私はただ生存率を上げたい   作:雑紙

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リクエスト回②となります。
短めです。ごめんね。


外伝
if オペレーター 筒井マモル 番外


 もし筒井マモルがオペレーターだったら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私の名前は筒井マモル。極東支部に配属されてかれこれ一週間経つ、オペレーターだ。

 

 オペレーターとは簡単に言えば戦場にてアラガミと交戦するゴッドイーター達の支援……アラガミの状態の報告や付近の状況の通達等彼らにとってはかかせない、言わば第三者の目である。

 

 言い方によっては彼らの命を握っている重要な立ち位置でもあり、オペレーターの先輩であるヒバリと違って私はいつも緊張していた。何せ、私の采配ミスひとつで彼らを危険に晒すのだから。

 

 ここ一週間では見習いオペレーター、ということでミスをしてもその実力でなんとでもなる第一部隊の方々のオペレーターとして活動していた。本当、アラガミ反応とかを見ていてもすぐに消えていってしまうのだから流石極東支部トップの部隊と言えるだろう。

 

 特に、私と同じ時期に入ってきた神薙ユイさんという少女の戦果は新人とは思えないほどのものだ。私もその資料を見て驚いたものだ。隠れがちではあるが同じく一緒に極東支部に配属された藤木コウタさんの戦績もとても優秀である。スナイパーでは右に出るものがいない橘サクヤさんや身体能力が人並外れているソーマ・シックザールさん、彼ら第一部隊を率いている戦闘能力桁違いの雨宮リンドウ隊長など、第一部隊は化物だらけだとエントランスで雑談しているゴッドイーター達の声は受付にいる私やヒバリにもよく届いてくる。

 

 新型が増えたことによってか、ここ最近の第一部隊全体としての戦績は他の隊をぶっちぎっている。正直、オペレーターである私なんていらないのではないかと思うほどに。自信がなくされるが、それもきっとオペレーターの最初の壁なのだと私は信じている。気張れ私。

 

 

 

 「マモルさん、第一部隊の皆さんが任務の配置につきました。オペレーターをお願いします」

 

 「分かりました、ヒバリ。……あの、本当に私で大丈夫でしょうか。皆さんの足を引っ張っていませんかね」

 

 「……あなたは何を言ってるんですか……?」

 

 「えっ」

 

 「えっ」

 

 

 ……ヒバリさんの言葉の意味がいまいち分からなかったが、わたしは機材を受け取って配置につく。今回の任務は隊長であるリンドウさんを除いた第一部隊の四人がメンバー、そして討伐対象は獅子のようなアラガミであるヴァジュラだ。極東支部では一人で倒せて一人前のアラガミ……つまりは、これまで支援をしてきたコンゴウやグボログボロとは別格の敵だ。

 不安は募るが、オペレーターは不安を見せてはいけない。軽く深呼吸して、頬を両手で軽く叩き……指の骨を鳴らした。

 

 「オペレーター変わりました、筒井マモルです。皆さん、今回もよろしくお願いします」

 

 『あ、マモルさん。こちらこそ、今回もよろしくね』

 

 『マモルさんかー、ってことは入念に準備運動しておかなきゃな』

 

 『マモルくんは顔に似合わずキツイ指示を送ってくるからね……ね? ソーマ』

 

 『…………ああ』

 

 同期の友人であるユイさんとコウタさんの二人はいつも通りに普通に挨拶を返してくれたが、サクヤさんとソーマさんはどこか疲れた声をしていた。

 

 「えっ、きつい指示ですか? ……すみません、どの時でしょうか、心当たりがないのですが……」

 

 『グボログボロの時に砲塔の中をめがけて射撃して欲しいだなんて要望をしてよく言うわね……まあ、結果的にそのおかげであのアラガミを効率よく倒せる方法を見出したから感謝はしてるけど。でもそんな芸当できる人なんて、極東支部でも限られてるわよ?』

 

 「あ、そんなに難しかったですか……? ごめんなさい、コウタさんとユイさんも同じ指示を普通にやってくれたのでてっきり皆出来るのかと」

 

 『えっ。ちょっと待って、それ本当なの二人共。……そう、本当なのね。凄い成長ね』

 

 『…………こんなオペレーターの指示に従ってたら、嫌でも実力は上がるだろう』

 

 『……ああ、確かに』

 

 ベテラン二人からの反応が辛い。

 やはり私は第一部隊のオペレーターに向いてないのではなかろうか……。

 

 「……っと、任務開始時刻になりました。皆さん、準備の方をお願いします」

 

 『はーい。よっし、頑張るぞー』

 

 『えっと……確かヴァジュラの弱点は雷以外……でいいんですよね? マモルさん』

 

