私はただ生存率を上げたい   作:雑紙

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GOD EATER BURST
三十一日目~三十四日目


 配属三十一日目

 

 私の名前は筒井マモル。誕生日は昨日の四月四日、記念すべき十八歳になった。まあ、その日は第一部隊の面々に日記を書いていることないしその内容がバレてしまった日でもあるが。

 それでもなおこうして書き続けるのは習慣となってしまっているから……それと、まだ書き込めるところがあるからだ。紙の一つも無駄にはできないのだから、自分の始めたこの日記は最後まで書きたいと思っている。

 さて、世の中には十八禁というアダルトチックなものがある。私もこれでも一応男ではあるし、こんなご時世でもそういった類の書物はそこかしらに落ちているもので……とはいっても、私はそんなもの一つとして持っていないが。

 興味はあった。しかし、道端に落ちているようなそれに目を向けようとした瞬間に味方が放ったバレットが直撃して燃え尽きたりする。振り返ると、どこか含みを感じさせる笑みを浮かべたユイが決まって立っているのだ。怖い。

 ちなみに、今日はユイが起こしてくれる前に目が覚めたのだが、部屋にやってきたユイは何故か不満気だった。「私が起こすまで寝ているべきだよ」とまで言われた。……昨日の日記が何か関係あるのだろうか。甚だ疑問である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 任務を受注するまでに何度か他のゴッドイーター達とすれ違ったのだが、その視線に含まれる畏怖がこころなしか少しばかり薄れていたような気がする。やはり昨日のことで何か影響を与えてしまったのだろうか……いつも慣れている周囲と少し違うものだから、逆に心苦しい感じがした。

 

 ヒバリさんの対応も前までは若干他のゴッドイーターよりも投げやりな感じだったのに、何かを察したかのような苦笑いにも似た微笑みを浮かべていた。私の知っているアナグラと違う……まさかみんなで私にドッキリでも仕掛けようとしているのだろうか。いや、別に構わないのだが、どんなものであっても恐らくリアクションに困ってしまう。恐らく良い反応を見せないと他のみんなからの反応がより冷たくなってしまうに違いない。

 

 第一部隊の隊員が自発的に任務に一緒に来てくれるおかげで私はソロで狩る事はなくなっているが、基本的に私はぼっち気質なのだ。他人とはなにかしらの理由がない限り積極的に関わることが少ない……つまりは、他愛もない話はやりにくい。加えて隊長だとは言うものの簡単な書類の整理や新種のアラガミと積極的に交戦を行うなど、取るに足らない仕事しか今現在していないために皆からプラスの感情を抱かれているとは言い難い。プラスマイナスゼロなら御の字というほど、あまり各員とじっくり話してはいないのだ。……まあ、話下手の私が話題を持ちかけたところですぐに会話が途切れてしまうことなど目に見えているのだが。

 

 そんな第一部隊に、更に悪印象を与えるノーリアクションなんてしたら、絶対零度と同等のマイナス感情を抱かれるに違いない。それによって起こりうる士気の低下……それは私の生存率に大きく関わってくる。下手をすれば後ろから刺される可能性だって考えられる。……いや、流石に皆の性格からしてそれはないだろうけど、隊長の辞任の示唆くらいはしてくるだろう。

 

 昨日社会的に死んだばかりなのにまたもや生死の危機に囚われるとは……もしかして私の後ろに死神でもいるのではないだろうか。そう考えて振り向いた時はユイしかいなかったが。……何とかして、最善の行動を取らなければ。

 

 今回の任務はサクヤさんを除いた第一部隊全員での新種アラガミの討伐だ。偵察班の人の話によると炎を扱うアラガミだったそうだから、弱点属性の氷の神機を用意しておこう。…………そういえば、何故皆は神機の刀身や銃身を変えないのだろうか。任務が終わったら聞いてみるとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 配属三十二日目

 

 

 神機が故障してしまった。神機のメンテナンスをしてくれているリッカさんからは「無理をしすぎた代償」とまで言われた。……そこまで私は戦場の相棒に負荷をかけていたのだろうか。あのアラガミのパンチと真っ向勝負させたのがいけなかったのだろうか……。

 気が落ち込んでいるが、私の右腕はこのペンと日記に慣れ親しんでいるので文を綴っていくことにする。

 

