ストライクウィッチーズ-1ッ目巨人の優しい嘘吐き-   作:Thunder2Eila

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第9話 夜間戦闘

第9話 夜間戦闘

 

 

夜、太陽は沈み、地上を照らすのは月明かりのみ。

月光は弱く、儚い。

 

視界は日中と比べて幾分も悪くなり、攻める側にも守る側にも重要な因子(ファクター)となる。

 

作戦を遂行した時に見た宇宙と同じだった。

 

吸い込まれそうな闇に散りばめられた星は遠近感を更になくさせる

 

宇宙に人類が進出してそのちっぽけさを更に痛感した、とは誰が言ったか。

 

俺はあの時(ルビコン作戦)を思い出す。

 

あの時、隊は俺のせいで全滅したと言って間違いじゃない。

 

そして、俺は全てから逃げ出そうとした。

 

けど、結局は逃げなかった。

 

守りたい存在がいたから?

 

アイツ(ガンダム)を倒したくなったから?

 

エースになりたかったから?

 

わからない…でも、護りたいモノ(アルやクリス)を助けたいと思って俺は動いた。

 

学徒兵として勤めを果たすとかじゃなく、俺はしなくちゃいけないと思って動いたんだ。

 

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-1944年 8月15日 ブリタニア上空・ju52/3m機内<side 坂本>

 

私は心底不機嫌だった。

突然501JFW(ストライクウィッチーズ)の直属上層部であるブリタニア空軍へ招集を受けて向かってみれば予算の削減を告げられたのだ。

表情に出ているとミーナに言われたが、むしろ表情にわざと出している。

こうでもして発散しないとたまったもんじゃない。

 

「奴らは自分の足元しか見ていない」

「戦争屋なんてそんなものよ。もし、ネウロイがいなかったらあの人達、人間同士で戦争を…。少し言い過ぎたわね」

あいつ(バーナード)が居なくて良かったな」

「本当に人間同士で戦争をしていたのかしら…」

 

バーナードが私たちがいるこの世界へ来る前の世界、宇宙世紀では過去に二度の世界大戦があった。

皮肉なことに人間は、人間同士の戦争によって技術改革が大きく進み成長を遂げた。

そして、やがて宇宙に進出。

また、同じ争いの歴史を繰り返したそうだ。

私たちの世界では人類同士でいがみ合っていてはその間にネウロイに侵攻されてしまうだろう。

だが、絶対にそんなことがないかと言われればそうだとは言い切れない。

今日のようにウィッチの戦果を快く思わない連中、私たちを外交手段としている奴ら…。

この統合戦闘団が設立されるまでにもさまざまな交渉が行われたのだろう。

私はそういうことを考えるのは得意ではないが、ふと不安になることはある。

もしウィッチ同士で戦争になったら?

この部隊のウィッチ同士が戦うことになるなど想像したくもない。

私の眉間の皺が増えそうになった時、綺麗な歌声が聞こえてきてその場を少し和やかにしてくれた。

 

-ブリタニア上空・ju52/3m付近空域<side サーニャ>-

 

私は夜間哨戒に就いていた。

今日は坂本少佐やミーナ中佐が乗る輸送機のお迎えも任務。

歌で誘導して輸送機の直掩についた。

 

「…ラン……ララ…ララン…」

「何か聞こえませんか?」

「あぁ、サーニャの歌だ。基地に近付いてきたんだな」

「サーニャさんはあの歌声で私達の誘導もしてくれてるのよ」

「そうなんだ~。サーニャちゃん、ありがとう!」

「……」

「なんかサーニャちゃんって照れ屋ですよね」

「うふふ、とてもいい子よ。歌も上手でしょ?」

 

ちょっと恥ずかしくて雲に潜った。

私は褒めてもらいたくてやってるわけじゃないけど少し嬉しい。

…でも、ネウロイはそんな余韻に浸っているのにも構ってくれない。

 

「どうした、サーニャ?」

「誰か、こっちを見てます…」

「報告は明瞭に、あと大きな声で」

「すみません。シリウスの方角に所属不明の飛行体、接近しています」

「ネウロイ、かしら?」

「はい、間違いないとおもいます。通常の航空機の速度ではありません」

「ど、どうするんですか~?」

 

結局、私が足止めをすることになった。

フリーガーハマーを構えて魔導アンテナでネウロイをとらえる。

1発、2発、撃っただけ雲に穴が開く。

聞こえるのは爆発音と、歌…?

