俺の家に魔王が住み着いた件について   作:三倍ソル

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活動報告で予告した通り、笑える要素は最初の所のわずかしかないドシリアス回です。

…この場をお借りして、なぜ更新が遅れたかを箇条書きで説明いたしましょう。

・途中で文章データが吹っ飛んだ。自動保存もされず1000文字が無駄に。
・ネタが長らく思いつかなかった。思いついても書くまでに時間がかかった。
・小説を書いている途中で私のお婆ちゃんが危篤になり、そのまま死去。葬式の準備で小説を書くどころではなかった。
・掛け持ちしちゃった(∀`*ゞ)テヘッ

主に更新できなかった理由は3番目ですね。本当に、人生に関わる出来事でした。
4番目は、殺されてもおかしくはない。本当に申し訳ない。


悪夢編
不信


 「うぃーっす、じゃーおやすみー。」

 「お休み、フウマ。今度も我はソファで寝るのか。まあ、別に良いがな。」

 

 

 ほんの数時間前。我はフウマと一緒に車を運転していた。先日日用品を買いにデパートに行った時、買い物が途中のまま帰ってしまい、全部買うことが出来なかったからだ。

 

 「フウマのドジが。何で買い忘れるのかね?」

 

 今日は天気が悪い。土砂降りの雨のせいで前が見辛いし、この車の湿度も高すぎて暑い。噂によると、今此処には台風が来ているらしいのだ。

 

 「そりゃあ、あんなテロリズムに遭っちゃったら他の事なんで頭から抜けるさ。」

 

 だがこんな天気の中運転するフウマも中々だ。

 

 「そんなん知らん。だが、いったい何を買ってないんだ?」

 「ティッシュだ。」

 「そんなん要らなくないか!?」

 「何だと?ティッシュペーパーが無いことは死活問題なんだぞ?いいもん、俺だけ買うもん。」

 「いや、そう言う問題じゃ無くてだな…。」

 

 問題は、ティッシュの買う場所だ。何故、コンビニなどではなく態々あのデパートまで向かうのだろうか?理由を聞いてみると、『あそこでは鼻セレブが買えるから』だそうだ。鼻セレブとはよく分からないが、ティッシュの銘柄だと思われる。。

 その後適当に雑談でもして暴風雨の中の退屈な時間をどうにか過ごそうと考えたが、途中からは特に何も思いつかなくなった。気のせいかもしれないが、なんだか今回の車は妙に長い気がする。いつもは30分ぐらいで着くのに、今はもう30分もたってそうだがデパートまで半分も到達していない。きっと、体内時計が狂っているのだろうな。

 

 「デパートまではまだなのか?」

 「もう少しで着くはずなんだがな…。何だろう、道に迷ったのか?」

 

 …うん。これは確実に道に迷ったのかもしれない。暗いし台風が来ているせいもあるが、周りの景色が何だか前回のルートとは違う事は分かった。

 

 「なあ、これいつ着くんだよ?」

 

 そろそろ時間が結構経つが、まだ着きそうな気配を見せない。それどころか、見たこともない所だ。豪雨のせいで難視気味だが、多分ここは道路ではなく、獣道だ…。

 

 「そのうち着くって。気長に待ってろよ。」

 

 フウマもそう言っているが、多分自分自体も少し迷っているんだと思う。同じところを行き来している気さえするのだ。

 

 「……さっきもう少しで着くって言ってたんだけどなぁ。」

 「…うーむ、暴風雨のせいでよく見えないのか…何処かで道を間違ったのか…。」

 

 最近思うが、フウマはよく自分の失敗を棚に上げて他人のせいにする、悪い癖がある。お節介かもしれないが、そのことを話題にしてこの退屈な時間を消化するか…。

 

