やはり俺のアイドルプロデュースはまちがっている。   作:春雨2

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第3話 なぜか俺の同級生と担当アイドルが修羅場っている。

 

 

 

月曜日。

 

恐らくは曜日の中で人気投票をしたら断トツで最下位になるであろう曜日。

 

世の学生、社会人が幾度となく憎み、来るなと願う曜日である。

だが、祝日が多い点は喜ばれる。人って現金だよね。

 

ちなみに俺は言わずもがな土曜が好きである。時間指定でもいいのなら、金曜の夜から土曜にかけてが至高。

 

それだけに、先週の土曜が悔やまれる……!

 

 

まぁそういうわけで、俺は月曜日の朝、久々に学校に登校しているのであった。

 

 

 

八幡「…………だりぃ……」

 

 

 

真に不思議なんだが、仕事をしていた時は「あぁ、なんだかんだで学校って楽だったなぁ……」とか思っていたのに、今学校に向かう足は非常に重い。蟹に遭ったりしてないよな俺?

 

 

 

八幡「あぁ……チーズ蒸しパンになりたい」

 

「食べられちゃうけど良いの?」

 

八幡「むしろそこが良いんだろ。是非とも戸塚に……」

 

 

 

……いや、何故いるし。

 

 

 

未央「昨日ぶりだねっ、プロデューサー♪」

 

 

 

いきなり独り言に反応があったかと思い振り返ると、何故かは知らんが本田がいた。うん。ダメだ、そのパーカー、どうしてもジャージに見える。

 

 

 

八幡「お前、こんなとこで何してんだ?」

 

未央「決まってんじゃん、学校だよ。まだプロデューサーもついてないしね~」

 

八幡「学校? って事は、まさかお前……千葉出身?」

 

未央「ピンポ~ン♪ ていうか、知らなかったの?」

 

 

 

確かにパーカーで気づかなかったが、コイツの制服、どこか見覚えがある。

そういやコイツ、年下とはいえ俺と同じ高校生だったな。凛と同い年だった筈だが、実際は凛の方が大人びて見える。体型以外。

 

というか、出身地なんて知るわけないだろ。担当アイドルならまだしも、他のアイドルのプロフィールなんていちいち覚えてられるか。

 

 

 

八幡「何だったっけな、な、な、……奈緒子? って奴は千葉出身って聞いたが」

 

未央「直子? うーん知らないなぁ。私の知らない子なのかな?」

 

 

 

世間ってのは狭いもんだな。この分じゃ、千葉出身ってもっといるんじゃないか? 知らないだけで、シンデレラプロダクションにもまだ存在しているのかもしれない。

 

 

 

未央「それにしても、プロデューサーの制服姿ってなんか新鮮だね。似合ってるよ♪」

 

八幡「はは、ドーモ」

 

 

 

壁だ、壁を張るんだ八幡。心の壁を。方位、定礎、結!

 

 

 

未央「あはっ、これしぶりんに教えてあげたら、悔しがるだろうな~♪』

 

 

 

二ヒヒ、と笑う本田。

 

何、そんなに俺の可笑しな所が見たいのアイツは?

プロデューサー傷ついちゃうよ?

 

つーか、俺からすればこっちの制服の方が慣れ親しんでるし、スーツなんて着てまだ一週間たってないぞ。

 

 

 

「未央ちゃーん! 早くしないと遅刻しちゃうよー!」

 

 

 

と、不意に俺とは違う方向の少し離れた所から、本田に向けて呼びかけが飛んでくる。

 

見ると、後ろ髪を団子にした黒髪の女の子が手を振っている。あれは確か中学校の制服か? 小町が可愛いと褒めてたのを覚えてる。学校が近いから途中までは一緒に登校、という感じだろうか。

 

しかしあの子も結構可愛いな。さすが上位カーストグループ。周囲のレベルも高いね。

 

あと、あの子に似てる。うんたんの妹さん。人が隣に居ると優しくなる子。

小町には劣るが、あの子も中々のシスターポイントの持ち主である。

 

 

 

未央「あっ、ホントだ! ごめんプロデューサー、またね!」

 

 

 

ケータイで時間を確認すると、慌てて駆けていく本田。

 

 

 

「ごめんごめん、しぶりんのプロデューサーがいたからさ」

 

「えっ、あの人がそうだったの? 言ってくれればよかったのに!」

 

「まぁまぁ、今は時間無いし、挨拶はまた今度事務所でね♪」

 

「うー……礼儀のなってない子だと思われてないといいけど……」

 

 

 

よくは聞こえなかったが、姦しく学校へと向かっていく女子二人。

 

なんで女子ってのはああも元気なんかね。というかリア充が。

こっちの元気まで吸われた気分である。

 

 

 

八幡「…………ハァ、行くか……」

 

 

 

この後、もっと元気の無くなるイベントが控えているっていうのにな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、久々の教室である。

 

良かった、入ってみて「お前の席無ぇから!」とか言われたらどうしようかと思った。

ちゃんといつものそこに俺の席はあった。少しだけ哀愁が漂っているのは気のせいだろう。

 

俺が教室に入ってから、何人かが「あれ? コイツ来たんだ」みたいな視線でチラっと見てくるが、所詮はその程度。わざわざ話しかけてくる奴などいない。

 

 

 

……と、思っていたんだが。

 

 

 

席につき、背もたれに体重を預けた直後の事だった。

 

ツカツカと急ぐような足音。

誰かが近づいて来てるな、と思ったのも束の間。

 

 

 

 

 

 

バンッ!!!!

 

 

 

と、思いっきり机を叩かれた。

 

 

 

めちゃくちゃ驚いた。当たり前だ。

 

そして机に手を置き、こちら見据える人物ーー

 

 

 

 

 

 

由比ヶ浜「今まで何してたのヒッキー!!?」

 

 

 

 

 

 

奉仕部の一人。由比ヶ浜結衣だった。

 

ていうか、うるせぇよ……

 

周りを伺うと、クラスの殆どの連中がポカンとした表情でこちらを見ている。

そりゃあんだけ大声で叫べばな。お前、空気を読むのが得意じゃなかったの?

 

 

 

八幡「お、落ち着け由比ヶ浜。もう少し声のトーンを…」

 

由比ヶ浜「落ち着いてられるわけないじゃん! 連絡も寄越さないし、来る時もいきなりだし!」

 

 

 

近い近い良い匂いだし近いし後おっぱいだし近いって! おっぱい!

 

 

 

八幡「分かったから。どうどう」

 

由比ヶ浜「犬じゃないから!」

 

 

 

おぁ、このプンスカ怒る感じも懐かしい。つーか、いい加減ホントに抑えてくれませんかね。さっきから獄炎の女王の目が怖ぇんだよ!

