ストライクウィッチーズ-1ッ目巨人の優しい嘘吐き-   作:Thunder2Eila

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男は女より強いっていうのには訳がある、と学徒動員された時の教官が言っていた。

本当は生物的に女の方が強いのだ。

だからその分お淑やかに、可愛らしく努めろ、強いというのは余裕をみせるものだから。

対して男は肉体を鍛え女に追いつけ、カッコだけでも強く見せろ、それが男の特権。

男らしく、女らしく、そういうのは嫌いだ。

男でも、女でも、護りたいものを護れるようになればいい。

それは力だけとは限らない、想いが力に勝てる訳でもない。

それに気付けた時、力とか強さが分かるんじゃないかな。

俺はまだ20年と生きてない、教官ほどの経験からものを言う事は出来ない。

でも、ウィッチという力を得たが為に故郷から飛び出し世界の命運を背負わされたこの少女達を見て、自分がもっと強くなれないか、とは思う。

俺と変わらない年齢の子もいるけど、彼女らはまだ子供だ。

ハイスクールにすら入れていないなんて、とても可哀想だと、俺は思う。

そう、あくまで主観だ。

彼女らにも彼女らの意志があるのだろう。

俺にはそれは分からない。

俺はこの世界の話を聞いた上でここストライクウィッチーズに協力するって決めたんだ。

だったらやるだけやってみるんだ、アイツと戦ったときみたいに。

今日は、出撃はあるだろうか。


第4話 蒼空を駆ける緑色の巨人

 

-1944年7月14日 ストライクウィッチーズ基地・基地付近の海岸-

 

自己紹介をしながら歩いてきた俺達は約15分ほどかけての下へたどり着いた。

隠蔽用に掛けていたカバーを剥がすと前の世界より小柄になった巨人は、それでもこの世界では十分な威圧感を放つサイズだった。

少しばかりの歓声と驚嘆の声を背中に、少し図に乗ってしまう。

ハッチオープン、海風はやはり機械によろしく無いようだ、整備兵の言っていたとおりだ。

ジェネレータを起動して機体に火が入る。

モノアイが独特の発光音を鳴らす。

地面が砂だということに気を付けながらザクを立たせる。

少し不安定だが、なんとか立った。

操縦系統にロックをかけてコックピットから地面に降りる、昇降用ワイヤーなんて訓練でも使わなかったなぁ。

そして、隊長らに囲まれ説明を急かされる。

 

バーニィ「コイツはMS-06FZ、通称がザク2改。2とか改って付いてるのは前の型があるって事なんだけど、俺も説明は受けてないんだ、機密だって。」

バルクホルン「じゃあどうしてこんな前線に敢えて新型を持ってきたんだ?旧型にしろこんな兵器は見たことも聞いたことも無い。普通旧型からテストするべきだろう」

バーニィ「えーっと...。ほら戦闘機や戦車って世代があるだろ?あれの都合で前の型は空中戦不向きだったんだよ。だからコイツが来たんじゃないかな、って俺は思うんだけど...」

シャーリー「って事はコイツ、空飛べるのか!どれくらいでるんだ?」

バーニィ「えっと、カタログスペックにはメインスラスターの出力が11,200kg、足元のサブスラスターが1000kgになってて3個と2個ついてる。こいつの重量は35.5tって書いてるから、こいつだけならレシプロ戦闘機の巡航速度くらいは出るんじゃないかな。基本歩かせてたしなあ」

シャーリー「うほー!こんなにデッカイのに500km/hも出るのか!」

ミーナ「それで、このザクの武装はどうなっているの?」

バーニィ「武装面は...。ビーm、じゃなくて魔弾装填型50mm機関銃マシンガンが1丁、50mmザクマシンガンが1丁、シュツルムファウスト発射装置が2本、ハンドグレネードが6個にヒートホークが1本、みたいだな。実弾の方は多分こっちで補給出来なさそうだから魔弾装填型だけしか使えそうにないなぁ、このシュツルムファウストも魔弾弾頭なのかぁ...。俺にどれだけの魔力があるかも分からないのになぁ..。」