反撃が来ない。

何発撃っても、避けられる。

 

「サーニャ、もういい。帰るぞ」

「でも、まだ…」

「サーニャさん、よく守ってくれたわ」

「……」

 

私はネウロイを倒せなかった。

でもミーナ中佐はよくやったと言ってくれた。

迎えに来てくれたみんなは、厚い雲の下で雨でびしょ濡れになりながらも私のことを心配してくれていた。

今日も疲れたなぁ…。

 

-ストライクウィッチーズ基地・ロビー-

 

緊急発進(スクランブル)がかかったと思ったら、ネウロイと交戦があったと言って増援を出すことになった。

俺は夜間戦闘の経験がないから待機するよう言われた。

そして、やっと出撃した面々が帰ってきた。

珍しくややきつい雨で皆びしょ濡れだった。

基地に待機していたメンバーで温かい飲み物を準備したり着替えを持ってきたりしばらくは忙しかった。

状況の整理が始まったのは大尉が帰ってきた時だった。

 

「つまり、今回のネウロイは誰も見えていなかったということか?」

「あぁ、サーニャ以外にはな。ずっと雲に隠れていたからな」

「何も反撃してこなかったっていうけどさ、そんなことあるの?ほんとにネウロイだったの?」

「恥ずかしがり屋のネウロイ…なわけないですよね…」

「ネウロイの正体がわからない以上その真意はわからないわ」

「仕損じたネウロイが再接敵する可能性は極めて高い…」

「えぇ、そこで夜間戦闘を想定したシフトを立てようと思います。宮藤さん、サーニャさん、二人を夜間専従員に任命します」

「は、はい!え、でもなんでですか?」

「お前も今回の戦闘経験者だからな。それとバーナード、お前も一緒にやれ」

「はい。でもどうして僕なんですか?」

「お前の機体はまだよくわかっていないのが事実だ。お前と機体のポテンシャルを見せてみろ」

「はい!」

「よしじゃあこれで…」

「ハイハイ!私もヤル!」

「ふむ...まあ良いだろう。ではお前達4人を夜間専従班に任命する」

 

-1944年 8月16日 ストライクウィッチーズ基地・食堂-

 

昨日は特に支持も無く解散となり就寝だった。

そして、朝もいつも通りの時間に起床する。

食堂へ向かうと何やら騒がしい。

どうやらリーネさんの実家からブルーベリーが送られてきたらしい。

俺も手で潰して誰かのシャツを染めたっけ。

...こうして見るとやっぱりただの年端もいかない少女達だ、アルと同じくらいの歳の子達なんだ...。

俺がみんなを守るなんてとても無理な話だし、おこがましいけど、俺は俺に出来る事をやりたい。

俺に出来る事を...。

暗い自分に喝を入れ朝飯を掻き込んだ。

そして、坂本さんから下った命令は就寝だった。

 

-ストライクウィッチーズ基地・サーニャ自室兼臨時夜間専従員詰所-

 

夜間専従員はサーニャの自室に待機、夜間飛行までの休息と夜目慣らしを命じられた。

夜目を慣らしておくことは非常に重要だ。

過去に海戦の夜戦では最強と言われた国があった。

その国では夜戦専門の戦闘員がいて昼間は暗室で就寝、夜目を慣らしていたという。

 

「ごめんね、サーニャちゃんの部屋なのにこんなにしちゃって」

「ううん、いつもと変わらないから」

「でもなんだかこれってお札みたいだよね、幽霊とかオバケが入ってきませんようにっていうおまじないみたいなやつ」

「私、よく幽霊と間違われる」

「夜に飛んでるとありそうだよね」

「地上にいる時でも、いるかいないか分からないって」

「ツンツンメガネの言うことなんか気にスンナ。...それになんでオマエもいるンダ?」

「居たくている訳じゃないさ。だいたい、俺は男だぜ...」

「フーンダ、前にも言ったけどオマエが隠し事してるのは知ってンダカンナ」

「エイラ、バーニィさんにも事情があるかもって言ったじゃない」

「ワタシはイインダナ、隊長達にバレても知らないカンナー」

「もう隊長達には話してある、いずれ皆にも話すさ。すまない、少しだけ待って欲しいんだ」

 

