セリューに首輪で引っ張られる小型犬。
コロ。
二足歩行を平然と行うその犬は、彼女の戦意に同調して幽香の前に踊り出る。
「コロ!!」
「わん!!」
彼女の掛け声とともに、二メートル大の巨体へと変貌する。
黒目を不気味に大きくさせ、巨大な牙を剥き出す。
「ヴルルルルル!!!!!!」
コロは血管を浮き立たせ、恐ろしげに唸り声を轟かせる。
その獰猛な姿には、さっきまでの可愛らしい小型犬の面影は一片もみられない。
「に、逃げろおお!!」
焦燥と恐怖を表情に、周りの兵士達が四方へと散っていく。
彼女らの戦闘の凄まじさを知っているのだ。
またそれは彼女の戦いを邪魔しないためでもある。
コロは接近した。
地面に陥没を見せる跳躍と同時に、高速回転を加えた急接近だ。
何重にも並ぶ凶悪な歯。
バチンとかぶりつこうとするコロだが、幽香は紙一重に避ける。
回避した瞬間、幽香の胴体に風穴が数十個開いた。
「あら?」
銃声。
連射された銃声音へと顔を向けると、セリューの両手には拳銃が構えられている。
「悪は滅したアア!!」
悪魔のような凶相でセリューはニヤリと笑う。
胸部への何十発もの被弾だ。
致命傷は避けられない。
そう確信するセリューだが、次の瞬間、目を大きく見開く。
「何ッ!?」
銃創が修復されていた。
植物のような繊維が体表面を蠢いている。
これが傷を埋めようとしているのだ。
「貴様、帝具使いか!!」
幽香の体の異変を帝具によるものと、セリューは判断した。
心臓をぶち抜いたにも関わらず、この異常治癒。
普通に戦っても埒があかない。
彼女はそう思考した。
「カハッ」
突如、思考が途切れ、視界がはるか上空を示した。
体が宙に舞い上がる感覚とともに、口から血飛沫を撒き散らす。
「よく飛ぶわね、あなたしっかり食べてるの?」
幽香は抑揚のない声でそう呟いたが、それを聞く者はいない。
人外の威力を宿した幽香の蹴りあげ。
腹部への蹴りあげをもろに喰らったセリューは、抵抗もままならずにかち上げられたのだ。
──ッ!
幽香の顔がセリューの瞳に映る。
それも眼前に。
上空にかち上げられたセリューを追って、幽香が跳躍したに過ぎない。
しかし、それは絶体絶命を示す。
ただでさえ上空にいるのだ。
落下して頭部を直撃することによる死もあるというのに。
幽香は拳を振りかぶり、今まさに命を刈り取ろうと、セリューの顔面に狙いを定めている。
──死んだ。
セリューは目を見開き、驚愕する。
視界にはコロ。
彼女は巨大化したコロに抱き締められていた。
コロの瞳は主の無事を喜んでいる。
「……コ…ロ」
彼女はコロに助けられたことを察した。
感謝を示そうと、コロの頬に手を伸ばす。
「……ワォ、ワオォン…」
肉体の破裂音と飛沫音が響く。
同時に、グチャリとコロの肉体が千切れ、胴体に大穴が開いた。
「ッ!…な、コ、コロ!?」
彼女は何とかその場に立つが、コロは原形を留めずボロボロと肉体が崩れていく。
コロはセリューを助けた。
しかし、それは捨て身の救出であり、コロは幽香の一撃をもろに受けていたのであった。
セリューの安全を確保するために、体を粉々にするようなダメージを負った後も、自力で何とか形を保っていた。
それがついに限界に達したのだった。
「……コ、コロ!!」
帝具であるが、自身にとって友達、愛犬と言っていい存在であるコロ。
大事なコロの無惨な姿に、セリューは愕然とした。
「…………」
「断罪はもうお仕舞いでいいかしら? なら、次はこちらの番ね。花を侮辱した罪は貴女の体みたいに軽くないわよ?」
幽香の言葉に、セリューは全く反応を示さない。
目元には陰がさし、表情は伺えない。
「……?」
幽香は疑問符を浮かべた。
