【短編】もしも潮田渚が殺人鬼に目醒めたら。【次回投稿未定】   作:うたたね。

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ほい、あらすじで書いてある通り、ノリで書いた作品です。続くかどうかは分かりません。

最初らへんは、ほぼ原作通りです。鷹岡先生との勝負から始まります。最初に少し殺せんせーとかの話をしています。

では、どうぞ!



#01 覚醒:殺人鬼

 人生は不確定だ。

 たった一つの選択でその後の人生、及びその人間の性質は大きく変化してしまう。

 

 そう考えれば、僕の人生の転換期は、間違いなくあの時あの瞬間なのだろう。

 

 

 これはそういう物語。

 

 

×××

 

 

 

 僕、潮田渚の学校生活は──いや、僕達の学校生活は、他の人達よりも、かなり変わっている。

 理由もかなり変わっている。こんな事を話しても信じられるかどうかは分からないけども、話しておこうと思う。

 2ヶ月前、進学校「椚ヶ丘中学校」の成績・素行不良者が集められた3年E組の元に、ある日突然、防衛省の人と謎のタコみたいな生物がやってきた。その生物は、マッハ20で移動し、月の7割を蒸発させ、授業を教えるのが上手なタコだった。

 そして何やかんやあり、そのタコ──殺せんせーは、僕達の担任をし、僕達は殺せんせーを来年の三月までに暗殺しなければいけなくなった。暗殺しなくちゃ地球を破壊するらしいし。

 最初は戸惑ったけれども、賞金百億円と聞いて、みんなの目の色は変わって、暗殺に意欲的になった。

 

 ほらね? 僕達の学校生活はかなり濃いだろう? こんな学校生活送ってる人なんて、世界中探してもいないと断言できるよ。

 

 この超生物との出会いが、僕は自分の人生の転換期だと思っている。

 成績も前よりも比べ物にならないくらい上がったし、クラスメイトの事をより良く知ることができた。だから殺せんせーには、そこら辺は感謝してます。

 

「渚君、何やら嬉しそうですね? 何か良い事でもありましたか?」

「え、僕そんなに顔に出てました?」

「ええ。此れでもかと言うぐらい、笑顔でしたよ」

 

 はは、何だか照れくさいや。

 

 

「殺せんせー。僕は必ず、貴方を三月までに暗殺してみせますよ」

「ヌルフフフ、其れは楽しみです。殺せると良いですねぇ、卒業までに」

 

 

 この2日後、僕の人生は劇的に変わる事になる。

 それはもう、殺せんせーとの出会いなんて目じゃない程に。

 

 

 

×××

 

 

 

「渚君、やる気はあるか?」

 

 烏間唯臣先生にナイフを渡された。真っ直ぐ僕の目を見て、真剣な表情で。

 

 教師が生徒にナイフを渡すという、PTAが見たら発狂ものの状況を作り出したのは、僕らの様子をニヤニヤと笑っている男──鷹岡明先生の所為だ。

 烏間先生は僕達に暗殺の訓練をしてくれる防衛省の人だ。この人のおかげで僕達の暗殺技術は格段と上がったが、それでも殺せんせーを追い詰めるという所までは至っていない。それを見兼ねた防衛省の上層部の大人が呼んだのが、鷹岡先生だ。

 

 鷹岡先生は、最初こそ父ちゃん父ちゃん言って僕達に優しく接していたけれど、そんな優しい一面も、今日を境に剥がれ落ちた。

 彼が用意したE組専用の時間割には、朝9時から夜の9時までの時間割が記された表で、その殆どが暗殺訓練であった。

 

 勉強する時間もないし、遊ぶ時間もない。そんな過酷な時間割に意を申し立てた前原君は、蹴りを入れられて黙らせられた。

 もう鷹岡先生は『優しい』父ちゃんではなく、逆らう者には容赦しない『暴力的』な父ちゃんだった。

 

 結局、そんな彼の横暴に我慢できなかった烏間先生が、鷹岡先生を止めに来たのだが、そんな事は鷹岡先生は気にしていなかった。寧ろ、それを望んでいたかのような、そんな様子だった。

 

 

