東方project × ONE PIECE ~狂気の吸血鬼と鮮血の記憶~   作:すずひら

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前回のまとめ

・見習いコックちゃんがコックちゃんに昇格
・コックちゃんの名前が紅美鈴に



人の死と吸血鬼の生

 

 

見習いコックちゃんがホン・メイリンになってから二年。

スカーレット海賊団の航海開始からは実に35年が経過したことになる。

当時30代だったマロンやナヴィ、クックといった年長組はすでに60代を超え、儚き人の生、寿命の終わりも見えてきている。

 

一つ救いがあるとすれば、スカーレット海賊団のクルーは皆、年をとっても若々しいということだろう。

ラフテルでは平均寿命はだいたい60歳ほどだけど、それを超えてクルーは元気だ。

この原因をナヴィと一緒に調査したところ、覇気が関係しているみたい。

以前の研究でも覇気は生命力の発露だと結論付けられていたけど、その説がさらに補強された形になる。

生命力そのものである覇気は使い過ぎれば命に関わるけど、それをコントロールする術を身に着けることは寿命を延ばすことのみならず、身体の老化を抑えることもできるようだ。

そのおかげか、もうおじいちゃんの年齢に達しているマロンたちも見た目は壮年の男性で老化がとまっているし、剣技の冴えも衰えず、ボケが始まってもいない。

 

……それでもやっぱり人間の限界はあるようで、つい先日クルーの一人が老衰で逝ってしまった。

マロンたちと同年代だった彼は、航海開始からの初期メンバーの一人で、いままでずっとともに過ごしてきた仲間だった。

葬儀はサンタマリア号でしめやかに行われ、遺体はラフテルに住む息子夫婦のもとへと送った。

 

逃れられぬ死を身近に感じ空気がどんよりとしてしまったスカーレット海賊団に活を入れたのは、クルーの中で最年少、若干17歳のメイリンだった。

彼女は持ち前の明るさと笑顔と鈴を転がすような美しい声で皆を鼓舞し、おいしい料理でみなを元気にしていった。

私もかなり落ち込んじゃっていたから、メイリンには大分助けられたかな。

 

 

そんなこんなの航海。

でも、始まりがあれば終わりもあるのは、人生だけじゃなく、この航海もそうだったのだ。

 

目の前にそびえたつ赤い壁。

それは果てしなく左右に延びていて吸血鬼の視力をもってしても終わりは見えない。

上方もまた、雲の中まで大陸が延びている。

まごうことなき赤い土の大陸(レッドライン)だ。

 

「ナヴィ、方角は」

 

「レッドラインは我らの北西にあります」

 

「じゃあ、やっぱりあの向こうにラフテルがあるんだね……」

 

私が航海を始める前に見に行った、ラフテルの南東にあったレッドライン。

私は今それを、反対側から見ているわけだ。

 

つまりこれで、世界一周を達成したことになる。

もとは世界中を巡るという漠然とした目的で始められた航海だったけど、これで一つの区切りがついたのだろう。

 

この日はそれから一日中宴会騒ぎだった。

30年以上に及ぶ長い航海の、一つの結果が達成されたのだから、それはもう大騒ぎ。

 

……ただ、私は楽しかった夢から突然醒めたような気分になって、あまりはしゃげなかった。

 

 

とはいえ落ち込んでいるわけにもいかない。

私は船長なのだから、これからのことを考えなきゃならない。

まず、航海を続けるかどうか。

このまま大陸をぶち抜いてラフテルに帰るというのも一つの選択肢だ。

かなりの年になったマロンやナヴィ、クックには故郷へ錦を飾るという栄誉があってもいいだろうと思う。

航海を続けるにしたって、来た道を戻るのか、カームベルト内の行きでは通らなかった道を通って帰るのか、カームベルトの外に出て外洋を探索するのか、色々と選択肢は多い。

 

さて、どうしよう。

 

 

 

 

最近、船長――フラン様の元気がありません。

原因は分かりきっていますが。

私の師父――クックさんの死。

そして、副船長――マロンさん、そしてその妻、ルミャさんの死です。

 

 

私、(ホン)美鈴(メイリン)がスカーレット海賊団の一員になってから10年目の年に、私たちは赤い大陸(レッドライン)という地点までたどり着き、そこで世界を一周するという偉業を達成しました。

私は航海当初からのクルーではありませんが、それでも自分が所属している海賊団が、世界でまだ誰も成し遂げたことがないことを達成した、という連帯感、一体感、そんなものに酔いしれました。