 

チラッと時計を確認する。……もう授業が始まるな。仕方ねぇ。

 

 

 

八幡「……由比ヶ浜。ここには荷物を置きに来ただけなんだ。元々職員室に用事があったから、俺はそろそろ行かなきゃならん」

 

由比ヶ浜「でも、まだ説明してもらって…!」

 

八幡「放課後にでもいくらでも説明してやる。“部活を何日も休んで悪かったな”。“わざわざ注意させちまった”」

 

 

 

俺は静かになった教室で、大き過ぎず小さ過ぎない、教室に聞こえ渡るくらいの声で言ってやる。

 

 

 

由比ヶ浜「……ヒッキー」

 

八幡「用事が終わったら俺は部室にいる。じゃあな」

 

 

 

何かを言いたそうにしている由比ヶ浜の横を通り抜け、教室から出て行く。

出て行く間際、複雑な表情をしている葉山と、一瞬だけ目があった。

 

だがそれも一瞬の事。

 

平塚先生に見つかる前に、そそくさとその場を後にする。

どうせあの人に見つかったら、折角なんだから授業を受けていけと言うに決まってる。

 

 

出来るだけ生徒や教員の通らないルートを選び、部室棟へと早足で向かって行く。

部室近くまで来た時には、チャイムが鳴るのが聴こえていた。

 

 

さて、久々に失礼しますかね。

 

どうせ雪ノ下もいない。俺はノックも挨拶もせず、扉を開いた。

 

 

 

八幡「…………」

 

 

 

ツカツカと中へと入る。

うむ。誰もいない。当たり前だけど。

 

俺が学校を休む前と、なんら変わりない。

まぁ、一週間しかたってないんだから当たり前なのだが。

 

とりあえずはいつもの椅子に座り、どうするか考える。

いや、どうするかって言うか……

 

 

 

八幡「……ヒマだな」

 

 

 

由比ヶ浜にはああ言ったものの、実際は職員室に用事なんて特にない。

 

昨日の夜平塚先生に確認してみた所、必要な手続きは全てやってくれていたそうだ。

ぶっちゃけ学校自体来なくても良かった。

……だがまぁ、平塚先生にも一応礼と、報告とかしておきたかったし、何より。

 

 

奉仕部に、顔を出しときたかったしな。

 

あの部長様にも報告しておかねぇと後々面倒になりそうだし、仕方なく、だ。

 

 

しかしそれにしたってやる事がない。

本当はテキトーに授業に出て放課後まで時間を潰すつもりだったのに、これではサボっているみたいではないか。サボってるけど。

 

いつも読んでいる本もカバンの中だ。あんだけ言って教室になんて今更戻れるはずもない。

 

 

 

八幡「紅茶でも淹れてみますかね。……いや、勝手に触って雪ノ下に怒られるのも嫌だな」

 

 

 

椅子から立ち上がり、する事も無く部室の中をウロウロとしてみる。黒板に俺と戸塚の相合い傘を描いてみたり、余った椅子と机で忍野さんの部屋を再現出来ないかと試行錯誤してみたりしたが、結局はすぐに飽きてしまった。

 

紅茶の淹れ方もよう分からんし、諦めて元の椅子へと座る。

 

 

こうしていると、何だか静かな時間が酷く懐かしく感じる。

会社にいると、何だかんだでする事が多いからな。プロデューサー初心者の俺としては、毎日が不慣れの連続だ。

 

家に帰っても、最近は疲れてすぐにベッドイン。

アニメも溜まってきたし、次の休みにまとめて見ないとな。なんか消化活動みたいでちょっと嫌だが。

 

……つーか、次の休みっていつになるんだ?

 

仕事のことを思い出し、またも憂鬱になる。

だが、これも俺が選んだ道だ。投げるわけにもいくまい。

 

最近は忙しかったし、たまにはボーっとするのもいいか。

 

 

俺は椅子から立ち上がると、窓際までゆっくりと歩いていく。

窓を開け、緩やかな風を部屋の中へと招き入れた。

 

そういや図書室があったな。

後で本でも借りてくるとしますかね。

 

……授業中って開いてんのかな。

 

 

椅子にもたれ、窓の外を眺めながら、風に当たる。

 

 

 

何故だか、図書室にずっと居るという発想は無く、俺は結局しばらくの間、奉仕部の部室で時間を過ごしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「……んぅ…」

 

 

 

ふと、目が覚める。

 

どうやらいつの間にか寝てしまっていたみたいだ。……こうやって机に突っ伏して寝るのも久しぶりだな。

昼休みにパン食ってたのまでは覚えてんだけどなーと記憶を辿りながら上体を起こし、伸びをする。

 

 

 

 

 

 

雪ノ下「……」

 

 

 

 

 

 

目が合った。

 

 

 

八幡「おおぅッ!?」 ビクッ

 

 

 

っくりしたー……!

 

いやいやいや。怖過ぎんだろオイ……

 

 

 

雪ノ下「……ようやく起きたわね。いつまで私を待たせるつもりだったのかしら」

 

 

 

ハァ……と視線を落とし、溜め息を吐く雪ノ下。

いちいち様になっているのがまた腹が立つ。可愛いけど。

 

 

 

八幡「いや、別にそんなつもりは無かったし。つーか、お前いたのかよ。起こしてくれればよかったのに…」

 

雪ノ下「そんな事よりも比企谷くん」

 

 

 

無視ですかそうですか……

 

 

 

雪ノ下「久々に会った私に、何か言う事は?」

 

 

 

ジトッ、とした目で俺に訪ねてくる雪ノ下。

な、何か言う事だと?

 

 

 

八幡「……髪切った?」

 

雪ノ下「本気で言っているのなら逆に関心するわ……」

 

 

 

俺の答えに、雪ノ下は心底呆れたように言う。。

 

ええー。だって思いつかないしなぁ。

ホントは「少し太った?」ってボケてみたかったが、さすがに自重。目で殺されちゃう。

 

 

 

雪ノ下「久々に会った人には、最初に言う言葉があるでしょう。そんな事も分からないのかしら」

 

八幡「……あー…」

 

 

 

まぁ、あれだな。

挨拶ってのは大事なことなわけで。

 

 

 

八幡「……久しぶりだな。雪ノ下」

 

雪ノ下「ええ。久しぶりね。比企谷くん」

 

 

 

ただの挨拶。それをすませると、雪ノ下雪乃は満足したように微笑んだ。

 

 

 

由比ヶ浜「ヒッキー! いる!?」

 

 

 

何だかよくわからない空気になっていると、ドアが勢いよく開け放たれ、由比ヶ浜が入ってくる。

はいはいここにいますよ。俺は……ここにいる!(.hack感)

 

 

由比ヶ浜「良かった、ちゃんといた……それじゃあヒッキー。何があったか説明して…」

 

八幡「まぁ待て由比ヶ浜。その前に大事なことを忘れているぞ」

 

 

 

俺の姿を確認して安堵している由比ヶ浜に、訊かれる前にこちらが攻める。

 

 

 

由比ヶ浜「? 大事なこと?」

 

八幡「あぁ。そうだよな雪ノ下?」

 

雪ノ下「ええ、そうね。大事なことだわ」

 

 

 

何の事だか分からず、頭の上にはてなマークを浮かべている由比ヶ浜。

 

しかし雪ノ下って、由比ヶ浜を弄る時も結構ノリノリだよな。絶対に楽しんでやってるだろ。

 

 

 

八幡「久々に会った奴には、言う事があるだろ?」

 

由比ヶ浜「…っあ! そっか! やっはろーヒッキー!」

 

八幡「……」

 

 

 

うん。まぁ確かに挨拶に変わりはないんですけどね。

なんだろう、なんか嫌だ。返したくない。

 

 

 

八幡「……さて。そんじゃ要望通り説明しますかね」

 

由比ヶ浜「無視!? これじゃなかったの!?」

 

雪ノ下「それじゃあ、私は紅茶を淹れるわね」

 

由比ヶ浜「ゆきのんまで!?」

 

 

 

こういう時だけは俺に合わせてくれる雪ノ下。ドSの鏡である。

 

しかし今日は会ってからというもの、少しばかり優しい気がする。

はっはー。何か良い事でもあったのかい?

