私はただ生存率を上げたい   作:雑紙

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四日目〜六日目まで

配属四日目

 

 私の名前は筒井マモル。年齢は十七歳。誕生日は四月四日。実はサイボーグである。名前、年齢、誕生日、冗談がちゃんと書ける私は今日も正常だ。もしかしたら人類滅亡ウイルスなどが今日撒かれてしまっているのではないかと思ったが、そんなことはなかった。

 

  この文面を第三者が見たらこいつ頭おかしいのではないかと思われそうだが、茶化すくらいの精神の余裕がないとゴッドイーターはやっていけない。つまり、私はごくごく正常なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エリックさんの妹がアナグラに来ていたようで、ロビーで兄妹慎ましく話し込んでいた。私に気づいたエリックさんが手招きし、私も話をすることとなった。何でも、どんな洋服を買いたいだとか、妹には何が合うだろうかと服について相談され、何故私に振ったのかと尋ねると女子ではないのかと言われた。思わず「は?」と聞き返してしまった。そして少し怖がられた、妹さんにも。理不尽なショックだ。

 

  ……まあ、確かに私は男子にしては髪が長いし、一人称も私(わたし)であるが、それでも異性と間違えられるのは少し堪える。やってきたコウタとユイに「私は全然女性に見えませんよね?」と尋ねたら、二人共静かに目を逸らした。その場に崩れ落ちたのは書くまでもない。

一見するとそう見えるだけで少ししたら男性だと分かると二人からフォローを受けたが、私の男としてのプライドはガタガタである。

 

  エリックさんの目が一瞬光ったような気がするが……あれは気のせいだろう、きっと、そうであってほしい。寒気を感じるほどの嫌な予感が嘘であるように願う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  今日初めての任務は中型アラガミ、グボログボロの討伐だった。魚のようなアラガミで、弱点属性は雷。前方に立つと砲塔で狙い撃ちされるため真正面に立つのは必要最低限にするべきである。データベースさんにはなんともお世話になるものだ。私の生存率を高めてくれるのだから。

 

  メンバーは新型の私とユイ、陽動を担当するリンドウ隊長とバックアップに徹してくれるサクヤさんだ。私達は遊撃……好きに暴れてもいいと言われたが、ユイから「限度は考えてね」と釘をさされた。……一体何を言っているのだろうかと、とりあえず私はいつも通りに動くことにした。

 

 

  近くでたむろっていた一応討伐対象のオウガテイルを斬殺。新武器の切れ味はなかなか、爆発と放射の威力や勢いも増していて私は気分が良かった。

 

 

 そして、リンドウ隊長が連れてきたグボログボロとの交戦。敵を発見した時、まず私が駆け出しユイが狙撃するのはもう何度も見慣れた光景となっていた。更にそこにサクヤさんのバックアップも加わり、顔面にレーザー二つとロングブレイドの一撃で容易に怯んだ。リンドウ隊長は……どうやら私達の攻防を見守るらしい、構えは崩してはいないものの攻撃に入る様子はなかった。

 

  怯みから回復したグボログボロはヒレを大きく振るいながら体当たりしてくる、が、見え見えの軌道上に乗るはずもなくステップでさっと避ける。そして柔らかい胴体に刀身を挟み込み、抉りとり、突き刺す。血しぶきが顔にかかり気持ち悪さが襲いかかってくるが、ようするにトイレ掃除と同じようなものだ、殺ってしまえばそれで終わり。

 

 

  飛び上がり、グボログボロの胴体に乗ってすかさずブラストの爆発弾で真下の砲塔に連発。グボログボロは悲鳴を上げて私を落とそうとしたが、軽い地震程度の振動でゴッドイーターを落とせるはずがない。オラクルを消費しきるまで爆発弾をぶち込んだが、砲塔は破壊できていなかった……流石にメイン武器は固いか。

 

  すると、突然グボログボロがプルプルと震えだした。更に真下に広がる渦……それが攻撃だと判断し、素早くグボログボロの胴体から飛び上がる。渦の範囲はまだ越えることが出来ていない、しかも身体は宙で身動きが取れない……後ろからは悲鳴が上がった。

 