それは他のクルーの皆さんも同じで、各地で新しくクルーになった人たちもおおいに騒いでいました。

でも、今にして思えばそのころからフラン様はどこか元気がなかったようにも感じます。

 

決定的になったのはそれから三年後、我が師父――クックさんの死去。

世界一周を遂げた後私たちスカーレット海賊団は、凪の帯(カームベルト)を逆走し、来た海路とは別のルートでラフテルまで戻ることになりました。

その道中、師父が船上で息を引き取ったのです。

死因は老衰で、死の一か月前には既に明確に自分の死期が分かっていたそうです。

 

フラン様は師父に、延命をするかどうかを問いかけました。

人智を超越したフラン様の御力をもってすれば人の寿命を延ばすことなど片手間でできること。

もしも師父が望まれるなら、フラン様はすぐにでもそうしたでしょう。

 

――しかし、師父は「人として生きた。ならば人として死にたい」と、その提案を断りました。

……正直なところ、私としては師父にもっと長く生きてほしかった。

師父は私にとって人生を変えてくれた人で、父親のような人でもあり、料理の師匠であり、人生の先生であり……とにかくもう、言葉で表すのが大変なくらい大事な人だった。

だからそう、もっと長く生きて、もっといろいろなことを私に教えてほしかった。

 

ただ、師父が死を望むなら、私には止める手段はなにも残されてはいませんでした。

 

師父は最期の一か月、そのほとんどを私のために費やしてくれました。

今まで教えられなかった武術の秘伝、料理の極意、他にもたくさんのことを叩き込まれ。

それは私の短い人生の中でも特に濃密で充実した、けれどどこか寂しさを覚える時間。

師父が一つ私に教えるごとに、師父の“気”が小さくなっていくのが感じられ。

それは師父が自身の存在を私のために削っているようで、どこか、やるせなく。

 

師父は最期に一品、料理を作り、それをフラン様とお二人で食し、そのあと静かに息を引き取りました。

その日から私は、スカーレット海賊団で唯一の料理人になりました。

 

「美鈴はさ、泣かないの?」

 

「……涙は当の昔に、枯れ果ててしまいまして」

 

師父がなくなった夜、私はフラン様の御部屋でお酒を酌み交わしていました。

 

「悲しいです、とっても。胸が張り裂けそうなくらい辛いです。……でも、師父ならそんな時こそ笑えって、言うんじゃないかなって思います」

 

「そうだねぇ。クックなら「何を腑抜けた面しとる!」って根性を注入してくれそうだね」

 

「うう、師父のしごきは勘弁です」

 

もっとも、もしももう一度師父に会えるのならばいくらでもしごいてほしいところではありますが。

 

「わかっては、いたことなんだけどね。私は吸血鬼で、神様で、みんなとは違うから。同じ時間に生きることはできないんだって、分かってはいたんだけど」

 

「……フラン様」

 

「それでもやっぱり、悲しいものは、悲しいんだよね」

 

そう呟くフラン様は今にも空気に溶けてしまいそうなほど儚くて。

私はかける言葉が見つからなくて。

自分の無力さに、ぎゅっとこぶしを握り締めることしか、できませんでした。

 

 

そして、不幸は重なるもので。

師父の死から数年後、今度は副船長――マロンさんが寿命を迎えました。

本人の見立てでは、あと一年の命。

 

いえ、実のところマロンさんは類稀なる熟練の覇気使い、本当は師父が亡くなる前から自分の寿命のことについては察していたそうです。

しかし、そのことはフラン様には報告せず、妻であるルミャさんにだけ伝えていたそうです。

それは、師父の死と間を開けることでフラン様の心労を少しでも減らすため。

実際、師父の死と共にマロンさんの寿命のことも聞いていたら、フラン様は相当心に負荷を負っていたでしょう。

 

そして、マロンさんとルミャさんは、一つの大きな決断をしていました。

まず、マロンさんは老衰で死ぬことを良しとしませんでした。

それは彼の言う、「ロマン道」――私にはいまいち理解しきれないものです――に反すること。

死ぬときまでロマンを追い求めたい、というのがマロンさんの望みでした。

故に彼は自身の愛刀に残りの覇気、すなわち生命力をすべて注ぎ込んで人生の集大成としたい、と願いました。

 

フラン様ははじめその願いを聞いたとき、決していい顔はしませんでした。

それは残り少ない寿命をすり減らすことを意味しますから。

恐らくクルーの中で誰よりもフラン様と親交が深かった副船長のマロンさん。

フラン様はおそらく、師父を喪ったときよりも悲しまれた事でしょう。

 