 

 

 

雪ノ下「比企谷くんは水道水で良かったかしら」

 

八幡「安心した。お前はいつもの雪ノ下だ」

 

由比ヶ浜「もー! 二人とも聞いてよ!」

 

 

 

一週間ぶりの奉仕部。

 

友達でも、親友でも、ましてや恋人でもない俺たちの関係。

 

それでも、どこか居心地は悪くなかった。

 

 

 

紅茶を飲み、一息ついた所で説明を始める事にする。

とりあえずは、現状把握。

 

俺が二人にここ一週間の事を説明すると同時に、俺がいない間の学校での出来事を聞く。

 

俺が気になったのは、俺が休む理由を平塚先生がどう告げているかだ。

別に俺がいない事に疑問を抱く奴はいないと思うが……まぁ、こいつらを除いて……一応確認したかったのである。

 

一応担任だからな。クラスの奴らには何かしら報告はしているはずだ。

 

 

 

由比ヶ浜「あー、平塚先生は『家庭の事情』って言ってたよ。なんか、凄く真剣な風に」

 

 

 

オイ。なんだその典型的なあまり良くない休みの理由は。

ウチは全然そんな事ないですよ? 兄妹仲も良いしな。良いよね?

 

 

 

由比ヶ浜「どうにも怪しいからさ、授業が終わった後に先生に訊きにいったの。ゆきのんと一緒に」

 

 

 

そう言われて雪ノ下を見やる。

 

 

 

雪ノ下「わ、私は奉仕部の一員として、部員の状況を正確に把握しておきたかっただけで……」

 

 

 

はいデレのん頂きましたー。……あ、やめて。ボールペンをチラつかせないで。さすがに抜き身はヤバいから。

 

 

 

由比ヶ浜「で、その時にヒッキーに直接聞きなさいって言われたの。それと、忙しいだろうから電話やメールは控えるように、って」

 

 

なるほどな。あれだけ何してたか知りたがっていたのに連絡を寄越さなかったのは不思議だったんだが、納得した。

 

つーか、やっぱりアイドルプロデュースの事は伏せてたんだな。まぁ、俺としても助かる。

もしもそんな話が広がったら、今後のプロデュース活動に影響が出ないとも限らんし。

 

 

 

由比ヶ浜「ホントはすっごい気になってたから、すぐにでも連絡取りたかったんだけど……」

 

雪ノ下「私が送らないと言ったら、彼女も我慢する事にしたそうよ」

 

由比ヶ浜「だって、あたしだけ必死で恥ずかしいじゃん!」

 

 

 

顔を赤くする由比ヶ浜に、それを微笑ましく見る雪ノ下。

コイツら仲良いなぁ……

 

 

 

八幡「まぁでも、別に夜とかだったら問題無かったけどな。返したかは分からんが」

 

由比ヶ浜「そこは返してよ……あ、それとねヒッキー」

 

 

 

少しだけ口を尖らしたかと思うと、今度は何か思い出したかのように笑顔になる。なんだ、やけに嬉しそうだな。

 

 

 

由比ヶ浜「先生に聞いたんだけど、私たち以外にも、ヒッキーのこと聞きに来た人いたんだって!」

 

 

 

なん…だと……?

 

一体誰だその物好きは……はっ、まさか…!?

 

 

 

由比ヶ浜「んっとね、一人はさいちゃん」

 

 

 

うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!!!

 

戸塚キターーーー!!

 

 

 

八幡「……そ、そうか」

 

 

 

冷静に装ってはいるが、内心テンションMAXの俺。

マジかよ、戸塚が俺の事を……?

 

 

 

雪ノ下「とても心配していたらしいから、後でちゃんと謝っておいた方が良いわよ」

 

 

 

こればっかりは雪ノ下の言う通りだ。

 

くそう……何故俺は戸塚だけにでも説明しておかなかったんだ……!

そもそも、何故戸塚をプロデュースしなかったんだ俺は!!(錯乱)

 

俺がうぐぐ、と自責の念にかられていると、由比ヶ浜が話に戻る。

 

 

 

由比ヶ浜「あとね、中二」

 

八幡「あ。そう」

 

由比ヶ浜「軽ッ!?」

 

雪ノ下「今初めて彼に対して同情したわ……」

 

 

 

大丈夫だ。アイツはドMだからな。むしろありがとうございますってなもんだ。

 

まぁでも予想通りだったな。

確かにその二人なら訊いてもあまりおかしくは…

 

 

 

由比ヶ浜「……あとね、もう一人いるんだ」

 

八幡「あ?」

 

由比ヶ浜「隼人くん」

 

 

何の気無しに言う由比ヶ浜。

その言葉に、少しだけ意表を突かれる。

 

……それは、正直以外だったな。

 

 

 

八幡「……そうか」

 

雪ノ下「……」

 

 

 

あいつがどういったつもりで俺の事を訊いたのかは分からないし、興味も無い。

 

ただ、一つ言える事は……

 

 

 

この事実を、海老名さんには絶対に知られてはいけないという事だ……!!

 

最悪血の雨が振るやもしれん(海老名さんの)。ダメ。絶対。

 

 

それはさておき。

 

とりあえずは聞きたい事を聞けたので、こちらもアイドルプロデュースについて説明することにする。

正直結構恥ずかしいので、簡単な説明になってしまったがな。そこは仕方あるまい。

 

 

 

由比ヶ浜「うっそ……」

 

雪ノ下「……まさか、本当にプロデューサーになるなんてね」

 

 

説明し終えると、二人はとても信じられないといった顔でコチラを見ている。まぁそりゃそうか。まず自称社長の真っ黒な人にスカウトされるという時点で信憑性が無い。俺だって信じれるかい。

 

 

 

由比ヶ浜「アイドルのプロデューサー……か。……ねぇヒッキー」

 

八幡「なんだ」

 

由比ヶ浜「その担当アイドルの子って、可愛い?」

 

 

 

いきなり何を言い出すんだコイツは。俺が可愛くないなんて言ったらどうするんだ? いや可愛いんですけどね。

 

しかし素直に可愛いと言うのも気が引けたので、写メを見せてやる事にした。

写メはこの間の宣材写真を撮った時のもの。三人が仲良く身を寄せ合い、笑顔を振りまいている。

 

言っておくが、撮ってくれと頼まれたから撮ったんだからな?

