ゼシカの婚約者 ラグサットとして   作:ひつまぶし食べ隊

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前話のあらすじ
トラックに轢かれ死亡し神から三つの頼みごとをされた。
一つ、神が創った世界に転生すること
二つ、ラプソーンを倒すこと
三つ、神の選んだスキルを使うこと


02 プロローグ後半

(やはりか、トラックに轢かれて死亡し、気付いた時には白い空間、そしておっさん。神様転生という奴か… まぁ深く考えても仕方がない、一度死んだ身だ、この幸運に感謝しよう)

 

 そう、転生の機会があるなんて幸運なことだ。この頼みを受けることにするが、神の頼みごとについていくつか疑問に感じることがあったので聞いてみることにした。

 

「いくつか聞きたいのですが?」

 

「いくらでも聞いてくれ、出来る限り答えよう」

 

「そのドラクエⅧに似た世界には主人公達は居ないのですか? 居るのなら放っておいても倒してくれそうなものですが?」

 

「主人公達は居るんだ。ドルマゲスも他のキャラも、ストーリーに少しでも関わる奴は皆居る。ドルマゲスはいずれ神鳥の杖を盗み、トロデーン城に呪いを掛け、ラプソーンに操られ、七賢者の末裔を殺していく。そして主人公達は旅立ち、仲間を増やし、最終的にはラプソーンを倒そうとするだろう。だけどこのままだと主人公達はラプソーンに勝てず、光の世界はラプソーンに支配されるのさ」

 

「主人公達でも勝てない?」

 

「あぁ、だからお前さんに転生して貰ってその知識を使い、主人公達に協力してラプソーンを倒して欲しいのさ」

 

「頼みごとの一つ目と、二つ目は分かりました。次は何故、ブーメラン、打撃、ムチのスキルを使えと?」

 

「あまり使われないスキルが可哀想だからさ。主人公達の使うスキルはさっきの意見を参考に誘導するから、余ったスキルをお前さんに使ってもらいたいんだ。使う本人に使いたくなるような案を出して貰ったし、大丈夫だろ?」

 

 嵌められたのだろうか?

 しかし自分の好きなゲームに似た世界に行けるというのは魅力的だし、普段使わないスキルを使うというのも面白そうだ。

 自分で使うということなので、先程の案をさらに上方修正してみる。

 

「ブーメランと打撃はその案に、二人分の特技を覚えさせてくれるなら良いですよ」

 

「二人分はちょっとなぁ… 二人の良い所取りでどうだ?」

 

「それで十分ですよ」

 

 提案が通り心の中でガッツポーズする。

 

「ムチは?」

 

「固有スキルも振ったらポイント足らないじゃないですか」

 

「そこら辺は後で説明するが、特典と合わせればスキル全部マスター出来るよ」

 

「だとしても、ブーメランと被りますよ。ゼシカは杖、格闘が良いと思いますから、ゲルダの短剣か、扇のどちらか使わせて下さい。出来れば短剣を」

 

 ドラクエⅧの短剣スキルは振っていくと、普通の剣も装備出来る様になる。男なら剣を振ることに憧れるものだ。

 

「では扇スキルで。ゲルダの様な盗賊キャラには短剣だろ?」

 

 悔しいが納得出来てしまう。

 

「その代わり全体攻撃特技のアゲハの舞は要らないだろうから、別の優秀特技を付けてやろう」

 

「どんな特技ですか?」

 

「それは秘密さ、取得する時を楽しみにしておくといい」

 

「そうします、固有スキルはどんなものになりますか?」

 

「それも秘密だ。というかどんなスキルが付くかは転生先にも依るだろうし、もしかしたら君自身の性格が元になるかもしれないから分からないんだ。別の世界から転生させるなんて、今回が始めてだしね。転生特典で決めることは出来るよ」

 

「転生特典…」

 

「頼みごとの数、つまり三つの転生特典を付けてやろう。といってもそこまで強力なものは無理だけど」

 

「例えば?」

 

「まず元の世界に戻りたいというのは、すまないが無理だ。他にもベクトル操作、スタンド、王の財宝、車輪眼とかのドラクエ世界に無いものや、HPMP無限、全呪文ブレス完全耐性みたいな、ドラクエ世界にありそうなものでも強すぎるのは駄目だね」

 

 元の世界には戻れないのは残念だ。しかし三つか、どんなものを選ぶべきだろうか。素直に聞いてみることにした。

 

「なるほど、お勧めの特典とかありますか?」

 

