B級の比企谷くん【ワートリ×俺ガイル】   作:あなたのハートにイオナズン!

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短いけどとーかー


比企谷八幡は勘違いをもうしない。しないったらしない

 

 

「――もう出来たのか。文章書くのむちゃくちゃ早いな、貴様」

 

 

 と、翌々日の放課後に平塚先生へ当たり障りのない内容の課題の惨たらしい姿を提出しに行くと、やや引き気味の顔でそう(のたま)われた。

 やりたくないことはすぐに片付いちゃうんです、と(うそぶ)いておいたが、流石に生徒に対して『貴様』は無いでしょう『貴様』は。

 

 肝心の中身は本当に惨たらしいくらい原形を留めない勢いで夜のテンションで書き上げたもので、ぶっちゃけ某剣豪将軍(自称)のラノベモドキに似た仕上がりとしか言いようがない。

 読ませられたことが度々あるのだが、誰だお前!?と問いたくなるくらいに課題の中で彩られた『俺』は世間のリア充を踏み越えて往く【進撃の凡人】であった。

 やっぱり文章は眠い目で書くものじゃないよね。八幡よくわかったよ。

 これでまたダメ出し食らったらPLACETOPLACEの眼鏡を参考にしよう。芳文社の奴ね。

 

 それはさておき、どうにも本日は視線を感じる。

 別にそういったサイドエフェクトが備わっているわけではないのだが、害意や危険感知といったモノに敏感になるのはボーダーの性ではないのかな、と思っている。

 戦争から帰ってくる親父さんが神経過敏になったりする話もあるのだし、常時戦争状態の今の仕事が10代20代の俺たちに何の影響も及ぼさないとは決して言いきれないんじゃないかなぁ、と。

 まあそういう俺はほぼバイト感覚で近界民ぶった切ったり偶に撃ち抜いたりしてるんですけどね。

 

 話を戻すけど、本日の視線に害意のようなものは取り合わせていないけれど、むしろ何やらタイミングを計っているような気配くらいは伺える。

 なので、本日はなるべくひとりきりにならないように、昼休みもベストプレイスへ向かわずに教室でボッチ飯を敢行してみた。

 いつもは消えない男がその場に残ることに、教室内の違和感は中々に最高潮であった。

 フフフ怖いか? 安心しろ、俺が一番怯えてる。

 

 そして現在は放課後で周囲に人気無しということは、その狙いの視線の主が襲撃するにベストなタイミングと言えるわけで。

 早く帰らなくちゃ(使命感。

 

 

「ヒッキー!」

 

 

 廊下を女子の声が、誰かを呼ぶように響く。

 おい呼んでるぞヒッキーさんよ(笑)。

 

 

「ヒッキーってば! ちょっと待ってよー!」

 

 

 しかし学内で引きこもり認定とかヒデェネーミング。

 やめてやれよ、また引きこもりに戻っちゃうだろ。

 

 ……俺じゃないよね?

 

 進む背中に幾度となく距離が遠ざかることなく届けられる呼び声は、しつこいくらいに俺を攻める。

 この身体を焼き尽くさんばかりにヒッキーヒッキーヒッキーヒッキー……怖いわっ!

 いっかいだけだ、いっかいだけ振り返って、自分のことじゃないことを確認しよう。

 

 

「もー、やっとこっち向いた!」

 

 

 ……マジで俺だったよ。

 ていうか、誰だコイツ。

 

 

「……何の用、というかヒッキーってなに、舞浜ネズミの亜種?」

 

「え、なにわかんないこと言ってんの、キモい」

 

 

 酷くね?

 というかホントに誰だ、このピンク団子髪。

 

 

「キモくてスンマセンでしたね。用がないならもう行くぞ」

 

 

 暇じゃねーんだ、と踵を返す。

 ホントは然程忙しくも無いけど、さっきから俺の心が警報をガンガンに鳴らしてる。

 早いところコイツから離れないと、なんかヤバい。

 

 

「わわっ、ちょ、ちょっとまって、えーと……っ、こ、これっ!」

 

 

 と、差し出されるのはレース系の小さな布?でラッピングされた塊。

 まるでクッキーか何かを一人分包装したような、可愛らしいそれをずいと手渡される。

 

 ――……え、これって、まさか、

 

 

「お、お礼だからっ!」

 

 

 そう言って走り去って往くピンク女子。

 廊下は走るな、と云うべきかも知れないが、もっと別なことが気にかかった。

 

 

「………………お礼って、何の……?」

 

 

 俺にはさっぱり心当たりがなかった。

 

 

 

 ☆  ★  ☆  

 

 

 

 本日女子から手渡されたそれをテーブルの上へと置いて、俺は深く考え込む。

 腕組みをして、いっそ悩むと云っても過言ではないくらいな様相を見せる俺を尻目に、妹様はテーブルの上のそれへと目が行っていた。

 

 

「およ? おにーちゃん、これ何?」

 

 

 俺はそれに答えるよりももっと重要な疑問があるので、質問に質問を返すようで悪いが先に行動を促した。

 

 

「小町、とりあえずそれを見てくれ。話はそれからだ」

 

「なんでそんなもののしいの」

 

 

 頭に疑問符を抱きつつも、云われたとおりにテーブル上の包装紙を器用に紐解く。

 あと『物々しい』な。

 

 

「………………おにーちゃん、これ、なに?」

 

 

 先ほどとは込められた意図の変貌した、同じ科白が引きつった貌の小町の口から吐き出される。

 ドン引きの妹様の紐解いた包装紙の中には、黒々とした毒々しい幾つもの『炭』が詰まっていた。

 

 

「見知らぬ女子から貰ったのだけど、小町、こういうのを渡す女子の心境を15文字程度で教えてくれるか?」

 

「えーと……、ご、ご愁傷さま?」

 

 

 やや憐みに似た視線が、小町から向けられている。

 うん、俺も別に期待したわけじゃないもん。

 だから平気だねっ、生ゴミを手渡されたんだろ、罰ゲームだろ、これくらい軽い軽い! つ、強がりじゃねーしなっ!(涙声。

 

 

「とりあえず、あの見知らぬ女子はジョイフルと呼ばせてもらおう」

 

「いきものがかりみたいだね」

 

 

 ちがう、そっちじゃない。

 

 




え、ワートリ成分がなかった?
そんなことないじゃないっすか

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