 昨日、私達五人は新種のアラガミ……ハンニバルと交戦した。なかなかアクロバティックな動きをするアラガミで、炎の槍のようなものを作り出すのは普通以下の人間である私の目からしてもなかなかに興味深いものだった。逆鱗と呼ばれる部位を結合破壊してしまうと強くなる、という珍しい特徴も相まってそこそこ苦戦してしまったが、攻撃の予備動作や炎の竜巻の軌道のパターンなどは読みやすかったのでそれが分かった後はそこまで苦労はしなかった。

 

 そして、核であるコアを取り除いてアラガミを討伐、後は帰投するのみであったのだが……倒した筈のハンニバルが炎を巻き上げながら蘇ったのだ。その際、近くにいたコウタへとハンニバルは攻撃を仕掛けようとしていたので、いち早く私は間に割って入り殴ってくる腕を刀身で切り返す形でカバーした。ハンニバルは腕を抑えながら撤退した……が、神機からパキッと嫌な音がしたかと思えば、血のようなものを吐き出していたのだ。

 

 帰投すると、装甲をもっと使うようにとリッカさんから釘をさされた……装甲の装備はあまり弄ったことがなかったのでそこまで意識していなかったが、ああいう時に正しく使うのが普通のゴッドイーターというものなのだろう。

 

 みんなからもいつも通りお叱りを受けるだろうなと内心びくびくしていたが、何故かお咎めなしだった。何だろう、本格的に恐怖を感じてきた。日記の影響かとも考えたが、それはない。あれには基本的に私の行動をただ記しているだけのものや戦闘記録が書かれている程度で……見られると悶えるほどに恥ずかしいものではあるが、皆の態度が変わるほど劇的なものではないはずだ。やっぱり皆して私をドッキリに嵌めようとしているのだろうか……緊張が走る。

 

 

 さて。神機の修理は早くて明日終わるそうで、ツバキ教官からは休暇ついでに身体を休めておけという提案を受けた。確かに、最近は落ち着いて休息をとっていなかった為にその案はありがたかったのだが、落ちこぼれの身であっても私は隊長だ。戦場には立つ義務がある為に、スタングレネードや回復玉等の役立つアイテムを持って任務についていこうとした。空を飛べないことで戦術の幅は狭まるが、ゴッドイーターの運動神経とナイフ(ショートではない)を目に突き刺せば充分アラガミに通じるだろう……と説明する間もなく拒絶された。それもかなり必死であり、ユイやコウタまでかなり怒っていた。やはり私は嫌われているみたいだ、悲しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 エントランスに向かった時、そこには私とヒバリさん一人だけがいた。コアを抜き出されても体内で生成することが出来る不死のアラガミと称されたハンニバルの対策会議に皆出ていたらしいが……実はドッキリの計画を立てているのではなかろうか。いや、流石にあの異常なアラガミ相手だからそんなことはない……と信じたい。

 オペレーターであるヒバリさんと二人きりになることは滅多にないので、戦場外からの支援をしてくれる人から何か私に対するアドバイスがないかを思い切って尋ねてみた。すると、ヒバリさんはしばらく考え込んだ後に、「とりあえず、任務を重複して受けたり任務外のアラガミを目に入ったものから倒していくのを抑えた方がいいのではないでしょうか」と言ってくれた。「というよりどうしてそんなことをするんですか」と逆に尋ねてきたのには驚いたけれど。

 私は一度に受けた方が何時も運んでくれているヘリコプターの負荷も減るし、任務外のアラガミも神機の素材の為に積極的に狩る必要があることを伝えた。全ては私の生存率の為……何もかもを利用しなければこの世界では生きていけないのだ。人に関してはデリケートだし度胸がそこまでないので考えなければならないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 配属三十三日目

 

 

 

 

 朝起きたことをとりあえずまとめよう。

 起きるとリッカさんがいきなり掴みかかってきて、次にユイが頭を叩いてきて、レンさん――彼のことは後に記述する――は私を見ながら震えていた。書いていて私も訳が分からないが……ここに至るまでの経緯を綴っていくことにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 昨日、他のゴッドイーター達が皆任務に出撃していた際、アナグラがアラガミによる襲撃を受けた。ハンニバルに集中していた為に警備が薄くなっていたのかもしれない。その時エントランスにいたヒバリさんは急いで防衛班に連絡をしていたが、私は一刻も早くアラガミを止めるために神機が保管されている場所へと赴いた。

