デート・ア・ライブ 邪霊と漆黒のファンアジア Remake   作:燐2

2 / 3
ヒィッハー新鮮な投下だぜー


それは災禍

 第二級(・・・)特殊災害指定生命体『精霊』と呼ばれる存在がいる。出現と同時に空間の地震と言われる空間震、『精霊』の種類にもよるが、それは消しゴムで消したような圧倒的破壊力を前に周囲の大地は瞬く間に粉砕し、周囲一帯はそこに存在したことが夢であったかのように、消し去る。それは人類にとって、この星に生きる者としていつ起きても可笑しくない悪魔の悪戯の如き災害、いつ、何時に、どこで起きるのか全く不明にも関わらず、空間震自体は『精霊』がこちら側に来た時の余波でしかない。唯一、起きる直前の観測には成功することで、避難自体は速やかに行われることで人的被害は大きく下がっているだろう。しかし、人類にとって『精霊』は理不尽の塊、悪魔の如き化物であることは変わりない、例え人の形をしていようが、人智を超えた力を持つ『精霊』に対する有効的な対処方法は未だに確立しておらず、あくまで対抗又は時間稼ぎが出来る程度の人間以上化物以下の武器を手にすることは出来ているが、未だに『精霊』を討伐することは夢のまた夢、それでも、人類は清浄な世界に戻る為に進歩しつづけていた。

 

 走っているのか、歩いているのか分からない程の速さで、それでも微かな希望の光の先に向かうその先に居たのは、人類の努力を嘲笑うかのような新たな災厄を超えた災禍(・・)だった。

 

 

 第一級(・・・)特殊災害指定生命体『邪霊』それが現れる前までは。

 それは、脅威の戦闘力で一国を一夜で滅ぼしそして偶然そこに出現した精霊すらも瀕死の状態追い込んだ。

 それは、絶望と言う恐怖を平等に振り回す怪物だった。

 それは、絶対な最凶の存在で何物にも抗うことが出来ない悪夢を見せる本当の悪魔だった。

 出現時は『精霊』より遥かに広範囲の空間震を引き起こし、更に確認されるかぎり、全ての『邪霊』は好戦的であること。『精霊』には良くも悪くもあちらから攻撃してすることが少ない『精霊』はいるが、知られている『邪霊』全てはこちらを確認した後、積極的に攻撃してくる。初めて『精霊』が確認された初めての空間震、ユーラシア大陸のド真ん中を一夜でくりぬいたような、今でも抜かれたことはない超大規模空間震から『邪霊』は確認され、最初は御伽噺に出てくるような存在か記録した媒体が故障していたのか疑われる程、『邪霊』の出現率は低いもののの、一度出現してしまった場合の被害は『精霊』の比ではない。

 そしてここ、一度空間震によって焼野原になり、復興仕立ての天宮市周辺に空間震が多発していた。誰もが不安にさせるのが、出てくるのがもし『精霊』ではなく『邪霊』で合ったのなら、誰もが口に出さずと理解していた災禍の存在は今日、なにもない平日に大規模な破壊と共に現れた。

「―――――つまらない。つまらないよ。ねぇ、ねぇ、もっと私を楽しませてよ」

 それはまるで童話で描かれそうなお姫様。高級感あふれるフリルが黒い光の膜によって形成され、穢れを知らない純白を染める様に見える。だが、服装自体はまるでバラバラ、左は裾が長く、右は逆に短く、スカートは右は短く、逆に左側は深く、まるで欠けたパズルような姿。一見すればまだ十歳になったばかりの笑顔が似合う可愛らしい女の子、しかし彼女は『邪霊』とされている恐怖の体現者。それに立ち向かった蛮勇の者のほとんどは自身の流した血池に沈んでいる。出血量からあと数分で適切な処置を施さない限りは確実に死ぬだろう。

「貴方達、<アリス>達の様な存在を殺す為の存在なんでしょ?<アリス>は知っているよ?貴方達が名付けた<アリス>は、悪い事をする悪魔だって、でもいいのコレ凄く楽しいの、だから、私もっと、も――――と悪い子になっちゃうの、狂っちゃうほど楽しいから、ね。だから早く立って、喋るだけの木偶人形なんて<アリス>は嫌いよ」

 身の丈を超える。二メートルはあろうかと巨大な鎌の杖に座り、体中を切り刻まれ、或いは魔力による攻撃に身を焦がされ地面に倒れ身動き一つもしない。自身を<アリス>と呼んだ少女は口を詰まらなさそうにへの字に曲げた。まるで魔女の空飛ぶ箒のように大鎌のように乗った少女は、ゆっくりと地面で血を吐きながら、それでもその瞳に燃えるような意思を宿した銀色の髪の少女。<アリス>にとって、今まで一番遊んで楽しかった人たちの中で上位に占める人材を見下ろす。

「ねぇ、あなた、命より大事なモノ、あるかしら?」

「ぐっ、げほ……!!」

 その一言に彼女――――鳶一折紙に脳裏は炎が全てを焼き尽くす。そんな地獄の世界の中で見た希望の光に、記憶の中に目の前の少女が現れた(・・・・・・・・・・・・・・・)