それでも、最後にはフラン様も首を縦に振りました。

――まぁ、そういうところがマロンだもんね、と苦笑して。

 

結果から言えば、マロンさんは驚くほどあっさりと亡くなりました。

残りの寿命をフラン様に伝えた、そのわずか三日後には旅立たれたのです。

なんというか、彼の人柄が伝わるような、カラッとした最期でした。

私自身、あまり悲しさというものを感じませんでした。

あれほど元気に笑って逝かれては、悲しむに悲しめません。

 

そして、ルミャさん。

マロンさんの妻である彼女、エクスナー・ルミニアは純粋な人間ではありません。

かつて死に瀕する重傷を負い、その治療の際にフラン様の御力を受けて肉体が変質したのだと言います。

そのせいでルミャさんの寿命は普通の人間とは比べ物になりません。

恐らく、あと数百年は確実に生きるでしょう。

 

そんなルミャさんは、マロンさんの寿命がもうないことを聞いてから数年、ずっと考え抜いて一つの大きな決断をしていました。

――それは、マロンさんと共に死ぬこと。

想い人のいない世界で永い刻を過ごすことに不安を抱き、せめて共に逝きたいという願いでした。

 

これにはフラン様とマロンさん、お二方ともが反対しました。

しかし、ルミャさんの決意は固く、決して引こうとはしませんでした。

結果、折れたのはフラン様とマロンさん。

フラン様は「ほんとに夫婦そろって頑固なんだから……」と、マロンさんはそこまで妻に思われていたことに嬉しさを感じると同時に、彼女の寿命を奪ってしまうことに対して罪悪感を抱く、複雑そうな表情をしていました。

 

ルミャさん自身、子供たちを置いて逝くことには相当悩んだそうです。

夫の遺した子供の成長をラフテルで見守る、それもまた一つの選択肢。

しかし、それでも死を選んだのには、永い刻を生きることに対する忌避感があったそうです。

 

彼女に限らずラフテルの出身者というのは皆フラン様を信仰しています。

それは幼少からそう教わる事でもあり、ラフテルの成り立ちや現状を知れば知る程心からの信仰を捧げたくなります。

ラフテルで生まれ育ったわけではない私ですら、フラン様を尊く思う気持ちはあります。

そんな信者の一人、ルミャさんは自分の存在が人間よりも吸血鬼(フランさま)に近づいてしまったことに対して常々悩んでいたと言います。

神との同一化願望は誰しも持っています。

それは少しなりともフラン様に近しくなれる悪魔の実がラフテルでは貴重品として取引されることからも分かるでしょう。

しかし、ルミャさんはそれ以上に永い刻を過ごして、自身の精神が変容することを恐れたそうです。

永い刻の中でフランさまに近づいていくことで価値観が変わり、フラン様の事を大切に思えなくなったらどうしよう、という思い。

正直なところ、私からすればよくわからない思いです。

しかし、実際に人外に近づいてしまったルミャさんにとっては深刻な悩みだったようで、フラン様とマロンさんに胸の内を吐露する際には泣かれていました。

あくまでも彼女の中ではフラン様は仰ぎ見るべき存在でなければならない、ということなのでしょう。

まぁとにかく、ルミャさんもマロンさんと最期を共にすることになったのです。

 

マロンさんとルミャさんの最期は、マロンさんの愛刀にすべての覇気を注ぎ込んで死ぬというモノでした。

彼が生涯愛用した刀。

その刀はかつてカープさん(私は出会ったことがありませんが、スカーレット海賊団の船大工兼鍛冶師だそうです)がフラン様の協力のもと打ったものだそうです。

身の丈ほどもある大剣で大きく飛び出た鍔が特徴的、そのシルエットは十字架のようにも見えます。

私も何度か手合わせさせていただきましたが、大きく速く重く、とても正面から受け止められるような代物ではありませんでした。

加えてその切れ味はといえば、岩をバターのように切り裂くのですからたまりません。

そのマロンさんの愛刀には銘がありません。

なんでも、フラン様がおよそ日本刀に見えないその刀を刀と認めなかったことが原因だそうです。

ですから普段は無銘剣だの、十字架だのと呼ばれていました。

 

刀に覇気を込めるところは、私も立ち会わさせていただきました。

まぁ、立ち会うというよりは死を前にしたマロンさんとルミャさんのお世話をする雑用係として傍にいたのですけど。

 