「お勧めか… 今のままだと原作開始時に、ある程度の年齢の人間に転生してもらうんだがランダムなんだよね。子供は選ばれないが、女かもしれないし、おっさんかもしれない。だから転生先を自分で決めるのに使うのが良いと思うよ。ちなみにメインキャラやストーリーに深く関わるキャラは選べないからね」

 

「転生先か…」

 

 どんな転生先がいいか条件を出してみよう。

 

(まず男性がいい。イケメンで金と権力があれば尚良し。金と権力だけで考えるならチャゴスなんだが。性格は俺が転生することで解決、後は痩せれば良い。未来のサザンビーク王、嫁はミーティア姫、いい案だ)

 

「チャゴスは?」

 

「ストーリーに深く関わるから駄目」

 

(駄目か、まぁミーティア姫は主人公が居るしな。

 …待てよ、ミーティア姫と主人公をくっ付ければゼシカの相手が居なくなる。ククールにさえ注意すれば行けるんじゃないか? この方向で行こう)

 

 いつの間にか思考がいかに彼女を作るかになっていく。彼女いたことのない童貞のまま死んだのだ、誰が責められよう。

 

(ゼシカと面識を持つためにはリーザス村の住人になれば… 領主の娘と領民じゃ弱いか?)

 

 そのときギガデインに打たれた様な衝撃が脳に走った。

 

(居るじゃないか、ゼシカと面識ある所か婚約者だったキャラが! 父親はサザンビーク国大臣、金も権力もある。外見はダサいけどそれは改善出来る、顔の造りも目をつむろう。原作では婚約破棄されるが、一緒に旅すれば好感度も上げられる、完璧だ)

 

「ラグサット、ゼシカの婚約者ラグサットはどうですか?」

 

「ラグサットか、ストーリーには関わるが少しだけだしな、かまわんよ。」

 

 一気にテンションがスーパーハイテンションまで上がる。転生特典は後二つ、さっさと決めてゼシカに会いに行こう。

 

「そういえばさっき転生特典使えば全スキルマスター出来ると言ってましたね。取得スキルポイント増やすとかですか?」

 

「転生する世界にスキルポイントなんて無いんだ」

 

「え?」

 

「あくまでも似た世界でゲームと全く同じ世界ではないんだ。例えば村や町でも家や人の数が多いし、ステータスも見れない。ゲームより現実的な世界として創ったのさ、レベルはあるけど」

 

「そういえば神様がドラクエⅧに似た世界を創ったと言ってましたね、一から創ったんですか?」

 

「そうなんだ、ゲームの世界を現実でも再現したくてな。まず太陽を創ってから舞台になる星を創る。原始惑星と言える位になったら地球と同じ様に小惑星をぶつけて月を創って…」

 

  ジャイアントインパクトって奴だな。で後何万年、いや何十億年たったら原作スタートするの?

 

「神様、手短にお願いします」

 

「すまない。手短に言うと、ドラクエⅧの世界は再現出来たんだが、そのために力を使いすぎてな。神の力はいわば光、光が強い程闇も深くなる。そのせいで暗黒神ラプソーンの力が強くなってしまってな」

 

(主人公達がラプソーンに勝てないって、神のせいか)

 

「それを是正するためにお前さんを転生させる訳さ、転生特典も付けてな」

 

「なるほど。しかし、スキルポイントが無いとなるとスキルはどうやって上げるんですか?」

 

「武器スキルは使ってれば、固有スキルはレベルアップで上がるよ」

 

「熟練度的なものですか」

 

「そう、熟練度。熟練度もレベルも訓練や実戦や経験を積むことで上がる。訓練よりも実戦の方が上がりやすい。また、最初はのうちは上がりやすく、マスターに近くなる程上がりにくい。一般的には全部のスキルを色々試してから自分のスタイルを見つけ、使う武器を絞るね。たまに、始めからこれを使うと決めてひたすらその武器だけを使う人も居るし、まんべんなく複数の武器を使う人も居る」

 

「なら特典は熟練度上がりやすくなるというものですか?」

 

「俗に言う天才と呼ばれるものさ。ちなみに普通の人なら本人の血が滲む努力の果てにようやく一つの武器をマスター出来るか出来ないかってところだね。才能ある人なら二つ目もマスター出来る可能性がある位だ。主人公達なら原作始まったら、ひたすら実戦の日々だろうから二つ目もいずれマスター出来るだろうね、三つ目は分からないけど。別のにしてもいいよ」

 

(天才とな?)

