は礼奈は!はうはうはうー!!お持ち帰りー!!」

 

2人の恥ずかしがる姿を想像してトリップする礼奈。

今日もうちの妹は元気いっぱいだ。

 

「うぅ、どうして私がこのような辱めを受けなければなりませんの!元をたどれば原因はこの変態が私たちの覗きをするからですわ!!」

 

そう叫びながら俺の頭への足蹴を再開する沙都子。

やめろ、これ以上バカになったらどうするんだ。

 

くそう、こんなことならもっと強引に悟史もお風呂に誘うべきだった。

そうすれば共犯の罪で痛みを悟史と分けることが出来たのに!

食事の準備があるから先に入っていいよという言葉にすぐにうなずいてしまった自分が憎い。

 

しかも、その悟史は一瞬だけこちらに顔を出し、瞬時に俺がやらかしたことを察したのか、同情した表情を浮かべたままお風呂場へと消えていった。

そう、俺はすでに悟史に見捨てられた後だったりするのだ。

 

いや、逆の立場なら俺もそうしていたかもしれないから責めることはできないけどさ。

はぁ、悟史が風呂から出て沙都子にやめるように言ってくれるまで待つしかないのか。

 

「まぁまぁ2人とも落ち着きなよ、お兄ちゃんだってわざと覗いたわけじゃないんだしさ。沙都子も本当はわかってるんでしょ?」

 

 

俺が長期戦の覚悟を決めていると、いい加減俺の怒られる姿を見かねた魅音がフォローを入れてくれる。

 

「まぁ・・・・そうですわね」

 

魅音の言葉を聞いて沙都子も少し落ち着いてくれたようだ。

助かった、後で魅音にお礼を言っておこないと。

 

「そうそう、おねぇの言う通りよ」

 

お、魅音だけでなく詩音もフォローしてくれるようだ。

これで覗きの件はなんとかなりそうだ。

やはり持つべきは一般的な常識を持った妹である。

 

「梨花ちゃんと沙都子の裸なんかお兄ちゃんが興味あるわけがないのに」

 

あははっと笑いながらそう言う詩音の言葉で沙都子と梨花ちゃんが固まる。

いやまぁ、間違ってはいないけどさ、そういうのは言ってはいけないと思う。

さすがは詩音だ、俺の言えないことを平然と言いやがる。

詩音は固まっている2人を気にすることなく言葉を続ける。

 

「もう!お兄ちゃんもどうせ覗くなら私のほうを覗いたらよかったのに!お兄ちゃんは梨花ちゃんや沙都子より私の裸のほうに興味あるもんね!」

 

「よーし詩音!それまでだ!それ以上は誰も幸せにならないぞ!」

 

床に顔をこすりつけているから見えないが、梨花ちゃんと沙都子のプレッシャーがどんどん強くなっていくのを感じる。

沙都子が足をどけているから今なら顔を上げられるが、怖くて床から顔が上がらない。

 

くそう!お前ら全員まだ小学生だろうが!色気づくには早すぎるぞ!

だいたい鷹野さんのような大人の女性ならともかく、梨花ちゃんや沙都子はもちろん、詩音にだって興味があってたまるか!

せめて中学生になってから出直してこい!

貴様らの貧相な身体に興味などないわ!

 

 

と心の中でツッコミを入れる。

もちろん思うだけで口には出さない。

言葉にしたら最後、俺は生きてここから帰ることは出来ないだろうからな。

 

「・・・・なぜか急に灯火さんを殴らなければいけないような気がしてきましたわ」

 

「奇遇なのです。僕もなぜか灯火を殴らないと気がすまないのですよ」

 

「・・・・お兄ちゃん、今失礼なこと考えたでしょ」

 

俺は何も言ってはいないはずなのに、なぜか急に殺意を宿らせ始める三人。

その熱量は覗きの時の比じゃないほどだ。

 

「・・・・女の勘ってズルいよな」

 