バルクホルン「また変な話だ。なぜ補給も出来ない新型兵器に、特に男は魔力発現が無いというのに魔弾を使用する機関銃なんだ?それにハンドグレネードなんて使える機会は殆どないだろうに」

バーニィ「そこは俺に言われてもなぁ...。コイツ、元々スラスターペダルがあったところに変な筒があって、俺がここで目を覚ました時はそれに足突っ込んでたんだよ。で、投降するために出る時、足を抜いたらザクはジェネレータが止まった。だから、今も止まってるだろ?」

坂本「それってまさか...!」

ミーナ「多分ストライカーユニットの接続部分に似たようなものでしょう...。」

ハルトマン「それさあ、整備班に見てもらったらいいんじゃない?その方が早いでしょ」

ミーナ「確かに。でもその前に実際の稼働を見てみましょう。武装面も確認しておきたいので」

バーニィ「わ、分かりました」

シャーリー「なあなあ!お披露目の間、一緒に乗せてくれないか!」

バーニィ「お、俺は構わないけど...」

ミーナ「...機体評価要員として同乗を許可します」

 

いきなりシャーリーさんが乗り込んでくるとは..。

様々な嘘と言い訳を駆使してザクについての説明はとりあえず終える事ができた。

あのハルトマンって子は多分気付いたから助け舟を出してくれたのか..?

さっきも嘘を見抜かれてしまった。

まあ、終わった事は仕方ない、隊長と坂本さんの前でならまだしも、ほかの子達の前では気を付けなくちゃ。

武器の試射と言うことで滑走路へと向かう。

もうこの基地の兵士らにはコレ(ザク)の話は通っているらしく、高度制限付きで飛行を許可された。

スピーカーで機体から離れる様に警告、シャーリーさんにも操縦席近くできちんと掴まる様に指示する。

初期のザク2ならコックピットは広い、というか実質2個あったからなぁ。

実戦では2人乗りなんて無いからいいか。

足元の筒に足をはめ、ジェネレータ機動。

しばらく暖気する、と言うのは建前で。

久しぶり(に感じる)操縦に深呼吸をして緊張を抑える。

そして、足をグッと踏み込む、正確にはその感じだが。

ザクも少し腰を落とし踏ん張る様にして飛び上がる。

スラスターに無事点火、ダウンウォッシュで海岸の砂が砂嵐が起きたように舞う。

離れた、といっても十数mしか距離を空けていなかった部隊の皆は顔を手で覆っていた。

こちらは2秒かからず制限高度(500m)へと到達、シャーリーさんは思いの外なんともない様子だったから俺はびっくりだ。

どうやら推進剤を使うのではなくここでも魔法力。

ジェネレータ出力を補助にして魔法力をバーニア出力に変換。

俺がもつ限りコイツはずっと飛んでいられるようだ。

俺が色々計器を確認してる間、シャーリーさんもコックピットの中を舐めまわす様に見回していた。

機械に精通しているのか絶対に何かに手を伸ばす事をしなかったのが幸いだ。

その代わり、ハッチを開けてくれだの、私にも操縦させてくれだの、少しばかりうるさいとも思った。

そして、皆が驚き興奮し恐怖した武器の試射はまた別の時に。

その試射後、ザクはストライクウィッチーズ基地の格納庫(ハンガー)へと収納された。

斯くして、俺はこの部隊の一員として正式な配備、となった。

しかし、俺に休む暇は与えられなかった。

基地に鳴り響くサイレン。

放送で出撃するメンバーが知らされる。

だが、先発隊出撃後にネウロイが別方向からもう一体現れたと一報が入る。

俺は後発組として出撃待機と放送された。

待機場所と伝えられた場所へ向かうと何故か口論が聞こえる。

 

ミーナ「貴女はまだここへ来たばかりで、1度実戦に参加したとはいえ危険すぎます。それにリーネさんは実戦ではまだ足でまとい、という他ありません。2人の出撃は認められません」

