私はただ生存率を上げたい   作:雑紙

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神薙ユイ 壱

彼と初めて出会ったのは私……神薙ユイが神機の適合試験を終えた後のことだった。

 

「初めまして、私は筒井マモルと申します。よろしくお願い致します」

 

「あ、よ、よろしく……」

 

マモルは礼儀正しく挨拶をしてくれたけれど、終始無表情だったものだから恐怖を覚えたことを私はよく覚えている。

肩あたりにまで伸びた黒い髪、濁りがかって生気があまり感じ取れない瞳、身長が百六十にまで至っていない私とほぼ同等の高さ……初見時、私は一瞬だけ彼のことを女性と見間違えてしまった。男性服を着ていたのですぐに気がつくことが出来たけれど。

後から聞いた話だが、何でもマモルは適合試験の時も全く表情筋を動かすことがなかったらしい。私は身を悶えるほどの激痛だったのに、マモルはただ受け入れるかのように立ち尽くしていたという。一体彼はどんな人生を歩んできたのだろう……私は不気味な人間だと感じた。

 

私とマモルは極東支部初となる新型のゴッドイーターであったので周りから様々な感情を乗せた視線を向けられた。期待、羨望、好奇心といったプラスなものもあれば、妬みや疎みなどマイナスなものまで……あろうことか、女性であることも相まっていやらしい目もあったので私は今にでもここから出ていってしまいたいと思った。

 

「……あ」

 

しかしその日、偶然ロビーを立ち歩くマモルが目に入った。勿論マモルも周囲から決して少なくはない視線を浴びていて、しかも陰口まで呟いている輩がいるのが傍から見てもすぐに確認出来た。なのに、まるでどこ吹く風というばかりに平然とした態度を取っていたのだ。

 

「……いいなあ」

 

自身を突き通すその姿に、私は憧憬……そして、ほんの少しの嫉妬を覚えていた。だが、この出会いのおかげで私の精神が成長したのは確かなことだった。

 

 

実戦演習の日、私は目を疑った。

オウガテイルという四速歩行のアラガミを倒すことでゴッドイーターの訓練は終了となる。贖罪の町へと連れてこられた私とマモルは一匹ずつアラガミを狩った。

私は自分でも良く出来たと思う手際でオウガテイルを撃退。リンドウさんも新人とは思えない動きだと言ってくれた程だ、間違いなく優れた動きだった。

だが、マモルはそんな私の結果を遥かに上回った。結果だけを言えばオウガテイルを一匹討伐しただけだが、それまでの過程があまりにかけ離れていた。その証拠に、マモルの倒したオウガテイルは原型を留めていなかった。

それも、まるで出来て当然だと言わんばかりの真顔で行ったのだ。

 

「……負けないから」

 

私の闘争心は密かに燃え上がっていた。

 

 

その日を境に、私がマモルに抱く印象は控えめに言って頭のおかしい死に急ぎ野郎になっていった。

 

 

オラクル集めの死体蹴り(斬り)は毎度のことで、放射弾と爆発弾を使っては空中を飛び交っている。それも決して後衛の射線の邪魔になっていないし、無傷で帰ってくるものだから頭おかしい。アナグラ内でも化物や狂人といった噂が広がっていた。

 

 

見ているこちらはいつもハラハラしているもので、マモルがグボログボロの胴体に乗った依頼の時はゲームが違うと突っ込みたくなった。宙に浮いた状態のマモルが攻撃されそうになって思わず叫んだ時、何食わぬ顔で放射弾を使って回避された際の羞恥心なんてものすごいものだった。

 

 

だが文句は言えなかった。過程はどうであれども――ただ純粋に、マモルは強かったのだ。だから私はどこか無意識にマモルに頼っている部分があり、彼がいれば大丈夫、決してこの狂人がやられることはない……そんな風に甘えていたから、あんなことが起きたのかもしれない。

 

 

リンドウさんが贖罪の町の建物に閉じ込められ、撤退命令を受けたあの日。私達第一部隊は必死にその場を逃げ出していた。

ヴァジュラに似た青いアラガミ数体に包囲されかけ、突破口を作り出したのはマモルとソーマさんだった。私とコウタはそれぞれアリサとサクヤさんを連れながら後退、その間にもアラガミ達は容赦なく襲いかかってきた。