  その時声の主……ユイは何を心配していたのだろうか?  私は辛うじて残っていたオラクルを放射弾に転換、その反動ででグボログボロの攻撃範囲から簡単に逃れる。普通のゴッドイーターならあんな見え見えの攻撃回避できて当然だ、まさか私はまだ普通のゴッドイーター未満だと認識されていたのか……いやしかし、その通りだ。生存率はまだまだ低い、慢心してはならない。精進しなければ。

 

  何か言いたげな三人を他所にして、私は再びグボログボロに突貫する。ユイも私に続いて刀身に持ちかえ、左右のヒレに狙いを定める。ステップしながらの攻撃で素早く、相手の射線に入らないよう気をつけて切りつける。ほぼ同時のタイミングで左右のヒレを切り裂きよろめいたところを攻撃ざまに捕食、オラクルもすっかり回復したのでサクヤさんの射線に入らない真正面へと移動し、砲塔に銃身の先をセット。放射弾で一直線に逆流させる。すると驚くことに、一発で砲塔が結合破壊された。それでも半ばから折られているだけでそれ自体はまだ健在だったので、そこに再びセット。粉々になるまで放射弾をぶっぱしていたら、びくんと痙攣した後グボログボロは動かなくなってしまった。……あと数cm残っていたのになあ。

 

 

 討伐に成功し、皆でグボログボロから素材をもぐもぐしていると、三人からお小言を頂いた。リンドウ隊長曰く「生きる気あるか?」、サクヤさん曰く「放射の使い方も間違ってる」、ユイ曰く「どうしてグボログボロの胴体に乗ってるの、馬鹿なの、死ぬの」と散々である。しかも最後には揃って狂人めと言われた。誠に遺憾である。

 

  対して、ユイのほうはとても褒められていた。サポート優秀、周りのことをよく考えてる、あの馬鹿とは大違い、歯止め役等々……うむ、良いことである。私が迷惑をかけてしまっているのが悪いくらいだ。

 

 

 帰投中、三人に……特にユイにこっぴどく叱られたが、私には何故叱られたのか見当もつかなかった。危ない、危険だの言われて、ようやく気がついた。自分がどれだけ危ないことをやっていたかを。

 

  何の用意もなく胴体に乗るなんてなんて馬鹿馬鹿しいことをしていたんだ。そのことについて謝ると、三人はほっとした様子だった。それに怒るなら無理はない、私だって怒っていただろうから。

 

「すみません、次からはちゃんと持参したナイフを突き刺して自場を確立してから行います」と誠心誠意を込めて伝えると、ユイの拳が一直線に顔面にめり込んだ。理不尽だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

配属五日目

 

 

 

 

  今回はなんと第一部隊揃っての依頼であった……はずなのだが、リンドウ隊長がお忍びのデートに行くという理由で参加しなかったのだ。隊員の面々……特にコウタは不満そうにしていたのは納得出来る。が、意外にもサクヤさんや仕事に敏感そうなソーマさんはあっさりとしていた。ああ、これはデートじゃなくて違う何かだなと予想するのは安易だった。 ユイとコウタは気づいていなかったみたいだが……口は災いの元、何も言わないことにしよう。

 

  今回の討伐対象はコンゴウ一体とザイゴート三体だ。場所は贖罪の町……オウガテイルが花火と化した思い出深い場所だ。

 

  ザイゴートは声を上げて獲物がここにいることを知らせるため、コンゴウとの相性は良い。ゴッドイーターからすると組ませたくない相手だ。

 

 

  いつも通り、まずは小型アラガミ……ザイゴートの処理からだ。ザイゴートは大きな目を背負った目無しの女性のようなアラガミで宙を浮いている。弱点の瞳を狙って銃で撃ち落とすのが一番理想的であるのだが、生憎と私はレーザーや弾丸……遠距離のバレットは持ち合わせていなかったのでやっぱり近づいて殴る方向で殺るしかなかった。

全員が散らばり、同じく旧型刀身のソーマさんと一緒にザイゴートを探す。なんで新型が近接しか出来ないんだと怒られたが、渋々同行を了解してくれるあたり根は優しいのかもしれない。

 

 

  ザイゴートを発見し、相手もこちらを発見した瞬間に私とソーマさんは飛び上がり、神機を振り下ろして三分割にした。小型アラガミは大抵一撃で済むから楽だなあと忘れず素材をもぐもぐさせ、通信が入る。どうやら皆ザイゴートを倒せたようだ、素材が惜しいのが少し残念だけど。