マロンさんの覇気は死の影が見えているというのに、膨大かつ研ぎ澄まされていてとても力強いものでした。

ルミャさんの方は寿命が近いわけでもないので普段通りのものでしたが。

 

お二人は半日の時をかけてその身の覇気をすべて十字架に込めました。

覇気の色は普通無色ですが、強い意志によって各種の特性を帯びた色に変化させることができます。

お二人の覇気が染まった色は、漆黒。

なるほど、さすがヤミヤミの実の能力者のルミャさんと、長年連れ添ってきた夫なだけあります。

その覇気の闇は、闇よりも闇らしく、すべてを吸い込む漆黒の色をしていました。

 

刀身が黒く染まっていくと同時に、マロンさんとルミャさんからは色味が薄れていきました。

黒かった髪は白くなり、肌からは血の気が引いてきます。

それは、生命力である覇気を注ぎ込んでいることによる体への影響でした。

……やがて、すべての覇気を込め終えた時には、お二人は実年齢相応の老人の姿になっていました。

いままでが覇気によって若さを保っていただけだったということなのでしょう。

 

最期に、フラン様は冥土の土産としてお二人に刀の銘を贈られました。

闇色の十字架、その銘を “夜” 。

吸血鬼の象徴である「夜」の名を贈られたことは、きっとフラン様にとっての最上級の贈り物だったのでしょう。

また、「夜」はマロンさんの遺言で、「当代でもっとも剣技が優れる者に託す」とされました。

何も言わなければ恐らくは、ラフテルで国宝として飾られるだけの存在になっていたでしょうから、刀である「夜」にとってはこれで良かったのかもしれません。

 

 

そうして。

 

「俺はあなたに出会えたことが、あなたの船で副船長になれたことが、人生で一番のロマンだった。俺に夢を見させてくれて、ありがとう、船長」

 

「フラン様には私の心と体を二度にわたって救っていただきました。心から感謝しています。闇の中の私にとって、あなたは光でした。心よりお慕いしております。――マロンの次に、ですけど」

 

マロンさんはきりっとカッコよく、ルミャさんはどこかお茶目に、そう言い遺してこの世を去りました。

 

 

私は彼らの死を汚したいとは思っていませんが――はっきりいって、私にはお二人の気持ちが全く分かりませんでしたし、納得もできませんでした。

加えて言えば、その点においては師父もそうです。

私はスカーレット海賊団の一員としてだけでなく、個人的にも師父やマロンさん、ルミャさんのことは好いていました。

皆とてもいい人たちばかりで、控えめに言って大好きです。

しかし、この件についてだけは、私は彼らを憎んですらいました。

 

なぜ、彼らはフラン様をおいて去ることができたのでしょう。

寿命は人の世の常――ええ、確かにそうかもしれません。

しかし、それを覆す手段がすぐそばにあるのに、自然の摂理に従うことに何の意味があるのでしょう。

ああ、ああ、彼らにとってはきっと満足の行く最期だったのでしょう。

だけれども、私には、――涙を流すフラン様の御姿を目にしてしまった私には、そんなことはできそうにないのです。

私は、今目の前に広がる光景を、師父に、マロンさんに、ルミャさんに、見せてやりたい、見せつけてやりたい。

声を殺して嗚咽を漏らす、フラン様の儚い後ろ姿を。

――きっと私は、一生忘れることはない。

 

ならば、私は……せめて、私だけでも――。

 

 

 

 

クックと、マロンと、ルミャが死んだ。

最古参のメンバーだっただけに悲しみもひとしおで、しばらくは元気が出なかった。

特にマロンとルミャは、寿命がまだ残っていたのに、残りの寿命を覇気って形で剣に込めて死んじゃって、ほんとにもう気落ちした。

勿論当人たちにそんな気はないんだろうけど、私と一緒にいることを拒否されたような気がして、どうしても。

 

ちなみにその時、泣きながら意識を失ってたみたいで、気づいたらメイリンに後ろから抱きしめられて頭を撫でられていた。

……ちょっと恥ずかしくてメイリンには私が起きていたことは話してないけど、あれは本当にありがたかった。

こんな風にしてくれる人なんて今までいなかったから、なんか安心したというか、子供に戻ったような気がして心の底からほっとした。

悲しみで若干狂気のコントロールができなくなっていたのが、あれのおかげですっかり元通りになったしね。

……700歳以上年下の子に母性感じちゃう当たり終わってる気がしなくもないけど。

 