 そして鷹岡先生は、烏間先生に勝負を仕掛けた。

 

 

 ただし、それは暴力での解決ではなかった。内容は、烏間先生が選んだイチオシの生徒を選び、鷹岡先生と闘わせるという単純なもの。鷹岡先生にナイフを一度でも当てれたら、鷹岡先生は此処から出て行くとのこと。

 だが、問題は其のナイフだ。僕達がいつも訓練で使っているナイフは、殺せんせーにしか効かないナイフで、人間には無害の物だ。しかし、今回の勝負で使うのは、本物のナイフ。

 

 刺せば血が出るし。

 心臓に刺せば殺せる本物の。

 

 

 そしてあのシーンだ。

 

 

「渚君、やる気はあるか?」

 

 

 烏間先生が、僕にナイフを渡すという、今この瞬間。

 

 正直なところ、僕には無理だと思う。何故なら、僕はこのE組の中でも、特別運動能力があるわけでもない。むしろ、劣っている方だ。

 そんな僕が選ばれた事をクラスメイトは困惑していたし、もちろん当の僕が一番困惑し、驚きを感じていた。

 

 僕はナイフをジッと見る。やはりどう見ても本物のナイフだ。玩具でもない、人殺しの道具にも使われる、本物の、ナイフだった。

 

 烏間先生は、僕の目を見て言う。

 

「このナイフは無理に受け取らなくても良い。俺は、プロとして君達に払う最低限の報酬は、当たり前の学校生活を保障する事だと思っている。だから、もし、受け取らないのなら、その時は俺が鷹岡に頼んで、報酬を維持してもらうよう努力する。出来ることなら、君達を危険に晒したくはないんだ」

 

 僕は烏間先生の目を見つめ返す。

 僕はこの人の目が好きだ。真っ直ぐ目を見て話して、僕をきちんと見てくれる。

 何で僕を選んだのかも分からない。けど、この先生が僕を信頼してくれたのだ。其れならば、僕にも十分可能性があるという事なのだろう。

 

 

 だから僕は、そのナイフを受け取った。

 

 

「やります」

 

 

 僕の人生の分岐点まで、残り10分を切っていた。

 

 

 

×××

 

 

 

「さぁ、来い!!」

 

 鷹岡先生が嗤う。僕を莫迦にするように。僕を見下すように。僕の事を、雑魚と思って相手をしているのだろう。

 

 烏間先生からヒントは貰った。この勝負に勝つためのヒントを。

 この勝負は最初の一手こそが最大のチャンス。鷹岡先生は暫くの間は僕に好きに攻撃させるだろうから。

 

「ほれ、どうした?」

 

 鷹岡先生が舌をべロリと出して挑発してくる。

 無視しろ、気にするな。相手のペースに呑まれるな。僕は僕のペースで行こう。

 自分のタイミングで、自分のペースで。

 

 僕は目を瞑る。烏間先生のアドバイスが脳裏を過ぎった。

 

『君は強さを示す必要もない。ただ一回、当てればいい』

 

 

──カチリ

 

 

 そんな音が聞こえた気がした。

 

 

──ああ、そうか。

 

 

 僕は口を動かす。

 

 

──なぁんだ。簡単な事じゃないか。

 

 

 口角をゆっくりと吊り上げ。

 

 

──答えは其処にあった。

 

 

 僕は笑った。

 

 

 

──殺せば 勝ちなんだ──

 

 

 

 たったそれだけの 簡単な事。

 

 

 

 僕は今から この人を殺します。

 

 

 

 僕は笑顔を浮かべ、普通に歩いて近付いた。通学路を歩くように。帰宅路を歩くように。友達と駄べりながら歩くように。

 

 気が付いた時には、鷹岡先生の腕にぶつかった。

 

 なら、此処からする事は簡単だ。

 

 

 僕はナイフを振るった。躊躇無く、鷹岡先生の首元に。

 

 鷹岡先生は気が付いたみたいだ。自分が殺されかけてる事に。だから彼は上体を逸らしてナイフを避ける。

 

 避けるにしては大きな避け方だ、隙が多過ぎる。僕は急いで背後に回り、鷹岡先生の首元にナイフを当てた。

 