「クスクスクス、すごいわ。まるで白馬に乗った王子様みたい、だからその少年を貴方の前に屍を晒してみてみたい。そうしたら、もっともっと、私を楽しませてくれそうだから」

「――――!――――!!」

 獣の如き咆哮を上げながら、体を持ち上げようとしている。息をするだけで体中を雷撃のような激痛が走り、開いていた傷から流血が更に激しくなり、体がそれ以上すれば死ぬと危険信号を鳴らすが、構う物かと彼女は立ち上がろうとした。そのまるで魔王に立ち向かう勇者の姿に、<アリス>は応援するように手を鳴らした。現実で、彼女の意識の中で――――

「がんばれ☆」『がんばれ☆』「ガンバレ☆」『ガンバレ☆』

 二人の<アリス>は踊るように煽るように、折紙の周囲を回って回って回って、折紙は突如背中に衝撃が走った感覚と共に意識を失った。辛うじて意識がある対精霊部隊(アンチ・スピリット・チーム)の隊員も同じように体の至る所に衝撃が走った。それに痛みは無かった、むしろ衝撃が走った部分は心地よい温かさがあり、それが全身を浸透して、痛みと共に目に見える速さで傷口が塞がっていく。

「――――回復弾、なんて使うの久しぶりだなぁ。あ、それあくまで傷を防ぐためだから、造血作用なんてないから、この場から生きて帰れたらとっとと輸血をオススメするぜ」

 瓦礫を上を歩く黒い影、本日が晴天なのもあり、砂煙が舞っていても、その星と月がない夜空のように漆黒のコートは非常に目立った。現れたのは女性所か、男性すら思わず振り向く程に整った青年だった。目に髪が入りそうで入らない絶妙な長さの黒交じりの銀髪で、その双眸は蒼と紅のオッドアイ、どこか野性味を感じる不敵な笑みで『邪霊』を目指して足を進める。

「さてと、お前が邪霊ちゃんかな?」

 それは、激烈な赤、灰塵の黒、暴力的な攻撃性を見せる回転式拳銃(リボルバー)

 それは、鮮烈な白、清浄な蒼、幻想的な異質性を見せる自動式拳銃(オートマチック)

 宇宙に存在する人が理解していけない混沌なる者、恐るべき恐怖の神格を宿した暴炎にして赫炎のイォマグヌット、不浄にして極寒のアフーム=ザー。その二柱の力を納めた双銃から回復弾の入ったマガジンとは別の殺傷能力が高い弾丸が入ったマガジンと入れ替えながら、静かに、されど圧倒的に、<アリス>に銃口を向けた。

「――――――わぁ」

 <アリス>は、目を銀河のようにキラキラと輝かせた。例え人外の、奇跡の如き力を手に入れた者であっても人間であっても、所詮人間だ。体中改造され最早同じような者へと変わっているような女性を戦った時も非常に楽しかったが所詮猿の真似事、時間が経つにつれて飽きてきてしまった。同じだが少し違う『精霊』とも殺し合ったことが合ったが不利と感じると直ぐに逃げられ詰まらなかった。

 しかし、目の前の男は完全な未知。<アリス>が全く知らない理解できない底なし沼のように、実力が図れない。男が持っている二つの銃、恐らくその中身は<アリス>すら一瞬で踏みつぶされそうな世界の違う事を直感で理解した。

「そうだよ私は邪霊だよ!だから、おにーさん、<アリス>と遊んで!!」

 それなりに威圧感を出しているのだが、むしろ相手にとって爆薬に火をつけるような行動だったことに彼はため息一つ、少しでも隙を見せたら躊躇なく首と体が離れ離れになる<アリス>の狂気じみた殺し合いの誘いに、隣で倒れている<アリス>と先ほどまで。戦っていたであろう人物に向かって口を開く。

「……これから南南東数十キロ、東京湾って所か?そこになんとか誘導するから、ルートはこんな感じで行くから救援部隊とそのルート上に住んでそうな住民を退避させておいてくれ、オーケー?」

「お、お前は……!」

 深い袖から微かに見えた機械端末から空中に投影された周辺の地域データ、並びに<アリス>との戦闘行為における被害を最低限まで抑える為に東京湾―――海上での戦闘、そして通過ルートが事細かく表示されたものだった。それを見た部隊隊長である日下部燎子一尉は目を開いて驚愕し、漆黒の男は振り向いて微かな笑みを浮かべ

「あいつなら、こうやっていただろうなから、だから頼むぜ」

 『邪霊』と男の姿が同時に消えた。同時に雷鳴のような轟音と共に体が持ち上げられそうな衝撃破が彼女達を襲った。今にも空に連れ去られそうにながらも、瓦礫に捕まって、手を耳に取り付けられた無線に必死に手を伸ばして日下部燎子一尉は本部に連絡を入れた。上空で行われる禍々しい氷炎の双銃を構えた奴と<アリス>の大鎌にへ繰り広げられるドッグファイトをその双眸に焼き付けながら。

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。