 

 

 

雪ノ下「……三人いるわね」

 

 

 

由比ヶ浜に写メの写ったケータイを渡すと、隣の雪ノ下も覗き込む。

 

八幡「真ん中の黒髪だ」

 

由比ヶ浜「可愛い……どことなくゆきのんに似てるね。

 

 

 

それは同意。

 

 

 

雪ノ下「そうね。是非一度会って話を聞いてみたいわね。セクハラは無いか、とか。パワハラは無いか、とか」

 

八幡「もうハラスメントするのは確定なのかよ」

 

 

 

俺はそんな事はしない。する度胸も無い。

だからその怖い視線をどうにかしてくれませんかね。

 

 

 

由比ヶ浜「この他の二人の子は?」

 

八幡「同期のアイドルだよ。まだプロデューサーがついてないらしくてな、俺が面倒を頼まれたんだ」

 

 

 

あの守銭奴事務員のおかげでな。

どうでもいいけど、あの人なんで会う度にドリンク勧めてくんの? セールスマンなの?

 

 

 

由比ヶ浜「……ヒッキー、楽しそうだね。女の子に囲まれて」

 

 

見ると、由比ヶ浜がなんかムスッとした顔をしている。

おいおい、お前は何にも分かっちゃいないな。

 

 

 

八幡「楽しいわけあるか。専業主夫を希望する程働くのを嫌っていた俺が、学生から社畜になってんだぞ?」

 

 

 

まさに苦行。リアルどうしてこうなったである。

 

 

 

雪ノ下「けれど、辞めるつもりはないのでしょう?」

 

 

 

ふと、雪ノ下がなんて事のないように言う。

その表情は、少しだけ頬が緩んでいるような気な気もした。

 

 

 

八幡「……今の所は、な。頼まれた以上、中途半端で投げ出すわけにもいかないし、それに…」

 

由比ヶ浜「それに?」

 

八幡「……担当アイドルを、放っとくわけにもいかないからな」

 

 

 

やれやれ、放任形式プロデュースはどこへいったのやら。

どうやら俺は、子供が出来たら親バカになるタイプらしい。

 

 

 

由比ヶ浜「ヒッキー……」

 

雪ノ下「そう……なら、応援しているわ」

 

由比ヶ浜「うん……そうだね! 頑張ってヒッキー! あたしも応援してるから!」

 

 

 

応援は俺じゃなくて凛にしてやってくれ。

 

まぁでも、今日は来ておいて良かったかもな。

 

 

 

二人の微笑む姿見て、少しだけそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰り道。

珍しく今日は奉仕部三人組で道を歩いていた。

 

「今日は折角の休みなんだから、遊ぼうよ! 明日からまた仕事なんでしょ?」とは由比ヶ浜の談である。

 

「あなたが遊びたいだけでしょう……」とは雪ノ下談な。

 

ま、少しくらいなら付き合ってやりますかね。

俺もそろそろ千葉成分を補給しておかないと東京の空気にやられてしまいそうだし。

 

 

 

由比ヶ浜「それでねーその時散歩で会った犬がちょー可愛くてさ! 飼い主さんもすっごい美人でー、なんて言ったかな? 確かアッキーって名前!」

 

 

 

それは犬の名前がアッキーなのか? それとも飼い主の名前がアッキーなのか? どっちでもいいけど。

 

 

 

雪ノ下「ところで由比ヶ浜さん。この後どこに行くかは決めてあるの?」

 

由比ヶ浜「え? この後? んー……っと。どこに、しよっか?」

 

雪ノ下「……そんな気はしていたわ」

 

 

 

こめかみを軽く押さえながら目を伏せる雪ノ下。

諦めろ、コイツはこういう奴だ。

 

 

 

由比ヶ浜「ほ、ほら! 折角なんだし、ヒッキーの行きたい所に行こうよ!」

 

八幡「帰りたい」

 

由比ヶ浜「家以外で!」

 

 

 

えー? わがままだなぁ、家最高じゃん。小町いるし。

 

 

 

雪ノ下「埒が明かないから、さっさと決めてちょうだい」

 

 

 

ならお前も考えろよ。

なに、そんなに俺の行きたい所に行きたいわけ?

 

 

 

八幡「そんなん言われてもな。別に…」

 

 

 

 

 

 

「プロデューサー?」

 

 

 

 

 

 

ビクッと、思わずを身体が反応した。

 

こ、この声は……!?

 

 

 

背後から聞こえてきたのは、最近よく聞き馴染んだ澄んだ声。

 

ゆっくりと、振り返る。

 

そこにいるのは、我が担当アイドル。

 

 

 

凛「昨日ぶりだね。プロデューサー」

 

 

 

渋谷凛が、そこにいた。

何故だ。

 

 

 

八幡「な、何でお前がここにいるんだ?」

 

 

 

ここ千葉よ? なに引っ越してきたの? 良いセンスだ。いやそうじゃくて。

 

 

 

凛「前に奈緒が千葉出身って言ったでしょ? だから遊びに来てたんだ。もしかしたらプロデューサーに会えるかもって思ってたけど、ホントに会えたね」 クスッ

 

 

 

なんだコイツ可愛い。

 

俺が思わず担当アイドルの可愛さに惑わされていると、今度は更に背後から話しかけられる。

 

 

 

雪ノ下「比企谷くん。その子は……」

 

由比ヶ浜「なになに、どうしたの? って、あーっ!!」

 

凛「? そっちの人たちは……?」

 

 

なに、なんなのこの状況!?

別に悪い事はしてないのに、冷や汗が止まらない!

 

なんかコイツら睨み合ってるし!

 

 

……これは、あれだな。うん。

 

 

 

俺の同級生と担当アイドルが修羅場すぎる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前回あった三つの出来事!

 

 

なんと、本田は千葉出身アイドルだった! 世間って狭いね。

 

久々の奉仕部! 起きた瞬間に目の合う恐怖。怖い。雪ノ下さん怖い。

 

俺の同級生と担当アイドルが修羅場すぎる! いや別に修羅場になる要素無いよね?

 

 

というわけで、(嘘であり悪である)青春スイッチ・オン!

 

 

 

雪ノ下「比企谷くん? 黙ってないで何か言ったらどうかしら」

 

由比ヶ浜「ヒッキー! 聞いてるの!?」

 

凛「プロデューサー、その人たちは?」

 

 

 

あ、やっぱりオープニングには飛ばないですか。そうですか。

現実逃避、終わり。

 

 

 

八幡「あー……まぁアレだ、とりあえず場所を変えるか。凛、この後時間は大丈夫か?」

 

由比ヶ浜「な、名前呼び!?」

 

雪ノ下「……」

 

 

 

俺がようやく言葉を発し、場を納めようとすると、由比ヶ浜が驚きの声を上げる。

 

そこ? そこに食いついちゃうの?

プロデューサーなんだから、おかしくはないだろ。……だぶん。

 

それと、雪ノ下さん。そんなに睨んでも俺は石にはならないからね?