 「なあフウマ。お前ってさ、何か知らんが自分の失敗を自分のせいって考えないよな。」

 「なんだい急に。確かにそれは自分でも自覚しているが、何で今その話を?」

 「(自覚はしているんだな…。)いやね。ちょっとこの暇な時間でも潰そうかなって。」

 「…まあいい。それでさ、さっきも自分が道を間違えたのは暴風雨の所為って言っていたし、お前がこっそりつけている日記も読んでみたら『苛立ちのせいで壺を割った』と書いてあったじゃないか。なんで、自分の所為とは考えないんだ?」

 

 そのような事を言ってみたら、予想していた言葉と反し意外な言葉が返ってきた。

 

 「ちょっ…ちょっと待て!?お前、俺の日記読んでいるのかッ!?」

 

 フウマは焦り、もう一度我に問いかける。一瞬我は戸惑ったが、直ぐに察した。アレは多分、勝手に読んではいけない日記なのだと。

 

 「…あ、まあ…。読んじゃいけない奴だったか?」

 「読んじゃいけない…どころか、あれ勝手に読んではいけないって表紙に書いてなかったか!?」

 

 え、そんなのは知らないぞ。あれはただのノートだ。そんなこと、我の記憶が確かなら書いてなかったはず。

 

 「そんなのが書いてあったら我も読まないぞ。また思い込みかドジフウマ。」

 「いや、絶対に書いてあったはずだ。何だろう、そのまま忘れて寝てしまったのか…。」

 「! ほら、またうっかり屋さんアピールをしてる。男らしくないぞ。」

 「何だと?だったら、泣きながら俺に抱き着いた輩はどこの誰だ?」

 「…うぐっ!!」

 

 正直言って、アレは後悔している。ちょっとした気の迷いなのだが、気分が感情的になったのだろう。うん。その後はよく覚えてない。

 

 「大体、なんでそんなもの読んだんだよ。」

 「そんなの暇だったからに決まっている。」

 「お前はいつもそうだ!何でもかんでも勢いだけで行動して、少しは他人の気持ち考えたことはあるのか!?」

 

 フウマは車を何処かに止めて、我に怒鳴りつけてきた。その言葉に我は少しだけ腹が立ち、反論する。

 

 「勢いだけで行動してるわけじゃないぞ!?あの日記だって読んじゃいけないだなんて知らなかったから我は悪くない!!」

 「ッるせぇよテメェ!!自分に非がある事を認めずに口答えするな愚図!!」

 「愚図はそっちだろう!?今の言葉をそっくりそのまま返してもらうが、自分の失敗だって認めたがらない奴は嫌われるんだぞ!?」

 「お前に嫌われるなら本望だよ!さっさと車から出てけ!!」

 

 ……。

 今日のフウマは何か可笑しい。まだかかわりあってから一週間ほどしか経ってないから説得力はないが、何かとすぐにマジギレしてしまう性格になっているようだ。こんなの、フウマじゃない、別の誰かだ。そうに決まっている。

 

 「……。」

 「何をジロジロ見てるんだ畜生、早く車から出てけよッ!!」

 「嫌だッ!!」

 「……チッ。」

 

 ガシッ!!

 

 「!?」

 

 フウマは我の事を心底嫌そうな目で見た後、車から降りて後部座席のドアを開けた後、徐に私を外に出そうとした。腕を掴んで、凄い力で引っ張られる。

 

 「…やっ、やめ…!」

 「もうお前とは縁を切ってやるッ!!一生地べたに這いつくばってればいいッ!!」

 「…!!」

 

 もはや、言い返す暇さえ与えてくれない。フウマはとんでもない形相で私を車から追い出し、そのままドアを閉めてエンジンを掛けようとする。

 

 「…ま、待って!!今のは我が悪かったって!!お願い!!ここで放置されたら私何をすればいいのか…!!」

 

 我はそう叫び運転席のガラスをどんどんと叩く。だが、それでもフウマは反応を示さない。だが、何度か同じことを繰り返してるうち、フウマが窓を開けて、こう言った。

 

 「ほざけ。俺はもう一生お前とは付き合わん。大体、俺は一人が好きだった。何でお前と同棲する羽目になったんだろうな。ま、いいか。じゃあな魔王。」

 

