私はただ生存率を上げたい   作:雑紙

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今回は戦闘描写が多いので、ご注意ください。


二十六日目、二十七日目

配属二十六日目

 

 

私は筒井マモル。誕生日は四月四日。様々なものが解禁されるまであと一歩の十七歳。

昨日アラガミを討伐しまくっていたせいか身体がほんの少しだるい。任務に支障はないので問題は無いのだが。

外……あまり出たくない。昨日の忌々しい一件で精神的にかなり追い込まれている。あの正体が私であることは第一部隊の皆しか知りえていないが、それでも恥ずかしい。

身体が死ぬ前に精神が死ぬのでないだろうか。死因、女装によるショック死……これはひどい。

気晴らしに、神機で空でも飛んでこよう。

 

 

 

 

 

 

博士のラボに到着すると、シオがしっかりとした服を着ていた。昨日狩りまくったアラガミの素材から作ったそうだ。その美しい姿には男であれば必ず二度見してしまう程で、あの冷徹クールを装ってるソーマさんまでも褒めるほどだ。流石に素直な褒め言葉は言ってないが。

突然歌を歌い出したシオに何事かとツッコミを入れたかったが、皆して聞き入っていったので空気を読むことにした。確かに良い歌声で心に響いてくるので、悪い気はしない。ソーマさんと一緒に聞いた歌だと言って、皆一斉にソーマさんに視線を向けた。

ソーマさんはシオのことが気に入ってるんですか。と尋ねたかったが、恐らく……いやほぼ確実にソーマさんに殺されるのでぐっと堪えた。私、偉い。

しかし、勘づいたのかソーマさんにギロりと睨まれた。怖かった。

 

 

 

 

出張から帰ってきたらしいヨハネス支部長から呼び出された。そういえば最近姿を見ないと思ったら彼はヨーロッパへ行っていたのだった。申し訳ないが、正直存在すら忘れてかけていた。私は記憶力が低いから仕方がない。

話されたのはお預けになっていた特務についての詳細だった。最高機密の任務であり単独で行うことが多い為、本当に信頼するに足る人物に任せられる重要なものなのだそうだ。説明を聞く限り明らかに人選を間違っていると思うのだが、この支部長大丈夫だろうか。

適当な相槌をうって支部長室から出ると、クールな態勢のソーマさんがいた。曰く、支部長に深入りはするな、だそうだ。

支部長の息子で戦闘能力も抜きん出ているソーマさんも同じように特務に関係しているのだろう。元から支部長に対しては良い印象は抱いていなかったが、忠告してくれる分ソーマさんも心を開いてくれたのかなと少し嬉しい気持ちがあった。

 

 

 

はじめてのとくむ。アラガミのコアをとるのでおつかいという意味でも間違っては……いるか。

というわけで、私は支部長直々に依頼してきた機密の任務を受けた。

討伐対象は超大型アラガミのウロヴォロス。私やユイ、コウタが極東支部に来て間もない頃に第七部隊が倒したとされるアラガミだ。その時もコアを摘出していたはずだが、数が足りないのかまたコアが必要だと言ってきた。

特務なので今回は一人で行くことになる。仲間の警戒の目を抜けるのには最近慣れてきた。もちろん特務以外では任務は一緒に行くつもりだが、流石にいつも監視されてると、その、ねえ?

 

さて。嘆きの平原に足を踏み入れた私は早々に黒い小さな山……ではなくウロヴォロスの姿を発見した。確かに、大きい。私がこれまで見てきたアラガミのどれよりもその図体は巨大で腕のような触手をうねらせ、頭部には十数個の目が点滅している。

見つからないように慎重かつ迅速にウロヴォロスへ接近。間合いにそれを捉えると、すかさず捕食で肉の一部を抉りとる。

ウロヴォロスは悲鳴と怒りが入り交じった咆哮を上げ、複眼の視線が一斉に私へと降り注いだ。 バースト状態となった私はすぐさまその場を退避、すると地面から棘……いや、突き刺していた触手が飛び出てくる。地面を潜ってやってくるそれらを音で察知しながら回避、ジャンプ、時には装甲を使って防いでいく。

身体は大きいくせにやることはなんて姑息な……と思考していると、刺の嵐が止むと同時に辺り一帯が暗くなった。それが、ウロヴォロスが跳んだことによるものだと察知した私はブラストの放射で大きく後退、その直後に物凄い衝撃音と土煙がその場を覆った。