 「はい、炎と氷、神の三属性が弱点とされています。聴覚、視覚も突出してはいませんので先に周囲のアラガミを掃除してから、対象の討伐に専念してください」

 

 第一部隊の方々が了承の返事をし、任務が開始された。

 

 

 

 

 

 開始から三分ほどたったところで、再び連絡が入る。ヴァジュラを二体補足した、とのことだ。本来であればヴァジュラ一体だけの討伐なのだが……まあ、事前の情報と異なることなんて戦場では茶飯事だ。そんな不測な事態にこそ、私達オペレーターもいるのだから。

 

 『……マモル? 貴方ならどうする?』

 

 サクヤさんから尋ねられ、しばし思考する。いつも通り私のオペレーターとしての力を試しているのだろう。

 

 「そうですね……まず、遠くから二体の目と鼻を優先に、出来ればであれば耳も潰しますかね。そうすればお互いが混乱しあって近くにいる相手と同士討ちしてくれるんじゃないでしょうか」

 

 『相変わらずえげつないことを考えるわね……理にはかなってるけれど』

 

 『なるほど~、私は目は潰そうと思ってたけど耳や鼻の事はすっかり忘れてたよ』

 

 「出来ますか? 三人方」

 

 『もちろんさ。アラガミの目はこれまで何度も打ってきたからな、今更鼻や耳なんて朝飯前だよ』

 

 『ユイから耳を疑うことを聞いたけれど……まあ、私もできるわよ』

 

 『うん、任せて!』

 

 「ありがとうございます。それでソーマさんなのですが、ヴァジュラ二体がたむろってる近くの建物に入ってなるべく上階へ向かってくれませんか?」

 

 『……何故だ?』

 

 「上空からの奇襲を試みて欲しいんです。相手の感覚が治った時、必ずヴァジュラは辺りを見渡すでしょう。ですが、まさか上から襲われるなんて思いもよらないはずです。ソーマさんの身体能力なら弱ったヴァジュラくらい一撃で決められると信じていますから」

 

 『……なるほどな。了解した……だが勘違いするなよ、お前の案が効果的だから乗るだけだ』

 

 四人から私の作戦が承諾されてほっとする。誰でも考えつきそうな安易な策だが、ソーマさんに効果的だと言われるくらいならなによりだ。

 

 「では、お願いします、皆さん」

 

 

 

 

 そして、程なくして二体のヴァジュラは活性化もすることなく討伐され、怪我人は一人も出なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「はぁ……緊張しましたね」

 

 機器を取り外し、私はロビーの椅子に深く腰掛ける。

 不測の事態のためにオペレーターはいる……なんて豪語したものの、重大な役を担うことになると思うと呼吸を忘れてしまうほどに緊張してしまうのだ。第一部隊の方々の実力のおかげで大雑把な内容でも意味を理解して従ってくれるものの、他の隊だと私の力不足でこうもうまくはいかないだろう。

 

 「お疲れさまです、マモルくん」

 

 「ああ……ありがとうございます、ヒバリ」

 

 ふと声をかけられた方を向くと、缶飲料を両手に持ったヒバリがそこに立っていた。そのうち片方の飲料水が差し出されていた為、私はお礼を言いながらそれを受け取る。

 

 「今回も第一部隊の皆さん……特にユイさんとコウタさんからは好評でしたよ。流石ですね」

 

 「あの方々の実力が凄いだけですよ。それに、私がお願いしたことだって少し考えれば誰にでも思いつくものですし、私はなにもしていません」

 

 「……少なくとも、私には思いつかないと思いますけどね」

 

 ヒバリは苦笑いを浮かべながら、ジュースを飲んだ。

 

 「あー……そうですよね。ヒバリならもっと効果的かつ効率的な案を出すでしょうから、私の案は考えすらしませんよね」

 

 「……はぁ。マモルくんはどうしていつもそんなに後ろ向きな思考なんですか」

 

 私が遠い目をしていると、ヒバリは呆れたように肩を落とす。私はネガティブなのではなく事実を述べているだけなのだが……それとも、私を気遣ってくれているのだろうか。

 

 「……ヒバリは気配りが上手ですよね」

 

 「えっ、はい!? ど、どうしたんですかマモルくん、そんなに急に」

 

 「いえ、ふと思ったものでして。先程の発言も私に実力不足であることは気にするなという意味だったのでしょう?」

 

 「えっ」

 

 「えっ」

 

 何を言っているんだこいつは、という顔で見られた。……あれ、違ったのかな……?