 

 

 

凛「時間は特に問題ないけど……どこか行くの?」

 

八幡「ああ。俺らも移動しようと思ってたからな、丁度いい」

 

 

 

元々俺が行きたい所で良かったんだしな。ならば、あそこしかあるまい。

 

 

 

由比ヶ浜「ヒッキー、行きたい所無かったんじゃないの?」

 

八幡「いや、たった今出来た」

 

というより、いつも行っている所なんだがな。

こういう時は都合が良い。

 

 

 

雪ノ下「……まさか」

 

八幡「そう。学生の味方、サイゼリヤだ」

 

 

 

サイゼリヤ。それは学生にとってのエデン。

 

というより、ファミレスという場所が軒並み学生には重宝されている。

 

何故か。それはドリンクバーというシステムのおかげに他ならない。発明した人は偉大である。そう思わざるを得ない程にコスパが良い。

とりあえずこれさえ頼んでおけば、いくらでも居られるからな。嫌な客である。

 

まぁ実際は全然元取れてないとか、裏にはGさんがいるとか聞いた事もあるが……世の中、知らない方が幸せな事もある。

 

 

 

そういうわけで、俺たちはサイゼリヤに来ていた。

窓際、コーナーの位置にある四人席。場所は良いが、ドリンクバーからは遠いな。めんどくせぇ……

 

どうでもいいけど、入店した時のあの店員さんの微妙な笑顔はなんなんだ。

 

 

 

「いらっしゃいませー♪ 四人……で、よろしかったですか?」

 

 

 

よろしいですけど?

 

なに、そんなに俺が美少女3人といるのが不思議ですかねぇ? 不思議ですね。

ぶっちゃけ俺だって、今のこの状況に軽く呼吸困難になりそうです。

 

 

ちなみに席は俺と凛が隣、向かい側に由比ヶ浜と雪ノ下である。

 

最初に俺が座った後、凛が何の躊躇いもなく隣に座ってちょっとビックリしちゃったが、考えてみれば当然か。俺の向かいに座ったら、見ず知らずの奴と隣になっちまうもんな。

 

それにしたって、もう少し離れてもいいんじゃない? ちょっと肩が触れそうだよ? 

 

 

俺がキョドりそうになるのを隠しながら平静を保っていると、その後に由比ヶ浜が若干不服そうにしながらも俺の前に、その隣に雪ノ下が(こっちも若干不機嫌そうな気もするが、いつもそんな顔だった気もする)座る。といった具合だ。そんなに俺の前は嫌なんか。

 

さて。席についた所で、本題に入ろうか。

 

 

 

八幡「いやー腹減ったな。何食うよ? 俺的にドリア299円は破格の…」

 

由比ヶ浜「紹介は!? 先に紹介してくれないと、ご飯なんて喉通らないよ!」

 

 

 

うむ。やはり由比ヶ浜のツッコミはひと味違うな。

これだからボケ甲斐があるというものだ。

 

 

 

八幡「冗談だ。んじゃ先にこっちを紹介しとくか」

 

 

 

そう言って俺は凛に向き直る。……なんか凛さん緊張してない? ちょっと怖いぞ。

 

八幡「……あー、俺の担当アイドルの渋谷凛だ」

 

凛「渋谷凛です。プロデューサーにはいつもお世話に……なってます」

 

 

 

オイ。なんか今若干の間がなかったか。

 

まぁ確かによく考えたら、プロデュースらしいプロデュースはまだやっていない。

……あれ、俺トラウマ話しかしてなくね?

 

 

 

由比ヶ浜「あたしは由比ヶ浜結衣。結衣でいいよ! それでこっちが…」

 

雪ノ下「雪ノ下雪乃です。よろしく」

 

凛「うん、よろしくね」

 

 

 

笑いながら挨拶する凛。

 

だがお分かりだろうか……ごくごく自然にタメ口である。

まぁ、二人とも凛の年齢知らないだろうし、そもそもあまり気にしないだろうけどな。

 

 

 

由比ヶ浜「えーっと、渋谷凛ちゃんだから……しぶりんだ!」

 

凛「え!? な、なんでその呼び方を…」

 

由比ヶ浜「へ? ダメだった?」

 

凛「あ、ああいや。ダメじゃないけど……」

 

 

 

由比ヶ浜の命名に、困惑した様子の凛。

まさか本田と同じあだ名に行き着くとは……相変わらずのネーミングセンスである。

 

 

 

雪ノ下「嫌だったら嫌って言ってくれていいのよ?」

 

由比ヶ浜「むぅー、ゆきのんヒドーい!」

 

凛「あ、あはは」

 

 

 

一応の自己紹介を終わらせると、雪ノ下が少しだけ関心したように呟いた。

 

 

 

雪ノ下「でもまさか、比企谷くんから女の子を、それもアイドルを紹介される日が来るなんてね……」

 

由比ヶ浜「ビックリだよねー」

 

 

 

普通に失礼な事を言われた気がする。

お、俺だって? 小町とか紹介する時はあるし?

 

 

 

八幡「ほっとけ。そういうお前らこそ、俺に男の一人でも…………いや、やっぱいい」

 

由比ヶ浜「いいんだ!?」

 

八幡「当たり前だ。知り合いに『私たち、付き合ってます♪』なんて紹介でもされてみろ。助走つけてシャイニング・ウィザードしたくなる」

 

 

 

蘭ねぇちゃんだって出来たんだ。俺にだって……無理ですね。ごめんなさい。

 

 

 

由比ヶ浜「あ、あたしは、紹介なんて、しないし……」

 

 

 

由比ヶ浜がなんかモジモジしているが、シャイニング・ウィザードが分からんのだろうか。チョーイイネ! いやよくないか。

 

 

 

八幡「仮に友達的な理由で紹介されても、だ。友達の友達の紹介なんて遠過ぎて気が合うかも分からん上に、そいつと紹介された奴が楽しく話している間はこっちは入り込む余地も無くなる」

 

雪ノ下「妙に実感が籠ってるわね……」

 

八幡「しかもその友達がトイレに行った時なんて最悪だ。気まず過ぎて空気が重いなんてもんじゃない」

 

 

 

ケータイを弄って誤摩化そうにも、時間を見るくらいしかする事もない、それはそれで感じ悪い。

あれ程トイレからの帰りを懇願する事もないぞ。

 

 

 

雪ノ下「というか、今まさに紹介している最中に話す内容ではないわね」

 

八幡「……確かに」

 

由比ヶ浜「そうだよ! ヒッキー空気読んで!」

 

 

 

なんだよ空気読むって。空気は吸うもんだろ?