ソーマは私たちに向かってくる氷の弾丸を神機で全て防いでくれていた為、殿を務めるのはマモルしかいなかった。冷気をまとった攻撃を躱してはアラガミの足を中心に攻撃、更に顔面に爆発弾を撃ち込んでの目くらましなど新人とは思えない場に適した行動をとっていた。

追ってくるアラガミの数は減っていき、ヘリまでの距離も後僅か。やはり彼といれば安心できる……そう、私は油断していた。

 

「……っ! まずい、避けろ!」

「え?」

 

ソーマから声がかかり、気づいた時には遅かった。轟音と共にやってくる鋭い大きな廃材。意図しない形で起こったアラガミが作り出した不意の攻撃。装甲の展開には間に合わず、確実にそれは私の命を狩れた。咄嗟にアリサを突き飛ばし、その恐怖に思わず目をつぶる。

 

暗闇の中で聞こえたのは、肉を抉る音と誰かの悲鳴だった。

 

 

 

 

――しかし、痛みは一向にやってこない。恐る恐る目を開けると、そこには見慣れた背中があった。いつもいつも迷惑ばかり持ち込んでくる、けれど頼りがいのあるその背を、血にまみれた尖った廃材が突き抜けていた。

 

「…………え?」

 

混乱する私にゆっくりと振り返ったマモルは、近くでよくみないと分からないほど僅かに頬を緩ませた。

 

そして勢いよく血を吐き出し、音を立てて地に伏した。初めて見るマモルのその姿が、目に焼きつく。

ようやく、彼が身を挺して庇ってくれたことを理解した私は、人生で初めてはちきれんばかりの絶叫を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユイ、貴女は何を一番大事にしていますか?」

「えっ? ……えーと、どうしたの急に」

「いえ、純粋に気になったものですから」

 

珍しくマモルから私に話しかけてきたので、その日の事はより鮮明に覚えている。

急に話題を振ってきた上に回答に困る質問だったので、私は上手く答えられなかった。

 

「うーん……ありすぎて思いつかないかな。マモルはあるの?」

「ええ。私は自分の身が一番大事です」

「えっ」

「えっ」

 

前線で馬鹿みたいな戦い方をするマモルから発せられた意外なものに、思わず声を漏らしてしまう。

 

「う、ううん何でもない。ただ、その割にはマモルって結構危ないことしてるよね、って思っただけで」

「そうですかね?」

「うん、間違いなく」

「即答ですか……というより、蔑まないので?」

「ううん? 誰でも自分の身は大切だし、それが普通だと思うよ。あまりに普通だったから驚いたんだし」

 

無表情だったマモルの顔が少しだけムッとしたような気がした。筋肉は微塵も動いてはいないけど、言葉だけ見るとしっかりと感情があるから面白い。

 

「全く、ユイまで私が普通でないと言うんですか……普通どころか落ちこぼれに近いゴッドイーターだというのに」

「ごめんちょっと何言ってるか分かんない」

「何故だ……。まあ、ユイがそう言ってくれるなら幾分気が楽になりました。素材集めにでも行ってきます」

「うん、そこだよね。どうして自分の身が大切なのに自らアラガミを狩りに行くの」

 

ツッコミを入れつつ肩をつかんで止めた私に、マモルは首をかしげた。たまに(危険な意味で)天然なところがあるのは第一部隊の内では認知されている。

 

「え、どうしてって……強い神機を作ったらより身の安全が保証されますし。それに今程度のアラガミなら私でも生存率は五割超えてますから、そこそこ安全なので」

「ああ、確かに……でもマモルの生存率はもうちょっと高いと思うし五割で安全って言う時点でやっぱりおかしいと思うんだけど」

「そうでしょうか?」

「そうなの! 全く……私も行くからね?」

「いつもお手を煩わせてすみません」

「本当だよ、もう。生き残る為に好んで戦場に行くなんて、やっぱりマモルはどうかしてると思うよ」

「そこまで言いますか……流石の私も抗議しますよ。私は別に好きでアラガミを狩っているんじゃありません。ただ……」

 

マモルは咳払いをして一拍おくと、無表情のまま高らかに言い放った。

 

 

 

「私はただ生存率を上げたい。それ以外に、ゴッドイーターとしてアラガミと戦う理由はありません」

 

 