 

「ちなみに師について教われば成長は早いし、師の特技覚えたりもできる。もしお前さんが格闘を鍛えてからゼシカに教えて、より早くより強く成長したらゼシカはお前さんをどう思うだろね?」

 

「二つ目の転生特典はそれでお願いします」

 

 ゼシカに師匠とか先生とか呼んで貰えるわけだ、好感度も上がり、戦力も上がる、一石三鳥だな。

 

「三つ目は? レベルでも上がりやすくする?」

 

「呪文がいいですね、ラグサットが何覚えるか分かります?」

 

「呪文も固有スキルと同じで分からないんだ。特典使うなら呪文十個選ばせてあげよう」

 

「十個か… 他のドラクエの呪文からも選んでいいですか?」

 

「構わないよ。ゼシカの好感度上げるなら、ドラクエⅧに無いような珍しい呪文がお勧めだな」

 

(『何その呪文? 見たこと無いわ、ラグサット凄いわね』こんな感じか、ありだな)

 

 十個の呪文を何にするか考え、便利な呪文から使い道が限られる呪文、男のロマンに溢れた呪文や物語の根幹を揺るがしかねない呪文などを神と相談して決めた。

 

「レベルアップしてたらそのうち覚えられるからね」

 

「ありがとうございます」

 

「これで転生特典を選び終えたな」

 

「もう転生ですか?」

 

「後少ししたらな、いくつか説明が残ってる。スキルの事だが、転生先の世界では16歳になったときに教会で祝福の儀というものを受けて覚えられるんだ。よって、前世の記憶を思い出す時を16歳の誕生日にする。希望するなら産まれた時からでもいいが」

 

「16歳でいいです」

 

 0歳からは精神的にきつすぎる、オムツはもういいんだ。

 

「原作開始前にドルマゲスと会う事があっても何もするなよ。もしラプソーンの復活を先延ばしにしても、その時にラプソーンを倒せる人材が居るか分からないからな。今回で復活させるのが倒せる可能性が高い」

 

「サーベルトも助けては駄目なんですよね?」

 

「ゼシカの兄か、駄目だ。サーベルトが殺されないと復活出来ないからな」

 

「分かりました」

 

「ラプソーンを復活させて倒す。これ以外のストーリーなら変えるように行動しても構わないが、その分ストーリー知識の恩恵が無くなっていくから、考えて行動するように」

 

「ゼシカと結婚出来るようにストーリーを変えて見せますよ」

 

「お、おう。そんなことより、お前さんが転生者ということも秘密にしておくようにな」

 

「言っても信じてもらえない所か、狂人扱いされそうですしね」

 

「転生した理由が、神のせいで世界が危ないからと知られたら、神の威厳が地に堕ちるからな。これを破ったらククールにゼシカを寝取らせるよう仕向けるから」

 

(こいつ… ドラクエⅦバリに裏ボスとして神をぶちのめしてやろうか?)

 

 秘密を漏らさなければいいと、気持ちを切り替えた。

 

「最後に、俺の頼みごとを聞いてくれてありがとう。転生特典とは別にお礼がしたい」

 

「第二の人生を歩ませて貰えるだけで十分ですよ」

 

「そう言わず受け取れ、餞別だ」

 

「そういうことでしたら頂きます」

 

「服を着せてあげよう」

 

「はい?」

 

 死亡してこの空間に連れて来られてから、ずっとオムツ一丁だからだろうか? もう転生するのに?

 

「今の話ですか? それとも転生時の話ですか?」

 

「今の話、というか現実世界の話だ。現実世界はまだ君が轢かれてから時間が進んでないよ。オムツ一丁の死体を晒したくないだろ?」

 

「是非お願いします。…ついでに家族の記憶から私のこと消してもらえませんか?」

 

「それは可能だけど良いのか?」

 

「はい、両親には私以外にも子供が居ますし。それに忘れられた方が踏ん切りがつきますから」

 

「分かった、お前さんの決断を尊重しよう」

 

「お願いします」

 

「では、転生させる。眠れ、起きたら新しい世界だ」

 

 神の言葉を聞き終わると強い眠気に襲われ、まぶたが重くなってくる。

 

(二度目の人生、悔いのないよう生きよう)

 

 横になりまぶたを閉じる

 

(ゼシカの婚約者 ラグサットとして)

 

 俺は意識を手放した。




死亡から転生まで長いかもしれませんね。

ちなみに作者が初めてドラクエⅧをやったとき、攻略を見ずにやったら主人公ブーメラン、ヤンガス打撃、ゼシカおいろけ、ククール弓に最初に振りました。
クリア後、攻略見たらブーメランと打撃が外れ扱いされててショックでしたね。
憤慨して二周目をおすすめスキルのヤリ、オノに振ったら納得した記憶があります。
ラグサットのスキルはそんな経緯がありブーメランと打撃に決めました。扇は文中のまんまです。

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