俺の一族がレアモンスターなんだが。   作:鰹ふりかけ

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お待たせしました
これからも時間を見つけて書いていきたいです


オルレアンの戦い(後編)

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「はっきり言ってこの戦い正面から勝つのは難しい」

一人の竜牙兵がゆっくりと話し始める。

その言葉に異議を唱える者はおらず。

 

ただ頷く

 

「勝機はあるのかい?」

ロマニがたずねる

 

「我の突破力にかかれば数多のワイバーンやスケルトンなど問題ないのだが………」

「今回は攻城戦!目的地にたどり着いたとしても城門を落とさなければならない」

「もたもたしていれば敵に囲まれその場で終わりだ」

 

今戦のネックは攻城戦であること

 

おびただしい数の敵軍を突破しさらに敵サーヴァントの妨害下で城門を打ち破る。

これが非常に難しい。

動きの遅い破城槌や攻城塔は使用不可さらにカタパルトやバリスタも射程外

 

「対城宝具持ちはこの中いるのか?」

「「「「………」」」」

「……工兵に爆薬を埋め込んでもらうか?」

「物見からは城門の厚さはわからない、打算的だ!」

思い思いに案を出し会うが、すぐさまマイナス点があげられ否決される

 

「私の宝具でまず敵を一掃するのはどうかしら?」

「一度は前面の敵を一掃する事ができるが……側面の攻勢が止まらない」

「宝具を耐えて直接飛び込んでくる敵サーヴァントも予想される」

 

「空からいくか?」

「「「………は?」」」

「リヨンの時に使った爆発術式があっただろあれで我々を打ち込んで壁を越える」

 

竜牙兵を弾丸のように発射し城壁を越え門を内側から開くという案もだされるのだが

これも発射地点がオルレアンに近い事と敵サーヴァントの目の前で竜牙兵を打ち上げられるような装置を作るのは困難とされるため却下となる

 

 

「ならば下からだ!クロアカ・マキシマからの侵入を進言する」

「「「クロアカ・マキシマだと!」」」

 

クロアカ・マキシマとは

ローマ王政期に首都ローマにて建築された下水道の事をいう。

当初の目的は湿地からの排水を河川に流すためのものであるがローマで完成したのちに主要なローマ全土の都市に建築された

ローマが崩壊したのちも機能を続けている物もあるが、ほとんどが忘れ去られ暗渠となって存在していることが多い。さらに、これらの遺構は都市の中心部に沿って配備されているため都合が良かった。

 

「オルレアン周辺の地図を持ってこい」

「資材の配備急げ!」

かくして地下からの侵入を目指す壮大な土竜作戦が計画された。

同時に陽動と主攻としての地上軍の編成も開始される

 

「ちょっと待ってくれ!坑道を掘る?今から?」

「そうだが」

「どれだけ時間がかかると思っているんだ!」

ノリノリでツルハシを準備しだす竜牙兵達にロマニが切り込む。

 

「目測で数時間ほどあれば完成しそうだが?」

「ファ?」

「直線的に掘るだけだろ?」

「水脈とか岩盤があったらどうするんだい?」

「まあ、見ててくれ………こちらには地中調査機があるんだから」

「地中調査機?」

すると竜牙兵は立ち上がりモーツァルトを担ぎ上げる

 

「なんだね!止めろ!どこに連れていく気だ!」

「貴殿の聴力活用させていただく!」

「うあああああああああああ」

そのまま数人で神輿のように担いで何処かに行ってしまった

 

そして現在に至る

 

竜牙兵がツルハシとスコップで恐ろしい勢いで坑道を掘り進めていく

本来硬く重量のあるはずの岩石がまるでバターのようにするりと削れる。

おそらくスコップとツルハシにも何か細工がされてるのだろう

 

削った直後に支え木が立てられ阿吽の呼吸で土砂がトロッコで運ばれる

 

暫くそれらを続けているとモーツァルトの聴感が風の吹く音をとらえた

 

「進路変更右へ!」

「「「「「おうよ!」」」」」

 

進路を変更し風の音の方向へと掘り進む

そして、ボロリという音と共に空間と貫通する

先頭にいた竜牙兵がふんどしから松明を取り出し火を灯し侵入すると

 