 

 

 

  集まった私達によりコンゴウはあっという間に息絶えた。まあ旧型三人だけでも十分なのに、私達新型が加わったらこうなるだろうなあと煙を上げて倒れるコンゴウの身体を群がった黒いアレがもぐもぐしている。

 

 

  コウタから「内臓破壊弾(物理)かよ」と引かれたのだが、そんなことをした心当たりはあまりない。コンゴウのだらけている口に銃身を突っ込んで放射、突き刺した刀身からインパルスエッジをぶっぱなどしたものの、直接的な弾はぶち込んでいないはずなのだがコウタは一体何を言っているのだろうか。サクヤさんは諦めたかのような酷くつかれた顔をしていた。ふーむ……やはりどんなアラガミ相手でも皆疲れるものなのだなと思った。

 

 

 

 アナグラに帰投して出迎えたのはデートを終えたらしいリンドウ隊長だった。少し小話した後、アナウンスで第七部隊がウロヴォロスのコアの剥離に成功したというなんとも驚いた報告が為される。ロビーにいる人は慌ただしくなり、研究員が次々とエレベーターに乗っていく。

 

  ウロヴォロス、簡単に言えばとても大きくて触手が無数にある目が多いアラガミ。確かデータベースにそんな感じで載っていた。姿も見たけど、あれを倒せるのがやっぱり普通のゴッドイーターなんだろう。

 

  リンドウさんの態度がどこかおかしかったが……うーん? まあ気にしなくてもいいか。

 

 

 

 

 

 

 

 ロビーのソファーでくつろいでいると、ユイからクエストの同行を頼まれた。なんでも、もう少しで新しい銃身が完成するのでその素材集めを手伝って欲しいのだとか。勿論、前に私を手伝ってくれたのだからそれを否定するわけもなく二つ返事で承諾した。ユイは目を輝かせるほどに喜んでいて、手まで握ってきた。そこまで嬉しいのだろうか……私も良い素材集めになるし、丁度良い。

 

  依頼を受ける時は二人のみだったのだが、恐らくユイは私との連携の練習も兼ねて誘ってくれたのだろう。なんていい子なんだ、返ったらジュースを奢ってあげなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

配属六日目

 

 

 

 昨日少しヘマをして腕を痛めてしまった。調子に乗って前衛でバッサバッサやっていたらユイの後ろから依頼になかったアラガミ(コンゴウ)が乱入してきて襲いかかろうとしていたのだ。咄嗟に放射ブーストで間に割って入り装甲を展開したものの、ゴロゴロ攻撃を押しとどめるのに大分筋力を使ってしまい腕がしびれてしまった。仕方なく私は足指を使って刀身を振るい、ユイのかなり怒りを込めた弾丸と共に撲滅したのだがその後ユイが涙を浮かべながら謝ってきたのには本当に困った。

 

  「いや、あそこは私の判断が甘かったんです。放射で一緒に避ければ良かったので」と思ったことを言うと、「冗談でも本気に思えちゃうよ」と困った笑みを浮かべながら返答してくれた。冗談ではなく本気なのだが……元気になってくれたので黙っておくことにしておいた。

 

 しかし、腕を痛めたとはいえ任務自体にはそこまで支障はない。放射と爆発を使ってブーストステップとか軽い空中飛行を行う事は出来ないのが残念だが……今日は普通のゴッドイーター未満の実力になりそうだ。無理は禁物である。 とりあえずウォーミングアップとしてコンゴウとグボログボロ同時狩りでも行ってこよう。……としたら、ユイに叫びながら止められた。何故なのだ。

 

 結局ユイと二人で任務に行くことになった。最近は二人きりで行くことが多いが、無理していないだろうか……? 少し不安だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 帰投すると、アナグラが少し騒がしかった。どうやら新しい新型が第一部隊に配属されるらしい。第一部隊の面々もロビーに集まっていて待機しているところに、彼女はやってきた。

 

  アリサ・イリーニチナ・アミエーラ。ロシア支部からやってきた新型適合者で、訓練では抜群の成績を残しているらしい。実戦経験がない、というのが少しばかり不安を煽ったが、コウタが一蹴されるあの態度からして心配はなさそうだ。