 

 そこに一足先にいたのはリッカさんで、プログラムを操作して他の神機をアラガミから守るために収納している最中だった。私の神機は既に見当たらず、他の神機も次々と仕舞われていく。しかし状況が状況なので、私は当人には申し訳ないと思いつつも、最も近くにあった神機を手に取り――その瞬間、腕に激痛が走った。リッカさんが隣で何か叫んでいるのが聞こえたが、言葉まではよく聞こえなかった。神機適合試験の時と似たような痛みに引かれつつも、私は神機を取り出した。驚いていた様子のリッカさんだったが、突如、後ろの防壁が破られてその衝撃で鉄製の柵へと激突しようとしていた為に私は咄嗟に身体を受け止めた。女性にきやすく触れるのは気が引けたが、許して欲しい。

 

 入ってきたのはオウガテイル……の亜種であるヴァジュラテイル(雷)。オウガテイルよりも耐久力はずっと上ではあるが、コンゴウよりかは低い。故に、私は駆け出して一発で決めるつもりで刀身を振るった。だが、何時もの神機と異なるために間合いを図りそこね仕留め損なった。急いで追撃を放とうとしたが、その瞬間に頭の中で見たことのない光景がフラッシュバックしてきた。

 その衝撃は感じたことがある――感応現象、それと似たようなものだった。一つ異なるのは、頭が割れるような痛みなどあの時はなかったということか。私は崩れ落ちそうになるのを何とか堪えるが、ヴァジュラテイルの牙がすくそこにまで迫っていた。その窮地をレーザー弾を放ってひるませることで救ってくれたのか、レンさんという新人の神機使いだった。その隙をついて私はコアがあるであろう場所へと神機を突き立て、力の限りにたたき落とした。アラガミは何とか撃退できたが、私の意識はいつの間にか闇へと落ちていた。

 

 

 

 

 

 

 

 これらが昨日までのことだ。今朝、病室で目を覚ました時に視界に入ったのはリッカさんとレンさん、それにユイだった。皆が皆心配そうな表情をしていたので何事かと思ったが、まず突然にリッカさんが私の肩へと掴みかかってきた。「君はいっつも無茶して……」と少し目が潤んでいたが……私はそこまで無茶をしたことがないと思うのだが。話を聞くに適合していない他人の神機に触れると拒絶反応が起こりそのオラクル細胞が私を捕食し始めるらしい。そうなれば何が起きてもおかしくない……というわけで、決してもう他人の神機に触れないと約束するよう迫られた。

 とても距離が近いので私は口が籠もって言葉を発せなかったが、首を何度も縦に振ることで肯定の意を示した。後、顔についていたオイルが気になったので指で拭き取ったら頬を赤くして部屋から出ていったが……男性に触れられるのが嫌なだったのだろう。申し訳ないことをしてしまった気持ちになる。

 

 その後、ユイが頬を膨らませて不満気だったので理由を問うたのだが「なんでもない」とそっぽを向かれた。追求すると馬鹿と罵られた後に頭を叩かれ、怒りのままにユイは部屋をあとにした。何故だ。

 

 そして、恩人でもあるレンさんなのだが……目を合わせるとびくりと跳ね、さっと目をそらされた。明日この極東支部に新たに配属される新型のゴッドイーターの一人で、医療班に所属しているとのことらしいが、その話の最中も声が震えていたり身体までもが震えていたりとかなり恐怖を感じているようだった。新人にもここまで怖がれると流石の私も堪えるのだが、第一部隊の面目を守るため隊長の私が泣くわけにはいかなかった。

 

 話をしていると、「あなたは一体何なんですか?」と突然真剣な表情で見つめてくるものだから、私は返答に困った。何者、ではなく何と聞いてくるあたりレンさんは私のことを化物かなにかとでも思っているのではないだろうか。本当に泣きそう。

 

 私は私であるとしか言えなかったのでそう答えると、レンさんは何かに納得したように頷いて、微笑みを浮かべてくれた。それが純粋なものであれば良かったのだが、身体がやはり震えていた。……極東支部の噂での私は新人にまでここまでの恐怖を与えてしまうのだろうか。困ったものだ。