まぁ、生も死も人の営み。

700年以上見てきた光景だったから、耐性はついていたと思う。

今回は、あまりにも入れ込み過ぎちゃったから、反動が大きかっただけ。

それに、航海はそんなことがあっても続いていく。

私は船長なんだから、しっかりしなくちゃね。

 

そういえばマロンとルミャの、ある意味では形見というか遺品になった剣。

流石衰えたとはいえ今まで私の出会った中では人類最強の剣士と私の妖力が混ざった半妖怪の覇気を死に至るまで込めただけあって、できあがった剣は文句なしに世界最高の剣になっていた。

実は名前のなかったこの剣、せっかくだし名前を付けてあげることにした。

漆黒の刀身に似合うように、銘は“夜”。

まぁ夜って吸血鬼(わたし)の象徴みたいなもので、この剣なんか十字架に見えるから皮肉っちゃ皮肉な名前かも。

私は別に十字架苦手なわけではないけど。

 

ただこの剣、性能に比して魔剣の類になってるんだよね。

死の間際の覇気と、純粋じゃないとはいえ妖力が込められてるわけで、持ってるだけで精神に変調をきたすようになってる気がする。

この場合は、なんだろう、マロンの遺志がこもってるから持ってるとロマンを追い求めずにはいられなくなったり?

もしくはルミャの性質を受け継いで使用者が黒とか闇とか好きになるとか?

……加えて私が、「当代で最も剣技の優れた人間のもとに行く」ように魔法かけたから多分呪いの人形よろしく何度捨てても手元に戻ってくるようになってるんだよね。

魔剣というか呪剣というか。

本音を言えばラフテルの遺族のもとにあげたい気もするんだけど、本人の遺志だからね……。

 

「ボ、ボス……これなんとかしてくれ……」

 

あ、噂をすれば。

声をかけてきたのはラン。

そう、今現在の「夜」の所有者はランなのである。

ランの得物は槍なんだけど、人並み以上に剣も使える。

というより、剣に選ばれたわけだから人並み以上どころか当代では最強の剣士なわけだ。

クルーの中じゃマロンとランが突出して強かったもんなぁ。

そんなわけで今彼は「夜」に付きまとわれているのだった。

 

「どうにもできないって言ったでしょ。他のクルーを自分以上の強い剣士に育て上げればいいんじゃない?」

 

「なんで自分より強い奴を育てなきゃなんねーんだよ!」

 

「剣で強くなればいいんだって。それでもランの槍には敵わないでしょ?」

 

「そ、そりゃそうだけどよ……まぁ俺の槍は最強だからな」

 

うーん、ちょろい。

ランももう50代になってるはずなのに若々しいというか頭が幼いというか……。

元気なのはいいことだけど、年齢を重ねた落ち着きが全く見られないのはなんでだろう……。

ちなみにランがこんなんだから次期副船長は一番強いランではなく、一番統率力のあるウェンに決まった。

 

それにしても、ランとっては「片思い相手(ルミャ)」と「その夫(マロン)」の遺品がいつまでたっても付きまとってくるわけで、不憫というかなんというか。

 

 

そういえば自分でかけておいてなんだけど、あの魔法ってどういう仕組みで「世界で一番強い剣士」を探し当ててるんだろう。

原理も分からないまま魔方式を構築するとかわたし結構凄いことやってる気がしてきた。

うーん、ちょっと力入れて魔法の研究してみようかな。

目標があるのはいいことだよね、多分。

 

 

 






・覇気でアンチエイジング
ワンピの老人キャラといえばレイリー・白ひげ・ニョン婆あたりでしょうか。
みんな元気なので設定捏造。
ドクトリーヌ(Dr.くれは)も覇気使えるんじゃないかな……。
追記:調べたらロジャー(77)レイリー(78)ガープ(78)センゴク(79)おつる(76)だった。
こんなに年いってたんですね……。

・黒刀「夜」
カープが打った初登場時からその存在感を隠そうともしていなかった。
結果感想で一発でモロバレしていた剣。
形が十字架の様という点だけで特定されてしまう。
原作でミホークがなぜ「世界最強の剣士」と呼ばれているのかわかりませんが、本作中は「夜」を持っているから、で説明をつけます。

・「よしよし」してくれるメイリン
かつてラフテルにいた巫女よろしくフランへの思いが一定以上になると母性に転換される模様。


次話は「鈴の少女」編最終話です。
そのあとは大規模な戦闘回予定。
本気のフランちゃんが暴れるはず。

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