素晴らしい世界かもしれないが不死人には物足りない 作:みーと
基本的にエリス様が可愛いなぁという。
大問題である。
敵に囲まれた。数にして10体ほどのでかいカエルのモンスター。
むぅ、困った。
兜の下で顔を歪める。
かつての自分は一対一ならたとえ最強種である岩の古龍の生き残りだろうと太陽に連なる神だろうと殺す自信があるが、一対多では一撃で屠れる雑魚亡者にも殺される可能性がある。
つまりどこまで行ってもその戦闘が超常とは言い難い人間的な接近戦を行う自分は数を前に圧殺されてしまう。残念かな、これのビルドがアンバサだったならば神の怒りとかフォースとかで吹っ飛ばしてから雷の槍で串刺しにしてやるのだが。集中力など戦技を使う為の最低限しか伸ばしていない己では扱えない。
完全に趣味の狼騎士の大剣を振り回しながらゴロゴロしてるが重量の関係上あまり動けない。むしろ隙が大きいかもしれない。レベルさえ下がっていないなら本家にも劣らない回避を披露できるのだがと想うが、今の己には出来ないのだからしょうがないと諦めた。
背後からカエルの舌が襲う。
鞭のように振るわれ、鎧を思い切り叩いた。
痛みに呻く。
そして足を止めてしまった。
あとはご察しの通り。不死人ならば必ず恐れるリンチである。
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気がつけば何処かの不思議空間にいた。
大体ここは火継ぎの祭祀場的な場所だと考えている。
「またですか?」
声がかかった。
白銀の髪をした修道女のような服装の女性、本人曰く幸運の女神だとか。エリスと名乗っていた。
「俺としてはこの程度は何時もの事なんだが」
「いや、死ぬのが何時もの事って……。どれだけ可笑しな事を言ってるか分かってます?」
「どうせ直ぐに生き返る」
この火防女もどきは不死人の性質をいくら話しても理解しようとしない。
失敗から学べというのは常。不死人はその失敗が死というだけだ。人間なら終わりだが死ねない不死人には関係ない。
しかし、エリスは火防女もどきなので目が見えるらしい。格好も似ているのだから目も覆えばもどきではないだろう。
「それよりもかぼたん。俺の下がったレベルはどうにかして戻らないのか?」
「その呼び方やめてくださいって言ってるじゃないですか!そもそもかぼたんって何ですか!?」
「かぼたんはかぼたんだ。不死人によっては心の拠り所だったり、武器の試し切りの為のサンドバッグだったりする」
「サンドバッグッ!?」
かくいう自分も使った事のない武器種を試すために一々外へ出るのも面倒だったので死んでも復活するし、デメリットもないかぼたんを斬ったこともある。
「ともかく俺のレベルは何処へ消えた。俺のソウルは何処へ消えた。世界が一周してもレベルとアイテムは引き継ぎなんだぞ」
「はぁ、もういいです。前から言ってますけど貴方のレベルとやらが何処へ消えたかなんて知りません。というかレベルならアクセルの街で上げてるじゃないですか」
「俺のカンストさせた筋力と技量を返せ。あと上げてた体力も。狼騎士の防具装備が重量ギリギリでドッスンしてるだろうが!」
前世の前世でアルトリウスには散々八つ裂きにされたのだ。そんな時からずっとかっこいいと思って使ってたのに。というか、ファランの大剣もかっこ良すぎ、深淵の監視者の優遇っぷりはやばい。
「趣味装備ってそんな人殆どいないと思いますけど…」
知るか。この世界の連中は浪漫というものを理解していないらしい。実用性よりも大切なものがあるはずだ。ガチ装備はセスタスでパリィからスズメバチ致命で決まりだから。煙の特大剣両手持ちでパリィされないので安心です。
話は変わるがエリスは火防女もどきなのでレベル上げも出来ないという無能である。この世界ではレベルが上がるとポイントが貰えるらしく、ステータスにポイントを振ってレベルが上がるかつての世界とは違いがある。暗い穴も癒せないだろうし、いよいよサンドバッグとしてしか使えないかもしれない。
無言の俺に悪寒を感じたのか、己の身体を抱くようにエリスはこちらを睨んだ。
「何か?」
「いえ、なんだか身の危険を感じただけです」
そうか、と頷く。
エリスは何が出来るか、本当に気になってきた。
「かぼたん。貴方は一体何ができるんだ?」
「おや、興味がおありですか?」
「ああ」
「ふふ、私は幸運の女神ですから、その辺に関係することは大抵出来ますよ」
幸運の女神様。
アンリの直剣持たせたら強そう(不死人感。
取り敢えず、己の身体に渦巻くソウルからアンリの直剣を取り出す。
「ちょっとこれを持ってみてくれ」
「え?なんですか、この剣………。え?は?この神器を超えたナニカは何!?」
そりゃロザリアに舌を捧げて運ガン振りでやったことがあるから楔石の原盤で最大強化したのだ。神さえ殺す保証付き。
「おおぉ……!!」
直剣から力が溢れている。
これは俺が運99振った時より攻撃力ありそう。
「え、え、ちょっ!私は、どうしたら!?」
歓声をあげる俺を余所にテンパってあたふたしているエリス。きっとこのレベルの武器を持つのは初めてなのだろう。
「うむ、丁度良いからそれは貴方に貸してやろう。ならば俺は行くぞ、レベル上げに忙しい」
何故かある篝火を用いて始まりの街であるアクセルに向かう。
「あ!ちょっ、これは!?」
一々喧しい女だ。
火防女とはもっと心の擦り切れた虚しい存在ではなかったか。
ノリで書いた。