GATE;「扉ガバガバじゃねえか!」と叫ぶ転生者   作:水の水割り

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少年の心をまだ忘れていないので初投稿です
今回やっつけかも


自重せよ、セイバー

エクス(約束された)……カリバー(勝利の剣)!!!」

 

 

 力任せに、しかし手加減して振るわれた光が、"奴ら"を呑み込む。

 

 

エクス(約束された)……カリバー(勝利の剣)!!!!!」

 

 

 地を走る緑色のセイバー()よりも身長が低いが、手には剣や棍棒等思い思いの武器を携えた"奴ら"、それに続く......オークだろうか、尖兵とは反対に大きな体躯の奴だ。

 どちらも二足歩行というぐらいしか人間との共通点が見当たらないし、顔も人とはかけ離れた造形である、明らかな"敵"。

 

 開け放たれた"門"から次々に沸いて出てくるそんな異世界めいた"敵"をリスポーン狩りの如くエクスカリバーを振るい薙ぎ払っていく。

 

 何せ、()がさっきから振り回してビームを撃っているこのエクスカリバー(宝具)

 敵が弱過ぎるのか(セイバー)が強過ぎるのかはよくわからないが大抵の"奴ら"が手加減して撃ったエクスカリバービーム一発程度で塵になるのだ。これは助かる。

 

 ついでにエクスカリバー(約束された勝利の剣)を幾ら連発しようが全く私は疲れもしない。

 文字通り必殺技撃ち放題だ、やったぜ。

 

 

 

「さぁ、私を倒さぬ限りここから先は交通止めだ! 後ろの方は下がって避難を!!」

 

 

 そして場所はというとなんと大都会、東京の銀座ど真ん中、人通りも勿論少なくない昼前の大通りでのこの大立ち回りである。

 そんな大通りに目の前にある、石造りの"門"が突如道を無視して現れたのだ。

 

 もっと交通会社や車の人に優しい場所に現れようとは思わなかったのかこの門は……。

 

 

 ちなみに、何故ここに私がいるかと言うと……まぁあれだ、留守番に飽きた。

 伊丹より早く帰ってきて家事をパパっと終わらせ、何食わぬ顔で出迎えれば問題ないと思って来たのだが。

 この"門"によからぬ直感スキルが働いたのである、以上。

 

 

 とにかくエクスカリバー(ビーム)を連発した結果、突っ込んで来た連中は全員塵と化した。最早そこにいたことすらわからない様な事になっていると共に、門の前にはエクスカリバービーム(約束された勝利の剣)によるクレーターが幾つか出来ている。

 

 殺っちゃったけど人間じゃないからセーフ、グロ死体でもないからセーフセーフ、辛くない、SAN値も減ってない。

 

 

「ゴ……ゴブリンとオークの混成部隊が全滅……だと……」

 

「やべぇよやべぇよ……」

 

「ポッチャマ……」

 

 

 恐らくは人間……であろう。突っ込んで来たゴブリンやらオークとは違い中世の騎士の様な武装で身を固めて大盾と槍を装備した連中が、今しがた見る限り全てのゴブリンとオークを全滅させた()を警戒して大盾を構えている。

 その綺麗な横列は、稀に見るドラマや映画で活躍する機動隊を思いださせた。

 

 

「ふふふ……怖いか? 今なら見逃してやるぞ」

 

 

 完全に萎縮している"奴ら"にエクスカリバーの切っ先を向けて、宣言する。

 

 何人かは「ヒェッ……」と、身を引いた。いいぞ、もっと私を怖がるんだ。

 

 正直なところ、逃げ帰ってくれるならそれが一番良いし、()も精神すらセイバースペック(鋼鉄の塊)とはいえど、人殺しは可能な限りしたくはない。

 

 

 それに問題は()よりも……。

 

 

 

「うおすげーー! 映画の撮影か!?」

 

「セイバー! セイバー! (オレ)だーー!! 結婚してくれーー!!」

 

「あれってアルトリアセイバーだよね! キャーこっち向いてー!!」

 

「ホラー! 横向くんだよ90度! 写真撮らせてくれよオォン!!(無断撮影兄貴)」

 

「いやいやあれはアルトリアネキの格好したネロネキだって! 声がそうだルォ!?」

 

「あれーおかしいね、あの腰にあるのってアヴァロン……たまげたなぁ」

 

 

 

 

 ……この、後ろにいる野次馬(平和ボケ達)である。

 危ない現場で野次馬してる一般人に避難勧告を出してる人の気持ちが分かるぞこれは。これはかなりイライラする。

 

 さっきから何回か声を張り上げて避難勧告を飛ばしているが、当の野次馬達は全く()の言うことを聞かずに留まっている。

 

 一応門から来た"奴ら"が危険な存在である事、私が応戦している事、危ないから下がっていることを踏まえてはいるようだが……。

 

 正直な話、本当にすっごく邪魔くさい。

 

 守りながら戦うとか討ち漏らした敵が向こうの方に行くとかもそうだが……。

 門を前に私が真ん中、そして私の周りをぐるっと一周野次馬が囲ってしまっているため、滅茶苦茶周りが気になる。道路の破片とかを誤って飛ばしたら負傷者が出るのは確実だし、エクスカリバー(約束されし勝利のビーム)も手加減しないといけなくなる。