もしくは俺自身が空気。つまり空気を読むとは俺を知る事である。違うか。

 

 

 

凛「……仲良いね」 クスッ

 

 

 

見ると、凛が微笑ましそうに笑っている。

何処がだよ。

 

 

 

凛「もしかして二人のどっちかが、プロデューサーの彼女なの?」

 

雪ノ下「ッ!」

 

由比ヶ浜「え、いやっ、そ、そんなんじゃないし!」

 

 

 

目を見開く雪ノ下と、顔を真っ赤にする由比ヶ浜。

 

おーおー慌てふためいておる。

もう少し冷静でいられんのかね(貧乏揺すりが止まらない)。

 

 

雪ノ下「あなたには悪いけれど、的を外れているわ。それも盛大にね。私たちがこんな男と、恋人同士だなんて、そんな事があるはずないでしょう。失礼も大概にしてほしいわね。そもそもなんでこんな目が腐った男と…」

 

由比ヶ浜「ゆ、ゆきのん落ち着いて!」

 

凛「ご、ごめん?」

 

八幡「謝るな。俺の立つ瀬がなくなる」

 

 

 

何もそこまで否定せんでもな。否定し過ぎてお姫様になっちまいそうだ。

ちなみに俺は奇策士の方が好きだけど。

 

 

 

雪ノ下「私たちは奉仕部という部活に所属しているの」

 

凛「奉仕部?」

 

 

 

聞き慣れない単語に首を傾げる凛。まぁそりゃそうだよな。名前を聞いただけじゃどんな部活なのかさっぱり分からん。執事とメイドさんとかいそう。

 

 

 

雪ノ下「簡単に言えば、生徒の問題の解決を手助けする部活よ」

 

凛「相談事を受ける、ってこと?」

 

雪ノ下「そう思ってもらって構わないわ。最初は私一人でやっていたのだけれど、ある時そこの比企谷くんが入ってきて、その次に由比ヶ浜さんが入部してきたの」

 

由比ヶ浜「あたしは元々依頼しに行ってたんだけどね」

 

 

 

そんな事を言ったら、俺は平塚先生に無理矢理入部させられたんだけどな。まぁ舐め腐ったレポートの罰なんだが。いや、俺は真剣に書いたぞ?

 

 

 

凛「へぇ、どういう依頼があったの?」

 

雪ノ下「そうね。最初は由比ヶ浜さんの依頼だったのだけれど…」

 

八幡「あれは大変だったな」

 

由比ヶ浜「ちょっとヒッキー! それどういう意味!?」

 

 

 

その後も雑談や世間話をしながら、飯を食べてのんびり過ごした。

最初はどうなる事かと思ったが、なんだかんだでゆったりしてしまったな。

 

リスペクト、サイゼリヤ。

 

 

 

そして、いつの間にやら夜の8時過ぎ。

 

明日も仕事と学校がお互いにあるという事で、あまり遅くならない内に帰る事にした。

そっか仕事か……またドリンクを勧められる日々に戻るのか。もう買っちゃおうかな。

 

 

 

凛「それじゃあ雪乃に結衣、今日はありがとね」

 

雪ノ下「ええ。アイドル活動頑張ってね。応援しているわ」

 

結衣「あたしも! また遊ぼうね!」

 

 

 

……なんか、俺とよりも仲良くなってないか?

プロデューサー涙目である。

 

 

 

雪ノ下「あなたは駅まで送ってあげなさい」

 

由比ヶ浜「そうだよヒッキー。女の子を一人で帰らせちゃダメだよ!」

 

八幡「へいへい……」

 

 

 

お前らは俺のオカンか。

というよりも小町が言いそうだ。こんな妹が二人もいたら俺が保たん。

 

サイゼリヤ前で別れ、凛を送っていく。

しかし少し歩いた所で、後ろから声が飛んできた。

 

 

 

由比ヶ浜「ヒッキーも! 頑張ってねーっ!」

 

雪ノ下「……」

 

 

 

振り返ってみると、ぶんぶん手を振る由比ヶ浜と微笑む雪ノ下が遠目に見える。

 

俺は少しばかり気恥ずかしく頭を掻き、後ろ手に手を挙げて、また歩きだした。

 

 

 

凛「……ホントに、仲が良いね」

 

八幡「そんなんじゃねーよ。俺とあいつらは」

 

 

 

俺とあの二人の関係。

それは上手く言葉には出来ないが、きっと、するような事でもないのだろう。

 

そんな簡単に、一言で片付けたくはない。

 

 

 

凛「……プロデューサーは、彼女いないの?」

 

八幡「むしろいるように見えんのかよ。お前には」

 

凛「……それもそうだね」

 

 

 

納得されてもそれはそれで嫌だなおい。

こいつまで雪ノ下みたいになったらどうしよう……

 

 

 

八幡「少なくとも、プロデューサーやってる内はそんな事にかまけてらんねぇだろ」

 

 

 

まぁ、どっちにしろ彼女が出来るかは分からんが。

か、可能性は0ではない。0ではないんだ!

 

 

 

凛「……そっか。それなら」

 

 

 

少しだけ歩みを早めて、俺の前に立つ凛。

 

 

 

凛「今は、私の隣にいて」

 

 

 

キラキラと夜の街の光を浴びて、凛の笑顔が目に映る。

 

 

 

 

 

 

凛「隣で私のこと……見ててね」

 

 

 

 

 

 

その笑顔に、思わず見蕩れてしまった。

 

 

……こいつは、こういう事を無自覚で言ってるんだろうか。

だとしたら、アイドルには向いてるのかもな。

 

 

 

八幡「……当たり前だろ」

 

 

 

止まっていた足をまた動かし、凛の隣に立つ。

 

 

 

八幡「ちゃんと見てないと、プロデュースなんて出来るわけないしな」

 

 

 

今が夜で良かった。

こんな顔、明るい所で見せれるかよ。

 

 

 

凛「……うんっ」

 

 

 

そして、また二人で歩き出す。

 

 

 

俺がアイドルのプロデューサーなんてやっているのも、企画の内だ。

 

いつまで隣にいられるかは分からない。

一年を過ぎれば、そこで終わり。

 

 

でも、今は違う。

 

 

俺は、凛のプロデューサーなんだしな。

隣にいて、見ててやるよ。

 

 

どこまでも、歩いてく。

 

 

 

先の見えない、この道を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはシンデレラプロダクション本社のとある一室。

今この場において、ここは我々の作戦会議室となっている。

 

我々、とはつまり。

 

 

 

八幡「俺と」

 

凛「私と」

 

ちひろ「私……ってなんでですか!」

 

 

 

ノリの悪い事務員は放っておいて、ここはシンデレラプロダクションの一室、というか事務室の一角(もはや事務室ではなく事務スペース)であった。

 

 

 

八幡「想像し辛い人はアニマスの事務所を想像してくれ。それのピヨ子の位置にちひろさん。その前に俺、隣に凛といった具合だ」

 

凛「誰に説明してるの?」

 

 

 

飲み込みの悪いアイドルは放っておいて、まぁつまりは俺たち二人が事務スペースにお邪魔している形になる。と言っても事務員は知っての通りこの千川ちひろさんただ一人。ぶっちゃけ俺たちが加わった事で狭くなるような程でもない。

 

 

 

八幡「そんなわけで、今日も反省会やるぞー」

 

凛「うん」

 

ちひろ「だから、なんでここでやるんですか!」

 

 

 

しつこい人だな。ここは1から説明せねばならんらしい。

 

 

 

八幡「いいですか? 俺たち一般募集プロデューサー(めんどいから以下一般P)は自分のデスクを持っていません。支給されているのは更衣室のロッカーのみです」

 

100人以上のアイドルに加え、そこに100人以上のプロデューサーもいるのだ。いちいちデスクを用意していたらどんだけの規模の部屋が必要になるやら。

 