セリューの胸中では悲しみと憎しみが渦巻いていた。
コロが自分のために死んだ。
コロは幽香に殺された。
その思考がぐるぐると続く。
「…………ッ!」
セリューは顔を上げ、その表情をあらわにした。
「断罪断罪断罪断罪断罪断罪断罪──」
悪鬼の凶相。
瞳孔は限界まで開かれ、顔は憤怒の形相に歪んでいる。
「絶対正義の名の元に、悪をここで断罪する!!」
セリューはコロの肉塊に手を突っ込み、ひび割れた球体の核をつかみ挙げる。
「正義ィ、執行ォオ!!」
確固たる意志。
そしてドス黒さを兼ね備えた怒声だ。
幽香に向けて、見せつけるように核をつき出すと、セリューは口端が裂ける程の笑みを見せた。
「魔獣変化ヘカントケイル‼!!!!」
核がまばゆい閃光を放つとともに、巨体犬が姿を現す。
生物型帝具『魔獣変化ヘカントケイル』
その真骨頂は独立した凶悪な戦闘力と、核さえ残ればただちに体が修復する圧倒的自己治癒能力である。
「ハッ‼生物型帝具を舐めるな!!」
コロは、自身の治癒力を不能にさせる程に、核への損傷を受けた。
それ故に、セリューは生物型帝具の真価を発動したのだ。
自らの生命力を引き換えとした力の解放。
生命力を犠牲に、核を修復させたのであった。
「コロ、腕(わん)!!」
これまでの腕がなくなり、筋骨隆々な人の腕が生える。
セリューの掛け声に呼応して、二足歩行の巨体犬にさらに人の要素が追加された。
「ワオオォォオオオオオオオ‼!!!!!」
力の限りの咆哮。
凶暴さがはね上がる。
「──ワ"ゥ」
コロは唐突に行動へ移る。
地を踏み砕く程の跳躍で接近した。
幽香の視界がブレた。
それと同時に握り潰される程の圧迫を受ける。
「……痛いわね」
見れば、幽香はコロに掴み上げられている。
その巨体に見合わぬ驚愕の速度だ。
「コロ、そのまま握り潰せ‼」
─バキッ
骨と肉の粉砕音とともに、幽香の体がいびつに歪む。
コロの手からは血飛沫が飛び散り、それは幽香の絶命を物語っていた。
「アッハハハハハハハハハ‼!!!」
愉悦と喜色の雄叫び。
セリューは悪鬼の形相に笑みを張り付けた。
「正義の光が世界ヲ照らシたよォオ‼!!!」
悪魔の瞳をそのままに、天をあおいでそう叫ぶ。
その声音は勝利の愉悦に満ちていた。
「私は飼い主に用があるんだけど」
しかし唐突に、コロが血しぶきを上げて、姿を消した。
「な!?」
否、コロは横に殴り飛ばされたのだ。
横に一直線、地が抉られていた。
視界の先には、畳んだ傘を横凪ぎに払った幽香の姿。
驚愕に目を染めるも束の間。
幽香が眼前にいた。
「──ッ! な、何ッ!?」
勝利の確信をしていたセリューの目と鼻の先。
先端を彼女に向けて、幽香は既に傘を引き絞った状態だ。
傘の先端が迫り、セリューは死を直感する。
彼女はつき飛ばされ、左腕が宙に飛んだ。
「──ッ!─ッァア"ア"アアア!!!!!‼」
絶叫。
肩から肉と骨が抉られた感触に、セリューは我慢ならず、叫び倒す。
「主人を助けに捨て身だなんて。忠犬なのね」
左肩を抑えて、激痛に悶えるセリューを横目に、
幽香は冷たい声でそう言い放つ。
しかし、その表情はどこか楽しげだ。
幽香の傘の先端はセリューではなく、コロの頭部を貫いていた。
強靭化に伴う超感覚の覚醒。
それにより、主の危険を瞬時に察知し、主の防衛行動に出たのであった。
「……ゥ"ヴゥ"ゥ"ルル」
主を助けんと、片腕を突きだした状態で貫かれるコロ。
しかし、その生命は今だ継続しており、獰猛な眼光を幽香に剥けている。
コロが顔をグリンと幽香に向ける。
「あら、痛くないのかしら?」
頭部を貫かれているのも構わず、傷が広がるような方向転換だ。
痛みなど感じてないのか。
そのまま五重にも及んで並ぶ歯をもって、彼女を獰猛に噛み千切った。
