真かみさま転生200X(未完)   作:tbc

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闇のプロファイル

 

>月曜日。戒厳令、そして魔都東京200X開始の日

 あの後キクリヒメを召喚し、急ぎ【サマリカーム】を使用して応急処置。

 血のついた服の代わりを調達し、血の臭いも誤魔化して(その際に服選びのセンスないとか酷評されたがそれは割愛)。急いで戒厳令が始まる前に妖精郷に戻る。キングフロストを倒し、暴力妖精らを解散させたことで妖精郷の出入りを許された。当日はピクシーたちの住まいを借り、妖精郷内で一日過ごす。

 その間に俺はあの九条ちゃんを撃った学生服の女の子の正体について考える。九条ちゃんが特に恨みを買ったり、因縁を持つとは思えない。かといって隣に俺という人間が控えている状況で、無差別に撃ったとは考えづらい……つまり何らかのターゲットになるだけの理由が九条ちゃんにあったのではないかと考えた。

 少なくとも妖精関係ではない。悪魔や悪魔変身能力者という線では俺も狙われなければおかしいし――実力的に勝てないと思い、襲うのを諦めた可能性はあるが――かといって九条ちゃんのもう一つのクラス、「遊び人」は異能とは全く無縁なのでそれが理由とは思えない……

 

 と次の理由に進みかけたが、ふと思い付きから九条ちゃんを改めて【アナライズ】し、襲われた原因を悟る。

 

 女神転生TRPGでは、どんな異能を持つか定めるクラスごとにクラススタイルというものを選ぶことが出来、例えば格闘(打撃)のスタイルを選んだ「探偵」ならバリツなる武術を嗜んだシャーロック・ホームズのように格闘術に長けた探偵で、情報(捜査)のスタイルを選んだ「探偵」なら文字通り現代における調査行為を仕事とする探偵であることを示す。クラススタイルはそういうクラスの方向性を定める特徴であると共に、クラススタイルごとに定められたリストからスキルを習得することが出来る利点もある。

 さて、ここで問題の九条ちゃんの持つクラス「遊び人」のスタイルだが、遊び人のクラススタイルには情報(メディア)と候補者という二つのスタイルがある。情報(メディア)は報道関係者や芸能人のように、マスメディアに深いつながりを持ったり、それを介しての情報操作・入手に長けていることを示す、割りと平凡なスタイルである。

 しかし九条ちゃんが遊び人のクラススタイルに定めているのはもう一つの「候補者」だった。このスタイルは、真・女神転生の各原作主人公たちのように世界を変革したり、神殺し、龍殺し、勇者のように世界を変革する、あるいは変革しうる特別な才能を持って生まれ出たことを示すスタイルである。つまりは、ザ・ヒーローになれる……とは言い切れずとも、何かしらの天性の素質を持っていることが含まれるスタイルなのだ。

 故に、メシア教は神の教えへ導く救世主「ロウヒーロー」の才能があるものとして、ガイア教はカオスの勢力を束ねるために強い力を得た修羅「カオスヒーロー」の道を歩むことが出来るとして、「候補者」の素質を持つ異能者たちを秘密裏に探している。一方で、逆に相手方のヒーローを現れさせないためにもわざと「候補者」を狙って殺して回る連中がいる。これは特に、メシア教と違って候補者を絶対に必要とは思っていないガイア教側に根強い考えである。

 

 さて、ガイア教にはネクロマンサー一派「CAGE」というTRPGオリジナルの集団がおり、その中に候補者を狙って潰すために幹部によって生み出された、影の銃姫とも呼ばれる屍鬼がいる。彼女もまた候補者であったがその幹部によって候補者キラーに仕立てあげられ、UDARと呼ばれる銃を愛用するガンスリンガーであり、また元女子高生である。あの場で屍鬼の痕跡が残っているか確かめる暇は無かったし、今さら調べに行くことも出来ないが、三つのキーワードが一致する時点で犯人候補として濃厚である。原作にいないガイア教勢力であることが疑問だが、何かとTRPGの設定に準拠しているこの転生世界だ、TRPGオリジナルの組織やNPCが戒厳令下の東京に混じっていてもおかしくはない。

 

 

 回復はしたが、失血の影響、それから急激にレベルアップしたことで実力の変化に体調を崩した九条ちゃんを妖精たちに任せ、俺はTRPG追加設定が原作に及ぼす影響を確かめるべく、妖精郷がある代々木公園にすぐ隣接する、明治神宮を訪れた。

 昨日にも述べたが、明治神宮はTRPGの設定により天津神の集まる神域になっており、また日の本を守る破魔の巫女を育てる一大拠点でもある。原作葛葉ライドウシリーズに登場し、ライドウを霊的にサポートする「ヤタガラス」の存在がこれに近い。とはいえ勿論、一般公開されている場所に神宮の巫女たちはおらず、奥の神域に入らなければ話も出来ないが……当然、勝手に立ち入れば不法侵入になる。

 こういうところには異能者専用の窓口があるはずだが、あいにく初めて訪れた俺にはその知識が無い。故に、少し手間はかかるが少し離れた森にぽつんと漂っていた地霊に話しかけ、交渉の末 魔石と引き換えに案内を頼む。

 

 地霊に神宮裏手の森へ案内され、暫く待つと汚れ一つない袴を着けた巫女が森の奥から御用を尋ねに来た。俺はまず自らの表向き学生である身分を伝え、東京都郊外で異能組織と関わることなく悪魔との戦闘で経験を積んだ異能者であること、同じく一般人出の異能者を拾ったが彼女が悪魔について相当間違った知識を持っているため、伝聞に聞いた異能組織に彼女の教育を相談するために初めて都内を訪れたことを話す。