矛盾のように聞こえたその言葉は、私の中で確かに響いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんなこと言ってたのに、どうして私なんか庇ったの」

 

病室のベッドで横たわるマモルの傍で、私はただ見守ることしか出来ていなかった。リンドウさんの捜索、アリサの不安定な容態、そして数日間ずっと意識不明に陥っているマモル……様々なことに意識が向きすぎて私は任務中でもミスを連発してしまっていた。

最もひっかかるのは、マモルのことだった。一番大事なのは自分自身なのに、生存率を上げたいとあれほど言っていたのに。マモルの行動の意図が掴めずもやもやがたまっていた。

早く……早く目覚めてほしい。本人に早く理由を問い正したいのだ。そして、自分の身を大切にして欲しいと怒りたい。それから……謝って、ありがとうと伝えたい。

だから、だから……。

 

「早く起きてよ、マモル……っ!?」

 

私はそっとマモルの手に触れた――瞬間、頭の中に見たことのない光景が流れ込んできた。

 

 

――それは、平和な光景だった。

数人の子供がじゃれあい笑い合う何の汚れもない場面。喧嘩をしても一日も経たないうちに仲直りし、また明日と手を振って別れる……普通でなければならない日常。

 

次に視界が移り変わった時、そこな地獄と化していた。あれだけ動き回っていた子供も、無邪気に笑顔を振りまいていた子供も、皆苦痛に顔を歪めるかぐしゃぐしゃになるほどの泣き顔を晒して、息絶えていた。唯一生存していたのは、その場に立ち尽くす少年。アラガミ達は彼に見せつけるようにして、子供達の亡骸を更に咀嚼した。

少年は、ふらふらとアラガミに歩み寄る。死を受け入れるかのように、ゆっくりと、ゆっくりと歩を進める。だがそれは、突然前方に現れた影たちによって止められた。

 

「生きろ。生きて償え。お前は決して死んではならない」

 

 

 

 

 

気がついた時には、私は身体中からどっと汗が吹き出していた。マモルは依然目が覚めないままで、何が起きたのか全然理解出来なかった。それが新型同士が触れ合うことによって発現する感応現象だということは、後に知ることになる。

 

 

その日のリンドウさんの捜索任務もはかどらず、重々しい雰囲気を醸し出しながら私達第一部隊はアナグラに帰投した。そしてロビーに入った瞬間、聞きなれた声が耳に入る。それは、私が最も聞きたかった人の声。

 

「あ、お疲れ様です。おかえりなさい」

 

私達を出迎えたのは、他ならない目覚めたマモルだった。病室の服を来たまま、何も変わらない無表情で、そのソファーに腰掛けていた。

 

「少々痛手を負った程度ですみません。早々に復帰できるよう頑張りま」

 

「「マモルゥーー!!」」

 

私とコウタは思わずマモルに抱きついていた。涙を流しながら謝罪を繰り返す私達に、マモルはそれ以上何を言うこともなく背中を優しく叩いてくれた。私達が落ち着くまでずっと、マモルは私たちを抱きとめたままでいた。

 

 

 

 

 

 

「マモル。どうして私を庇ってくれたの?」

 

数日後、出撃出来るようになったマモルと廊下を移動しながら、私は疑問に思っていたことを尋ねた。今更どうして、と思われるかもしれないけど言い訳を聞いて欲しい。

 

マモルは戦線復帰した日にとち狂ったのか中型、大型アラガミ討伐の任務を幾つもソロで受けていた。冷静に考えれば、マモルだから仕方ないで済むんだけど、病み上がりなのにどうして無茶をするんだと私は本気で怒ってしまった。それ以来任務以外でも必ず第一部隊の誰か一人が同行するようにして、彼が馬鹿な行動をしないかを監視するようになったのだ。気を配ることに集中し、ここ数日は目立った行動がなかったので冷静な思考を保つことができ、こうして疑問に思っていたことを聞けた……という深い訳がある。つまり、私は悪くない。

 

歩きながら、マモルは思い出したかのように「ああ、そのことですか」と言うと何でもないように言った。

 

「それは私の生存率を上げる為ですね」

 

返ってきたのは思いもよらない返答だった。私は首を傾げた。

 