 

 ナイフの刃の方を(、、、、、、、、)

 

 

 僕はそれに気がつかず、体重を掛けて鷹岡先生を転けさせてしまう。

 

 

 ビュッ! と聞き慣れない音が聞こえた。そしてそのすぐ後にプシャアア! と噴水のように水が噴き出す音が聞こえた。

 

 

 

×××

 

 

 

 結局のところ、それは偶然だった。少なくとも、僕はわざとにやったわけではない。

 人を殺す──とまではいかなかった。鷹岡先生の首から血が噴き出したその瞬間、殺せんせーが縫合してくれたおかげで何とか死は免れた。

 しかし理由はどうあれ、鷹岡先生が命を取り留めたとしても、僕が人を殺しかけたのは事実だ。それは取り消せない事実であり、僕の頭の中に一生離れないのだろう。

 

 あの後、クラスメイトは僕に普通に接してくれた。僕に怯えることもなく、それどころか僕の心の心配をしてくれた。それはとても嬉しかったし、僕も感謝している。

 正直僕は、みんなに軽蔑されるのだと思った。わざとではないとはいえ、人を殺しかけたのだ。普通、虐められてもおかしくはないのだ。その点、僕はクラスメイトに恵まれていたのだろう。

 

「……」

 

 右手を見る。鷹岡先生の首を切り裂いたナイフを握っていた右手。僕の体で最も血を浴びた部位だ。

 

 僕は忘れられなかった。あの瞬間を。初めて人を殺しかけたあの瞬間を──

 

 

 

──()()()()()()()()()()

 

 

 

 ああ、ホントに、どうしたんだろうね? これじゃあまるで、異常者みたいじゃないか。小説や漫画の世界の快楽殺人鬼みたいじゃないか。

 

 あの感覚が忘れられない。肉をナイフで切り裂く感覚。噴き出る血の匂い。命の灯火が消えていくあの瞬間が!!

 

 

──つまり僕は、命を奪うという行為に快感を覚えてしまいました。

 

 

 だから。

 だから僕は──

 

 

「ヒッヒィィィィィ!!!」

 

 

 僕の目の前で男が悲鳴をあげながら、後退りしていく。僕はそれをコツンコツン──と靴を鳴らしながら追いかける。

 

「お、お前! 修学旅行の時の奴だな!? 何が目的だ……復讐か!? それでも()()はやりすぎだろ!!!?」

「やり過ぎ……ではないと思うけどね。襲ってきた人達を()()()()()だろう?」

「こ、殺しただけって……」

 

 男──高校生のリュウキ君は、恐怖に顔を歪ませながら、僕の言葉に顔を更に引き攣らせる。もう顔が面白い事になってるよ。

 

 リュウキ君の周りには、いっぱい人が転がっていた。全員血だらけで、首を引き裂かれた人もいれば、原形を保っていないぐらい、グチャグチャにされた人もいる。みんな違ってみんな良いって奴だね。個性的過ぎる外見だけどね。

 まあ、僕が殺ったんだけど。

 

「次は君の番だね。──いやぁ、ホントに丁度良かったよ。街を歩いてたら君達がいたからさ。丁度実験体には良いかなぁと思って」

「な、何だお前……完全にイカレテやがる。俺達だって同じ人間だぞ!? 殺したら、犯罪だぞ!?」

「あはは、小学生みたいな台詞だね。それに犯罪だなんて当たり前の事言わないでよ。人を殺すことは許されない罪だってことぐらい、分からないほど馬鹿じゃない」

「お、おい、それ以上俺に近──」

 

 リュウキ君の喉にナイフを突き刺す。引き抜くと、ものすごい勢いで赤い噴水が飛び出した。

 これで全員終わったかな? 流石に目撃者を生かしておくことはできないからね。きちんと殺しておかないと。

 

「ひっ!」

「あ、まだ生き残りがいたんだ。なら殺さないと」

 

 逃げる男を僕は追いかける。

 

──殺すために。

 

 

 

 




どうだったでしょうか?
渚君が鷹岡先生の倒し方をちょっと変わっただけですね。まあ自己満足です。
分かりにくかったかもしれませんがね。

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