 フウマはそう言って窓を閉めようとする。

 

 「……我の知っているフウマはこんな奴じゃないッ!!!」

 

 気が付けば我は、そう叫んでいた。

 …その発言は十分変だという事は自覚している。だがどうにも違和感しかないのだ。いや、分かりやすく言うとこれまでのフウマの言動が矛盾しているのだ。

 なぜ自分が悪いって思わないのか。

 なぜこんなに冷酷なのか。

 なぜ我が悪いという方向になるのか。

 なぜこんなに優しくないのか。

 そもそも我が封印から解放されたのはフウマの所為だ。なのに、我は今そのフウマに見捨てられようとしている。これはあまりにも理不尽だ。何故だ?我が魔王になったからという因果か?

 …考えていても仕方がない。今は、()()のフウマを呼び戻すか。

 

 「今日のフウマはあまりにも可笑しい、可笑しすぎる!!なんで我がこんな目に遭わなきゃいけないんだ!?大体、私の知っているフウマはこんな冷酷な奴じゃないッ!!本物のフウマは何処だ、何処にいる!?教えろ偽物ッ!!!」

 「……一生そうやって叫んでろ。そして力尽きて死ねばいい。」

 「……!?………!!?」

 

 今のはどう考えてもフウマが言うような言葉じゃない。勝手なイメージかもしれないが、フウマは優しい奴だったはずだ。なのに、どうしてこんなことを言うんだ…?しかも、今の発言に全くの嫌悪を見せなかった。こんな事ってあるのか…?

 …ともかく…。結局、必死の叫びは届くことはなかった。フウマはショックを受けた我をそのまま放って窓を閉めて、そのまま走り出した。

 

 「…!!―――――ッ!!」

 

 我の走って追いかけたが、どう考えても我の足の速さでは車に追いつけるはずがない。フウマの車はそのまま道の彼方に消え去ってしまった。

 

 「…ま、待って…キャッ!!」

 

 外は土砂降りだ。獣道を走っていたため降ろされたところの地面は土だ。雨水のせいで地面がぬかるんで、それに足を取られて転んでしまった。

 

 「…い、痛ッ……。」

 

 瞬間、右足に激痛が走る。自分の足を見てみると、右足の脛の部分がどす黒く腫れていた。

 

 「…う、うぁぁ…フウマ……お父さん……。」

 

 もう、走れない。足が痛い為、走ることが出来ない。今我は、過度な激痛に耐えながらただ呻く事しかできなかった。

 

 「……ぁ……うぅ…。」

 

 なんでだろう。だんだん視界がぼやけて見える。それに、なんだか…眠い。ああ、足の感覚がなくなってきた。もう痛みが無い。なんか足全体の色が見事に変色しているが、そんなことはどうでもいい。今、我はなんだか清々しい気分だ。もう直ぐで、楽になれる気がする…。

 

 

 「……?」

 

 ……どこなんだここは、周りが真っ暗だ…。何で我はこんなところで…寝て……。

 え?我は確か……フウマに見捨てられて……それで…足が…痛くない?それに何だか…酒の匂いが…。寝てたのは…ソファ?という事は、ここはフウマの家?

 

 「……フウマ?」

 

 状況を整理しなければ。まず、ここはフウマの家だ。そして、暗いのは…。部屋に電気がついてないからだろう。まず電気をつけなければ、まともに状況を把握できない。

 

 パチッ

 

 「……。」

 

 ここはリビングのようだ。テーブルには、汚れている食器といくつか空っぽになった酒瓶…。思い出した。我は昨日…フウマと酒を飲みまくって…その後寝たんだったっけな。

 

 「…うっ…。」

 

 思い出したと同時に気が付いたが、先ほどから頭が痛い。どうやらこれが俗に言う二日酔いとかいう奴なのか。

 

 「…時間は…。」

 