一撃、一挙動までもが致命傷クラスの攻撃と化している。大きいというのはそれだけでアドバンテージを得られるのだから、なんとも理不尽だ。

更に……私はすかさず地面を転がって横に回避。すると、極太のレーザーが先程いた場所を通過した。あんなものに当たれば消し炭……とまではいかないだろうが、良くて四肢の一つは使えなくなるだろう。

流石、ゴッドイーターの間で恐れられているだけはある。だが、普通のゴッドイーターならば倒せて当然でなければならない。どんなアラガミも等しく、だ。

 

 

故に――――喰らう。

 

 

私は捕食した際にセットされたアラガミ弾を連射する。その弾は一度上空へ上がったかと思うと、一筋の光となってそれぞれウロヴォロスへと降り注いだ。光が通った後の身体には小さな穴があいていた。

巨体が怯む。その僅かな時間で再接近。ウロヴォロスの身体を支えている足を集中的に切り刻む。地面から生えてくる棘は幸いそこまで長くはない、突出してきたと同時に飛び上がり空中で長い足へと更に連撃を叩き込んでいく。

跳び上がることも許さない剣戟により、見事ウロヴォロスは転倒。巨体に押しつぶされないようにしながら真正面へと移動し、ウロヴォロスの顔面の前に立つ。

どんな生命体であれ、目の防御は脆弱だ。ほとんどが弱点となり得るのに、目の強度など鍛えられるものではない。

そんないかにも狙ってくださいと言わんばかりの赤い斑点にむけて、私は容赦なく神機を突き刺した。夥しい量のどす黒い血が一斉に溢れ出し私の体を染めるが、そんなものゴッドイーターとして慣れた私に関係などない。

突き刺したままウロヴォロスの内部に向けて、インパルスエッジを放つ。あまりの衝撃にウロヴォロスは悲鳴を上げて暴れるが、関係はない。

放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。薬剤を摂取。

放つ。放つ。ウロヴォロスが苦し紛れに立ち上がり私の身体が持ち上がるが、支障はない。放つ……放ち続ける。

ウロヴォロスが咆哮を上げた。鼓膜に衝撃を受けるが、関係はない。私は神機を抜き、ウロヴォロスの頭部近くに足をかけながら捕食形態へと移行させる。狙いは、ポッカリと空いた頭部の穴。

光が収束し身が焼けるであろう熱をすぐそばで感じながら、私は黒を発射した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

特務を終えてアナグラに帰投した私だったが、ロビーにいたツバキ教官に話があると言われ、あるアラガミからリンドウ元隊長の腕輪信号が確認されたことを知った。

多少の疲労はあるものの、そこまで影響はない為に私もその討伐任務に参加することにした。それに、隊長としても放ってはいけない。

ツバキ教官は私情を挟むなと注意してくれたが、もちろんそのつもりだ。余計な雑念は生存率にも問題をきたす。心配なのは、任務のメンバーでもあるサクヤさんだが……何も言わない方がいいだろう。

神機の装備を変え、私は二連続で任務へ向かった。

 

 

 

 

 

 

少しばかりヘマをしてしまった。軽い打撲に骨が痛む程度だが、今日はこれ以上の出撃は控えた方がいいだろう。

 

私達は討伐対象であるヴァジュラ、そしてその派生と言われるプリティヴィ・マータ――私を一週間ほど寝かせてくれた氷を扱うアラガミ――を二人ずつのチームで担当して戦闘を行っていた。私とユイのチームは青白いヴァジュラ……プリティヴィ・マータだ。

怨みを込めながらいつも通りに私は突っ込んでいく。狙いを定めてくる氷塊をユイがレーザーで撃ち落としてくれるので、攻撃に専念出来た。まずは挨拶として顔面に刀身を突き刺し炎属性のインパルスエッジを叩き込む。女顔はぐしゃぐしゃだ、ざまあない。

怒って攻撃してくるマータだが、的確なユイの射撃により行動を限定されたりそれ自体を阻止されたりと散々だった。いつもよりユイが怒っている様子だったのが心配だったが、むしろ正確さが増してて怖かった。女性を怒らせてはいけないとしみじみ思う。

オラクルが切れて前線へとやってきたユイと共に、マータを翻弄しながら切りつけていく。前線がまだ慣れていないのか爪に当たりそうになったユイを、私は放射ブーストで回避しつつ回収。視界の端に映っていたユイの顔がほんの少し赤みをおびていたが、顔に変化が起きるほど怒りがあるのだろう。