 

 

 後にコウタから聞いた話で、ユイは私が倒れたと聞くと討伐対象のアラガミを修羅の如く切り刻んで予定よりも数時間早い帰投を果たしたらしい。仲間想いのユイの方がやはり、よっぽど隊長に向いていると思うのだが……今度ツバキ教官に相談してみようか。そのことをコウタやアリサに伝えると、二人して溜息をついた。「鈍感」とか「朴念仁」とか言われた。一体何を言っているのだろう、私の感覚は至って正常だし無愛想ではあるかもしれないが無口という訳では無いのに。やはり私はみんなに嫌われているみたいだ……仕方ないことだが。

 

 

 

 

 

 そういえば、アラガミが襲撃してきた時に使っていたあの神機はリンドウさんのものだったらしい。旧型の神機なのに、何故感応現象が起きたのだろうか。…………まあ、感応現象についてはまだ的確な詳細は解明されていないので私が考えたところで意味はないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 配属三十四日目

 

 

 

 今朝も一応ユイが起こしに来てくれたのだが、突然ユイに頭を下げられて困惑した。理由を尋ねると昨日頭を叩いてしまったことが気にかかっているらしい。正直何故叩かれたのか理由はまだわかっていないが、きっと知らず知らずのうちにユイに負荷をかけてしまっていたのだろうと考えた私は「特に気にしていない」と返答した。その際、つい目の前にあった頭に手を乗せてしまい、昨日のリッカさんと同じくらい顔を赤くしたユイがダッシュで部屋から飛び出していってしまった。また怒らせてしまったか……私は女性に触れてはならないみたいだ。

 

 

 

 

 

 ロビーへとやってくると、ツバキ教官が二人の新人ゴッドイーターを紹介してくれた。第二部隊に配属となった少女、アネット・ケーニッヒさん。第三部隊に配属となった少年、フェデリコ・カルーゾさん。後は、横に並んでいたレンさんが軽く手を振ってくれた。三人とも新型神機使いであり、ツバキ教官は私に戦闘の指南をして欲しいと言ったのだが、すぐに「いや、それならユイの方が普通だし適任だな」と言い直された。私の戦闘スタイルは近接特化ではかるが安全面に気を配ったものなので新人である三人にはオススメだと思うのだが……ツバキ教官が言うのなら仕方がない。後輩が出来てほんの少し嬉しくて教えたいという気持ちはあるがユイに任せるとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 メディカルチェックを受けた後に、アネットさんとフェデリコさんから色々と質問を受けた。簡単に言うなら、攻撃と防御どちらを優先するべきかというものだ。「狂人と呼ばれているマモルさんがどっちなのか気になるんです!」と声を揃えて言われた時は少しへこんだが、私は答えを考える。

 普段の私であれば攻撃を優先するべきだというだろう。だが、この前神機が壊れたばかりで装甲を展開しろとも注意を受けたのだ。それ以降、私は装甲を用いた戦い方でアラガミ討伐を何度かやっていたのだが、思ったよりも上手く言ったので防御を重視するべきだということも出来た。

 だから私は、優先するのは場合によってだが攻撃をしながら防御し防御をしながら攻撃をすれば良いと返した。何を言っているか分からないといいたげな表情だった為、実際に任務で私は二人に教えることにした。

 

 ちょうど良い相手であるグボログボロとシユウの討伐任務があったのでそれを受け、慌てた様子でユイが参加したいと言ってきたのでもちろんのこと承諾した。「二人が危険だから」という呟きが聞こえたが、新人にも気を配ることが出来るなんて流石である。

 

 私は戦い方を見てもらうために、まず三人には手出しないように言ってアラガミへと向かい合った。まずはシユウだ。私を発見するや否や、その両手に熱を集めて弾を作り出し放ってきたので、私は刀身の腹を当てて寸分狂わずシユウの顔面へと弾き返す。ひるんだ隙に接近し、シユウはパンチを繰り出そうとステップを繰り出す――その前に、足を切りつけてバランスを崩させ腕の軌道を空へと逸らした。弾を作り出そうとする腕の翼をたたっ切って中断させ、回転して弾をばらまこうとする軸足に刀身をぶっさしてインパルスエッジを放つ。最後に攻撃を繰り出そうとしていた残っていた手を切り落として、コアを直接インパルスエッジで爆発させて終了。

