六道の果実   作:たいそん

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上がらない偏差値。
始まる現実逃避。
涙に濡れる受験勉強。

全国の受験生のみんな!俺のssを読んで、時間を無為に浪費するがいい!!

久々の更新、始めます。


七武海参入編
第七話 計画!二代目火影作戦!


東の海(イーストブルー)、とある島。

 

 

「───初めましてだな」

 

危険な色香を放つ声。重厚な声色には、長き旅を労うような祝福が籠められていた。

大樹は揺蕩う木の葉をザワザワと揺らす。根元に立てられた墓標が、自身に向けられた歓喜の念に触れる。

それは死して久しい者の名。最早、伝説となりつつある男の名前が、その墓標に刻まれていた。

 

「ゴール・D・ロジャー」

 

海岸から吹く潮風が、世界の変動を予感する。墓を暴いた青年の口元は、綺麗な弧を描いていた。

時は、数年前に遡る。

 

 

 

 

世界を震撼させた天竜人襲撃事件。間違いなく、歴史の教科書にその悪名を刻む事になるであろう男の片割れ。

彼の名はメアリー・スー。理不尽の代名詞たる力と才覚を秘める少年は、件の共犯者フィッシャー・タイガーと袂を分かった後、大いなる海へとその足を進めた。

 

肌を撫でる潮風の、なんと心地の良いことか。魚人島を発った彼は新世界への進出を控え、偉大なる航路(グランドライン)を逆走していた。

理由は主に力不足。本人の力量だけならば、新世界進出の基準には足りているのだろうが、彼には圧倒的に兵力が足りなかった。

 

石橋は叩いて渡るタイプである。慎重である事に越した事はないと、自分を鍛え直し、傀儡を揃えるために本来ならあり得ない逆走を試みたのだ。

仲間を作る気など毛頭なかった。自分の名前の庇護を欲する無能など足手纏いにしかならない。そうでなくても、死んでしまえば意味がないのだ。

 

衣食住を提供し、養った挙句に死なれたのであればコストの無駄である。そんなものよりも遥かに金が掛からず、よく働く存在に彼は心当たりがあった。

───要は生きていなければ良いのだ。

それでいて、生きている者よりも忠実に働く駒を作る術。そんな都合の良い術の存在を、彼は閃いていた。

 

まるで前世の記憶がその存在を知っていたかのように、その術の名を閃いていたのだ。虐げられる奴隷生活の中、その術を思い出した時、まるで足りなかった歯車がガッチリと組み合う様を錯覚した。

 

「穢土転生の術。………ククッ。フフハ、フハハハハハハハハッ!」

 

マリージョアを襲撃したのは売名行為のためだ。だが、天竜人を襲撃してしまっては七武海にはなれないかもしれない。

そんなリスクをこのメアリー・スーが考えていない訳がなかった。

 

この死者をも蘇生させ得る禁断の忍術。穢土転生の有用さを示した上で、それを交渉材料として七武海に名を連ねる。

歴戦の猛者どもが、不死の軍勢となって敵を蹂躙する。これを敵に回すのは恐ろしい事この上ないだろう。だが、味方につければこれ程心強い物もない。

 

海軍もバカではない。奴らならきっと、この取引に乗ってくる。そんな確信があったからこそ、メアリーはタイガーの思惑に乗ってやったのだ。

 

「……ふぅ。いかんな。余りにも上手く行きすぎて、天狗になってしまっていた。慢心こそが俺を殺す。牙を鈍らにはさせん」

 

高揚した気分は一瞬で冷却された。まだ、肝心の海賊王の死体は見つかっていないのだ。当面の目的はあの海賊王を筆頭に、歴代の海軍将校達、そして新世界で散っていった海賊達を手駒に加える事だ。

だが、いきなりそれだけの手駒を揃えるには人手が足りない。幾ら飛雷神の術があるとは言え、一度も行った事のない場所にはマーキングが出来ないため、飛ぶ事は出来ないのだ。

 

そのため、先ずは手頃な海賊達を血祭りに上げ、永遠にこのメアリー・スーに仕える栄誉をくれてやるのだ。

丁度、こちらの小舟に近づいて来る間抜けなカス共のように……ッ!