 訝しげな顔をするも、地母神キクリヒメを召喚して見せると顔色を変えて少々お待ち下さい、と再び待たされる。やがて奥から戻ってきた巫女さんに申し訳ありませんが、後日改めて担当者を決めますのでまた明日の午後いらしてください等と言われる。こちらの寝床はすぐ隣だし、もう一度来る分には構わないが……素性の知れない俺を警戒しての罠だったりするか?並大抵の罠であれば食い破るだけだが。

 こちらも明日は彼女を連れてきますと伝えて、明治神宮を去る。次は少し遠いが新宿へ。やや原作に近づくことになるが、新宿駅地下街の南口を重点的にBARを探す。後々自衛隊とアメリカ軍に対するレジスタンスの連絡地となるBARには、主人公やヒロイン、そしてゴトウ秘書であり正体は夜魔リリスのゆり子が訪れるなど重要人物が度々訪れるため、原作の進展具合を測るのに適した場所でもある。事前に場所を調べておいて損はないだろうと思い、半日を費やしてそれらしいBARに幾つか当たりをつけておいた。

 

 新宿から代々木への帰り、アメリカ軍のマシン部隊と自衛隊に与するガイア教徒の小競り合いに巻き込まれる。原作より恐ろしく強いマシン・ビットボールを手間かけて破壊し、ガイアーズ特攻隊を叩き伏せながら妖精郷に戻る。

 

 

>ななみちゃん育成計画発令の日

 一日経って、レベルアップ酔いが治まってきた九条ちゃんを連れ、午前中に新宿へ。レベルも上がったことだし、邪教の館で合体を経験させようと思った次第。今のうちに日本神話系の悪魔にしておけば、明治神宮側の好感度も上がるんじゃないかという打算もある。

 原作的には精霊アクアンズを経由させたかったけど、もうそのレベルをとっくに通り越してしまったため違う悪魔に。効率を考えれば前衛悪魔が望ましいが、九条ちゃんが不満気だったのでアメノウズメに決定する。

 合体魔境はいずれ学んでもらうとして、今回は悪魔合体の初体験だけ済ませる。まず彼女の聖獣ユニコーンに精霊フレイミーズを合体し、聖獣シーサーに。魔獣カブソ妖精ピクシー魔獣ケットシーの3身合体で神獣マカミの悪魔カードを作成、彼女の聖獣シーサーと合体させ女神アメノウズメが完成。継承スキルは【リカーム】【ディアラマ】【バインドボイス】、そして【耐電撃】と【アギラオ】である。2000マッカなり。

 自身の一部とも言うべき悪魔が変身に使用する媒介のお守りから抽出され、コポコポと液体で満たされる水槽に浮かぶのを見て慄くが、いずれは何ら感慨もないまま淡々と合体作業を進める彼女が見られることだろう。はよ慣れろ。

 

 合体を終えて明治神宮への道中、今度は新宿に現れるようになった悪魔たち……襲撃してきた妖獣ガルムの対応を彼女に一任した。自信満々に新技【アギラオ】を放つも、火炎に強いガルムはやや傷ついただけでがぶりと【毒かみつき】。POISONで攻撃力が減少し、まともに攻撃が通せずひーひー喘ぎながら自力で倒す様を見届けた。

 ドロップしたダンシングヒールを折角だからと履きこなし、見せつけるように踊る彼女を引っ張って明治神宮へ。これから日本を守る異能者組織と交渉し、九条ちゃんに悪魔に纏わる政情を学んでもらう目的を先を話しておく。頭を使う話に嫌そうな顔をするもこればかりは知っておいてもらわないと、この先メシア教にいいように使われる未来が見える。

 さて、昨日のうちに罠を張って待ち構えてるんじゃないかと心配になっていたがそんなことはなく、宮の結界内へ案内され、「葛葉」の人間と話をすることになった…… 葛葉!?

 

「葛葉」とはヤタガラスと同じく、古来から日本を守る退魔組織である。ヤタガラスが霊的な防備、結界の維持を担当する内政組織とするなら、葛葉はその逆、外国からの外敵や国内での危険分子、悪魔を排除するために実力を行使する退魔特化の軍事組織だ。時代は異なるが葛葉ライドウという戦艦もぶった切る俺TUEEE主人公や、敵を滅ぼすためなら最悪手段を選ばない葛葉キョウジなど強力なデビルサマナーらが多数所属している。上のほうには天津神、一部国津神など日本神族が見られるが、実働部隊・構成員の殆どは人間で占めるため下手な悪魔や神族の思想の影響を受けてない中立的立ち位置として、異能と悪魔の世界を知るならこの上ない組織か。

 この戒厳令下、一日で連絡を取り、葛葉が出てきたことには驚いたが、こちらが接触を取った理由である九条ちゃんの扱いについて話すと、基本知識の教育については受けるがタダでは動かない。代わりに葛葉の仕事の一部を受けてもらうと言って、とあるダークサマナーの討伐を依頼された。

 

 マヨーネ。デビルサマナーソウルハッカーズで、ダークサマナー組織「ファントムソサエティ」に所属する、中堅どころのデビルサマナー。パラソル型の悪魔召喚器が特徴で、爆弾や爆発物を多用する。戒厳令により身動きが取れない状況を利用してテロを計画しているとのこと。

 

 

 フィネガンとかもっと強いのが出なかっただけマシだと思う。

 

 

 


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