 

 これが相手に攻撃の暇を与えることなくとにかく先手をうってそれを封じる……それは結果的にアラガミからの攻撃を防御したのと同じになる。攻撃は最大の防御とはよくいったものだ。これが、攻撃をしながら防御をするということになる。

 

 一呼吸おいてどうだと言わんばかりに新人二人の方に目を向けると、信じられないようなものを見る目つきで見られていた。ユイは大きくため息をついていた。理由はその時全く分からなかったが、きっとシユウの討伐に時間がかかったことに驚かれたり呆られたりしたのだと思う。

 

 そしてグボログボロだが、私と交戦すると少しして背びれを立てて砲塔を構えてきた。私は待ってましたと言わんばかりに真正面へと移動し、装甲を展開させた神機を砲塔の穴へと突っ込む。すると、かなり衝撃はくるもののグボログボロが放ったアラガミ弾は砲塔内部で爆発し簡単に結合破壊が起きた。慌てた様子のグボログボロの口内に神機を突っ込んでインパルスエッジを直にコアに放って早々に止めをさし、私は三人の元へと戻った。

 

 

 感想を尋ねると、アネットは「やっぱり狂人って凄いしカッコイイんですね」と遠い目で、フェデリコは「知っている防御と違います」と白い目で、ユイは「マモル。ちょっとお話ししようか」と笑顔で言ってくれた。そして、私は帰投中ユイに叱られた。何故だ……やはり落ちこぼれの私が将来有望や新人に戦い方を教えるのは悪影響だということなのだろうか。少し落ち込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リンドウさんが生きている可能性がある。そのことをペイラー……いや、榊支部長に報告すると翌日からリンドウ元隊長の捜索が開始されることが告げられた。

 

 実は、昔リンドウさんと何度か戦ったことがあるというレンさんと軽い会話の後にふと触れ合った瞬間、今度こそ間違いなく感応現象が起こったのだ。

 

 その光景には、腕輪や神機がアラガミに食われてオラクル細胞の捕食が始まり苦しむリンドウさんと……それを助けたシオが映っていた。リンドウさんの右腕は鎖を巻かれている異形のものになっており、シオはそれに青いコアを埋め込んでリンドウさんのアラガミ化を食い止めていたようだ。最初に会ったときにカタコトで話していた「お腹空いた」はリンドウさんから教わった言葉だったのだろう……あれが『他の誰か』から教えられたものだと気づいていれば、もっと早くに生存が分かっていたかもしれない。

 

 まだそこまで時間は経っていない筈だが……アラガミ化の進行は早いと聞く。一刻も早くリンドウさんが見つかればいいが……。

 

 

 

 

 それにしても、レンさんという存在が私にはどうも気にかかる。何故、レンさんの手に触れた瞬間、リンドウさんの過去……最近が流れ込んできたのだろうか。アリサの感応現象では彼女自身の過去が見えていたが、他者の過去さえも感応現象は確認することが出来るのだろうか……。疑う訳では無いのだが、注意して損はないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 追記

 

 

 レンさんに初恋ジュースを渡すと、アナグラで二度目の「美味しい」という感想を口に出した。同士を見つけた瞬間である。

 初恋ジュースを持っているとアラガミが近寄ったりだとか味がマズイだとか皆は色々言っていたので私だけ、おいしい、と口に出してしまうとさらにぼっち感が高まる気がしたので今まで黙っていたが、それが二人にもなれば心が軽くなる。

 よって私は気軽に「おいしい」と口に出したのだが、「医療班に今すぐ診てもらった方がいい」と第一部隊のみんなに言われてしまった。解せぬ。




バースト編がはじまりました、このペースだとそこそこ早い感じで終わりそうですね。

主人公の行動によってストーリーが微々たる変化をしているため賛否両論はあるかもしれません。(ソーマがシオを受け止めるのを間に合った時とか、今回のリッカとか)


それと、主人公は基本的に「さん付けをやめて欲しい」と言われない限りは皆、「さん」を付けます。今回の新人ふた……三人のように。

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