やはり俺がチート部隊の隊長をするのは間違っている   作:サラリーマン

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遅くなって申し訳ないです。前回も書きましたが補修とかいろいろあってこれからは遅れると思います


今回独自設定含みます



災禍の鎧2

獣みたいなネイバーを倒してすぐに俺たちは上層部に呼ばれて会議室に来ていた。

 

「じゃあユイちゃん。さっきのあの人型ネイバーについて教えてもらえるかな?」

 

忍田さんの言葉にユイはうなずくと静かに口を開いた。

 

「あのネイバーは向こうの世界ではディザスター、災禍の鎧と呼ばれていました。」

 

ユイの語るストーリーはそんな言葉から始まった。

 

―ディザスターはまだ向こうの世界でもそこまで技術が発達してなかった頃に誕生したある一人のトリガー使いの名だ。

銀灰色の全身鎧に身を包み、一メートル以上ある大剣を持ち、数多のトリガー使いを地に這わせた。その戦い方は苛烈、あるいは残忍の一言で、降参しようとしていた者の首を刎ね、手足を捥ぎ、暴虐の限りを尽くしたという。

しかし、無数のトリガー使いを死に追いやった彼にも、最後の時はやってきた。その当時存在していた国が共同戦線を張り、幾本ものブラックトリガーやその国独自のトリガーをつぎ込み災禍の鎧の討伐を始めたのだ。

ついにその頑丈な鎧が砕かれその首が切り離される瞬間、彼は哄笑とともにこう叫んだという。『俺はこの世界を呪う。穢す。俺は何度でも甦る。』

その言葉は真実だった。ディザスターと呼ばれたトリガー使いはこの世を去ったが、ディザスターが使っていたブラックトリガーはこの世にとどまった。その討伐に加わった国の一つにそのブラックトリガーが渡り、適性検査が行われ、討伐に参加した一人のノーマルトリガー使いがそのブラックトリガーの所有者となった。そしてブラックトリガーを使った時、そのトリガー使いの精神を…乗っ取った。それまでは高潔なリーダーとして慕われていたのに一夜にして残虐な殺戮者へと変貌したのだ。その荒ぶる姿は≪初代≫と全く見分けがつかなかったそうだ。

 

そこで一回言葉を止め、全員の顔を確認するように一瞥してから、ユイは続けた。

 

「同じことが実に三度繰り返されました。≪鎧≫の持ち主は大変な恐怖をばら撒いたのちに討伐され、しかし鎧は消えずに、主を討ったものへと次々に乗り移り人格を変容させました…そしてそのトリガー使いは本来の名ではなくディザスターと呼ばれるようになります。」

「そこで、鬼怒田さんにお願いがあります。私とそのモニターと繋いでいただけませんか?」

「ああ。わかった。ユイちゃん」

 

鬼怒田さんが立ち上がり、会議室にあるモニターとユイを接続させる。ユイと接続されたモニターは一つの荒野とそこで走る一人の人を映し出していた。

 

「ユイこれは?」

「…今から2年半ほど前に行われた4代目≪ディザスター≫の討伐の映像です」

 

ユイの言葉に会議室が騒然とした。それからいち早く再起動した城戸さんがユイに質問する

 

「なぜユイ君がこんなものを持っているのかね」

「私を生み出したトロポイと言う国は攻撃など軍事的な技術がそこまで発達していない代わりにこういった情報収集に長けているのです。様々な国にこちらの世界で言う蜂よりも小さいくらいのトリオン兵を飛ばしその蜂が集めた情報をまとめて本国へと持っていっています。」

「そのトリオン兵はこちらの世界にも来ているのかね」

「私がトロポイにいた時点ではこちらの世界には送っていなかったはずです」

「そうか…」

 

そこで映像に動きがあった。今までは走っていた人の足音しか聞こえなかったのだが映像からその音とは違う音が混ざり始めた。この音は…剣の音か!