 

 「………………マモルくん」

 

 「あっ、はい」

 

 ヒバリの後ろから何か赤いオーラが噴出している気がする。赤い気から連想するものは怒りくらいのものだが……あ、いや、あの笑顔……笑っていない。これは完全に怒っている。

 

 「明日頃から始めようと思っていた地下街エリアの区域の解説だけど、今日から始めましょうか」

 

 「あ、え……あ、はい」

 

 「ただ、今日全て叩き込むので必ず覚えてくださいね?」

 

 「へ? あの、すみません。それはちょっと難し」

 

 「覚えてくださいね?」

 

 「アッハイ」

 

 何故だろう 後ろに見える 紅い修羅

 

 これが最期の句にならないことを祈るとしよう……それにしても、どこでヒバリを怒らせてしまったのだろうか。解せぬ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「皆さん……世界を、お願いします」

 

 少年は祈る。一人の男がもたらそうとしている世界の再構築を、自身がよく知る一部隊が止めてくれることを。

 

 彼はアーク計画に賛同することは無かった。それは決して少年が選ばれたものではなかったという理由ではない。ゴッドイーターとしての資質がなく戦う力を持っていなかったが、少年は自身らを守ってくれるゴッドイーター達を、ひいては多くの人々を守りたかった。

 例え戦える人間すべてが計画に賛同し味方がいなくなってしまったとしても、彼はきっと顔も知らない多くの人の為にその身を犠牲にしただろう。幸運にもそれは、同じ志を持った、ずっとオペレーターとして彼がついてきた指折りの部隊によって食い止められたが。

 しかしその行為は少数派とはいえその人間から疎まれることだろう。だからこそ、彼らを少しでも助けるために、少年は責を自ら分けさせる。

 

 「私も、皆さんと一緒に戦いますから。……第一部隊のオペレーターですからね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 また、少年は一人の少女の願いを聞いた。それは、感づいた彼に彼女が行った初めての行為。

 ずっと間接的とはいえ共に戦った信頼は、少女を危険に晒すといえど少年の口を閉ざさせた。

 

 「…………ユイさん」

 

 第一部隊の全員が遅れて救出に向かいにあったゲートへと視線を送りながら、少年は機器をとる。

 それは、やはり少女を一人で戦わせるわけにはいかないという、これまた初めての第一部隊隊長への反抗。小さな小さな、やり返しである。

 

 「対象は黒いハンニバル……アラガミ化したリンドウさん。これから、第一部隊のオペレーターを務めます」




オペレーターの感じってこんなのでいいのかな……不安。やはりリザレクションやアニメ未が痛い。

というわけで、本編と違ってオペレーターであるマモルはそこまでキチガイではありません(当社比)。
しかし、異なる点はいくつかあります。例えば
・マモル、ヒバリ間の関係(お互いの名前を呼ぶ時とか)
・第一部隊全員の戦闘能力の向上(無茶ぶりにより)
・特にユイの戦闘能力が向上(本編マモルと似)
等々。結局極東はおかしいんですね(錯乱)

本編が短かったのでまた軽く自己の欲望を開放して見たいと思います。


















 「あー、それともこちらの方がいいですかね。……こほん。問いましょう、貴方が私のマスター……でよろしいですか?」

 聞き返してきたその少女……否、少年は表情を微塵も崩してはいない。全くの無だった。
 喜怒哀楽はなくこちらを試しているわけでもない。純粋な疑問を、自身のマスターであるその少女に投げかける。

 得体の知れない恐怖に、少女は何度も首を縦に振った。そばに控えるデミ・サーヴァントであるマシュも、英雄とは程遠いその不気味な存在に警戒をしていた。

 「一つ、忠告しておきます」

 その英霊らしからぬ少年は、人差し指を立たせる。忠告――その言葉に、少女二人は思わず身を固くした。一体どのような言葉が出るのか、そもそもこの男は自分達に協力的であるのか……冷や汗が浮かぶほど彼女らは身構える。

 「実は…………私、現状がさっぱり分からないので何をすればいいのかわかりません。それほど残念なサーヴァントなので、期待しないでください」

 瞬間、少女達はその場にずっこけた。













 「……貴様、それは、剣なのか?」

 「剣ではなく、神機というものです。銃にもなりますよ?」

 洞窟の中、二人の英霊が対峙する。
 片や、正義の味方を目指した男。片や、普通を目指している少年。
 その二人の間で圧倒的に異なるのは、表情。黒を身にまとった男は僅かに見えるその表情を曇らせているが、少年は依然として平然だった。

 「さて、落ち着くためにも出来れば早くここを解決したいんです。なので、通らせていただきますよ」

 それでもなお、マモルの意志は強かった。






 「サーヴァント・ランサー、召喚に応じ参上した。まあ気楽に……げっ」

 「クーフーリンさん、こちらを見るや否や嫌な顔をしないでくれませんかね」

 「あんな戦い方を間近でみたら誰だって引くと思いますが……」

 「うん、わかる」

 「…………やっぱり私弱いんですかね 」

 『お前は何を言ってるんだ』



 続かない。次回はユイ視点……かな

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