「─ッ! ワ"ウッ!?」
噛み千切れてなどいない。
幽香は何の感慨もない表情でそこにいた。
「あなた、こんなに歯が必要なの?歯みがきが大変ね」
超級危険種さえ噛み砕くその両顎を、幽香は難なく両手で固定する。
いくら力んでも顎は微動だにしない。
焦りを感じたコロ。
「ッ!ワ"ル"ル」
「躾がなってないわね。じっとすることができないのかしら」
動けない。
距離を取ろうと渾身の力を振り絞るも、幽香がそれを許さない。
怪力でもって、掴んで離さない幽香。
コロはその場から全く動くことが出来なかった。
「コロォオ!!奥の手ェエ!!!」
声に視線を向けると、憎悪に満ちた凶相で睨むセリュー。
その声に、コロの目が血走り、限界まで見開く。
「ワ"オ"オ"ォォオオオオオ‼!!!!!!!!!」
彼女の言葉に同調して、コロは雄叫びをあげた。
暴虐を表したような咆哮。
周囲の物陰に隠れていた野次馬は戦慄する。
「(…あ、あれが、帝都警備隊の力なのかよ)」
「(帝具ってのは、ここまでイカれたもんなのか…)」
赤黒色に染まり、更に一回り大きくなったコロ。
狂化による筋肉増大。
更なる獰猛さ。
その様子を見ていた人達は冷や汗を垂らす。
帝都の秩序を守る正義の一人と一匹。
その女性は悪鬼の形相を浮かべ、凶悪な姿を取る狂犬を従える。
そこに正義の二文字を見てとれる者はいなかった。
「ガル"ル"ッ」
首を振りかぶる。
更なる強靭化を果たしたコロは、幽香の拘束を解き放つ。
それと同時に、ガチンと重なり合う牙。
「あら、小型犬の分際でやるじゃない」
拘束を逃れるとともに、コロは瞬時に彼女を噛み千切ったのだ。
歯は幽香の血で血塗れになり、彼女の肉塊をくわえている。
幽香は片腕を含む、上半身の半分が抉られた状態だ。
しかし、それでも尚、彼女は抑揚のない口調で称賛を口にした。
そして、
「だから、分際を知りなさい」
突如襲う腹部への衝撃。
コロははるか後方まで後退を強いられ、城壁に激突する。
「コロォオ!!!!」
セリューは驚愕する。
なんたる威力。
コロが足を踏ん張っても、それでも尚後退は止まらず、大地に直線の傷痕をつくったのだ。
コロの前方には拳を突きだした幽香の姿。
上半身が抉られた幽香は、未だ悠然と佇んでいた。
「ワ"オオォォオオオオ!!!!!!!」
コロの拳を幽香の拳が受け止める。
筋肉巨体らしからぬ俊足で、コロは突貫した。
その勢いの乗った拳は凄まじい程だ。
どちらも微動だにその場から後退せず、拳同士の衝撃は空間をも揺るがした。
そして殴り合う両者。
そこに防御はなかった。
幽香は腕が一本にも関わらず、全くその場から引く様子がない。
徐々に手数に利があるコロが優勢になっていく。
「そのまま圧倒しなさい!コロ!!」
明らかにダメージを負う数が増えて、ボロボロになっていく幽香。
それを目にしたセリューは、再び勝利を確信した激励を飛ばす。
しかし、
「いい子ね、御褒美よ」
幽香の淡々とした口調。
それが聞こえた瞬間、コロは彼女にはるか上空へと蹴り上げられる。
凄まじい姿勢変換による蹴りあげだ。
自らの状況に驚愕するコロ。
それも束の間。
「しっかり受け取りなさい」
見れば、彼女は残った腕を上空に掲げている。
その刹那、彼女の手のひらに閃光が収束した。
「……マスタースパーク」
「───ッ!──」
極大な閃光の柱が空を穿つ。
その光景に全ての者が驚愕し唖然とする。
周囲で見ていた者だけだはない。
遠く離れた者ですら、この閃光の強大さにはおののかざるを得なかった。
射線上にいたコロは跡形もなく散った。
◆
「……あら、何かしら」
狂犬を消し炭にした後のこと。