 時計を確認する。どうやら午前の2時半のようだ。随分と中途半端な時間に目が覚めてしまった。寝ようにも目が冴えてしまいもう寝れないし…。

 ……テレビを見て、眠くなるのを待つか。

 

 ザアアアァァーッッ……

 

 「うわっ!?」

 

 ビックリした。何なんだこの画面は。普通のチャンネルの筈なのに何か画面がおかしいぞ…?絶え間なく灰色と白と黒の点が錯乱している…?ヤバい、音が五月蝿い。電源を消さないと。

 

 …よし、消えた。…クソッ、今の音のせいでかえって目が覚めてしまったようだ。これじゃあますます寝れないだろう。

 ………そういえば、あれは何なんだ一体…。夢だってことはわかっているが妙に鮮明に記憶が残っている…。あんな悪夢が記憶に残ってるとか一種の恐怖だな。

 …。一応、フウマの様子を確認しておこう…。アイツが夢の中の性格のままだったら…。という不安が脳裏を(よぎ)ったからだ。

 

 …ん?あれ?部屋の電気がついている…。妙だな。まさか2時半までずっと起きて…。そんなわけない。きっと、明かりを消し忘れたてそのまま寝たんだろう。いや、別に2時半まで起きていたことを不安として捉えたわけではないが、さっきの悪夢もあったから…。

 

 ガチャリ

 

 「…ん、何だ魔王。こんな時間に。」

 「…!?」

 

 ドアを開けると、フウマが起きていた。別にもう夢の中じゃあるまいし、性格も冷酷じゃない筈なのだが、何故か我はフウマに対して恐怖心を抱いていた。

 

 「…お、おい魔王?」

 「…そ、そうだ。夢の中のフウマじゃない。そんな酷い性格じゃない筈だ。怖くない恐くないこわくないコワくない…。」

 「??? …こ、怖くないってなんだ?」

 

 いったん恐怖心を落ち着かせて、フウマに話しかける。

 

 「…お前は、いつもの…フウマだよな?」

 「は?」

 

 

 

 「そうか、そんな夢を見たのか…。」

 

 当たり前のことだが夢の中のフウマじゃないようなので、さっきまで見ていた悪夢を最初から最後まで全部話した。何故か夢の内容を話した途端、心が何重にも縛られた鎖が一気に解けたかのように楽になった。

 

 「…お前も大変だな。今の俺が夢の中の俺に代わって謝る。すまない、そんな惨いことをしてしまって…。」

 「…そ、そんな、謝る事なんてないはずだ。どうして謝る?」

 「そうだな…。何て言えば良いんだろう、俺の良心が許さないんだろうな。」

 「……。」

 

 その言葉を聞いた途端、何故かよく分からないが我の涙腺が崩壊してしまい、一気に目から涙が溢れ出てきた。

 

 「…お、おい、何で泣くんだよ…。」

 「…うぅ、フウマぁ…。ティッシュくれ…。」

 「そんなの無いって。何か代わりに拭くものは無いのか?」

 「……うぅっ。あぁ、ぁぁ……。」

 「…ゴクッ。」

 

 遂に最終手段と言わんばかりにフウマは唾を飲み込むと、ゆっくりとフウマの方から抱き着いてきた。

 

 「……。」

 

 突拍子もないフウマの行動に一瞬涙が引っ込んでしまうが、まだすぐにあふれ出す。さっきよりも、多く、ずっと多く―――。

 

 「…あぁ、えっと…。ホラ、早く涙拭けって…。魔王のくせにみっともないぞ?」

 「うぅっ…ひっぐ。そんなのもう…関係ない。」

 

 フウマは自分のやった行動が逆効果だったことに気づき、さらに慌てだす。

 我はフウマが冷酷じゃないフウマに戻ったのを確信して、さらに泣き出す。

 この深夜帯は、とても静かだ。だが、一軒の家の中では、一晩中女性の鳴き声がこだましていた。




もう疲れた。寝る。

途中から見ている方は、第1話も是非! ここ

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