その時一気に開けた場所を映し出した。そしてその中央部には銀灰色の全身鎧のトリガー使い、ディザスターと老人のトリガー使いが剣を打ち合っている。さっきまで走っていたトリガー使いは大きく踏み込むと、数十メートルあった距離を立った一歩で0にし、二人の戦闘に乱入した。

老人と走っていたトリガー使い…長いからAでいいや。Aは連携しながらディザスターに攻撃を与えていく。

 

『ガッ!!』

 

肉食獣のような咆哮とともにディザスターは大剣を猛烈なスピードで振り下ろす。二人のトリガー使いは避けたものの後ろに見えていた山はバターのように2つに割れた。それを見たからかどうかはわからないが二人のトリガー使いは一回距離を置く。しかしディザスターはその場で口を膨らませ、俺たちにしたように炎を吐くモーションをする。

 

『ブレスだ!』

 

初めてディザスター以外の人を声が聞こえた。二人のトリガー使いはその声を聞き、ばらばらに動き出して炎を回避する。ディザスターはそれを分かっていたのかすぐさま大剣を持って老人を方へ向かい、剣を振り上げる。しかし身の丈ほどのでかい盾を持った大男が間に入り老人をガード。その隙に老人は大きく下がった。ディザスターは盾に力任せに大剣を叩きつける。

耳をつんざくような衝撃音とともに、滝のように火花が飛び散る。大剣は跳ね返したが盾を持った人はがくっと膝をつく。

 

『ガッ、ガガッ!!』

 

怒りとも喜悦ともとれる叫びを漏らし、ディザスターは大剣を無茶苦茶な動きで何度も何度も振り下ろした。一撃でもヒットすれば体を断ち切られそうなその攻撃を、大男は的確に、愚直にガードし続ける。

ここで俺はディザスターの鎧にいくつもの深い傷があることに気付いた。剣をふるうたびその傷からトリオンが洩れ、空中に消えていく。

 

「手負い……?」

 

無意識のうちにつぶやくとユイがささやきを返した。

 

「そうです。彼は、この直前に他のトリガー使いとも戦い、この場所に追い込まれました。残存トリオン量的にはもう瀕死のはずです。なのにこれほど荒ぶります。私はこれを初めて見た時、心の底から恐ろしかったです。」

 

それはそうだろう。普段ほとんど表情を変えない城戸さんでさえ驚愕の表情をしているのだ。

内心でそうつぶやきながら俺はぞっと総毛立つのを感じていた。

と、そこでどれだけ大剣を叩きつけても崩れないことに苛立ったのか、ディザスターが低く唸った。攻撃を継続しながらも、その長い頭部を伸ばし、突如湿った音とともに口を開いた。

 

「あれは!」

 

さっきの戦いで謡にした攻撃と似ていた。というよりそっくりだった。

 

「あれはディザスターの能力の一つ≪トリオン吸収≫です。彼は口で相手を食べることによって相手のトリオンを奪うことができます。」

 

今まさに盾を持った男が食われようとしていた時、一回退いた老人とAが挟み込むように突進してくる。そしてそのまま老人の視認ができない速度での攻撃でディザスターの首を断ち切った。

そこで画面の右下にある再生時間を示すスライドバーが右端に到達した。

 

 

 

 

映像が終わると俺は掌がじとっと汗をかいていることに気が付いた。

 

「ユイちゃんに聞きたいんだがこの後ディザスターブラックトリガーはどこの国に渡ったのかな?」

「…私はこの後このブラックトリガーは壊されたと聞いています。」

 

確かに強力ではあるが制御できないのならガラクタもいいとこ。さらに見境もなくトリガー使いを襲うともなればリターンよりもリスクの方が大きい。壊した方が賢明だろう。けど…じゃあ俺たちがさっき戦ったのは何なんだ?ディザスターと呼ばれたブラックトリガーは壊されたはずなのにそれと同じ能力を持ったトリガー使い。

 

「なんにせよ人型ネイバーは比企谷隊が倒したんですし、この話はもう終わりでいいのでは?」

 

根付さんの言葉に城戸さんは少し考えてから肯定した

 

「…緊急会議はこれで終わりとする。各自それぞれの仕事に戻ってくれ」

 

会議が終わるとみんなが扉から出て行く。そして俺も出ようとしたところで

 