これからその飼い主を痛め付けようとした時、幽香は腕が引かれる感触を感じた。
見ると、その腕には金属の糸が巻き付いていた。
糸をたどった先では、ラバックが身振り手振りや口パクで何かを伝えていた。
「……仕方ないわね、わかったわよ」
彼が何を言っているのかが、わかった訳ではない。
ただ、「早く戻ってこい」と言いたいことは伝わったのだ。
やれやれと言いたげにため息をついた。
「お嬢ちゃん、命拾いしたわね。今日のところはこれで勘弁してあげるわ」
腕が無くなっていることも忘れたように、呆然と座り込むセリューにそう言い残す。
「ッ! な、何を言っている!! 悪を逃がす訳にはいかない‼悪!!悪を!!……」
去っていく幽香を見て、セリューはハッとする。
彼女を捕まえようと立ち上がった。
「だ、ダメです‼今のセリューさんではどうにもなりません‼怪我もしています、今は落ち着いてください!」
しかし、他の警備隊に抑えられ、それは出来なくなる。
「何をいっているんですか‼目の前に悪がいるんです‼捕まえなくて何が警備隊ですか‼」
「セリューさん、敵の力をはかり間違えてはいけません‼彼女の力を貴女も見たはずだ。我々が追って、彼女に刺激でもしたら死傷者が増えるだけです」
セリューは仲間の言っていることが信じられなかった。
悪が目の前にいるのに何故追わないのか。
頭はそれだけであった。
「ッ!……で、ですが!!」
「戦闘になって、市民に被害をもたらす訳にもいきません。それに、貴女のような実力者を失うわけにはいかない。連絡だとブドー将軍がもうすぐ来てくれます。どうか、こらえてください」
「……ぅ…う」
何とか反論しようとするも、返ってくるのは一理も二理もある言葉ばかり。
理屈の伴った反論を受けて、セリューはついに何も言えなくなった。
「……あの悪、絶対に許さない」
瞳に憎悪の色を宿すセリューは、最後まで幽香の後ろ姿を睨み続けた。
◆
「か、風見、お前何やってんだよぉ。あんなこと仕出かしたら、もうまともに帝都で出歩けねえじゃねえか」
騒動の場から去った幽香は、ラバックとともに帝都を抜け出した。
そして、さっきの騒動について嘆くラバック。
先ほどの状況から、幽香が今後帝国にマークされるのは確実であった。
あのような強大な力を見せたのだ。
どこの所属なのか。
敵か味方なのか。
帝国は是が非でも知りたいであろう。
「フードでも被れば大丈夫でしょうに」
何でもないかのように話す幽香。
しかしラバックは指を突きつけて喰って掛かる。
「風見、お前自分の顔見て言ってんのかよ。お前ほどの美人だとフードくらいじゃごまかしようがねえだろ」
「あら、美人だなんて、褒めてるのかしら?」
「そんな訳ないだろ!?……ったく、何を聞いたらそんな解釈になるんだよ」
どこまでも淡々と無表情で返す幽香。
しかし、どこかズレた答えを返す彼女に、ラバックは顔に手をやって疲れた表情を出した。
「つうかさっきのアレ、何でさっさと決着つけなかったんだ?」
「急ぐ必要はなかったと思うけど?」
ラバックはふと疑問に思ったことを問いかける。
しかし、幽香は彼の言っていることがわからなかった。
早く決着をつける意味が彼女にはわからないのだ。
「……いや、あるだろ。警備隊に駆け付けに来られたら面倒臭いし」
ラバックは呆れて返すが、聞きたいのはこういうことではなかった。
「あんな馬鹿げた光放っといてこんだけピンピンしてんだ。風見お前、かなり力を制限して戦ってんじゃねえか?」
「そうだけど、それが何かしら?」
当然のように答える幽香に、「お前なぁ」とラバックは更に呆れる。
「そんな傷だらけになる必要なくないか?めちゃくちゃ強いんだから、バシッて一発で決めればいいじゃねえか」