その先にはレンガで構成されたトンネルが広がっていた

 

そのままゆっくりとレンガに指を当てて口元へと運び嘗める

「ペロッ……これはローマ!」

「1800年物の味わい!」

「ローマのにほいがするぞおおおおお!」

続々とトンネル内に竜牙兵が侵入していく

 

ひとしきり騒いだのちに

瓦礫に埋まった出入口を発見し持ってた爆薬で発破

前回の轟音

 

オルレアン城内へと侵入を開始

門を制圧する部隊とマスター救出部隊に分かれて行動を開始した

 

そのころオルレアン城塞前では

「スケルトンの勢いが強すぎます」

「装甲の厚いセイバークラスで壁を作れ!ランサークラスは間から攻撃を!」

「射撃はアーチャークラスの兄弟に任せろ周囲の者は装填に集中しろ。ここではボルトが金より貴重だ」

膨大な数のスケルトンに対して盾兵で四方を囲み簡易的な城塞を形成少しずつでも要塞へと接近を試みる

 

 

「正面に邪竜!」

「ジークフリートに連絡!信号弾上げ!」

「だめです槍が刺さらない・・」

「トカゲが怖くて戦ができるかローマなめんああああーーーーー鱗の間にねじ込めえええええええ」

「かかれ!かかれえええええ」

 

 

腐っても伝説の化け物、竜牙兵の持っている武器では歯が立たず無情にもすべての攻撃が硬い鱗のまえに無力化される

必死になって飛び掛かり質量にて足止めを試みるがとりついたとたんに跳ね飛ばされる

 

 

 

だが、あきらめない。ワイヤーフックを被膜にかけて綱引きの要領で引っ張り始める。同時に足に対してタックルを複数の竜牙兵が敢行する

それを邪竜は埃を払うように爪を振り下ろす

 

足に取りつていた竜牙兵が一瞬のうちに土くれに戻る

 

「このくそトカゲがああああああ」

仲間が作り出したわずかな隙に工兵が鱗の間に爆薬を詰めこみ爆破する

[Gyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa]

硬い鱗は爆発の衝撃を外へ逃がすことができず内部の組織を破壊して回るその痛みに耐えかね邪竜は悲鳴を上げる

 

「よし!ダメージが入った弓兵傷を狙ええええええ」

すかさず鱗がはがれたところにボルトが大量に打ち込まれその追撃に再び邪竜が悲鳴を上げる

「Gyaaaaaaaaaa・・・aaaa?]

 

しかし、ここで異変が起きた

 

邪竜の傷が癒えたのだそれもきれいさっぱりと

 

「は?」

「・・・え」

周囲の兵士が唖然とする

慌てて弓兵が腰の毒瓶を確認すると禍々しい褐色の粘液には赤十字が刻まれている

それは主人公が少し前に作った回復薬の試作品だった

 

それはより効率の良い魔力回復を目標に思い付きでつくられた

簡単に言えばジャム・・・黄金リンゴの

余っていたリンゴ達を使ってコトコト煮詰める事六時間。鍋から漏れる高濃度の魔力で周囲を汚染し周囲に阿鼻叫喚の地獄を出現させた劇物

ちなみに、効果を試そうとクーフーリンに声をかけたところ矢除けの加護をフルに使い逃亡されたため効果は未知数である

 

黄金リンゴ自体が神話に出てくるような存在なのだ

一つでも荒れ地を草原に変え枯れた森林を蘇らせられるポテンシャルを持つ。

それを複数使い濃縮したのだ

 

この劇物が何らかの手違いにより竜牙兵の装備に混入したのだ

 

異変はすぐに起きた

治ったはずの傷が開き中からブヨブヨとした肉塊が生え流血を伴いそれはさらに成長していく

 

細胞の異常増殖、すなわち癌

 

それが目の前の現象の正体であった。ありえないほどの治癒力の向上により細胞の分裂周期が狂い無秩序な増殖を続ける。邪竜の体の栄養が酸素がそれに奪われ、増えた肉塊はさらに体の動きさえも阻害していく

 

ジークフリートが到着するころにはほぼすべてが終わっていた

 