芳佳「でもっ...!」

「(・×・)ムリダナ。そんな簡単に済むならストライクウィッチーズなんていらないカンナ」

リーネ「ぐっ...」

バーニィ「お、おいどうしたって口論なんてしてんだよ?」

ミーナ「バーニィさん...貴方にはバックアップで出撃してもらいます」

バーニィ「だったら、この子達も出撃させるべきじゃないのか?俺なんて殆ど武器ないようなもんなんだぜ。さっきの試射、見てたろ?」

ミーナ「この子達には早すぎます」

バーニィ「少なくとも俺よりかは早くないよ。隊長に食ってかかるだけの決意があるんだ。だったら、隊長が言う早すぎるっていう事も戦場で体験させた方が早いと思うぜ?」

ミーナ「貴方ねぇ...!」

バーニィ「俺もバックアップなんだ。数が多い方が良いしもしもの時はアレならちょっとやそっとじゃ落ちない、守ってやれるさ」

ミーナ「...。90秒で支度なさい」

芳佳・リーネ「はい!!」

ミーナ「バーナードさん、許されるような事では無い事は分かっていますね?」

バーニィ「生きていたら幾らでも罰は受けるさ、独房入りでもね」

 

隊長の意見は最もだ。

わざわざ隊員を死なせるような真似させたくないに決まってる。

でも、やってみなくちゃ分からない奴も沢山いるんだ。

訓練の時に調子に乗ってる奴らはそうやって教官から言われていた。

もしもの時はザクがあるんだ、俺が何とかしてやる。

1分後には格納庫でスタンバイ、待機組の全員が揃ってから発進。

隊長いわく敵ネウロイは目前に迫っているという。

基地から少しのところで構える。

通信から先に行き、戦闘する隊長と待機場所にいた子が苦戦するのが伝わる。

リーネさんが隣で大きなライフルを撃っているが当たっているようには見られない。

すると一際大きな水飛沫が上がる。

同時に隊長から入るこちらへの応援要請。

全てはこちらにかかっている。

だが一向にリーネさんの狙撃は当たらない。

 

バーニィ「リーネさん、大丈夫かい?落ち着いて狙うんだ」

リーネ「でも、飛ぶので必死で狙いがつけにくいんです!」

バーニィ「だったらザクの手のひらに、これで支える。芳佳さんは援護を!」

芳佳「はいっ!」

リーネ「(今は狙うことだけに集中出来る...あとはネウロイの未来位置を見定めて...そっか!)芳佳さん、私と同時に撃って!」

芳佳「分かった!」

リーネ「....、撃って!」

 

芳佳さんの弾を避けたネウロイがリーネさんの狙撃したところに吸い込まれる様に近付き、着弾。

素早いリロード、正確に狙撃された5発の弾丸は全てヒット。

その1発がネウロイの弱点(コア)を貫き、白い破片となって消えた。

芳佳さんとリーネさんは抱き合って喜び、隊長からは安堵の通信、坂本さんから先発隊の対処していたネウロイが消滅したという通信が入った。

俺は何も出来なかったけどあの2人は何かを掴めただろうか。

そうならば、この出撃には意味があったことになる。

俺もまだまだひよっこだけど頑張らなくちゃな。

こうしてこの世界で初めての実戦は終わった。

帰投後、罰則(2箱のジャガイモの皮剥き)が待っていたがそんな経験が無かった俺には、少し楽しかったのは秘密だ




第4話です
戦闘も紹介もと欲張って突っ込んだ結果がこれ..
今話は失敗作ですね..まあめげませんし反省しないですけど(おい
試射の話はいずれ幕間とでもして(幕間の意味違う気が
毎日更新とはなんだったのか(書き始めたのは昼
ただ毎日ここは開いているのでコメント頂けたらできるだけ早くお返事致します、きちんとしたコメントにはね
設定説明ページにも注釈しましたがとあるネウロイ戦様にこのザクはダウンサイジングしてあります
それに合わせ武器もダウンサイジングしてあります、つまりは口径なども調整してある、ということです
そしてみなさん...8/27,28は15時(だったかな?)よりAbemaTVでストライクウィッチーズ2一挙放送ですよ!
2期6話は見逃せないですよ!!!(エイラーニャ好き
8/28には劇場版もありますので是非ご覧あれ

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