私情を挟まない方がいいとはいったが、やはりリンドウ元隊長のことを気にかけているに違いない。早々に、撃破しなければ。

捕食形態でマータの足を噛み掴み、力を入れてその身体を転ばせる。思いもよらない行動だったのかマータは崩れた顔でぎょっとしていたが、その隙が命取りだ。

転倒しているマータの胴体に飛び乗り、神機を深々と突き刺す。そのまま身体をかっさいて、銃形態で傷口に放射弾を染み込ませた。のたうち回る寸前にマータから一度離れ、ユイとタイミングを合わせて一閃……咆哮を上げた後に、マータはその身体を倒した。

丁度サクヤさんとアリサの方も終わったようで合流し、素材と共にリンドウ元隊長の腕輪がないかを捕食しながら確認する。しかし、そのようなものは一切見当たらなかった。

アリサが調査隊に対して愚痴を零すのを聞きながらそこを後にしようとした時、そのアラガミは現れた。

高所でこちらを見下ろす、いかにも風格のあるアラガミ。プリティヴィ・マータを仮にメスヴァジュラと呼ぶのなら、それはオスヴァジュラと言うべきだろうか。いや、そもそも派生元のヴァジュラ自体男っぽい顔である。それよりも年をとっているような顔なので、オッサンヴァジュラという方が正しいのだろうか。

恐らく、あのオッサンヴァジュラが信号元なのだろう。ならば、あそこから引きずり下ろす。

私は神機を下に向け、放射弾を発射。撃ち続ける限り放射は続くので、単純な飛行であればこれだけでこと足りる。

アラガミに近づき、間合いに捉えた私は剣形態に変えた神機を振るおうとする……が、アラガミの背中からバチバチと嫌な音がするのを耳にした瞬間即座に装甲を展開する。刹那、放たれた雷弾が装甲を直撃。しかも一撃では終わらず、連射された為に装甲を張り続けるほかなく落下と同時に押し戻される。

私はすぐに刀身をしたに向けてインパルスエッジを放ち落下の衝撃をやわらげようとしたが、ほんの少し爆発が起きただけで十分なクッションにならなかった。オラクルのガス欠だ。よって、全身を強くうつことになった。

オッサンヴァジュラめ……と強く睨む私を嘲笑うかのように、アラガミはそこを離れていった。

 

そして、寒気を感じて背後を見ると、三人が無表情でこちらを見ていて……この後のことは、あまり思い出したくない。記述したとおり、怒った女性というのは怖いとだけしか……私には書けなかった。

 

 

 

 

 

自室で休んでいる私のところにユイがやってきた。なんでも、夕食を作ってくれるだとか。

とてもありがたいことではあるが迷惑なのではないかと尋ねると、「少なくとも無茶をするマモルほど迷惑ではない」と返されて何も言えなくなった。やっぱり隊長に向いていないのではないか、私。

ユイは私によくしてくれる。朝無理矢理起こしに来たり、普通の任務にはほぼ絶対についてきたり、帰投する最中は戦闘についての説教が度々起こったり……あれ、よくしてくれている……よね?

ま、まあ。こんな私に構ってくれるものだから感謝はしている。現にこうして見舞いも兼ねて夕食を作ってくれるというのだから、彼女の人となりがよくわかる。

やはり、人望もあって気遣いもできるユイが隊長になるべきなのではないだろうか。そう呟いたのがユイに聞こえてしまったのか、優しく励ますような言葉がユイから投げかけられた。私にはもったいないほどにだ。流石女神。

作ってくれた夕食はとても美味しかった。ポテトサラダなんで久しぶりに食べた……リンゴを入れるところが分かっている。

お礼に何かしたいという趣旨をユイに伝えると、今度の休みに一日色々と付き合って欲しいという要望があった。そんな程度でいいなら、と私が承諾するとユイは「楽しみにしてる」と笑っていた。喜んでくれたようで何よりである。

 

 

 

配属二十七日目

 

 

短い療養から復帰した私にはじめて与えられた任務は、またしてもリンドウ元隊長の腕輪信号が確認されたアラガミの討伐だった。

ツバキ教官の話や任務内容から察するに、あの時のオッサンヴァジュラ……ディアウス・ピターで間違いない。あの時の屈辱を是非晴らさせてもらうとしよう。

元々のメンバーであるユイ、アリサ、ソーマさん、サクヤさんに私を加えた五人で任務に望むこととなった。意気込む私にソーマさん以外の三人からくれぐれも無茶をしないよう注意された。ソーマさんから何か哀れみのような視線を向けられたので少しダメージを受けてしまった。

 

 

 

 

昨日とは異なり、今回は五人でまずプリティヴィ・マータを手早く倒して交戦経験のないディアウス・ピターに本腰を入れるとのこと。新型二人でも倒せたプリティヴィ・マータに更に新型とベテラン二人を入れた結果など分かりきっていることなので省略する。