邪竜討伐の報が戦場を駆け巡る

同時にワイバーンたちが邪竜のコントロール下から解放され自らの意思で行動しはじめた

 

思えば彼らが正気を取り戻したことが彼らにとって一番の不幸であった

 

彼らはみてしまった

眼下に広がる同胞の亡骸の海を血に染まった大地を

 

幾百もの同胞の返り血を浴びて褐色の肌になった悪鬼を

 

自分たちよりも上位の竜を屠る化け物を

 

幾百もの同胞の怨嗟の声を浴びつつこちらに向かってくる異形の群れを

 

「「「「「「ロオオオオオオオマアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」」」」」

やがてそれらはおぞましい雄たけびを上げこちらに向かってきた

 

恐怖 恐怖 恐怖

それだけが頭の中を支配する。そこには数日前には生態系の頂点にいた生物のかけらもなかった

横を飛んでいた同胞が撃ちをとされ眼下で蹂躙される

 

こちらに向かってくる敵意の嵐

 

 

事実上の壊走

 

 

ワイバーンは逃げ出した

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ワイバーンが逃げ出したことにより敵サーヴァントに戦力が集中していく

サーヴァントたちはじりじりと狭まっていく筋肉の輪に剣を槍を振り回し近づかせないようにしようとするが背後から足元から筋肉質の腕がとらえようとにじり寄る

 

次第に追い詰められ最初は足首を次に腕をとつかまれじりじりと筋肉の海へと引きずり込もうとする

 

「貴様をローマにしてやろうかあああああああ」

「いやああああああああああああ」

「くっカーミラ」

「つぎは貴様だあああああああ」

全方位からの物量質量のごり押しによりサーヴァントたちが筋肉の海に沈んでいく

そもそも対軍宝具をもっていないサーヴァントがほとんどであったことがここまでの悲劇を生んでいく

 

大勢は決した

 

わずかな抵抗をする敵サーヴァントを残してジャンヌを中心としたサーヴァントと竜牙兵が先行部隊が開城した正門からオルレアン城塞になだれ込んでいく

 

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「来たか・・・」

オルレアン城塞の地下牢にどたどたと踏み込んでくる足音が響く

「マスター!」

「よくぞ御無事で・・・うう」

地下牢を疾走する竜牙兵はやがて囚われのマスターを見つけすぐさま牢屋の鉄格子を曲げて手錠を壊しマスターを開放する

「行かなければ・・・」

自由になった主人公は拷問で傷ついた足を引きずりながら移動をはじめる

 

「マスター安静にしなければ「肩を貸してくれ」

「どちらへ?」

「王座の間へ」

本来であるならばいつ倒れてもおかしくないのだがその歩みはとまらない

 

やがて時間をかけつつも王座の間に到着する

その場ではジル・ド・レェの宝具によって召喚された海魔と竜牙兵の戦闘が行われていた

 

竜牙兵の実力で言えば何とでもない敵であったのだが様子がおかしい

 

「なんだこいつらぬるぬるするぞ」

「こぶしが滑る!」

「キシャアアアアアアア(なんだこいつら硬い)」

「シャア!グウアグワ!(歯が立たない!削れない!)」

なんと海魔がだす粘液が竜牙兵の攻撃を滑らせまるでウナギをつかもうとするがごとく無力化

逆に海魔はその歯で竜牙兵にかみつくが硬すぎてダメージを与えられない状態になっていた

 

「そうだ投げろ!」

「「「「「うおおおおおおおおおお」」」」」

体に巻き付いてくる海魔を引きはがし一人の竜牙兵が海魔を放り投げそれに倣って周りの竜牙兵も壁に向かって海魔を投げる

 

室内を飛び交かう海魔

しかし、ゴム質の体の海魔にはあまりダメージは与えられない

 

「キシャア!キシャア!」

複数の海魔が竜牙兵の関節部に絡みつき動きを封じようとする

「ぬおおおおおおおお!」

それに抵抗して竜牙兵が筋肉に力をこめる。さらに周囲の竜牙兵が引きはがそうと近づくが粘液でぬるぬるとなっていたためにそこらかしこで転倒していく

 