「比企谷これから何か違和感を覚えたら報告しろ。比企谷隊のほかの隊員にも伝えておいてくれ」

「了解です」

 

俺は短くそう返すと今度こそ会議室から出た。

 

***

 

あれから数日、特に俺にも俺の周りにも変わったところはなく、平穏そのものだった。

そんなわけで今俺は警戒区域に来ています。なぜかというと

 

「あぁ~緊張する」

「そうだね。あたしも緊張するよ」

「そんな緊張するようなことでもないでしょ。あ、そうだお兄。これ終わったら焼き芋食べたい」

「いやいや明日葉ちゃん。お兄ちゃんはお財布じゃないのよ?わかってる?」

「千種兄妹緊張感なさすぎだろ」

 

千種隊の初任務の付き添いである。新米部隊の最初の数回の防衛任務時にはすでにチームを組んでいる誰かしらが通常付き添うことになっている。その付き添う人は基本的にはその時に防衛任務がない人になるが例外として知り合いがやることもある。それで俺がやる羽目になってしまったのだ。

 

『みんなゲート発生したよ!誘導誤差4.22だよ』

「了解。モールモッドは三浦と明日葉、バムスターは俺と川崎でやる。そんな感じでいいんだよな?比企谷」

「まあいんじゃねーの。あとはネイバーを討ち漏らして警戒区域の外に出さないようにだけは注意しろ。じゃあがんばれよ」

 

屋根の上に座り持ってきていた本を開く。本を読んじゃいるが一応いつでも動けるように準備はしているしB級に上がる腕があるなら連携さえしっかりすれば負けることはないだろうし大丈夫だろ

そんなこんなで5分くらいたつころにはすべてのネイバーを倒し終えていた。

 

「お疲れ。あとは次にゲートが開くまで待機な。」

 

俺がそう言うと千種が戻ってくるのを待ってから4人は輪になって固まって、今の戦闘を振り返りながら談笑をし始める。俺が思ってたよりみんなリラックスしてるようだ。前に他の新米部隊の付き添いをしたときは戦闘が終わってからも緊張しまくってたからな。ここで東さんとかならリラックスできるような言葉をかけるだろうが俺にそんな言葉をかけることができるわけもなく最後までずっと緊張してて疲れたからな。その点こいつらはそこの心配をする必要はなさそうだな。重ねた来た時間はまだ少ないがもうすでに確かな信頼がそこにはあるのだろう。

 

きっと奴らのようにはならない。

 

ふとそんな考えが浮かんだ。

 

(ん?奴らって誰だ?)

 

―奴ラハ我カラ大切ナ人ヲ奪ッタ。我ハ奴ラガ憎イ。我カラ大切ナ人ヲ奪ッタ物ガ憎イ。憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ

 

「ヒ…ヒキオ!?どうしたんだし!?」

 

え?三浦を見ると戸惑った表情で俺を正確には俺の腰のあたりを見ていた。俺もそこを見てみると…

 

「なんだよこれは!」

 

俺の腰のあたりから尾が生えていた。そして俺の右腕が指先から鎧に覆われて行く

そしてさっきの声が聞こえてきた

 

―ソウダ、ソノママ我ニ身ヲ委ネロ。奴ラヲ切リ裂キ、引キ千切リ、喰イ尽クス。喰ラウ。喰ラウ。喰ラウ。

 

「ッ!誰か!早く俺をベイルアウトさせろ!俺が飲み込まれないうちに早く!」

「どうしたんだしヒキオ!それにその腕は」

「いいから早くしろ!う…お、おおおっ……!」

 

拳を砕けんばかりに握りしめ、俺は必死に抗う。俺を支配しようとする闇色の波動を全力で遠ざけるように。

 

「お兄!どうしよう!?」

「どうするって言ったって比企谷が言うようにするしかねえだろ」

 

千種たちの話し声が聞こえるが聞こえているだけで頭に入ってこない。頼むから早くベイルアウトさせてくれ

そして頭に衝撃。数秒後にベイルアウト用マットにたたきつけられそこで俺の意識は闇に包まれた。

 


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