この子達の世界で人同士が争っていた世界の話なんて嬉しがってするもんじゃない。

どうせなら知らないでいて欲しい。

俺達みたいに悲しい思いなんてしなくていいんだ...。

ベッドの上で遊ぶ彼女らを他所に俺は部屋の隅で足を抱え不貞寝を決め込んだ。

 

-ストライクウィッチーズ基地・滑走路-

 

夕食時に起こされた俺達は、また目に良いもの(ハーブティー)摂らされいよいよ夜間飛行へ赴く。

滑走路に機体を出し、カメラや計器類をチェック。

管制との会話をしながら準備を整える。

目の前に見えるのはガイドビーコンのように先へ伸びる誘導灯のみ。

予想以上に何も見えない。

同じように足元で宮藤さんも震えていた。

 

「よ、夜の空がここまで暗いなんて...震えが止まらないよ...」

「オマエ、夜間飛行は初めてナノカ?」

「無理なら辞める?」

「手、握ってもらっても良いかな...そしたら、少しは平気かなって...」

「...ホラ、イクゾ!」

「うわわ、ちょっとまだ心の準備が〜」

 

轢かれたレールを行くように上がっていく3人に置いていかれないように俺も空へと上がる。

雨は降っていないものの曇天のせいですぐに周りは闇になる。

前の3人の翼端灯を頼りについて行く。

数秒で雲は晴れた。

トンネルを抜けたみたいに刺し込む月光に一瞬目を瞑る。

目が順応すれば、目の前に広がるのは何も遮るもののない雲の絨毯の上だった。

星の瞬きは手が届きそうに見える。

少しはしゃいでいた自分を律しレーダーや計器を確認、異常が無いのを確かめて3人の様子を伺う。

宮藤さんもなんとか夜間飛行には慣れたようだ。

 

「オマエは大丈夫カー?」

「あぁ、こっちには色んな補助があるからな」

「チェッ、ツマンネーナ」

「ん?お前どこに座ってるんだ!」

「別に邪魔にはならないダロー」

 

夜間哨戒と言うより飛行練習のように自由に飛んでいる。

サーニャさんは宮藤さんに付き添うように、エイラさんはザクの頭の上に座り、東の空が赤く染まり始めるまでコースを飛んだ。

柄にも無く浮かれて居たようだった俺も基地に近付いた頃には、現状を冷静に分析していた。

今日接敵しなかったと言うことはまた明日もこれをする。

本当にまたネウロイは現れる?いつまでこれが続くだろう?

帰還し詰所に戻れば体にどっと疲れがくる。

自覚していなくても精神的にはキているようだ。

頼むから早く終わってくれ、もう目に良いものは要らない、と昼食の時間まで夢の世界へ旅立った。




大変長らくお待たせ致しました。第9話です。
免許取得に活動で関東遠征したりと色々忙しく、挙句書き上がったところでchromeが落ちてお釈迦になるという事があって遅くなりました()。気付けばブレイブウィッチーズは放送が終わり13話のイベント上映ですか...(前売りは買ったけどラバストは開けてない)。ノーブルかストライクの続編待ってます(ジーナさんとエイラ好き)。
話を書くためにストライクウィッチーズ6話を見て「神回では?」と馬鹿なこと言ってました。でもよく考えたらこの話以降人型ネウロイくらいしか接触を図るネウロイっていませんね....。
とまあ意味もない語りはおいておいて、続きも鋭意製作中でありますので何卒よろしくお願いします。
そしてお気に入りに登録してくれた方、コメントを書いてくださっている方、ありがとうございます。お気に入りが100件を越えていましたのでここでご報告させていただきます。

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