テカテカに輝く筋肉と海魔がぬちゃぬちゃと絡まって動けなく事例が多発

 

「イヤアアアアアアアアアアアア」

その光景に耐えられなくなった邪ンヌの悲鳴が響く

悲鳴のもとに視線を移すとジャンヌと邪ンヌの姿があった

 

ジャンヌと邪ンヌはお互いに武器を構えた状態たが周囲の状況のせいか邪ンヌが追い詰められており

おそらくあと数撃で勝負が決まるそのような状態であった

 

急いで彼女たちのもとへといそぐ

 

そして、彼女たちが最後の攻撃を仕掛けようとしたとき

「待ってくれ!」

「あなたは?」

「・・・」

そこにわりこんだ

双方攻撃の姿勢をやめこちらへと視線を移す。ジャンヌはこちらをいぶかしげに見つめ邪ンヌはこちらをにらみつけてくる

 

「初めましてカルデアのマスターその2です以後お見知りおきを。そちらの彼女と話がしたいのですがよろしいでしょうか?」

ケガをしている体を無理やり動かし姿勢を整え会話を行う

「・・・わかりました」

最初は思案顔だったジャンヌだが主人公の目をじっと見つめてからそう答え武器をおろす

 

それを確認してから邪ンヌに体を向ける

「なによ・・・笑いに来たの!ボロボロになった私を見て復讐したくなったの?いいわ・・・やりなさいよ!」

邪ンヌは自虐の笑みを浮かべながらそうまくしたて無抵抗というかのように腕をひろげる

(やればいいのよ!どうせあなたも彼らと同じなんでしょ・・・さあ!さあ!)

 

それをみてゆっくりと邪ンヌへと手を伸ばし

 

「共に行こう邪ンヌ!」

そう言い放った

 

「は?」

「えええええ!」

邪ンヌとジャンヌが驚きの声を出す

 

「何考えてるのよあんた?」

邪ンヌがつかみかかろうとする

後ろに控えていた竜牙兵が動こうとするがそれをとめる

 

「だから一緒に旅をしようと「だからなんでそうなるのよ!」おおう」

「あれだけいためつけたのに!なぜよ・・・」

「きみはまだローマを知らないからだ」

「はい?」

 

「君が仮にここで果てるならばその魂は意思はここに囚われたままだ・・・だから!行こう!永遠に続く海の向こうへ!火を噴く山々を、偉大なる都市の数々を、エメラルドに輝く海を、どこまでも続く砂の海を、霧の都を、眠らぬ街を、うっそうと茂るジャングルを。時を超えてすべてを見せよう。あなたはこれだけのことをしたのだどうせ行くのは地獄だ、これからの我らの旅路はそれ以上だろう・・・だがどうせ行くのならば楽しいほうがいいだろう?」

 

そういって再び手を差し出す

 

「ばっかじゃないの?」

下らないそう吐き捨てるが

「ではなぜあなたは笑っているんだい?」

その言葉と裏腹に彼女は少し笑っていた。これがありもしない空想への嘲笑によるものか呆れ笑いかはわからない

だが確実に彼女の表情は柔らかくなっていた

 

「まあ、きれいな景色を見せたいという自慢に似た気持ちもあるがな」

「・・・あっきれた」

受け答えに心底呆れたように少し笑って武器を下す

 

 

「で?どうする?」

「そうね・・・まあ考えておくわ」

「「!」」

答えを聞こうとすると不意にジャンヌと邪ンヌから黄金の粒子がとけだしていく

 

「ジルがやられたようね・・・」

「ああ」

「じゃあまた」

「アベンジャーになるならいつでも歓迎よ」

「なるか!」

そういって邪ンヌは消える

 

「ありがとうございます」

ジャンヌがこちらに礼をしてくる

「なに、ただの自己満さ。最終的に振られちまったし」

 

やがて自身のからだからも黄金の粒子が立ち上りだす

そこらかしこから竜牙兵の勝鬨の声が聞こえてくる。それを聞きながら視界が暗転する

 

第1特異点修復完了

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ようやく本章開始

我は影、真なるローマ

我はローマ、ローマは汝

次回、永続狂気帝国セプテム

「二人のローマ」

お楽しみに




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