 

 

 その後、ペイラー博士からの講義があったのだが、私はやっぱり右から左に流していた。アリサから「自覚が足りない」と言われて少しびくついたが、どうやら居眠りしているコウタに向けて言われた言葉だったようだ。ナイスコウタ。ユイからのジト目を私は見ていないことにもする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 新人新型のアリサを交えての任務、他メンバーは私とユイとリンドウ隊長だ。リンドウ隊長は足を引っ張らないように気をつけるだとか言っていたが、それは逆なのではないかと疑問を抱いていた時、アリサが何とも黒歴史になりそうな発言をした。旧型は旧型なりに働いてくれれば……そんなことを口に出来るメンタルはすごいと思う。いや、それとも単に傲慢なだけなのだろうか。

 

  リンドウ隊長が気さくに話しかけ、アリサの肩に触れた途端アリサは尋常ではない様子でばっとリンドウ隊長から離れた。……またセクハラですか、という瞳でリンドウ隊長に視線を送るが、苦笑いを浮かべるだけだった。

  まあ、恐らくアリサは緊張していただけなのだろう。極度の男嫌いならあの反応でもおかしくはないが、私やコウタとは普通に話せてはいたし……少し見下された感じの態度だったけど。リンドウ隊長もそれを察したのか、心を落ち着かせるアドバイスをアリサに言い渡した。

 

  空を見て動物の形をした雲を見つける、それが出来るまで動くなという命令をアリサは嫌々ながらも受け入れ、私達はリンドウ隊長の指示に従って先に討伐目標の索敵を開始した。

 

  ちなみに、アリサはすぐにやってきた。早すぎる。

 

 

 

 

 今回の討伐対象は人の形をしたアラガミ、シユウ。それも二体だ。一度私とユイは交戦したことがあるが、アリサはいきなりの中型アラガミとの対決となる……しかし、あれだけ自信満々なのだ、大丈夫だろう。

 

  シユウは腕に翼のようなものをもち、なんというか拳法のような技や動作を行う。気弾(熱の塊)を扱うやり手……これまでの中型よりも手強いアラガミだ。慎重にエリアを捜索していき、食事中の一体を補足する。言葉を交わすことなく全員が目を合わせ、頷いた後にリンドウ隊長と私が駆け出し、アリサとユイが銃身を構えた。

 

  不意打ち捕食と同時のタイミングで打ち出されるレーザーと弾丸の連射がシユウの上半身を襲う。バースト状態となり、身体能力が向上したのを感じて一気に攻めて……いこうとしたが、シユウが回転気弾を繰り出して前衛を寄せ付けなくする。だが、止まれば遠距離の良い的だ。上半身に照準をつけていた二人は頭部を一気に狙い撃ち、結合破壊を起こさせる。怒った様子のシユウが二人に向けて大きめの気弾(熱の塊)を放とうとするが、私とリンドウ隊長の斬撃で片腕をもぎ取り、それを不発に終わらせる。切断面を抑えて地面でジタバタするシユウの上半身に爆発弾を数発御見舞し、装甲が外れたところにロングブレイドを突き刺す。あとはインパルスエッジで内部……コアをボカンとするだけの簡単なお仕事だった。

 

 

  死体から素材をもぐもぐし、続けて二体目のシユウに向かって行動を開始する。といっても、殆ど上記と同じような殺り方だったのだが。強いて言うならユイがシユウの両目に当たる部分にレーザーを的確に打ち込んだものだからえぐいなぁと思ったくらいだ。そのことを伝えるとユイは「マモルほどじゃない」と疲れた顔で言ってきた。……私はどこかおかしいのだろうか。アリサに意見を求めると、「ドン引きです」と蔑まれた。きっと私は女性に嫌われているのだろうと確信した瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 追記

 思ったよりも腕の痛みが引いてこない。うーん、二体目のシユウの気弾を刀身でピッチャー返ししてしまったからだろうか。リッカさんに「下手したら折れてるよ!」と言われ、身の上の心配をされたのかと思ったら刀身の心配だった。少し悲しい。




日数経過とかは殆ど適当なんです、ごめんね。
あと日記形式っぽくないかもしれません、ごめん。
一応補足としては、一回一回任務から帰投したりする時に書いてるつもりなので、ご容赦ください。

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