ストライクウィッチーズ-1ッ目巨人の優しい嘘吐き- 作:Thunder2Eila
元々は撃墜数の多い戦闘機パイロットを指していた。
10機以上が基準だったり、5機以上が基準だったり。
俺達の時代まで続いた基準は5機だった。
そして、皆がエースになろうとした。
そして、散った。
俺はたまたま特殊部隊なんて辺鄙なところに入ったから前線なんて言うのは知らない。
だから、同期達が散っていった戦場を知らない。
ただ、情報を見ただけ。
隣で死んでいく仲間を見るなんて俺には想像出来ない。
ルビコン作戦でガルシアやミーシャや隊長が目の前で死んだ時の事は今でも思い出してしまうけど、俺がいた戦場はコロニーの中だ。
ソロモンやア・バオア・クーに行ったアイツらは宇宙で、無重力で、ビームに焼かれたり、爆発に巻き込まれたり、まともに跡が残っているとは思えない。
だから、俺にはアイツら、同期の辛さは想像出来ない。
俺は、あと1機落とせばエースだなんて嘘を吐いた。
俺だって憧れて無かったわけじゃない。
でも、今だから言える。
エースの称号は強さの証だけじゃない、守れる強さを持っている自信にもなるんだって。
俺はそう思う。
アイツとの結果で俺はエースになれたのかな。
-1944年7月25日 ストライクウィッチーズ基地・食堂-
ここにきてもうすぐ一週間以上が経った。
生活リズムはハイスクールの頃と変わりない。
天然の目覚ましは気持ちよく朝を迎えさせてくれるし、芳佳さんの作る飯は美味い。
毎日ある坂本さんの訓練もなんとかついていけている。
サイクロプス隊に入るまでに並には鍛えていた俺でも大変なのに軍経験の芳佳さんや新人だっていうビショップさんは凄いなあ。
俺と同じ訓練にちゃんとついてきてるし。
今日もまた訓練だな、なんて考えていたらふと箸の進まないバルクホルン大尉が目に入る。
いつもの大尉なら隣のハルトマンさんにガミガミと言いながらもう食べ終わっても良さそうな頃だ。
まあ隊長とハルトマンさんがいるんだ、俺が出なくても良いだろ。
-同日 ストライクウィッチーズ基地・滑走路-
今日も基礎体力作りのランニング。
ここは海が近いからか湿度が高くてすぐに汗をかく。
地球に降下した事のある人によると、地球の北の方は普通寒いけど欧州は海流の影響で少し暖かいらしい。
緯度が下がると更に蒸し暑くて大変らしい。
という事はここはまだここはマシなのか。
今はそう思うしかない。
そんな事を考えていたらペースが落ちているみたいだ、坂本さんからヤジが飛んできている。
慌ててペースを戻しつつ空からの音に顔を上げる。
ハルトマンさんと大尉の飛行訓練のようだ。
まるで地面を走るように空を自由に飛ぶ2人。
跡を引く雲が青い空にはよく映える。
俺もこんな時代に生まれたら飛行機乗りを目指したかな。
気付けば自分の足は止まっていた。
それに気が付いて急いで走り出す。
坂本さんから竹刀の一太刀を食らわなかったのはいつの間にか坂本さんのところに来ていた隊長のお陰だった。
-同日 同場所・sideミーナ中佐-
少し前からおかしくなったトゥルーデの様子。
今朝も何も無いとは言っていたけど誰から見ても不自然で。
宮藤さんやバーニィさんが新しく入ってきた事で手一杯のこの時期に貴女が不調なんて、正直なところ勘弁願いたいわ。
隊長である以上、私は貴女をサポートするけれど貴女が立ち直ろうとしなければどうにもならない。
貴女はいつまで1人で背負い込むつもりなの?
あの日の事を、妹さんのことを。
「ミーナ、どうした?何かあったのか?」
ミーナ「あ、美緒...。トゥルーデの訓練の様子、どう思う?」
美緒「...乗れていないな」
ミーナ「えぇ、全体的に遅れがち。少し前からこんな感じなのよ、宮藤さんが来たあたりから」
美緒「宮藤が?仕方が無い、今度のシフトからは外しておくか」
ミーナ「えぇ、そうね。でも火力が減るのは痛いわね」
美緒「うむ...。宮藤か...。組ませてみるか..」
-同日 同場所・食堂-
俺はなんとか今日の訓練も乗り切り飯で腹を満たしたところだ。
隊長が少し待っていてくれと言うのでコーヒーブレイク。
そして、隊長はやっと食堂へと戻ってきた。
ミーナ「バーナードさん、これがこちらからの給与になります。今月分、というより半月分なのであまり多くは無いけどストライクウィッチーズの皆と同じだけの配給がされることになりました。無駄遣いは気を付けてくださいね?」
バーニィ「は、はい。ありがとうございます。でも、僕まで貰って良いんですか?」
ミーナ「ここは対ネウロイの最前線で私達は同じ部隊の仲間、それ以上に理由が必要かしら?」
バーニィ「わ、わかりました」
ミーナ「わかればよろしい。次に宮藤さんも、これが貴女の給与よ」
芳佳「ありがとうございます!でも、どうしてこんなに沢山貰えるんですか?それにさっきバルクホルンさんは受け取っていませんでしたけど...」
坂本「さっきミーナも言ったがここは最前線だ。ウィッチと言えどいつどうなるかは分からん。ならせめて、金の面だけでも不自由しないように、という上からの少ない気遣いだ」
芳佳「そういう理由のお金なら、私いらないなぁ..」
リーネ「そんな事言わないで、芳佳ちゃん。私もねそう思った事があったけど、何も自分で使うだけじゃなくて仕送りする事だって出来るんだよ?私のところは兄弟が多いから助かってるの」
芳佳「そっかぁ、仕送りかぁ。なら、私もお母さんや、お婆ちゃんに仕送りしよっと」
坂本「にしてもミーナ、よく上からバーニィの分まで給与が出たんだな」
ミーナ「(出る訳ないわ、まだ彼の事は上には言ってないんだから)」ボソッ
坂本「じゃあまさか...」
ミーナ「私は構わないわ、私には仕送りをする所すらないから...。彼には内緒で頼むわよ?」
なにやら隊長と坂本さんがコソコソと喋っている様に見えたが何かあるのだろう。
俺は金の為に戦っていた訳じゃなかったし今もそうだ。
ジオンの時は俺達が死ねば母さんや国が危ないっていう思いだけだった。
それに俺達は学徒兵だ、生き延びてもそんなに貰える事も無かっただろう。
もし、父さんや母さんがいたら仕送りだってできたのに、今この世界には居ないんだよな...。
あの戦争はどうなったんだろう。
父さんや母さん、アル、クリス。
みんなはどうなった?
ふと思い出してしまうとポツポツと止まらない。
俺はココに居ていいのか、金貰って、タダで飯食って、命懸けでネウロイと戦って...。
確かに元の世界に戻れたとしてもどうなるか分からないし戻れるかも分からない。
俺は何しているんだろう...。
しばらく不毛な思考は続き風呂の時間告げられるまで俺は今後の事まで考えていた。
少し間が空きました
第5話です
タイトルが今まで各原作タイトルをもじってったものだったんですけど(ひとつはオリジナル)6話でポケ戦の方が終わっちゃうんでポケ戦のタイトルは使えそうなら使うのスタンスで
この回(アニメ4話)ではバーニィにちょっとイケメンなベテランになって貰いますね(芳佳ちゃんにも頑張ってもらうけど
ブレイブウィッチーズが色々情報解禁で盛り上がってますがお家で録画出来ないんで知らないです()