お久しぶりの方はお久しぶりです
息抜きと言いますか向こうが動かないから、こっちを出す! そんな感じでやって行きます
それはある夕暮れのことだった。
古めかしい、いやいっそおんぼろと言ってもいい程に古い日本家屋。そこに、現代に対する反骨心の塊のように鎮座する昔懐かしの黒電話の音が鳴り響く。
「もしもし、お前の子供は預かったヨ」
その受話器を取り、明らかに間違った応答をするのは純和風の家屋には似つかわしくない二メートルを超える巨体の褐色の人物だった。
『アパチャイさん、その挨拶は違いますよ。それより、すいませんが兼一さんに変わってください』
電話の向こうの人物、織斑千冬は慣れた様子で褐色の人物ことアパチャイ・ホパチャイの直る様子を微粒子レベルでさえも見せない応答に、一応の注意をすると、目的の人物である白浜兼一へと取次ぎを頼んだ。
いつもニコニコと笑顔を浮かべているアパチャイであるが困り顔を浮かべている。それもそのはず、変わるようにと頼まれた相手である兼一は今ここにいないからのだからだ。
「ただいま戻りました」
どうしたものかと悩むこと数秒、とりあえず兼一がいないことだけでも伝えようとした時だった、聞きなれた足音とともに丁度扉を開ける音がして、帰宅を告げる声が聞こえた。
「おー、兼一丁度良かったヨ。千冬から電話ネ」
「千冬ちゃんから? 珍しいこともあるな」
アパチャイの言葉を受けた兼一は、珍しい人物からの電話に首を傾げながらも、コードを悲鳴を上げそうなほどに延ばされた受話器を受け取る。
「もしもし久し振りだね千冬ちゃん、ボクだけど。どうしたの?」
『お久しぶりです兼一さん。折り入って……』
久し振りに声を聞いた兼一との旧交を温めたいと思いながらも、あまり時間がないために早速本題を切り出すことにした千冬。だがしかし、そうはいかなかった。
「分かった。いつどこに行けばいいの?」
それは即答などという生温い次元ではなかった。お人好しの体現者である兼一は頼みごとのたの字も聞かず頼みごとを引き受けたのだ。
千冬自身も事情を話せば首を縦に振ってくれるだろうとは予測していたが、まさか何も聞かずに了承を得られるとは想定していなかった。そのため言葉を失った。
「千冬ちゃん?」
返事がないのを不思議がった兼一は呼びかける。その声で我を取り戻す。
『あ、はい。できるだけ早いうちにIS学園に来てください』
「うん分かった。じゃあ、明日から行くね」
『え、あ、は、はい。ありがとうございます』
そして兼一はどこかの国のお土産だけを荷物から取り出すと、必要そうなものを集めに部屋に向かうのだった。
とりあえず序章です
次がいつになるかは神のみぞ知るのです