「私を助けたことが生存率の上昇になるってこと? どうして?」

「まず一つに、単純に人数が欠けると第一部隊の戦力が落ちてしまいます。どうしてもチームで戦わなくてはならない事態に陥った時、新型でもあるユイさんがいなければ討伐がスムーズに行かなくなる場合があり……ひいては私達の生存率自体も下がってしまうので。士気も下がるでしょうから、更に下降しますし」

 

なるほど、と理解は出来た。マモルは本当に後のことも見越して生き残る確率を上げる為の打算をしているようだ。ただ納得はいかない。

 

「……私が新型だから、助けたってこと?」

「いいえ、ユイでなければ助けなかったかもしれません」

「……ふぇっ!?」

「だって強いですからね。それに成長もものすごいですし、こんなところで倒れてもらっては困る逸材ですから」

「あ、そう……なんだ」

 

一瞬変な意味で期待したことが恥ずかしい。素で言っていて、悪意も何もないだろうから余計にかんがえてしまう。……本人の前でこんなことを堂々と言っているのはいつもの天然なのか、それとも神経が図太いだけなのか。でも、いずれにしても褒められて悪い気分ではなかった。

 

「それで、二つめの理由ですが……話しても?」

「まだあるんだね。うん、一応聞きたいかな」

「では。二つ目は、ユイが女性だからですね。身体に傷痕が残ると女性は精神的なダメージも残るらしいので、万が一そのことを引きずってしまった場合戦闘能力が低下……結果的にはユイの生存率も下がってしまう恐れがあると考えました。そこからは一つ目の理由と同じです」

「うーん……ゴッドイーターになった時からそういうのは覚悟してたけど、改めて言われると……気にはしちゃうかも」

 

でも流石に能力が下がったりはしないと思うけどなあ……。というより、男のマモルが女のそういうことを気にかけるってどうなんだろう。

 

「そして三つ目ですが……」

「まだあるの!?」

「ええ、最後ですけどね。あのままユイさんに廃材が当たっていれば、何処を貫いていたか分からなかったでしょう。下手をすれば心臓を貫いて即死……なんてこともあったかもしれません」

 

ありえたかもしれない自身の姿を想像して、私はぞくりと肩を震わせた。

 

「なので、私は貫いても死なないところに廃材が来るように庇ったんです。流石に仲間を守って死ぬほど、私は聖人ではありませんからね……ここまでの日数寝込むことになったのは少々意外でしたが」

「……やっぱりマモルってどこかズレてるよね。普通そんなこと考えられても実行しようとは思わないよ。それに、怖いし」

「まあ、そうですね。ですが死ぬよりも安いと考えればなんてことはありませんよ」

 

マモルは足を止めると、背を向けたまま私に切り出した。

 

「私に失望したでしょう? 何せ、どこまでも打算的な私は貴女たちを私が生きるための駒のように見ているのですから」

「え、いや別に」

「えっ」

「えっ」

 

思わず振り返ったマモルは、ほんの少しだけ目を見開いていた。むしろどうして私が失望すると思ったんだろう。

 

「だって、マモルは色々と理由があったみたいだけど……結論を言っちゃうと私を助けるべきだと思ったから、庇ってくれたんでしょ?」

「え、ええ。ですがそれは私の為であって、ユイの為という訳では……」

「それでも、私がこうして生きているのは間違いなくマモルのおかげだもん。それに自分が悪いことをしているって自覚してる時点でマモルは良い人なんだよ。だから……ありがとう」

 

にこりと微笑むと、マモルは参ったという風に大きく息を吐いて前に向き直った。

 

「やはり、貴女のような方を女神とでも言うのかもしれませんね」

「変なこと言うんだね、マモル。私達は神を喰らう側だよ?」

「比喩ですよ、比喩。……っと、エレベーターが来ました。行きましょう、ユイ」

 

エレベーターに乗り込むと、私はさっとマモルに顔を見られないよう方向転換する。

 

 

 

――だからっ、そういう不意打ちが卑怯なんだって。熱を帯びた顔は、任務が始まるまでずっと続いてしまっていた。

 

 

 

マモルの隊長就任祝いが開かれる前夜、私は突然アリサに彼のことで話がある、と呼び出された。マモルが原隊復帰したばかりのアリサに休憩時間ほぼなしでアラガミ討伐任務を連続で受けさせたことを根に持っているのだろうかと私は不安だったが、どうやら違うらしい。