そして、やってきたディアウス・ピター戦。バレットを弱点属性の神属性にしていることを確認しつつ、威嚇の咆哮と共に素早く繰り出してくる突進を左右に別れて回避。正面に立つとあの連射弾の餌食になるので、なるべく側面からの攻撃を心がける。

機動力を削ぐために足を狙って神機を振るうが、アラガミの身体が軽く傾き硬いマントで上手く切ることが出来なかった。……なかなか、知性はあるようだ。今までのアラガミよりも、遥かに苦戦しそうではある。

だがしかし、それはあくまで私一人であればの話だが。

反対側のソーマさんが代わりに脚部を切りつける。ディアウス・ピターはそれに反応して電気を帯びたドームを作り出すが、そこに二本のレーザーが発射されその身体を貫かれる。ほんの少しよろめいた所にアリサの連射弾が追撃、完璧に転んだピターへと私は頭に向けてインパルスエッジを、ソーマさんは待機状態だったチャージクラッシュを一気に放つ。

ピターは悲鳴を上げながらも宙返りして態勢を整え、咆哮を放つ。怒りによる活性化、さらに攻撃が激しくなるのだろう。

電気弾を周囲に展開したかと思えば、それが回転。接近していた私はその上を飛び越えながら、ピターの顔面に一撃入れてやる。ほんの少し動きが止まった瞬間にすかさず神機を突き刺し、インパルスエッジを放つ。が、痛みをものともしないように腕を振り回してきた。回避しきれないと判断した私は装甲を展開してそれを受け止めるが、重みを削減した小盾であった為衝撃を抑えきれず軽く吹っ飛ばされる。

転びつつもすぐに前を見据えた私は、即放射弾を発射。オラクルが尽きるまで放ったが、幾つもやってくる雷弾は見事相殺された。

こちらに意識が向いている隙にソーマさんと剣形態に変えていたユイとアリサがピターに攻撃を浴びせる。流石にたまらないと思ったのか、ピターは背を向けて全速力で走り出した。

しかし、そこを見逃すほどうちのスナイパー達は甘くない。ユイとサクヤさんは迷わず一つの足にレーザーを発射。着弾面積の少ないそれは見事足に命中し、ピターのバランスを崩すことに成功した。

後は私達接近職の仕事だ。私とアリサ、ソーマさんが横たわるピターに渾身の一撃を浴びせる。

力ない悲鳴と、僅かな挙動。ディアウス・ピターは力なく倒れた。……任務、完了だ。

 

倒したディアウス・ピターから出てきたのは……リンドウ元隊長の神機と腕輪だった。サクヤさんは静かに泣き、私達は改めてリンドウ元隊長……いや、リンドウさんの死を受け止めることになる。

 

 

 

 

 

サクヤさんから呼び出されて部屋に向かうと、そこには既にアリサも来ていた。どうやら、リンドウさんの腕輪を使ってロックされていた情報を見るらしい。現隊長である私にも確認して欲しい、とのことだ。

認証が通って情報を開示していくうち、私達は『エイジス計画』が隠れ蓑であり、本当の目的が『アーク計画』であることを知った。その全貌を掴むためにリンドウさんはエイジス島に直接乗り込もうとも考えていたらしい。

サクヤさんは私たちにこのことを忘れるよう促してきた。情報は多いに越したことは無い、しかし危険を孕むそれを持てば何かに消される場合がある。そのため、アーク計画という聞いたこともないそれが極秘に進んでいると知ってしまったら私達はその何かに陥れられてしまう。そう考えたそうだ。

サクヤさん本人もこのことを忘れると言っていたが、それは嘘だと私は思った。率直にいうとサクヤさんはリンドウさんに好意を抱いている。そんな彼が成そうとしていたことを放っておくほど、サクヤさんは悪い女性ではない。

……怒られた私が言うべきではないが、無茶はしないで欲しいな。

 

 

 

 

 

追記

アラガミ討伐数が三百体を超えていた。

まあ気分転換に小型アラガミを残滅してたらそうなるな、と詳細を確認するとその半分が中型以上のアラガミだった。……あれ、コンゴウって小型……だよね?




Q日記でどうして戦闘描写があるんですか?

A戦場の記憶を刻むためです(マモル談

という言い訳を考えたのですが、どうでしょう。ダメですよね、はい。
日記ものって本来もうちょっとほんわかしているようなイメージのはずなんですけどね。でもゴッドイーターだから仕方ない……よね? ダメ? ですよね。

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