「あら、嫌に決まってるじゃない」
「何を言ってるの?」と言いたげな顔だ。
その顔を見て、若干腹が立つラバック。
「じゃあ、アレか?強者の余裕とでも言いたいのか?」
からかうように尋ねて、彼女は思案顔になる。
しかし、すぐに終わった。
「そうね、そう言って間違いないわ」
「性格悪ッ」
ゲンナリとした顔で返す。
しかし、彼女の顔はさも当然と言った様子だ。
「あら、当然じゃない。強者は余裕をもって優雅たれなのよ」
「さっきの闘いのどこに優雅さがあったんだよ」
「余裕さえ持てればそれでいいのよ、私は。少なくとも本気なんて滅多に出さないわ。格好悪いもの」
「へえへえ、そうですか。でもよ、油断してたところにドスってやられたらどうすんだよ?それこそ格好悪いぜ」
「強者を振る舞うんだったら当然のリスクよ。……それに、私はただ楽しみたいだけよ、闘いをね」
ほの暗い微笑みでそう締める幽香に、ラバックは背筋が寒くなる。
「(コイツのこんな顔始めて見たな)」
そう思い、体を引いてやや震える。
しかし、そんな幽香の冷たい微笑みも、次の瞬間には鳴りを潜めたのだった。
ラバックは先ほどからずっと気になることがあった。
「つか、その体、どうにかならねえの?見てて怖いんだけど」
今だ上半身が半分抉れた状態の幽香を指差して、ラバックはそう指摘する。
抉れた断面が見えて、彼はフイッと目を逸らす。
「ああ、そうね」と彼女は全く気にしてなかった様子だ。
そして、幽香は力を行使して治癒を行ったが、ラバックは彼女の姿に絶句する。
「……ほら、治ったわよ」
「おう、そう…か…ッ」
おっぱい。
片方の乳房と乳首。
つまり、おっぱいがもろに丸見えとなった幽香がいた。
「どうしたのかしら?」
幽香は全く気にした素振りを見せないが、ラバックは衝撃を受けたように愕然としていた。
「おっぱい」
つい口にでた。
「え?……ああ、服は流石に戻せないわね。まあ、また後で着替えればいいわ」
「…………………………………」
沈黙。
何も答えないラバックを訝しげに幽香は見ているが、彼にとってそんなことは重要じゃない。
重要なのは今であった。
形の良い乳房。
母性を象徴するような大きさ。
見ただけでわかる、触れたら弾くような弾力性。
乳首はツンと上向きに立っている。
ラバックの眼光はただただその一点のみを凝視していた。
……鼻血がでた。
「童貞」
「え!?ど、どどどど童貞ちゃうわ!!ば、バリバリヤってるし?」
幽香のいきなりの童貞発言に動揺しまくるラバック。
そして、身振り手振りで誤魔化そうとする彼を彼女は呆れたようにみつめた。
「図星じゃないの」
冷めた目でそう言う彼女に、彼は顔を赤らめる。
「んだよ!!わりぃかよ、童貞で!!」
「私はただ事実を言っただけよ?」
「それが馬鹿にしてるっつってんだ!!」
「それは劣等感の問題ね」
開き直るが、それが余計に恥ずかしいのか。
怒鳴って返すラバックだが、幽香は気にした風もなく無表情で返すだけだ。
「解ったわよ、もう言わないから」
「ああ、それでいい」
話が進むにつれてラバックが興奮しだしたため、結局、幽香が折れる形となった。
ラバックもフンッと鼻を鳴らして妥協する。
幽香はやや疲れた様子だ。
「ちょっとからかっただけじゃないの。全く童貞はこれだから……」
「おい!風見、お前!!全然反省してねえじゃねえか!!」
そして、二人はそのまま言い合いながら帰路についた。
ラバックは終始幽香の胸を見続けていた。
幽香は闘いを楽しむために力をセーブしてるっていう超慢心プレイです。
あとセリューさんの合掌が多かったんですが、すいません。こんな濃いキャラがここで死ぬのは勿体無いかな、ともうちょい延命しました。