 本気でぷっぱなすなら気が楽で簡単だが、幾ら疲れないとはいえプレッシャーがヤバイ。

 機動隊とか警察がこういう時なんとか避難させてくれるのだろうが、稀にそれっぽい声が聞こえてくるだけだ。

 

 

「ええい! ここは危険だから避難しろと言っている!」

 

 

 未だ騎士兵が私にビビって攻められないのを確認し、つい苛立って声を荒くして叫ぶ。

 考えたくないが……奴らがこの"門"だけから来ているとも限らないのだ。

 

 もしそうだとしたら大惨事も良いところだ。東京がヤバイ。明らかに侵略しに来てる気満々だしいくら日本な自衛隊やらの戦力があっても少なかれ被害は出るだろう。

 

 私が声を荒げても……ダメだ、誰も避難はしてくれない。

 

 

 更にここで、想定していなかった事態が起きた。

 

 

「落ち着け者共! 恐らくあの女騎士一人だけが強大なのだ! 散って付近の者を盾にしていけ!!」

 

「おおっ、流石隊長! やりますねぇ!」

 

「おっそうだな」

 

「そうだよ(便乗)」

 

「じゃけんザコを盾にしましょうねぇ^~」

 

 

 

「何っ!?」

 

 

 なんと、奴ら騎士兵が隊長らしき目立つ男に指示されるやいなや、私ではなく門を出て直ぐ真横、野次馬を目標にして左右に散って行ったのだ。

 途端、やっと野次馬も状況の悪化が解ったらしく逃げ出そうとするが、人数が多く更に私を見ようと詰めていたみたいで全く避難出来ていない。

 

 ま、不味い……とりあえず右! まずは右に行った奴を叩く! 死ね!(手加減)

 

 一瞬、対応が遅れたが流石はセイバー(この身体)、ほぼ数瞬で右側へ行った騎士兵数人に追い付き、野次馬へ危害が及ぶ寸前で(エクスカリバー)をその辺りにポイ捨てし、青の騎士甲冑をたなびかせて殴りかかる。

 

 

「だぁ!」

 

「ンアーッ!!」

 

 

 まず一人、いつもの(腹パン)で道路に沈める。 

 

 

「行くな、止まれ!」

 

「イキスギィッ!? イクッ!!」

 

 

 二人目、側面からショルダータックルを決めてぶっ飛ばし、壁にぶつける。そのまま追撃は……よし、気絶したみたいだ。

 

 

「オラァ! ケツだして盾になれっつってんだル」

 

「止まれと言っただろう!! シュバルゴ!!」

 

「であいたいっ!!」

 

 

 右に行った最後の一人を、首根っこを引っ付かんで二人目と同じく壁に、今度は投げて叩きつける。

 

 

「あ、ありがとナス!」

 

「いいから避難しろ! あっちは……!」

 

 

 襲われかけていた男性を軽く流し、急いで振り返って反対側を確認する。

 

 

「ちょっと手錠貸せ! よし、確保! このヤロお前らのせいで夏の同人祭典が台無しなんだよオルァ!! わかる? この罪の重さ、を、YO!!」

 

「放せコラ! 流行らせコラ! ア゛ッー!!」

 

 

 反対側に一人行ったのを見知った男……、伊丹が取り押さえていた。

 そのいつも優しげな顔は怒りで歪んでおり、手錠を掛けているようで無力化しているものの追い打ち気味に関節を極めている。痛そう。

 

 服装を見る限り、同人イベントに行く途中だったのだろうが、多分騒動に勘づいて来てくれたのだろう。こういう奴が自衛官の鏡というのだろうか。

 普段やる気はないみたいだけど、このファインプレイは感謝だ。

 

 

「伊丹!」

 

「行けセイバー! あいつらを"門"の向こう側に押し込めろ! 今自衛官や警察官が総出で市民の避難誘導をしているから後ろは気にしなくていい!!」

 

「了解!」

 

 

ポイ捨てしたエクスカリバーを回収して再び"門"の前、"奴ら"の前に立ちはだかる。

 

 

「ぬ、ぬぅ……! 怯えるな! 門から出られれば……」

 

 

 数秒経たずして散開する事も出来ず、完全に仕掛けるタイミングを失った大半の騎士兵。

 その隊長が更に萎縮した兵に激を飛ばそうとしているが、そうはいかない。

 本当に申し訳ないが――――。

 

 

「まぁまて、折角だ。余のこれも見ていけ(つわもの)よ。後ろの黒い者共も見ておけ」

 

 

 ――――いつの間にか、()の後ろでライオットシールド(防護盾)を構え、私ごと門を包囲している機動隊らしき人物も含めて。

 

 "戦う気"を喪失させようと思う。

 

 

「な、なんだ……今度はどんな魔法を使うのだ!?」

 

「アルトリアセイバー……鞘……あっ(察し)」

 

「カエリタイ……カエリタイ……」

 

 

 前からも後ろからもどよめきの声が上がるのに満悦し、叫ぶ。

 

 暴君という代名詞を持つ、セイバー()の宝具の名を。ゲームで何度も世話になった、あの名前を。

 

 軽やかに舞う様に、ステップを踏み。

 自身の才に酔いしれる皇帝の如く、高らかに。

 青の騎士甲冑のままの青セイバーで似合わないが、まぁいいだろう。大切なのはノリと勢いである。

 

 

「我が才を見よ! 万雷の喝采を聞け! 座して称えるがよい……黄金の劇場を!!!