どうやら声にしてもしなくても結果は変わらなかったようだ。

俺はそれだけを口にし、自分に訪れる運命を静かに受け入れた。

 

ちなみに悟史は長時間の長風呂で若干のぼせて帰ってきた。

こいつ、ギリギリまで風呂に居やがったな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・眠れねぇ」

 

 

3人に容赦なく殴られた身体をさすりながら冷え切った夜道を当てもなく歩く。

口に出したのならともかく、なんか殴らないといけない気がしたってだけで殴られるのは理不尽だと思う。

まぁ、失礼なことを考えていたのは事実なので甘んじて彼女たちの拳を受け入れたが。

だがそのせいでなかなか寝付くことが出来なくなったのは予想外だ。

目が覚めてしまった以上、布団の中でじっとしている気にもなれず、こうして人気のない夜道を寂しく歩くことになった。

 

 

「・・・・」

 

無言で歩きながら今日のことを改めて振り返る。

礼奈たちの乱入がありはしたが、目的である悟史と沙都子の意見を聞くことはできた。

その結果、2人、いや正確には沙都子は家族と一緒にいることを拒絶した。

前回の梨花ちゃん達との話し合いの時に2人の意見を聞いてから俺たちがどうするかを決めるという結論に落ち着いた。

梨花ちゃん達とはこのお泊り会の後に改めて話し合うつもりだが、羽入はわからないが、梨花ちゃんは2人の意見に従って両親と離れて暮らすように動くべきだと言うだろう。

俺もそれが一番確実だと思う。

でも、それが2人にとって一番良い結末なのかと言われれば、俺にはわからない。

俺はどうしても2人には家族と笑って暮らしてほしいと思ってしまう。

それが2人にとって余計なお世話なのだとしても。

 

「・・・・まぁ、俺がそんなことを言う権利なんてないんだけどな」

 

2人には家族と一緒に暮らしてほしい。

そう思いながらも沙都子の家族と一緒に暮らしたくないという気持ちも痛い程理解出来てしまう。

 

なぜなら・・・・()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

俺は母親のことがどうしても好きになれない。

浮気をして父さんを裏切り、礼奈を()()にする原因になった母のことをどうしても好きにはなれない。

頭では理解している、母は浮気なんてしていない、それはあくまで原作の知識であり、目の前にいる母とは関係ないということを。

 

頭では理解しているんだ、それでもいつか俺たちを裏切るんじゃないかという思いが離れてくれない。

 

「はぁ・・・・俺が親と離れたいのに2人には一緒に暮らしてほしいって都合が良すぎるにもほどがあるよな」

 

どうして2人には両親と暮らしてほしいと思うのか。

それはきっと、俺の元の世界の時の記憶のせいだろう。

元の世界で両親と仲良く暮らしていたからこそ、2人もそうなってほしいと思った。

 

そう、この世界に来る前の俺は、父と母と、そして妹と仲良く暮らしていて・・・・・

 

 

「・・・・あれ?」

 

俺は元の世界で中学生で、俺と妹と両親の4人暮らしだった・・・・?

その、はずだ。いい歳していちゃいちゃしまくる両親とわがままな妹に手を焼かされていた・・・・はずなんだ。

 

「・・・・なん、で思い出せないんだ」

 

頭ではそういう家族だったと知っている。

 

なのに、肝心の記憶が靄がかかったかのように思い出すことが出来ない。

 

両親の顔も、妹の顔も思い出せない。

両親がどんな風にイチャイチャしていたのか、妹がどんな風に俺にわがままを言ってきていたのか。

家族の姿も名前もすべて思い出せない。

 

それどころか

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「・・・・どうして今まで気付かなかったんだ」

 

この世界に来てもう10年以上経つというのに。

その間、俺は元の世界のことについて全くというほど意識が向いていなかった。

この世界に来たばかりの時でさえ深くは考えていなかった気がする。

元の世界のことで思い出すのは原作知識のことだけで、家族や元の世界のことなど気にもしていなかった。

それがどれだけ不自然なことなのか考えもせずに。

 

 

「っ!?なんなんだ、俺は、どうなってんだよ!?」

 

もはや悟史と沙都子のことは頭から消し飛び、今気づいた事実が頭の中をグルグルと回り始める。

全身から冷や汗が出て身体を冷やしていく、それとは裏腹に頭が異常に熱くなっていく。

 

熱と共に鈍い痛みが頭を襲い、思考が鈍化していく。

この世界に来る前、俺は何をしていた?