今思うと、あれは確かに酷かった。習うより慣れろとは良くいったものでアリサは確かに調子を取り戻し……むしろ前よりも動きが良くなったが、連続任務地獄に慣れていないアリサはグロッキーになっていた。私? 狂人が受けるほとんどの任務についていっていることから察して欲しい。

 

「ユイ、聞いてますか?」

「あ、ごめんごめん。それで、何かな?」

 

アリサの言葉で現実に返ってきた私は、手渡されたジュースを飲みながら耳を傾ける。

 

「その、リーダーのことですが。彼は一体何者なんでしょう」

「えっと、控えめに言って頭のおかしい狂人かな」

「なるほど。あ、いえ、そういうことではなく……私が知りたいのはリーダーの経歴なんです」

「経歴?」

「はい。……実は、感応現象が起きたあの時、私はリーダーの過去らしきものも少し垣間見てしまって」

「……ああ、そういうこと」

 

恐らく、アリサが見たものを私は知っている。数多の子供が喰らわれた惨劇、思い出すだけでも吐き気がやってくる。

 

「私もそれを見たよ……でも、マモルの過去は何も知らないんだ。極東支部で初めて会ったから」

「そう、ですか……。あの強さや、行動自体も異常ですけど、それがリーダーの過去と何か関係があるかと思ったんですが……」

 

確かに、マモルは色々なものが異常だ。人格はまともではあるけど、行動はほとんど読めない。それが、あの地獄から来ているのだとしたら……悪いことだとは知っているけれど、彼の過去が気になってしまう。

マモルは一番大事にしているものは生存率だと言った。ゴッドイーターになったのも、ただ義務だと言われたからに過ぎないと愚痴をこぼしていた。そこに虚偽はないと感じた。

だが……彼にゴッドイーターの資質があったのは、ただの偶然なのだろうか。

 

「……何かあったら、私達が支えないとね」

「はい。私も、精一杯リーダーに報いたいと思います」

「まあ、私達の出る幕があったらだけどね」

「そうですね……あの人、もう一人でいいんじゃないかな、なんてこと日常茶飯事ですしね」

 

アリサと笑い合いながら、私は静かに決意する。

もうマモルに頼りきったりしない。後ろばかりをついていくわけにはいかない。隣に立って、背中を任せてもらうう……その為に強くなる。

そして、いつか――――。

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、朝だよ! 起きてマモル!」

「起きます起きます、起きますから身体をベッドから落とそうとしないでください」

 

まだ眠っていたマモルを強引に起こす。隊長就任の日にマモルが寝坊して以来、私は毎朝マモルを起こす係になっていた。

悪い気はしない。むしろ狂人のマモルでも寝ている時は至って普通だという事実にいち早く気づけたので優越感があるくらいだ。

 

「ふう……ようやくゆっくりでき」

「ないよ! 早く行かないと集合時間にまた遅れるよ!」

「うーん……長い間寝たから体内時計が狂ってしまったようですね。早く直らないものか」

「私がいつも起こしてあげるから別にいらないってば! ほら、早く!」

 

作っておいた朝食をマモルが食べ終え、服を着替え終えた瞬間に私は彼の手を取って急いでロビーに向かう。最早それが日常となっていた。

 

 

……マモルは行動がおかしかったり表情がほとんど変化しないので誤解されやすいが、人柄はとても良い人だ。態度は基本礼儀正しいし、軽いノリにも一応のってくれる。戦闘中回復弾を撃つことは滅多にないものの、傷ついた時に回復錠を受け渡してくれたりと仲間想いの面もちゃんとある。

確かに戦闘能力は化物で行動は頭を疑う。打算的なのかもしれないし、変なところが天然だ。でも、マモルは私達同様に守り、守られるべき人間なのだ――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「乱入してきた数体の大型アラガミは倒しておきました。早く帰投しましょう」

 

訂正。やはりマモルはマモルだった。




今回は原作主人公(女)の神薙ユイの視点でした。
名前は公式主人公の名前を一文字変えただけ、何のひねりもありませんね。
というわけで、主人公が入院していたのはユイを庇ったからでした。今回は会話が多かったので、少しばかり楽で(殴
本編の補足や要望などの意見が頂ければこのような外編のようなものを入れていきたいと思います。勿論なくても入れますけども、万が一何かあったら、ですのでよろしくお願いしいたします。

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