 

 

八幡「大企業なら問題は無いのかもしれません。ビルが何階建てもあるならスペースも余裕でしょう。しかしここシンデレラプロダクションにはそれが無い」

 

凛「世知辛いね……」

 

八幡「言うな。……ですけどね、俺が思うにどーも違和感を感じるんですよ」

 

ちひろ「違和感?」

 

 

 

俺の言葉に、怪訝な表情になるちひろさん。

 

 

 

八幡「これだけの人数のアイドルがいて、それに一般Pとはいえ専属のプロデューサーを全員につける。そこら辺の中小企業には出来ないですよね?」

 

ちひろ「まぁそうですね」

 

八幡「だとしたら、何故ウチのプロダクションはこんな小さいビルで事務所を経営しているんですか?」

 

 

 

これは前から気になっていた事だ。

恐らくこの会社は儲かっている。なのに何故こんな小さな事務所にこだわるのか。

 

 

 

ちひろ「それはですね、社長の方針なんですよ」

 

八幡「社長の?」

 

ちひろ「ええ。なんでもお世話になった方のプロダクションは有名ながらも贅沢をしない所らしくてですね。丁度これくらいのビルにプロダクションを構えているらしいですよ」

 

八幡「はぁ……」

 

 

 

そう言えば初めて会った時にもそんな事を言っていた気がする。お世話になった人の受け売りで~みたいな。

まぁそれは納得しておこう。アニマスの事務所の雰囲気は俺も好きだ。

 

 

 

八幡「けどちひろさん、この事務所によく200人以上も入りますよね」

 

ちひろ「……」

 

八幡「よくよく考えれば、こんな小さい事務所のどこに200人以上もの人間の入るスペースが…」

 

ちひろ「比企谷くん」

 

八幡「ッ!?」 ビクッ

 

ちひろ「それ以上は、触れてはいけない事ですよ?」 ニッコリ

 

 

 

な、なんだ?

今とんでもない寒気を感じたぞ……?

 

 

 

凛「……」カタカタ

 

 

 

隣を見ると、凛も青ざめた顔で震えている。

お前、いくら蒼が好きだからって顔まで青くしなくても。

 

 

 

ちひろ「世の中には、知らなくていい事もあるんです……」

 

 

 

どこか悟ったようなちひろさん。

うむ……ここは触れずにいよう。

 

 

八幡「で、何の話でしたっけ?」

 

ちひろ「だから、どうしてわざわざここで反省会をやるんですかって事ですよ」

 

 

 

呆れたように話を繋いでくれるちひろさん。さっきまでの表情はどこへ行った。

 

 

 

八幡「……まぁさっきも言いましたけど、要は俺たち一般Pは居場所が無いわけです。あぁいや、仕事場がって事ですよ? 居場所が無いのは俺だけです」

 

ちひろ「その自虐ネタはいらなかったです……」

 

凛「うん……」

 

 

 

ほっとけ。

こちとらもう自虐ネタなのか事実を言ってるだけなのか、自分で言ってて分からなくなってきてんだぞ。

軽い末期症状な気がする。

 

 

 

ちひろ「しかし、そうは言いますが、事務所にある会議室、応接室、広間は自由に使っていいんですよ?」

 

 

 

そう。その通りだ。

実際多くの一般Pが事務所のいたる所で担当アイドルと打ち合わせやらミーティングやらをやっている。

だから、だからこそである。

 

 

 

八幡「だからこそ、ここを使わせてもらうんですよ!」

 

ちひろ「何故!?」

 

 

 

あれ、なんかタイムリープしてる?

 

 

 

八幡「まぁ面倒なんでぶっちゃけますけど、ここデスクあるし資料もあるから丁度良いんですよね」

 

ちひろ「身も蓋も無い! っていうか最初からそう言ってくださいよ!」

 

 

 

実際問題、事務員の真ん前でアイドルと打ち合わせをやろうなんて者はいなく、こうしてここの事務スペースを使っているのは俺たちだけだ。役得役得。

 

……それに、ここを使うのには他にも狙いがあるしな。

 

 

 

ちひろ「もう……本当はダメなんですからね?」

 

 

 

そう言いつつ許してくれるちひろさんマジ天使。

 

 

 

ちひろ「そのかわり、スタドリ・エナドリセットお買い上げですよ♪」

 

 

 

前言撤回ちひろさんマジ悪魔。

 

というわけでいつまでも始まらないので反省会開始ー。

 

 

 

八幡「んで? 今日のレッスンはどうだった凛」

 

凛「今日はトレーナーさんとの顔合わせも兼ねた初歩的なレッスンだったから、そこまで大変じゃなかったよ。っていうか、プロデューサーもいたよね?」

 

八幡「……まぁな」

 

 

 

付き添いという形でレッスンには付き合ったが、ホントに初歩的過ぎてする事が無かった。

なんだろうね、あの女の子のレッスンしている所をただ見ているという状況。

悪い事しているわけではないのに……うん。なんかいけない事をしているような気分になる。

 

 

 

八幡「正直レッスンに付き添う必要ってあんのか? トレーナーさんがいるんだから、素人の俺よりもそっちに教わってた方が身に付くだろ」

 

ちひろ「今はそれでいいかもしれませんが、これから先はそうはいかなくなると思いますよ?」

 

 

 

と、俺と凛の会話に入ってくるちひろさん。

そうだ。これを待っていたんだ。

 

 

 

八幡「と、言うと?」

 

ちひろ「今は確かに凛ちゃんは覚える歌もダンスも特にありませんが、今後もそうとは限りません。この先凛ちゃんがCDデビューした時、お芝居の仕事を貰った時、その時凛ちゃんがどういった方針で自分の個性を広げていくのか、それはプロデューサー次第です」

 

正確には、プロデューサーと凛ちゃん次第、ですけどね。と付け加えるちひろさん。

 

 

 

ちひろ「もっとボーカルのレッスンを増やした方が良いんじゃないか、ダンスはもっと静かな方が合っているんじゃないか、そうやって比企谷くんが凛ちゃんをプロデュースしていかなくちゃならないわけですね」

 

八幡「なるほど」

 

ちひろ「むしろ、今からレッスンに積極的に参加して、ここはこうだーここはああだーってアドバイスするくらいじゃないと!」

 

 

 

なるほどなるほど。いやホントに参考になったわ。

 

自信満々に胸を張るちひろさん。余程語ってスッキリしたのだろう。

 

 

 

ちひろ「フッフーン♪ ……っは!?」

 

 

 

とここでようやく気づいたようだ。

もう既に遅いがな。

 

 

ちひろ「ひ、比企谷くん、謀りましたね!?」

 

八幡「さてね。なんの事やら。いやーでも参考になりましたよ。さすが大企業プロダクションの事務員さん」

 

凛「……なるほどね。こういう事か」

 

 

 

凛も気づいたか。

 

そう。この場所で反省会をやる一つの理由が、ちひろさんからアドバイスを貰う事である。

アドバイス以外にだって、もちろん得られるものだってある。

ちひろさんが事務仕事をしていれば、どうしたってウチのアイドル関係の話になってくるわけだ。得意先との電話、まとめている資料、ちひろさんに回されてくる仕事など、得られる情報はいくらでもある。

 

故に、この席なのだ。

 

 

 

凛「……うん。なんかさ」

 

八幡「なんだよ」

 

凛「せこいね」

 

 

 

凄く冷めた目で見られてしまった。

この間のあの笑顔はどこ行ったの?