家族は無事なのか?

元の世界で俺はどうなっているんだ?

どうして俺はこの世界に来た?

 

 

鈍っていく頭の中で次々と疑問が浮上しては思考の渦へと雪崩れ込んでいく。

そしてその疑問の全てが解決されることなく頭の中で回り続け、俺に痛みを与えていく。

 

 

その痛みに耐えられなくなり、絶叫の声を口から出そうとした時

 

「お兄ちゃん?」

 

聞き慣れた少女の声が俺の耳に届いた。

 

その瞬間

 

『お兄ちゃん!』

 

先ほど聞こえた声よりもさらに聞き慣れた、そして()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「あ・・・・」

 

その声に応えるべく少女の、妹の名前を口にしようとするが、俺の口から言葉が出ることはない。

 

「お兄ちゃん!部屋にいないと思ったらこんなところにいた!」

 

 

「・・・・礼奈」

 

暗がりの夜道から現れた礼奈を視界に納めながら彼女の名前を口にする。

 

「こんな時間に何をしてるのかな?かな?お兄ちゃんの布団に入ろうしたらお兄ちゃんがいなくてびっくりしちゃったんだからね!」

 

「いや、沙都子たちから殴られた衝撃がまだ残ってて眠れなくてな。暇つぶしに歩いてたんだよ」

 

「あはは!それはお兄ちゃんの自業自得かな、かな!」

 

「俺は何も言ってなかったんだけどなー」

 

俺の言葉を聞いて笑う礼奈の頭を撫でる。

 

平静を装え、笑顔を浮かべろ。

礼奈に余計な心配をさせるな。

頭の中で回り続ける疑問の全てに蓋をしろ。

 

元の世界の記憶を思い出せない理由、元の世界の家族の安否、俺がこの世界に来た理由。

知りたいことで一杯だが、わからないことを考え続けてもドツボに嵌る。

この世界で疑心暗鬼になるなんて死ぬのと一緒だ。

一度、梨花ちゃんと羽入に相談しよう。

俺の話を信じてくれるかはわからないが、一人で抱え込んで疑心暗鬼になるわけにはいかない。

それに羽入なら何か解決策を知っているかもしれない。

 

そう思え。

そして今は何も考えるな。

思いに蓋をしろ。

 

 

・・・・そうしなければ狂ってしまいそうだ。

 

 

「礼奈に見つかったことだし家に戻るか。だいぶ眠気がやってきた」

 

「うん!」

 

俺の言葉に笑顔で頷きながら俺の腕を握る礼奈。

嬉しそうに笑みを受かべながら横を歩いている礼奈を視界に納めた瞬間。

 

昔に同じようなことをしたようなデジャブに襲われる。

隣を歩いているのは礼奈ではない、不機嫌そうにそっぽを向きながらも俺の手を放そうとしない少女。

その少女の、妹の顔と名前を思い出そうとするが失敗する。

 

「・・・・」

 

「・・・・お兄ちゃん?どうしたのかな?かな?」

 

険しい表情を浮かべていた俺を見て心配そうに声を出す礼奈。

 

「・・・・なんでもない、早く帰ろう」

 

礼奈を安心させるために意識的に笑みを浮かべながら来た道を引き返す。

頭の中に残り続ける疑問の数々を考えないようにしながら。

 

 

 

 

 

公由家の部屋の1つである寝室に複数の人物の寝息が漏れる。

広々とした和室では灯火たちが雑魚寝で並ぶようにして眠っている。

寝相が悪い者は布団を蹴り飛ばしたり、別の者の布団の中へと侵入し抱き着いており、抱き着かれている者は寝苦しそうに顔を歪めている。

それでも起きる気配はなく、部屋には時計の秒針が進む音と子供たちの寝息しか聞こえない。

 