 

「さて、モブ共諸君。君達は、不老不死に興味はないかね?」

 

 

 

 

その男は最弱の海、東の海(イーストブルー)にて海賊を営んでいる。海賊王だとか野望だとか、そう言った物に興味はなかったが抵抗する術を持たない愚民共を大声で脅すだけで、そこそこの富を得ることの出来るこの商売はまさに天職と言えた。

無駄に大きな身体を持って生まれてきたことに、男は感謝していたのだ。

 

弱者への略奪に耽る日常を終わらせたのは、ある小舟を見つけた時だ。

 

特段美味そうな獲物は見当たらない。資材も食料も金も何もない舟だ。遭難でもしているように、海を漂うだけの舟。

そこには一人の美しい少年がいた。性別を超越した様な顔立ち。男でも女でも通じ得る美貌。まるで神に仕える天使のような容姿をした、神の彫刻を思わせる少年であった。

 

一言でいえば、格別に美しかった。

それこそ、私財の全てを投げ打ってでも手に入れたくなる美しさである。是非ともあの少年を捕らえ、変態の貴族共に売捌きたい。

それによって得られる巨万の富を想像し、男は舌舐めずりをすると、部下に舟を狙撃するように指示を出した。

 

不穏な空気に気が付いたのか、その少年はすっくと立ち上がる。そうして男の船を凝視する少年の、紅い瞳を見た瞬間、今まさに狙撃を開始しようとしていた部下は大きな悲鳴を上げた。

 

「あ、あ、あああああ!!?」

「………おい?どうしたんだ、突然」

 

腰を抜かし、小便をぶち撒ける部下に眉を顰める。只ならぬ様子に不安を覚えた男はその部下から奪い取った双眼鏡を覗き込み、大量の冷や汗を流した。

 

「オレは、夢でも見てるのか?……なぁ!おい!!?」

「せ、船長?……どうしたんで?」

「お前ら、先月の新聞持って来い!」

「へ?なんでですかい?」

「いいから早く持って来い!!ぶち殺されてぇのか!!?えぇ!おい!!」

 

船長の只ならぬ様子に仰天した船員は慌ただしく船内を駆け回ると、ある一つの記事を持って来た。

それを奪い取るように引っ手繰ると、男の唇はワナワナと震え、見る見る内に青くなっていった。

 

「……お前ら、早く船を出せ」

「え?略奪はしないんで?」

「いいから逃げるんだよ間抜け共!!あれが誰だかわからねぇのか!?」

 

男の恫喝と同時に周りの海が龍を形取り、彼らの船を覆い尽くした。

 

「水遁・水龍弾の術」

 

そこそこの大きさを誇るガレオン船は、水の龍に飲み込まれる。空から舞い降りる龍が、圧倒的質量を持ってその船を押し潰す。

メアリーは小舟に帆を張り風遁で気流を起こし、水遁で水流を操りながら大破したガレオン船に近づいた。

 

「せ、『閃光』!なんでメアリー・スーがこんな所にいるんだよ!?」

「何、お前が知ることではない」

 

男は回転する紅い瞳に魅入られて、意識を暗転させた。メアリーは気を失う男を見て、盛大な溜息を吐いた。

掌を額に当て、虚空を見上げる。

 

「……やってしまった。水遁で片付けるのは楽だが、生け捕りにしなくてはならんのに。これでは半分以上は回収出来んぞ」

 

メアリーは面倒くさそうに、目に付く限りの海賊達を回収するのだった。

 

 

 

 

「口寄せ・穢土転生の術!」

 

回収した海賊達を水流に乗せ、適当な無人島に上陸した後、メアリーは彼らを使って術の実験をしていた。

術式自体が簡単なのか、それとも黄泉の国を良く知るメアリーだからこそ出来たのか。それは何の失敗もなく、あっさりと成功した。

 

「ぐぁぁぁあああああああ!!!?」

 

断末魔の雄叫びと共に、海賊の身体を塵芥が覆った。その隣には先程殺した、船長と思しき亡骸が横たわっていた。

 

「……っあ?んだ、これ」

「ほぅ。一発で成功したか」

 

生き返った船長の姿に、残りの船員達は目を向いた。何故。彼の亡骸はすぐそこにあるのに。何故、船長と同じ顔と声をした男が。

断末魔を上げた仲間はどこに行った。彼らは奇妙な出来事を前に、情けなくも泣き出してしまった。

 

「し、死にたくねぇよぉ〜!」

「せ、船長?あんた、なんで二人も……。あんた死んだはずじゃ」

「はは、はははは、ははははははは」

「もう何がなんだか………」

「仕方ない。説明しようか」

 

メアリーは得意げに笑うと、その虹彩を紅く変色させ、三つ巴の勾玉を激しく回転させた。精神的に高揚しているのだろう。

 

「人間の蘇生だよ。俺は神の如き力を手に入れたんだ。これで安心して寝られる!!!!はーっはっはっはっはっはっはっはぁ!俺は成し遂げたのだァ!計画は間違ってはいなかった!『運』はこの俺に味方している!!」

 

メアリーの狂笑は船員達を震え上がらせた。

 

「さあ、貴様らに権利をくれてやる。俺に絶対の服従を誓い、不老不死を手に入れるか。それともこの場で死んでおくか。二つに一つだ」

 

後に、この場で服従を誓った者は後悔する。

この少年に仕えるということは、死、よりもなお苦しい地獄だったのだと。

生きながらに殺され続けるとは、この事だったのだと。

 

 




生存報告です。

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