 

 

 

八幡「いいんだよ。別に“ルール違反”はしてねぇしな」

 

ちひろ「うぅ……確かに他のアイドルの進捗情報や仕事内容の公開は許されてるんですけどね」

 

凛「そうなんですか?」

 

ちひろ「ええ……競っているとはいえ同じプロダクションですし、お互いの成果が分かる方が良い刺激になるでしょう?」

 

 

まぁそれでも大っぴらに「お前今どんな仕事進めてんの?」と訊く奴はいないだろう。俺だって無理だ。つーか訊く相手がいない。

 

 

 

ちひろ「それでも、私は特定の誰かに肩入れするつもりは無かったのに……はぁ」

 

 

 

落ち込んでいる様子のちひろさん。

 

うーむ。作戦とはいえ少々やり過ぎたか。

確かに褒められたやり方ではないしな……反省もしてないが。

 

 

 

ちひろ「という事で、比企谷くんには特性スタドリ・エナドリ1ダースセットをお買い上げしてもらいます♪」

 

 

全然落ち込んでなんていなかった。むしろさっきより元気だった。

つーか、1ダースって! チョコレートで勘弁してくれません?

 

 

 

ちひろ「まぁそれは冗談として…」

 

凛「冗談だったんだ……」

 

 

 

いや、今の目は冗談じゃなかった。

俺の腐った目は誤摩化せない。

 

 

 

ちひろ「比企谷くんに、実はお願いしたい事があるんです」

 

八幡「お願い?」

 

 

 

お願い。何故だろうか。このワードだけで嫌な予感がビンビンする。八幡センサー(アホ毛)が逃げろと言っている。

 

 

 

ちひろ「比企谷くんは学校で、奉仕部という部活をやっているそうですね?」

 

八幡「……なぜそれを?」

 

ちひろ「担任の先生から聞きました♪」

 

 

 

やばいやばいやばい。

何がやばいかってーと、とにかくやばい(戸部並感)。

 

あんの三十路手前教師、何をいらん事を教えてるんだ!

 

“奉仕部”。このワードも危険だ。嫌な予感しかしない!

 

 

 

ちひろ「なんでも、困っている人を助ける部活とか」

 

 

 

そんな立派なもんでもない。字面だけ見ると、どこのスケット団? って感じだ。

 

 

 

八幡「……あくまで、手助けするだけですよ。飢えている人がいるのなら、魚を与えるのではなく、魚の取り方を教える。それが奉仕部の方針……らしいです」

 

 

 

以上、ユキペディアより抜粋。

というか本人が言っていた。

 

 

 

ちひろ「なるほど。それじゃあ比企谷くん」

 

八幡「はい」

 

ちひろ「比企谷くんには、デレプロ奉仕部として活動してもらいます」

 

八幡「はい……ってはいィ!?」

 

 

な、なんて言ったこの人? 思わず右京さんみたいになっちまったぞ。

 

 

ちひろ「ですから、デレプロ奉仕部を……奉仕部デレプロ支部のが良いですかね?」

 

八幡「どっちでもいいですよ。それより、なんなんですかその不穏極まりない提案は?」

 

 

まさか、ここでプロデューサー活動しながら相談事を受けろと?

冗談ではない。ただでさえプロデュース活動で俺の頭がミスディレクションオーバーフローしそうなのに、その上奉仕部の活動とか……

 

 

 

ちひろ「もちろん、そんな無理を言うつもりはありません。ただ、この間比企谷くんに他のアイドルの子の臨時プロデュースをしてもらったじゃないですか」

 

八幡「島村と本田の事ですか」

 

 

 

臨時プロデュースって言っても、ただ写真撮ってただけだけどな。

 

 

 

ちひろ「要はあれと同じです。比企谷くんには、まだプロデューサーの付いていないアイドルの子の臨時プロデュースをしてもらいたいんです」

 

八幡「いやいやいや。凛だけでも手一杯なのに、無理ですって」

 

ちひろ「大丈夫ですよ! 毎回じゃなくて、ちょこっとついでにプロデュースみたいな感じで!」

 

 

 

そんなお手軽感覚で言ってるけど、実際相当キツいよね。それ。

これからは凛+αでやっていくって事だ。一人のプロデュースはそう多くはなくても、次、また次と来たらもうそりゃ多いんだよ!

 

つーか、プロデューサーまだ足りてなかったの? どんだけ人材不足よ。

アイドル好きの男共。求む。

 

 

 

ちひろ「お願いです! まだプロデューサーの付いてないアイドルを助けると思って! 可哀想じゃないですか?」

 

八幡「ぐっ……!」

 

 

 

確かにな。

折角夢のアイドルになれたというのに、プロデューサーがいないなんて気の毒だと思う。

でもなぁ……

 

 

 

八幡「……凛はどう思う?」

 

凛「……」

 

 

 

今更ながら、ずっと黙って話を聞いていた凛にふってみる。

凛は表情を変えず、静かに答えた。

 

 

 

凛「……私は、プロデューサーがいいならいいよ」

 

 

 

……うむ。

 

 

 

八幡「別に俺はやりたくないから、やらな…」

 

ちひろ「もしも引き受けてくれるなら、ここの場所は自由に使ってくれても構いません」

 

八幡「……いやでも…」

 

ちひろ「毎週マイスタドリ・マイエナドリを差し上げますよ」

 

八幡「……」

 

ちひろ「今度、ラーメンでも食べに行きましょう。私奢っちゃいますよ♪」

 

八幡「…………はぁ……分かりましたよ」

 

 

 

敵わねぇなぁ、この人には。

つーか、俺が弱いのか。

 

 

 

凛「……」 クスッ

 

 

 

何でか知らんが凛が笑っている。なんか癪に触る笑いだなおい。

 

 

 

ちひろ「ありがとうございます♪ それでさっそくなんですけど、最初の一人を紹介しちゃってもいいですか?」

 

八幡「えっ、もうですか?」

 

ちひろ「ええ。というか、さっきからいますけど」

 

 

 

は? 何言ってんだ?

 

周りを見渡すが、俺たちの周りには誰もいない。

まさか、プロデューサーがつかないままこの世から去ったアイドルとかじゃないよな。やめてくれ。普通に怖いんですけど。

 

 

 

八幡「ん、どうしたんだ凛?」

 

 

 

ふと隣の凛を見ると、俺の足下、正確に言うならデスクの下、戦慄の表情でジッと見ていた。

俺もつられて視線を向ける。

 

 

 

八幡「なんだ、Gでもいた…」

 

 

 

「フヒ…Gじゃ、ないです……」

 

 

 

八幡「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!??」

 

 

 

 

 

 

妖怪キノコダケがそこにいた。

 

 

 

 

 

 

 


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