はずだった。

 

「・・・・」

 

突如として寝室の一部の空間が歪んだかと思うと、そこには先ほどまでいなかったはずの少女が彼らを見下ろすように立っていた。

 

少女は静かに寝息を立てている少年の1人、灯火の前までやってくると無言のまま彼の頭へと手を置いた。

 

「・・・・記憶のプロテクトが少し緩んでしまっていたわね」

 

そう彼女が呟くと同時に彼の頭を覆うように()()()()()()()()()()()()()()が少女の手から現れる。

その模様は灯火の頭を一瞬だけ覆ったあと、そのまま何事もなかったかのように消えてしまった。

 

 

「記憶の開放はまだ先よ、今は目の前の問題に集中することね」

 

灯火の頭から手を放しながらそう呟く少女。

その瞳は闇で覆われているのではと疑うほどに光のない暗い色をしている。

その暗い瞳で彼を見つめていた少女は、一度離した手を再び彼の顔へ向けようとした時

 

「・・・・んん、もう朝ですの?」

 

灯火の布団から離れた位置にいる少女、沙都子が目を擦りながら起き上がる。

いつの間にか自分の布団へと侵入して自分に抱き着いていた少女、魅音を退かしながら声をしたほうへと顔を向ける。

 

そこには

 

()()?灯火さんの布団の上で何をしているのですの?」

 

沙都子の視界の先で静かに寝息を立てる灯火の顔に手を伸ばす少女を確認し、その少女の名前を告げる。

 

「・・・・にぱーーー☆気持ちよさそうに寝ている灯火にいたずらをしようとしていたのですよ」

 

「そうなんですのぉ?ふわぁ、それならよかったですわぁ」

 

寝ぼけていた沙都子はその言葉を聞いて納得し、深く考えることなく布団へと戻る。

布団へと戻った彼女はすぐに規則正しい寝息を立て始めた。

 

 

「ふふふ、にぱーですって。この言葉も随分久しぶりに使ったわね」

 

寝息を立て始めた沙都子を確認した少女は小さく笑みを浮かべる。

 

「それに梨花ですって、あはは、バカな沙都子。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

沙都子の隣で眠る少女、梨花を見つめながらそう口にする。

静かに寝息を立てる梨花を確認した彼女は再び灯火へと視線を戻す。

きっと今、梨花が目を覚まし彼女を見ていたら、こう口にしていたことだろう。

 

なんでここに鏡があるのよ。

 

それくらい梨花と少女の顔は瓜二つだった。

 

「順調に物語を進めているようね」

 

寝入っている灯火へ話しかけるように言葉を口にする少女。

 

「この調子で頑張りなさい、もっとも辛いのはこれからなのだけど」

 

少女は腰を下ろし、灯火の髪を優しく撫でる。

彼の頭を撫でながら少女は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「これは私とあなたが始めたゲーム」

 

彼から手を放し、立ち上がりながら少女は呟く。

 

「あなたが勝てば、()()()()()()()()()()()()()望みを叶えてあげる。でも負けた時は」

 

そこで少女は口を閉じ、そして狂気を宿らせた深い笑みを口元に作る。

 

 

「あなたは未来永劫、私の奴隷よ」

 

 

狂気を宿らせた笑みを浮かべる少女は興奮したように頬を上気させながら彼を見下ろす。

 

「私を退屈させないでね、私の燈火(とうか)

 

そう呟いた後、まるで最初から誰もいなかったかのように少女は寝室から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最後に書いている内容、感想を見て気付いたのですが
うみねこのなく頃にを知らない人だと、なにこれ?ってなりますよね。
純粋にひぐらしの世界を楽しみたいという人もいると思いますし。

なのでこの話の最後の部分が必要かをアンケートにしました。

もし必要がない場合はこの話を修正します。


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