 

招き蕩う黄金劇場(アエストゥス・ドムス・アウレア)!!!!」

 

 

「マジで何やってんのお前!?」

 

 

 伊丹が何か言ってるが気にしない。

 要は"奴ら"の進軍を阻みつつ、逃げられない様にすればいいのだ。

 

 宣言すると同時に世界が。

 具体的に言うと銀座大通りだったはずのクレーターだらけだった道路は赤い絨毯と金の床へと変貌し。

 下から、上へと。周囲の建築物やらを無視してそれは投影されてゆく。

 

 

「こマ……うせやろ?」

 

 

 機動隊の一人が呟く。

 

 金と赤に彩られたその皇帝の劇場は()を中心として完成し、後ろにいた機動隊と前にいる奴らの一部を完全に閉じ込める。

 

 建築物()を無視して投影された劇場だ。当然奴ら、前にいた敵の隊長と騎士兵数人は此方側(黄金劇場内)に無理矢理招かれ、残る後ろは招かれざる客として黄金劇場外に隔離した。

 

 そしてこの招き蕩う黄金劇場(アエストゥス・ドムス・アウレア)は"門"を塞ぐかの様に投影してある。

 

 これで"門"から"出る"事も"入る"事も()が許可するまで不可能となった。

 

 

「さて……黒い兵(機動隊)よ、あの者共をどうこうするのは任せ……」

 

 

 

 

「「「「「検挙ォォーーーーー!!!!!!」」」」」

 

 

 

 

「……たぞ……」

 

 

 最早茫然と、案山子同然に立っている騎士兵達に、機動隊がライオットシールド(防護盾)で襲いかかる。

 騎士兵達は戦意喪失し、全く抵抗していない。

 

 

「そんな……嘘だ……あり得ない……出鱈目だ……」

 

 

 先程まで叱咤激励していた隊長ですら、目を虚ろにして大人しく身を拘束されている。

 まぁ……うん、ここ日本だしそこまで悪いようにはされないだろう。

 そんな事を祈りながら、周りに拘束の指示をしている伊丹に声をかける。

 

 

「どうだ伊丹、余の招き蕩う黄金劇場(アエストゥス・ドムス・アウレア)は? 凄いであろう、壮観であろう、美しいであろう? 敵の兵を捕らえると同時に"門"を塞ぎ新たな兵を食い止めるという余の素晴らしい策に感動し、今日の夕食(ゆうげ)はピザーラにするがよい、ん?」

 

 

 ()としては。

「門は塞いだから敵を食い止めたぜ! ついでに尋問用に捕らえたぜ! だから今日の夕飯はピザにしようぜ兄貴!」

 ぐらいの事を言いたかったのだが流石は常時発動している皇帝特権(セイバーフィルター)。勝手にセイバー(ネロ)っぽく翻訳されて口からでる。

 

 

「ああ、お前が"門"の前でこいつらを食い止めてくれたおかげで"市民への被害は"全く出ていないな」

 

「ふふん、そうであろう? もっと余を誉めるが良い!」

 

 

 どやぁ、と言わんばかりであろう()にいつもの様に微笑み。近くにいる適当な機動隊員を伊丹は呼ぶ。

 そして「だがなぁ……」と続け、()の腕を掴みあげ。

 

 

 

 がしゃんっ。と。

 

 ……え、何コレ。手錠? 私に? 手錠? 何で?

 

 

「とりあえず検挙なセイバー。道路壊したから往来妨害罪だ、悪いがちょっと来てくれ」

 

「それと銃刀法違反っすね。すんませんねー、ちょっと来てくだせえ」

 

「ま、まてまて伊丹! 余は市民を守ったのだぞ!! 伊丹ーーーーーー!!!!」

 

 

 壊そうと思えば楽に引きちぎれそうだが、伊丹の前である以上荒事には出来ない。

 二次創作にありがちな組織アンチじゃあるまいし。

 

 

「伊丹ーー!! 伊丹ぃぃーー!!!」

 

「悪い! 頼むから大人しく拘束されててくれセイバー! 後で必ず迎えに行くから!」

 

「くっ……約束ですからね!」

 

 

 

 結局、私は自分で黄金劇場の出口を解放し、機動隊に連行されてしまった。

 何故……とは言えはしないが、あんまりではないだろうか。

 

 




皆さん、お久しブリーフ。僕がウィロー博士です。

こんな作品を、今か今かとアホみたいに待ち続けている皆さんに、私も早くしなければという焦りから今回はガバガバが更に加速したものとなりました
よって、僕は悪くありません。
えっこら、やんのか?いいよ、纏めて相手をし


次回→決意の朝が来たら

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